停留精巣・陰嚢水腫

停留精巣・陰嚢水腫

腎・泌尿器β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置を持たない/当直帯にエコー・MRIは使えない(2026-09-14 確認)。このシートの疾患自体は緊急手術の対象ではない。当直の仕事は「痛みを伴う急性陰嚢症・嵌頓ヘルニアではないか」を除外し、そうでなければ外来紹介につなぐこと。急性陰嚢症は急性陰嚢症・精巣捻転、嵌頓ヘルニアは嵌頓鼠径ヘルニアを見る。

30秒要約

  • 緊急性のある疾患ではない。停留精巣も陰嚢水腫も、多くは待期的な外来紹介でよい。まず「これは急性陰嚢症・嵌頓ヘルニアではないか」を除外するのが当直の役割。
  • 停留精巣とは、精巣の下降が止まり、陰嚢の中まで下りてこない状態。似て非なるのが「移動性精巣(遊走精巣)」で、これは必ずしも手術が必要になるわけではありません。触診で見分ける。
  • 陰嚢水腫は、腹膜鞘状突起が完全に閉鎖していれば、非交通性の精巣水瘤になる良性の病態で、乳児(1歳未満)の場合は自然に治癒することが多い
  • 停留精巣の手術は、手術合併症などを考慮した1歳前後(出生後6か月以降)から2歳頃までに手術が推奨されています。放置すると将来精子を作る細胞の働きが徐々に低下することが知られています
  • 泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる腫脹は水瘤ではなく鼠径ヘルニアを疑うサイン。ここだけは緊急性の話に変わる。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119陰嚢の急な激痛・腫脹(発症時刻がはっきりする)このシートの対象ではない。精巣捻転を最優先で除外する(急性陰嚢症・精巣捻転即時
119鼠径部〜陰嚢の硬い腫瘤が押しても消えず、啼泣が止まらない嵌頓ヘルニアを疑う。用手整復の可否は院内方針次第(嵌頓鼠径ヘルニア数時間
緊急陰嚢腫脹が硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合水瘤の典型像ではない。精索捻転、精巣上体炎、精巣(上体)垂捻転、精巣腫瘍、などを疑います当日〜緊急
緊急新生児で両側とも精巣を触知しない性分化疾患の評価が必要になることがある(下の医師確認事項)早期
当日生後6か月を過ぎても精巣が陰嚢に下りてこない(触知はできる)泌尿器科・小児外科の外来へ紹介し、手術時期に向けて経過をつなぐ外来
当日精巣が触っても確認できない・大きさに左右差がある超音波検査・MRI検査などの画像検査の対象。専門科へ紹介外来
当日無痛性の陰嚢腫脹で、光が通過する(透光性あり)陰嚢水腫として経過観察。自然消失を待つ時期を説明外来

鑑別:よくあるもの

病態特徴当院の扱い
移動性精巣(遊走精巣)普段は陰嚢にあり、条件によって上下に動く精巣必ずしも手術が必要になるわけではありません経過観察。停留精巣との鑑別に迷えば泌尿器科へ相談
交通性の陰嚢水腫(精巣水瘤)・精索水瘤腹膜鞘状突起が細く残ったもの。腹膜鞘状突起が開存している場合は、朝が最も小さく、夕方から夜にかけて最も大きくなります大きくても痛くありません経過観察。緊満していなければ緊急性はない
非交通性の陰嚢水腫腹膜鞘状突起が完全に閉鎖していれば、非交通性の精巣水瘤や精索水瘤になる。新生児期と思春期以降に見られます乳児(1歳未満)の場合は自然に治癒することが多い。経過観察

鑑別:見逃してはいけないもの

病態見分け次の一手
精巣捻転・急性陰嚢症突然発症の激痛。停留精巣・水瘤の症状ではない迷わず急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローへ切り替える
鼠径ヘルニア(嵌頓を含む)泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わるそけいヘルニアを合併していれば、自然治癒の可能性はなく、早期の手術が必要になります押しても消えなければ嵌頓。嵌頓鼠径ヘルニア
精巣捻転・精巣上体炎・精巣腫瘍硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合はこれらを疑う水瘤・停留精巣として様子見しない。専門科へ相談
両側非触知精巣(新生児)精巣が全く触れない。外表異常を伴うことがある性分化疾患の評価が必要になることがある(要確認・下記)

治療ワークフロー(当院でやること)

