麦粒腫・霰粒腫・鼻涙管閉塞

麦粒腫・霰粒腫・鼻涙管閉塞

耳鼻・眼β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/当直帯に院内の眼科はいない/当直帯に造影CTも撮れない(2026-09-14 確認)。
目やに・充血が主体なら結膜炎、外傷なら眼外傷・化学眼外傷

30秒要約

  • 「ものもらい」は病名ではない麦粒腫も霰粒腫も、俗に、ものもらい、めばちこ、めいぼなどと呼ばれる病気の一つ。家族の言葉をそのまま診断にしない。
  • 当直で本当に分けるべきは、まぶたの中か、外か眼窩蜂窩織炎(眼球運動制限・眼球突出・発熱・全身状態不良)だけは、今夜の話になります。
  • 麦粒腫は感染、霰粒腫はしこり麦粒腫は分泌腺への細菌感染霰粒腫はマイボーム腺の出口が詰まり、その中に貯まった脂を処理する過程で肉芽腫を形成したもの典型例では痛みも赤みもほとんどなく、眼瞼にコロコロとしたしこりを触れます
  • 両者は入れ替わる麦粒腫として治療を開始した後、腫れが引いたらしこりがはっきりするようになり、実は霰粒腫だったということもよくあります
  • 赤ちゃんの涙目と目やには鼻涙管先天性鼻涙管閉塞自然開通することが多い

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119眼球突出・眼球運動制限・複視・視力低下+発熱眼窩蜂窩織炎持てない。画像と点滴抗菌薬(蜂窩織炎即時
119意識障害・けいれんを伴う海綿静脈洞血栓症・頭蓋内進展即時
緊急眼瞼全体の発赤腫脹+発熱+全身状態不良眼窩蜂窩織炎を外すまで持てない即時
緊急新生児の目やに+眼瞼腫脹(生後数日〜2週)新生児結膜炎(淋菌・クラミジア)を考える(結膜炎即時
緊急涙嚢部(目頭から1 cm程度下方)が赤く腫れて痛む急性涙嚢炎。抗菌薬と眼科へ当日
緊急なかなか治らないしこり・出血する・睫毛が抜ける悪性腫瘍との鑑別は特に重要(同ページの注記)。眼科へ数日
当日眼瞼の一部が赤くはれて、軽度の痛み麦粒腫。抗菌薬点眼。眼科へ紹介数日
当日痛みも赤みもないコロコロしたしこり霰粒腫自然に吸収していくことが多い。眼科へ数週
当日常に目が潤んでいる・目やにがたくさん出る乳児先天性鼻涙管閉塞。涙嚢マッサージ+眼科へ数日〜

麦粒腫(ものもらい・めばちこ)

  • 眼瞼(まぶた)には、涙や汗の分泌腺や毛穴がたくさんありますが、麦粒腫はそれらの分泌腺への細菌感染です。
  • 感染が、眼瞼の表面側にある皮脂腺や汗腺で起きた場合を外麦粒腫、眼瞼の裏面側にあるマイボーム腺で起きた場合を内麦粒腫と分類されています。
  • 眼瞼の一部が赤くはれて、しばしば軽度の痛みを伴います。炎症が強くなってくると、赤み・腫れ・痛みが強くなります。膿が貯まって(化膿)くると、腫れた部分が自然に破れて膿が出てくることもあります。膿が出たら、炎症が沈静化し、回復していきます。
  • 治療:抗菌薬の点眼や内服などを行います。化膿が進んだ場合は切開して膿を出すこともあります。汚い手で目をこすったりしないように注意が必要です。
  • 似た病気霰粒腫、涙嚢炎、涙小管炎、眼窩蜂窩織炎、悪性腫瘍など。

霰粒腫

  • 眼瞼(まぶた)にできた"しこり"です。涙の成分を分泌する脂の腺(マイボーム腺)の出口が詰まり、その中に貯まった脂を処理する過程で肉芽腫を形成したものです。
  • 大きさは5 mm以下の小さなものから、1 cmを超える大きなものまで様々で、上下どちらの眼瞼にもできることがあり、乳幼児から高齢者までみられる病気です。時にはしこりの周りにも炎症が及んで、赤く腫れたり、肉芽腫が皮膚の外へ出てくることもあります。
  • 症状は眼瞼の腫れや異物感です。典型例では痛みも赤みもほとんどなく、眼瞼にコロコロとしたしこりを触れます。強い炎症を伴う場合は麦粒腫と酷似することがあります。自然に吸収していくことが多いですが、吸収には長期間要することがあります。
  • 治療:炎症が強い場合には麦粒腫との鑑別のためにも、まず抗菌薬や炎症を抑える薬で消炎を図ります。しこりが大きい場合やなかなか吸収しなくて困る場合には、マイボーム腺内に形成された肉芽腫を摘出する手術をします。また症例によって、しこりにステロイド懸濁液を注射する治療もあります。
  • 似た病気麦粒腫、瞼板内角質嚢胞、涙嚢炎、涙小管炎、眼窩蜂窩織炎、悪性腫瘍など。悪性腫瘍との鑑別は特に重要です。

