乳児が元気に見えても検査する理由
低月齢では侵襲性細菌感染症の初期に局所症状が乏しく、哺乳低下、活動性の変化、無呼吸、低体温だけで現れることがある。尿路感染は発熱乳児の重要な感染源であり、呼吸器症状があっても採尿を検討する。血液に侵入した細菌と中枢神経感染は頻度こそ低いが、診断が遅れたときの害が大きい。[1][13]
「解熱した」「来院時は平熱」「ウイルス検査が陽性」は、それぞれ単独で細菌感染を除外しない。海外の予測ルールは主に直腸温38.0℃以上を基準に検証されているため、腋窩温を機械的に同じ精度とみなさない。家族が測った方法・最高値・時刻を記録し、測り直しのために全身状態の悪い児の治療を遅らせない。[13]
国際推奨と当院の方針を分けて読む
| 日齢 | 国際推奨の適用範囲 | 当院での扱い |
|---|
| 0〜7日 | AAP 2021の対象外。出生歴、周産期感染、早産、HSVを含む新生児評価が必要 | 通常乳児の帰宅ルールを使わず、上級医・新生児対応施設へ直ちに相談。具体的院内プロトコルは未確定 |
| 8〜21日 | AAPは見た目良好でも血液・尿・髄液の評価、経験的抗菌薬、入院を推奨 | 安全に可能な検体採取と治療を進める。必要な提出・管理体制が確保できなければ搬送相談 |
| 22〜28日 | AAPは炎症マーカーなどに応じLPを判断する区分 | 当院は院内全例の血液・尿・髄液評価と入院を採用。ただしLPの安全条件を優先 |
| 29〜60日 | AAPでは完全な評価と再診条件を満たす一部の児に外来管理の選択肢 | 当院は院内原則入院。夜間の利用可能な検査だけで低リスクを認定しない |
| 61〜89日 | AAPの対象外。CPSは少なくとも尿検査・尿培養を推奨し、必要時29〜60日の枠組みを使用 | 院内の具体的運用は未確定。全身状態・検査体制・再診保証を上級医と確認 |
AAPの対象は、見た目良好な正期産の生後8〜60日児である。早産、複雑な出生後経過、基礎疾患、免疫不全、局所細菌感染、最近の抗菌薬などでは一般の低リスク推奨を外挿しない。具合の悪い児は年齢区分の検査表を埋める前にABCの安定化と経験的治療へ進む。[1][13]
検査が揃わない場合の読み方
当院夜間はANC・PCTを出せず、尿は定性のみで沈渣・定量・培養提出ができない。CRP・総白血球数・体温を組み合わせた臨床評価は必要だが、ANC/PCTを必要とするPECARNやStep-by-Stepの検証済み判定と同等にはならない。検査項目が欠けた状態を「基準すべて陰性」と記載しない。発症早期の炎症反応や尿亜硝酸陰性にも限界がある。[13]
髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色は当直帯に測定可能だが、それだけで培養を含む全評価が完了するわけではない。血液・尿・髄液培養は夜間提出不可で、採取後の保管条件・翌朝受入は未確認である。受入施設・検査室と検体の取扱いを確認し、培養の開始時刻と抗菌薬開始時刻を記録する。「翌朝まで保管してよい」「採取時から24〜36時間で陰性」と自動的に判断しない。
腰椎穿刺と経験的治療の順序
LPが必要でも、新規巣症状、瞳孔異常、重度または進行する意識低下、ショック・呼吸不安定では保留する。年齢による「全例評価」は手技の禁忌を解除しない。まず安定化し、安全に採れる血液・尿などを採取するが、検体や画像待ちで抗菌薬・HSVを疑う場合の治療・緊急相談を遅らせない。[13][14]
母体HSVの既往がないこと、児に水疱がないことだけでHSVを除外しない。新生児のけいれん、意識変化、肝障害、血小板減少、低体温などを併せて検討する。具体的な薬剤量、日齢・在胎週数による投与間隔は、本文の確定方針と院内新生児プロトコルを照合して決定する。
入院中の見直しと退院判断
哺乳、尿量、活動性、呼吸、循環、体温を経時的に再評価する。初回診察の見た目が良好でも、経過でリスクは変わる。培養陽性時には採取法、菌種、汚染の可能性と感染部位を再検討し、抗菌薬を調整する。退院は児の回復だけでなく、抗菌薬前検体の質、実際の培養処理状況、未確定結果の追跡担当、再診を組み合わせて判断する。[13]
帰宅後の呼び戻しが必要な結果を誰が確認するか、何時までに連絡するかを入院時から決める。呼吸異常、覚醒困難、哺乳低下、尿減少、紫斑、けいれんを家族へ具体的に伝える。当院の生後22〜60日の入院方針を、海外資料の一部の外来管理条件だけで変更しない。