当院の仕事は「緊急疾患を除外して、正しく鑑別して、外来につなぐ」こと。手術そのものは持たない。

手順やること
1まず陰嚢の急な激痛・発赤ではないかを確認する。あれば急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローに切り替える
2視診・触診で精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認します
3腫脹があれば、泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わるかを見る。変われば鼠径ヘルニアを疑う
4陰嚢の腫脹は懐中電灯などの光が通過する(透光性)ことなどで判断する。通れば水瘤を疑う
5精巣の大きさに左右差がある場合や、触っても確認できない場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査を行うことがあります
6緊急性がなければ泌尿器科・小児外科の外来へ紹介する。手術時期の目安(停留精巣は1歳前後〜2歳頃)を家族に伝える

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
精巣の位置診察ではまず触診を行い、精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認します触れなければ画像検査・専門科紹介
移動性かどうかリラックスしているときなどには精巣が陰嚢内に触れるが、寒さや緊張などの刺激によって精巣が一時的に陰嚢の外へ引き上がるかを見る誘導すれば陰嚢内に戻れば移動性精巣(正常亜型)
陰嚢腫脹の性状懐中電灯などの光が通過する(透光性)かを見る通れば水瘤、通らなければ他疾患を疑う
腹圧時の変化泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる変われば鼠径ヘルニアを疑う
硬さ・皮膚色硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合かを確認精索捻転・精巣上体炎・精巣腫瘍を疑う
左右差大きさ・位置を左右で比較する左右差があれば画像検査

検査

  • 精巣の大きさに左右差がある場合や、触っても確認できない場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査を行うことがあります(停留精巣・触知不能例)。
  • 陰嚢水腫・精索水瘤では超音波検査が有用。内部の状態(液体、腹腔内臓器、のう胞などの区別)や精巣の位置が観察でき、診断に役立ちます
  • 懐中電灯などの光が通過する(透光性)ことなどで判断する簡便な視診手技も診断に使う。

問診チェック

  • 精巣の位置について、出生時や乳児健診で指摘を受けたことがあるか
  • 片側か両側か
  • 陰嚢・鼠径部の腫れがいつからか、朝と夕方で大きさが変わるか(朝が最も小さく、夕方から夜にかけて最も大きくなりますなら交通性の水瘤を示唆)
  • 泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる
  • 痛みの有無
  • 過去に停留精巣・ヘルニアの手術歴があるか

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)

状態当院の扱い
精巣捻転を疑う急性陰嚢症このシートの対象外。急性陰嚢症・精巣捻転
嵌頓ヘルニアこのシートの対象外。嵌頓鼠径ヘルニア
生後6か月以降も下降しない停留精巣持てない(精巣固定術は予定手術)。泌尿器科・小児外科の外来へ紹介
触知できない停留精巣・左右差画像検査ののち専門科へ紹介
陰嚢水腫(緊満なし・無痛)当院で経過観察の説明をして外来紹介。緊急性はない
陰嚢水腫がヘルニアを合併・緊満・痛みが強い・本人が気にする手術が望ましいでしょうとされる。専門科紹介
新生児の両側非触知精巣持てない。専門科へ紹介(要確認:緊急度)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:泌尿器科・小児外科の外来紹介の枠・待機期間(当院に常勤医がいるか)
  • 要確認:新生児期に両側非触知精巣が見つかった場合の紹介ルートと緊急度(性分化疾患の評価が必要になりうる)
  • 確定(2026-09-14)夜間・休日に鼠径部・陰嚢のエコーは当てられないこのシートの当直の仕事(痛みを伴う急性陰嚢症・嵌頓ヘルニアの除外)は触診と視診で行うのが前提
  • 要確認:停留精巣・陰嚢水腫について家族に渡す説明資材(パンフレット等)があるか