→ 当直での実務炎症が強い時点では、麦粒腫と霰粒腫は分けられません。分けようとせず、眼窩蜂窩織炎でないことを確認して、抗菌薬点眼を出して眼科へ

先天性鼻涙管閉塞・新生児涙嚢炎

何が起きているか

  • 涙は涙腺で分泌され、眼表面を潤したのち、涙点に吸収されます。そののち、涙小管を経て涙嚢にたまり、鼻涙管を通って鼻の奥に排出されます。
  • 赤ちゃんのなかには、鼻涙管に薄い膜のようなものが残り、鼻涙管が開通していない場合があります。これを先天性鼻涙管閉塞と呼びます。
  • 鼻涙管がふさがっていると、分泌された涙が鼻へと流れず、涙嚢にたまります。涙が溜まった涙嚢は細菌感染を起こしやすく、このために涙嚢に炎症がおきたものを新生児涙嚢炎と呼びます。
  • 新生児涙嚢炎を起こした赤ちゃんは、常に目が潤んでいる、目やにがたくさんでている状態になります。また、涙嚢(目頭から1 cm程度下方)の部分が腫れることもあります。

診断

  • 蛍光色素を点眼し、しばらく待ってみて色素が涙点から吸収されるかを観察し、鼻涙管が開通しているか調べる検査がよく行われます。
  • また、涙点から生理食塩水を流した時に、生理食塩水が逆流してくるとその診断となります。その食塩水に膿が混じっている場合、新生児涙嚢炎を発症していると考えます。

治療

  • 目やにが目立っている・涙嚢の周りの炎症が目立つ場合には、抗生物質の目薬を使用します。加えて、涙嚢マッサージを施行し膿の排出を促します。
  • これらで、鼻涙管の自然開通が見込めない場合には、鼻涙管開放術(ブジー)を行います。これは、涙点から細い針金のようなもの(ブジー針)を鼻涙管に差し込んで、涙の流れを邪魔している膜を突き破るという方法です。この治療は、通常、1歳未満の乳児が対象となり、外来で行われます。
  • ごくまれですが、この鼻涙管開放術を行っても開通できないことがあり、この場合は手術を行うこともあります。内視鏡手術も普及しています。

いつ処置するかは決着していない

この病気は自然開通することが多いため、治療の方法もまちまちです。1歳になるまで鼻涙管開放術を行わないでよいとする報告や、いつでも涙が溜まった状態がお子さんのストレスになりかねないとする観点から、早めの鼻涙管開放術を勧める報告まであります。

当直で時期を決める必要はない赤ちゃんの目が潤んでいる、眼脂が目立つ場合、先天性鼻涙管閉塞、新生児涙嚢炎の可能性があります。はやめに、お近くの眼科医へご相談ください。

鑑別:まぶたが腫れた

病態見分け次の一手
麦粒腫一部が赤く腫れ、軽度の痛み抗菌薬点眼・眼科
霰粒腫痛みも赤みもないコロコロしたしこり眼科(急がない)
眼窩蜂窩織炎眼球突出・眼球運動制限・視力低下・発熱持てない。119
眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎眼瞼の発赤腫脹だが眼球運動は正常抗菌薬。眼窩型との区別が要る(蜂窩織炎
涙嚢炎目頭の下が腫れて痛む抗菌薬・眼科
アレルギー性眼瞼炎・血管性浮腫両側性・痒み・膨疹。痛みは乏しいじんましん
虫刺され・接触皮膚炎誘因が明確、痒み外来
ネフローゼ症候群両側の眼瞼浮腫(朝が強い)+尿蛋白尿を見れば分かるネフローゼ症候群
副鼻腔炎からの波及鼻症状の先行副鼻腔炎
悪性腫瘍治らない・出血する・睫毛が抜ける鑑別は特に重要。眼科へ

