停留精巣・陰嚢水腫:その場での鑑別と紹介
緊急性のある疾患ではない。停留精巣も陰嚢水腫も、多くは待期的な外来紹介でよい。当直の役割はこれは急性陰嚢症・嵌頓ヘルニアではないかを除外すること。乳児(1歳未満)の陰嚢水腫は自然に治癒することが多い。ただし泣いたり嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる腫脹は鼠径ヘルニアを疑うサインで、ここだけは緊急性の話に変わる。
始める前に
- まず陰嚢の急な激痛・発赤ではないかを確認する。あれば急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローに切り替える。
- 診察ではまず触診を行い、精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認する。
手順
- 1
まず陰嚢の急な激痛・発赤ではないかを確認する。あれば急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローに切り替える。
- 2
視診・触診で精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認する。
- 3
腫脹があれば、泣いたり嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わるかを見る。
変われば鼠径ヘルニアを疑う。
- 4
陰嚢の腫脹は懐中電灯などの光が通過するか(透光性)で判断する。
通れば水瘤を疑う。
- 5
精巣の大きさに左右差がある場合や、触っても確認できない場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査を行うことがある。
- 6
緊急性がなければ泌尿器科・小児外科の外来へ紹介する。手術時期の目安(停留精巣は1歳前後〜2歳頃)を家族に伝える。
- 7
リラックスしているときなどに精巣が陰嚢内に触れるが、寒さや緊張などの刺激で精巣が一時的に陰嚢の外へ引き上がるかを見る。
誘導すれば陰嚢内に戻れば移動性精巣(正常亜型)。
- 8
硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合かを確認する。
精索捻転・精巣上体炎・精巣腫瘍を疑う。
やってはいけない
- 陰嚢腫脹が硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合は水瘤の典型像ではない。精索捻転、精巣上体炎、精巣(上体)垂捻転、精巣腫瘍などを疑い、水瘤・停留精巣として様子見しない。
- 成人の精巣水瘤の処置の方法(穿刺吸引や硬化療法)は禁忌とされている。
- そけいヘルニアを合併していれば自然治癒の可能性はなく、早期の手術が必要になる。自然治癒を過度に期待して手術時期を遅らせない。
終わったあと
- 水がたまっているだけの場合は1歳ごろまでに自然に治ることが多い状態であることを伝える。
- 精巣が下りてきていない場合は、生後6か月を過ぎてから2歳ごろまでに手術をすることが勧められていると伝える。
- 今後、急に強い痛みが出たり、押しても消えない硬いふくらみが出た場合は、様子を見ずにすぐ受診するよう伝える。
- どちらも外来で泌尿器科・小児外科に診てもらう必要があるため、後日の受診を依頼する。
この場で持てない・送る
- 生後6か月以降も下降しない停留精巣は持てない(精巣固定術は予定手術)。泌尿器科・小児外科の外来へ紹介する。
- 触知できない停留精巣・左右差は画像検査ののち専門科へ紹介する。
- 陰嚢水腫がヘルニアを合併・緊満・痛みが強い・本人が気にする場合は手術が望ましいとされ、専門科紹介とする。
- 新生児の両側非触知精巣は持てない。専門科へ紹介する(要確認:緊急度)。
- 要確認:泌尿器科・小児外科の外来紹介の枠・待機期間(当院に常勤医がいるか)
- 要確認:新生児期に両側非触知精巣が見つかった場合の紹介ルートと緊急度(性分化疾患の評価が必要になりうる)
- 要確認:夜間・休日に鼠径部・陰嚢のエコーを当てられる体制があるか
- 要確認:停留精巣・陰嚢水腫について家族に渡す説明資材(パンフレット等)があるか
- 要確認:本シートは日本小児外科学会「停留精巣」および日本小児泌尿器科学会「精巣水瘤と精索水瘤」の一般向け解説を一次資料としている。診療ガイドラインではない。薬剤・用量には触れていない。
- 要確認:日本小児泌尿器科学会サイトの「停留精巣」専用ページは2026-09-13時点でアクセスすると疾患解説ではなく学会サイトの総合トップページが返る状態だった。手術時期の推奨は日本小児外科学会の記載を一次資料として採用しており、日本小児泌尿器科学会自身の記載とは突き合わせられていない。
- 要確認:両側非触知精巣(特に新生児・外表異常を伴う場合)で性分化疾患の評価がどの程度緊急かは、本シートで一次資料を確認していない。
- 要確認:精巣がん・不妊リスクの記載は「将来、精巣のがんが起こる可能性がやや高いといわれています」「将来精子を作る細胞の働きが徐々に低下することが知られています」という定性的な表現にとどまり、具体的な数値・リスク比は一次資料に無い。
- 要確認:手術合併症の具体的内容(「手術合併症などを考慮した」の中身)は一次資料に明記がない。
- 要確認:陰嚢水腫が緊満している場合に手術が勧められる閾値は一次資料に具体的基準がない。
- 要確認:鼠径ヘルニアの手術適応・時期の詳細な基準は嵌頓鼠径ヘルニア側の一次資料(日本ヘルニア学会ガイドライン)を参照する前提で、本シートでは重複させていない。
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。