家族に渡す一文

「精巣(睾丸)が陰嚢の中まで下りてきていない状態、あるいは陰嚢に水がたまっている状態と考えられます。今日、急いで手術が必要な状態ではありません。精巣が下りてきていない場合は、生後6か月を過ぎてから2歳ごろまでに手術をすることが勧められています。時間がたつと精巣の働きに影響することがあるためです。水がたまっているだけの場合は、1歳ごろまでに自然に治ることが多い状態です。どちらも、外来で泌尿器科・小児外科に診てもらう必要がありますので、後日の受診をお願いします。もし今後、急に強い痛みが出たり、押しても消えない硬いふくらみが出た場合は、様子を見ずにすぐ受診してください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは日本小児外科学会「停留精巣」および日本小児泌尿器科学会「精巣水瘤と精索水瘤」の一般向け解説を一次資料としている。診療ガイドラインではない。薬剤・用量には触れていない。
  • 要確認:日本小児泌尿器科学会サイトの「停留精巣」専用ページ(https://jspu.jp/ippan_010.html)は、2026-09-13時点でアクセスすると疾患解説ではなく学会サイトの総合トップページ(小児泌尿器科の主な疾患トップページ)が返る状態だった。サイト側のリンク不具合の可能性がある。そのため手術時期の推奨は日本小児外科学会の記載を一次資料として採用しており、日本小児泌尿器科学会自身の記載とは突き合わせられていない。日本小児泌尿器科学会の見解を別途確認したい。
  • 要確認:両側非触知精巣(特に新生児・外表異常を伴う場合)で性分化疾患の評価がどの程度緊急かは、本シートで一次資料を確認していない。専門科と方針をすり合わせる必要がある。
  • 要確認:精巣がん・不妊リスクの記載は「将来、精巣のがんが起こる可能性がやや高いといわれています」「将来精子を作る細胞の働きが徐々に低下することが知られています」という定性的な表現にとどまり、具体的な数値・リスク比は一次資料に無い。
  • 要確認:手術合併症の具体的内容(「手術合併症などを考慮した」の中身)は一次資料に明記がない。
  • 要確認:陰嚢水腫が緊満している場合に手術が勧められる閾値(どの程度の緊満・症状で手術を検討するか)は一次資料に具体的基準がない。
  • 要確認:鼠径ヘルニアの手術適応・時期の詳細な基準は嵌頓鼠径ヘルニア側の一次資料(日本ヘルニア学会ガイドライン)を参照する前提で、本シートでは重複させていない。

