歩かない子を評価し、送る準備をする
「歩かない」は主訴であって診断ではない。発熱があれば化膿性関節炎を最初に外す。乳児の骨折は、それだけで虐待を疑う理由になる。受傷機転と所見が合わないときは、機転のほうを疑う。
始める前に
- 「歩かない」は主訴であって診断ではない。発熱があれば化膿性関節炎を最初に外す。関節軟骨は時間で壊れる
- 乳児の骨折は、それだけで虐待を疑う理由になる。虐待による骨折の90%は2歳未満、自然外力による骨折の85%以上は5歳以上。歩けない児の大腿骨骨幹部骨折は特異性が高い
- 受傷機転と所見が合わないときは、機転のほうを疑う
- いつから、どこが、どうなったか。受傷の目撃者は誰か
- 受傷機転と、いまの所見が釣り合っているか
- 受診までの時間(長いこと自体が手がかり)
- 発熱・先行感染
- 説明が人によって・時間によって変わらないか
- 過去の受傷歴・受診歴
- 月齢と、その月齢で可能な動作(寝返り・つかまり立ち・歩行)
- どこが痛いかを、子どもに触らせて指させる。乳児は健側と比較して、自発運動の左右差を見る
- 関節の自動運動を嫌がるか(化膿性関節炎は自動・他動とも強く嫌がる)
- 歩かせる。荷重できるかどうかがKocherの1項目そのもの
- 全身の皮膚を見る。あざの部位・新旧・形(虐待の手がかり)
- 腫脹している部位では、他動的伸展で痛みが増すかを必ず確認する(コンパートメント症候群)
手順
- 1
虐待を疑うとき、2歳以下では疑われる場合は全員に全身骨X線(骨スクリーニング)を行う。2〜5歳では診察所見で骨損傷の疑いのある症例のみ。年長児では不要
2歳以下は無症状や病歴不詳例などが隠れているため、年長児では無症状の骨折は経験されないため
- 2
全身の前後像を1枚で撮るのではなく、各部位ごとに撮影方法を選択して細分化して行う
- 3
1回のみでなく、1〜2週間後に再度撮影する。特に1歳未満の乳児など低年齢児には不可欠
初回で見逃されやすい微細な骨折を見逃さないため。骨折による変位が少なく受傷早期の診断が困難であること、身体的虐待での骨折が乳児期にきわめて多いことの2点から
- 4
発熱+跛行では血算・CRP・ESR・血液培養を採る
Kocherの2項目が検査値
- 5
エコーで関節液貯留を見る
- 6
X線は部位を決めて撮る。骨折疑い部位は正面と側面の両方
- 7
送ると決めたら固定(動かさない)と鎮痛を行う
- 8
開放創は清潔に覆う
- 9
受け入れ先へ先に電話する
発熱の有無とKocherの該当数を最初に伝える
- 10
絶食にする(手術になりうる場合)
やってはいけない
- 低くても、発熱があって歩けない児を「様子見」で帰さない
- コンパートメント症候群疑いでは、締め付けを解除し、患肢を心臓より高く上げすぎない
- 麻痺・脈拍消失が出てもコンパートメント症候群の進行例として様子を見ない(緊急)
この場で持てない・送る
- 開放骨折 → 持てない。創を覆い固定して緊急搬送
- コンパートメント症候群の疑い → 持てない。筋膜切開が要る。緊急搬送
- 麻痺・脈拍消失を伴う場合 → コンパートメント症候群の進行例。緊急
- 化膿性関節炎の疑い(Kocher高値)→ 持てない。関節穿刺・ドレナージのできる施設へ
- 転位のある骨折・整復が要る骨折 → 持てない。整形外科のある施設へ
- 虐待を疑う → 医学的対応と並行して、施設内の虐待対応の枠組みへ。通告は疑いの段階で行う
- 単純性股関節炎らしい → 当院で経過観察しうる。再評価の日時を約束する
- 精巣捻転(男児が下腹部痛で歩けない)→ 持てない。6〜8時間の勝負
- 悪性腫瘍(白血病・骨腫瘍)による骨痛(夜間痛・体重減少・複数部位・外傷歴に乏しい)→ 要確認:本シートでは国内の一次情報を確認できていない。臨床的には鑑別に置く
- 当院は関節穿刺・ドレナージを持たないので、スコアが高ければ確定を待たずに送る
- 要確認:整形外科(小児整形)の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
- 要確認:虐待を疑ったときの院内手順(誰に報告し、誰が通告するか、夜間はどうするか)
- 要確認:夜間にESRが出せるか(出せないならKocherの4項目が揃わない。その場合の代替をどうするか)
- 要確認:夜間の全身骨X線の実施可否
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。