溺水

溺水

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/人工呼吸管理・小児集中治療なし

30秒要約

  • こどもは声を出さず、静かに沈む。保護者の8割以上が「悲鳴や助けを求める声が聞こえなかった」と報告している。「目を離していない」を否定の根拠にしない。
  • 3cm以上の深さがあれば、乳幼児は溺れる。浴槽・洗面器・ビニールプールでも起きる。
  • 無理に水を吐かせない。胃の内容物で気道が塞がれて窒息する危険がある。
  • 年齢で場所が変わる。0〜3歳は浴槽、5歳以上は海や川などの自然水域。中学生以下の水難死者・行方不明者の約57%は河川。
  • 当院は人工呼吸管理を持たない。呼吸症状があれば送る

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119心肺停止・反応がないただちに心肺蘇生。水を吐かせることに時間を使わない秒単位
119呼吸困難・SpO2低下・チアノーゼ酸素投与。人工呼吸管理は当院で持てない。緊急搬送分単位
119意識障害が続く低酸素脳症。意識障害の枠でも評価待たない
緊急咳が続く・呼吸が速い・肺雑音誤嚥性の肺障害。胸部X線と経過観察時間単位
緊急水没時間が長い/救助までに時間がかかった予後に影響する。搬送先に水没時間と救助までの時間を伝える
緊急低体温を伴う復温しながら評価する
当日短時間で、症状がまったくない帰宅可否の基準は院内で決めておく必要がある(要確認)。観察時間を明示して指導

時間と予後(JRC蘇生ガイドライン2020/ILCOR CoSTR 2020)

  • 10分未満のEMS応答時間は生存率の向上に関連していた(RR 0.29; 95%CI 0.13〜0.66/OR 0.44; 95%CI 0.06〜0.83)。
  • 溺水時間が15分未満での生存率は85%(33/39)だったのに対し、15分を超えた2名は死亡(単一の小規模研究で、エビデンスの確実性は「非常に低い」と明記されている)。
  • 年齢と神経学的転帰: 小児に関する研究8件のうち6件で、若年(3〜6歳未満と定義はさまざま)と良好な神経学的機能とは関連していなかった。「小さいほど予後が良い」は一貫したエビデンスではない

鑑別・背景を疑う

病態拾い方
けいれん発作による溺水てんかんの既往。入浴中の発作(けいれん重積
不整脈(QT延長症候群など)原因不明の溺死の家族歴。失神の既往(失神
低血糖血糖測定
虐待・ネグレクト受傷機転と状況の不一致、繰り返す事故(外傷・跛行
頸椎損傷飛び込みによる受傷
低体温水温と浸水時間

所見の取り方・問診

  • 呼吸音を左右で比べ、SpO2を経時的に記録する。
  • 頸椎損傷を疑う機転なら、固定を先に。

検査

  1. SpO2の経時的モニタリング
  2. 胸部X線(誤嚥性肺障害)
  3. 血液ガス
  4. 血糖
  5. 体温(低体温の評価)
  6. けいれん・失神が疑われれば心電図

送る/持つ(当院=二次救急・人工呼吸管理なし)

状態当院の扱い
心肺停止・呼吸不全蘇生後、人工呼吸管理のできる施設へ。当院で持てない
低酸素脳症を疑う意識障害持てない
呼吸症状(咳・頻呼吸・SpO2低下)がある酸素と経過観察。悪化すれば送る。観察をどこまで当院で担うかは要確認
まったく無症状・短時間観察時間を決めて帰す。その基準を院内で決めておく

送ると決めた時点でやること

  1. 水を吐かせない
  2. 酸素と保温
  3. 水没時間・救助までの時間・その場の蘇生内容を、時刻つきで伝える
  4. 頸椎損傷を疑う機転なら固定したまま搬送

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児の人工呼吸管理ができる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:無症状の溺水児をどれだけ観察してから帰すかの院内基準
  • 要確認:低体温の復温を当院でどこまで行うか
  • 要確認:虐待・ネグレクトを疑ったときの院内手順

家族に渡す一文

「水を飲んだあとは、その場で元気に見えても、あとから呼吸が悪くなることがあります。今日は呼吸の様子と酸素の値を確認します。無理に水を吐かせないでください。吐いたものがのどに詰まって、かえって危険になります。おうちに帰ってからも、咳が増える・息が速い・ぼんやりする、といった変化があれば、すぐに来てください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:無症状の溺水児の観察時間と帰宅基準。当院の運用を決める必要がある。
  • 要確認:「遅発性の肺水腫(いわゆる二次性溺水)」について、日本の学会・行政による一次資料を今回見つけられなかった。本シートでは「あとから呼吸が悪くなることがある」という一般的な注意に留め、時間数を書いていない。この扱いでよいか。
  • 要確認:溺水時間と生存率の数値は単一の小規模研究(エビデンスの確実性は非常に低い)に基づく。搬送先への申し送りの参考として載せているが、この扱いでよいか。
  • 要確認:JRC蘇生ガイドライン2020のPLS(小児の蘇生)章は今回未確認。小児固有の推奨がある可能性がある。

出典

  • こども家庭庁.水の危険は近くにあります、みんなで危険回避! https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/dekisui (2026-09-12閲覧)。こどもは声を出さず静かに沈むこと、保護者の8割以上が悲鳴や助けを求める声を聞いていないこと、3cm以上の深さで乳幼児は溺れうること無理に水を吐かせないこと(胃の内容物で気道が塞がれて窒息する危険)、令和6年の14歳以下の不慮の溺死・溺水による死亡者45人、中学生以下の水難による死者・行方不明者の約57%が河川、0〜3歳は浴槽・5歳以上は自然水域という年齢別の傾向。
  • 消費者庁.御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください! https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_052 (2026-09-12閲覧)。入浴中の溺水事故は入院が必要と診断された事故が半数以上で死亡事故も発生していること、0〜1歳の入浴中の溺水事故が最も多いこと。
  • 日本蘇生協議会(JRC).JRC蘇生ガイドライン2020 二次救命処置(ALS)章 https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2022/07/JRC_0047-0150_ALS.pdf / ILCOR CoSTR 2020 溺水システマティックレビュー(JRC訳) https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2022/07/5-Drowning_final20201006.pdf (2026-09-12閲覧)。EMS応答時間10分未満と生存率向上の関連、溺水時間15分未満の生存率85%(単一小規模研究・エビデンスの確実性は非常に低い)、小児8研究のうち6研究で若年と良好な神経学的機能に関連がなかったこと。

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