まぶたが腫れた子で、両側なら尿を見る。 ネフローゼを眼科に送ってしまうのは、よくある回り道です。

治療ワークフロー(当院でやること)

やること
1発熱・全身状態を見る眼球突出・眼球運動・視力を確認 → 眼窩蜂窩織炎を外す
2片側か両側か。両側なら尿定性尿検査の読み
3眼瞼を翻転して裏面を見る(内麦粒腫・結膜の所見)
4目頭の下(涙嚢部)を押してみる(膿が逆流すれば涙嚢炎)
5乳児の涙目・眼脂なら涙嚢マッサージの方法を家族に教える
6抗菌薬点眼を出すかは院内採用と方針による(下の医師確認事項)
7眼科の予約を取って渡す。急がないものは「急がない」と伝える
8「目をこすらない・手を洗う」を伝える(汚い手で目をこすったりしないように注意が必要

送る/持つ(当院=二次救急・当直帯に眼科なし)

状態当院の扱い
眼窩蜂窩織炎を疑う持てない。画像と点滴抗菌薬
新生児結膜炎(淋菌・クラミジアを疑う)持てない結膜炎
急性涙嚢炎抗菌薬は当院。切開は持てない
麦粒腫(軽症)当院で点眼を出し、眼科へ紹介
霰粒腫急がない。眼科外来へ
先天性鼻涙管閉塞当院でマッサージを指導し、眼科へ紹介ブジーは持てない
眼瞼腫脹+尿蛋白腎疾患として扱うネフローゼ症候群

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:眼科の紹介先(乳児のブジーを行う施設を含む)
  • 要確認:抗菌薬点眼の院内採用(小児に使えるもの)
  • 要確認:涙嚢マッサージの指導資料(家族に渡す紙)があるか
  • 確定(2026-09-14)夜間に造影CTは撮れない眼窩蜂窩織炎を疑ったら、画像で確かめず送る蜂窩織炎
  • 要確認:フルオレセイン試験紙の在庫(眼外傷と共通)

家族に渡す一文

麦粒腫・霰粒腫:「まぶたの『ものもらい』には、実は2種類あります。ばい菌が入って赤く腫れて痛むもの(麦粒腫)と、脂の出口が詰まってコロコロしたしこりになるもの(霰粒腫)です。炎症が強い時期は、この2つを見分けられませんので、まずは炎症を抑える治療をして、落ち着いてから判断します。霰粒腫は自然に吸収されることが多いのですが、時間がかかります目をこすらない、手を洗う、これが大事です。熱が出る、目が前に出てくる、目が動かしにくい、見えにくい、このどれかがあれば、すぐに来てください。」

先天性鼻涙管閉塞:「赤ちゃんの涙の通り道(鼻涙管)が、生まれつきまだ開いていないことがあります。涙が鼻に流れないので、いつも目が潤んでいて、目やにが多く出ます自然に開通することが多い病気です。目頭の下をやさしくマッサージして、涙の流れを促します。目やにが多いときは目薬を使います。自然に開かない場合は、細い針金で膜を破る処置(ブジー)があり、ふつうは1歳未満で外来で行いますいつ処置をするかは、専門の先生の間でも意見が分かれていますので、眼科で相談してください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは日本眼科学会の一般向け解説ページ(麦粒腫・霰粒腫は監修:日本眼形成再建外科学会)を一次資料としている。診療ガイドラインではない
  • 要確認:抗菌薬点眼を当院で出すか本シートは薬剤名を書いていない。院内採用と、眼科に送る前に出してよいかの方針が要る。
  • 要確認:眼窩蜂窩織炎と眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎の区別は本シートで一次資料を確認していない。眼球運動・眼球突出・視力で分けるという実務上の整理として書いている。
  • 要確認:新生児結膜炎(淋菌・クラミジア)の記載も一次資料未確認。結膜炎と整合させたい。
  • 要確認:涙嚢マッサージの具体的な方法(方向・回数・強さ)は本シートに書いていない。家族に渡す資料が要る。
  • 要確認:「両側の眼瞼腫脹では尿を見る」は本シートの実務上の注意。ネフローゼ症候群と整合している。

