動物咬傷・ハチ刺傷にその場で対応する
小児の犬咬傷は、傷の見た目より中が危ない。 2歳未満の頭部咬傷は皮膚の傷が軽微でも頭蓋内穿通創がありうるため見た目で判断しない。創の消毒は推奨されず、石鹸と流水での洗浄が有効。ハチのアナフィラキシーは速く、致死的反応で呼吸停止・心停止までの中央値は15分。
始める前に
- 小児の犬咬傷は成人より注意深く診察する。頭蓋内損傷、内臓・頸椎・気管・大血管損傷、筋肉内血腫、多発骨折、複数箇所の損傷、穿通創や鈍的外傷を探す
- 2歳未満の頭部・顔面の咬傷は皮膚損傷が軽微でも頭蓋内穿通創がありうる。頭部画像を検討し脳外科のある施設へ相談する
- 胸部・腹部の咬傷は気胸と内臓損傷の有無を確認する
- 咬んだ動物を特定でき観察できるか確認する(受傷から2週間以上その動物が狂犬病の症状を示さなければ感染の可能性を否定できる)
手順
- 1
石鹸と流水で創を洗浄する。狂犬病が疑われる咬傷は徹底的に洗浄する
洗浄は有効(グレードB)
- 2
顔面の創は受傷後24時間以内であれば積極的に縫合を考慮する。顔面以外は8時間以内を目安とする
- 3
手の咬傷・刺創・易感染性の基礎疾患がある場合は一次縫合の適応を慎重に選ぶ
手の咬傷は他部位より有意に感染率が高い
- 4
破傷風は創を高リスク創(汚染創、穿刺創、壊死組織を伴う創、受傷から6時間超)/低リスク創に分類し、接種歴と合わせてトキソイド・TIGの要否を判断する
- 5
海外(流行国)で咬まれた・コウモリに咬まれた場合はできるだけ早く狂犬病ワクチン接種を開始し、創は石鹸と流水で徹底的に洗浄する
- 6
皮膚・粘膜症状+気道/呼吸・循環器・重度消化器症状のいずれかがあればアナフィラキシーとしてアドレナリンを筋注する
典型的な皮膚症状がなくても急速に発症しうる(皮疹がないことを否定の根拠にしない)
- 7
ハチに刺された場合は観察の場を離れない
致死的反応で呼吸停止・心停止までの中央値は15分
- 8
アドレナリンを投与したら二相性反応に備えて経過観察する
成人最大23%・小児最大11%に発生し、約半数は最初の反応後6〜12時間以内に出現。アドレナリン投与の遅れ(発症から30分以上)は二相性反応の出現に関連する
- 9
マダニが咬着している場合は無理に引きちぎらず、SFTS・日本紅斑熱・つつが虫病を念頭に後日の発熱で再受診する条件を渡す
やってはいけない
- 創の消毒をする(推奨されない・グレードC2。ただし狂犬病感染が危惧される場合は考慮)
- 洗浄の行き届かない刺創を一次縫合する
- 抗菌薬で破傷風発症を予防しようとする(エビデンスはなく受傷後の予防投与は推奨されない)
- 皮疹(皮膚症状)がないことをアナフィラキシー否定の根拠にする
- マダニを無理に引きちぎる
終わったあと
- 咬まれた傷はよく洗うことが大事で、消毒はかえって治りを悪くするため行わないことを伝える
- 破傷風の予防が必要かどうかは傷の状態と予防接種の記録で決めるため母子手帳を見せてもらう
- ハチに刺された後はしばらく目を離さないよう伝える。息苦しさ・声のかすれ・ぐったりが出たらすぐ知らせるよう伝える
この場で持てない・送る
- 頭蓋内穿通が疑われる頭部咬傷(特に2歳未満) → 持てない。脳外科のある施設へ
- 胸腹部咬傷で気胸・内臓損傷を疑う → 持てない
- 深い創・大血管損傷・多発外傷 → 持てない
- 顔面の縫合(24時間以内) → 当院で縫えるかは要確認。縫えないなら形成外科のある施設へ
- 免疫グロブリンが要りそう → 一般に入手が難しい(2015年の資料は「入手は不可能」、2025年の資料は「一般に入手が難しい」と表現が変わっており確定できていない)。受け入れ先・専門機関に早めに相談する
- 要確認:当院で創縫合をどこまで行うか(部位・深さ・年齢)
- 要確認:破傷風トキソイド・TIGの院内在庫(供給不足の影響を受けている可能性がある。2026年9月時点の供給状況は未確認)
- 要確認:狂犬病曝露後予防が必要なときの相談先(渡航医学・検疫)、狂犬病免疫グロブリンの現在の入手可否(2015年と2025年の資料で表現が異なり確定できていない)
- 要確認:アナフィラキシー後の観察時間の院内基準(二相性反応は最初の反応後6〜12時間以内が約半数)
- 要確認:脳外科・形成外科の夜間受け入れ先
- 要確認:つつが虫病の潜伏期間は同じ機構内のページ間で「5〜14日」(疾患ページ)と「10〜14日」(別ページ)の記載に食い違いがあり、本カードは疾患ページの「5〜14日」を採用した
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。