出典

  • 日本眼科学会.目の病気「麦粒腫」(監修:日本眼形成再建外科学会).https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=5 (2026-09-13閲覧)。「眼瞼(まぶた)には、涙や汗の分泌腺や毛穴がたくさんありますが、麦粒腫はそれらの分泌腺への細菌感染です。感染が、眼瞼の表面側にある皮脂腺や汗腺で起きた場合を外麦粒腫、眼瞼の裏面側にあるマイボーム腺で起きた場合を内麦粒腫と分類されています」「俗に、ものもらい、めばちこ、めいぼなどと呼ばれる病気の一つです」「眼瞼の一部が赤くはれて、しばしば軽度の痛みを伴います。炎症が強くなってくると、赤み・腫れ・痛みが強くなります。膿が貯まって(化膿)くると、腫れた部分が自然に破れて膿が出てくることもあります。膿が出たら、炎症が沈静化し、回復していきます」「抗菌薬の点眼や内服などを行います。化膿が進んだ場合は切開して膿を出すこともあります。汚い手で目をこすったりしないように注意が必要です」「麦粒腫として治療を開始した後、腫れが引いたらしこりがはっきりするようになり、実は霰粒腫だったということもよくあります」「霰粒腫、涙嚢炎、涙小管炎、眼窩蜂窩織炎、悪性腫瘍など」。
  • 日本眼科学会.目の病気「霰粒腫」(監修:日本眼形成再建外科学会).https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=6 (2026-09-13閲覧)。「眼瞼(まぶた)にできた"しこり"です。涙の成分を分泌する脂の腺(マイボーム腺)の出口が詰まり、その中に貯まった脂を処理する過程で肉芽腫を形成したものです。大きさは5 mm以下の小さなものから、1cm超える大きなものまで様々で、上下どちらの眼瞼にもできることがあり、乳幼児から高齢者までみられる病気です」「症状は眼瞼の腫れや異物感です。典型例では痛みも赤みもほとんどなく、眼瞼にコロコロとしたしこりを触れます。強い炎症を伴う場合は麦粒腫と酷似することがあります。自然に吸収していくことが多いですが、吸収には長期間要することがあります」「炎症が強い場合には麦粒腫との鑑別のためにも、まず抗菌薬や炎症を抑える薬で消炎を図ります。しこりが大きい場合やなかなか吸収しなくて困る場合には、マイボーム腺内に形成された肉芽腫を摘出する手術をします。また症例によって、しこりにステロイド懸濁液を注射する治療もあります」「悪性腫瘍との鑑別は特に重要です」。
  • 日本眼科学会.目の病気「先天性鼻涙管閉塞、新生児涙嚢(るいのう)炎」https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=8 (2026-09-13閲覧)。「涙は涙腺で分泌され、眼表面を潤したのち、涙点に吸収されます。そののち、涙小管を経て涙嚢にたまり、鼻涙管を通って鼻の奥に排出されます」「赤ちゃんのなかには、鼻涙管に薄い膜のようなものが残り、鼻涙管が開通していない場合があります。これを先天性鼻涙管閉塞と呼びます。鼻涙管がふさがっていると、分泌された涙が鼻へと流れず、涙嚢にたまります。涙が溜まった涙嚢は細菌感染を起こしやすく、このために涙嚢に炎症がおきたものを新生児涙嚢炎と呼びます。新生児涙嚢炎を起こした赤ちゃんは、常に目が潤んでいる、目やにがたくさんでている状態になります。また、涙嚢(目頭から1cm程度下方)の部分が腫れることもあります」「蛍光色素を点眼し、しばらく待ってみて色素が涙点から吸収されるかを観察し、鼻涙管が開通しているか調べる検査がよく行われます。また、涙点から生理食塩水を流した時に、生理食塩水が逆流してくるとその診断となります。その食塩水に膿が混じっている場合、新生児涙嚢炎を発症していると考えます」「目やにが目立っている・涙嚢の周りの炎症が目立つ場合には、抗生物質の目薬を使用します。加えて、涙嚢マッサージを施行し膿の排出を促します。これらで、鼻涙管の自然開通が見込めない場合には、鼻涙管開放術(ブジー)を行います。……この治療は、通常、1歳未満の乳児が対象となり、外来で行われます」「この病気は自然開通することが多いため、治療の方法もまちまちです。1歳になるまで鼻涙管開放術を行わないでよいとする報告や、いつでも涙が溜まった状態がお子さんのストレスになりかねないとする観点から、早めの鼻涙管開放術を勧める報告まであります」「赤ちゃんの目が潤んでいる、眼脂が目立つ場合、先天性鼻涙管閉塞、新生児涙嚢炎の可能性があります。はやめに、お近くの眼科医へご相談ください」。

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