出典

  • 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「停留精巣」http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/teiryu-seisou (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「精巣(睾丸)は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間に腎臓の近くから少しずつ下へ移動し決まった通り道(鼠径管)を通って、最終的に陰嚢(いんのう)の中へ下りてきます。この過程の途中で精巣の下降が止まり、陰嚢の中まで下りてこない状態を停留精巣といいます」「陰嚢の外にある精巣は、陰嚢内より2~3℃高い温度にさらされると考えられており、その状態が続くと、将来精子を作る細胞の働きが徐々に低下することが知られています。そのため、適切な時期に精巣を陰嚢内に固定する治療が必要になります」「停留精巣は、正常な位置にある精巣と比べて、将来、精巣のがんが起こる可能性がやや高いといわれています」「一方でリラックスしているときなどには精巣が陰嚢内に触れるが、寒さや緊張などの刺激によって精巣が一時的に陰嚢の外へ引き上がることがあります。このように普段は陰嚢にあり、条件によって上下に動く精巣は「移動性精巣(遊走精巣)」と呼ばれ、必ずしも手術が必要になるわけではありません」「停留精巣には、精巣の下降が途中で止まったもの(狭い意味での停留精巣)のほか、通常とは異なる場所にあるもの(異所性精巣)や、成長の過程で確認できなくなったもの(消失精巣)、生まれつき精巣が存在しない場合(精巣無形成)など、いくつかの状態が含まれます」「診察ではまず触診を行い、精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認します。精巣の大きさに左右差がある場合や、触っても確認できない場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査を行うことがあります」「陰嚢の外にある精巣は、時間の経過とともに機能が低下していくため、精巣を陰嚢内に固定する手術(精巣固定術)が勧められます。生後しばらくの間は、精巣が自然に下降することもあり、その多くは生後3~6か月以内に起こるとされています。このため、手術合併症などを考慮した1歳前後(出生後6か月以降)から2歳頃までに手術が推奨されています」「男性ホルモンを用いた治療法もありますが、副作用などの理由から、日本ではあまり行われていません」「手術後も、精巣が再び上に戻ることや、将来の精巣の働き、腫瘍の発生などについて注意が必要です。そのため、成長に応じた定期的な診察や長期的な経過観察が大切です」。
  • 日本小児泌尿器科学会.精巣水瘤と精索水瘤https://jspu.jp/ippan_019.html (2026-09-13閲覧)。「陰のう内や精索内に液体が貯留した状態を指します。陰のう部に見られるのが、精巣水瘤(陰のう水腫とも呼ばれます)、そけい部に見られるのが精索水瘤(精索水腫とも呼ばれます)です」「精巣は、腹腔内から下降の際に消化管を包んでいる膜(腹膜)と一緒に降りてきます。そのため、腹腔内と精巣周囲は、細い道(腹膜鞘状突起 ふくまくしょうじょうとっき)でつながっています。2歳までに、腹膜鞘状突起は閉鎖するといわれていますが、閉鎖しなければ、そけいヘルニアや精巣・精索水瘤など様々な病態を引き起こします」「腹膜鞘状突起が大きく開存していれば、腹腔内臓器が脱出するので、そけいヘルニアになります」「腹膜鞘状突起が小さく開存していれば、交通性の精巣水瘤や精索水瘤になります。小児の精巣水瘤や精索水瘤のほとんどは、このタイプに入ります」「腹膜鞘状突起が完全に閉鎖していれば、非交通性の精巣水瘤」(図参照)「や精索水瘤になります。新生児期と思春期以降に見られます」「腹膜鞘状突起が開存している場合は、朝が最も小さく、夕方から夜にかけて最も大きくなります」「大きくても痛くありません。押しても大きさは変わりませんが、泣いたり、嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる場合は、そけいヘルニアを疑います。停留精巣を合併することが多いので、精巣の位置を確認する必要があります。硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合は、精索捻転、精巣上体炎、精巣(上体)垂捻転、精巣腫瘍、などを疑います」「内部の状態(液体、腹腔内臓器、のう胞などの区別)や精巣の位置が観察でき、診断に役立ちます」「そけいヘルニアを合併していれば、自然治癒の可能性はなく、早期の手術が必要になります。交通性の精巣水瘤や精索水瘤で水瘤が緊満していない場合、緊急性はありません。非交通性の精巣水瘤や精索水腫は1-2歳までにほとんどが自然に消失します」「手術は、腹膜鞘状突起を内そけい輪の高さで処理します。そけい部の小切開で行われるのが一般的ですが、両側性の場合は腹腔鏡を用いることもあります。合併症として、精管損傷があり、年少児の両側例の場合は注意が必要です。成人の精巣水瘤の処置の方法(穿刺吸引や硬化療法)は、禁忌とされています」「1歳未満の年少児の場合、啼泣時にそけいヘルニアの嵌頓(かんとん)を起こす可能性があります」「精巣水瘤と不妊症との直接的な因果関係はありませんが水瘤が緊満している場合は、精巣の変形が起こるとの報告もあります。そこで将来の精巣機能への悪影響を心配し、手術が勧められることもあります」。
  • 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「陰嚢水腫、Nuck水腫」http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/innou-shuishu (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「陰嚢に水がたまることを陰嚢水腫,鼠径部に水がたまることを精索水腫,女児の鼠径部に水がたまることをヌック水腫といいます」「診断は懐中電灯などの光が通過する(透光性)ことなどで判断しますが,超音波検査も有用です」「乳児(1歳未満)の場合は自然に治癒することが多いといわれています。以前は針を刺して水を抜く場合もありましたが,子どもに恐怖を抱かせるうえにすぐに再発することが多いので最近はあまり行いません」「1歳を過ぎると自然治癒がしにくくなります。鼠径へルニアを合併していたり,痛みが強い場合や本人が腫れを気にするようなら手術が望ましいでしょう」。日本小児外科学会と日本小児泌尿器科学会の2つの一次資料で内容が一致することを確認したうえで併記している。
  • 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「鼠径ヘルニア」http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/sokei-helnia (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「お腹の中にある臓器(小腸,大腸,大網という膜,女児であれば卵巣,卵管)が飛び出してきて,鼠径部が腫れてくる病気を鼠径ヘルニア(脱腸)といいます」「1歳未満の鼠径ヘルニアは自然に治ることもあるといわれていますが,自然に治ることを過度に期待して手術時期を遅らすことは良くありません」。鼠径ヘルニアそのものの手術時期・整復の詳細は嵌頓鼠径ヘルニアを参照。

手技

手技

停留精巣・陰嚢水腫:その場での鑑別と紹介

緊急性のある疾患ではない。停留精巣も陰嚢水腫も、多くは待期的な外来紹介でよい。当直の役割はこれは急性陰嚢症・嵌頓ヘルニアではないかを除外すること。乳児(1歳未満)の陰嚢水腫は自然に治癒することが多い。ただし泣いたり嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わる腫脹は鼠径ヘルニアを疑うサインで、ここだけは緊急性の話に変わる。

始める前に

  • まず陰嚢の急な激痛・発赤ではないかを確認する。あれば急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローに切り替える。
  • 診察ではまず触診を行い、精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認する。

手順

  1. 1

    まず陰嚢の急な激痛・発赤ではないかを確認する。あれば急性陰嚢症・精巣捻転のワークフローに切り替える。

  2. 2

    視診・触診で精巣がどこにあるか、触れるかどうかを確認する。

  3. 3

    腫脹があれば、泣いたり嘔吐したり腹圧がかかった時に大きさが変わるかを見る。

    変われば鼠径ヘルニアを疑う。

  4. 4

    陰嚢の腫脹は懐中電灯などの光が通過するか(透光性)で判断する。

    通れば水瘤を疑う。

  5. 5

    精巣の大きさに左右差がある場合や、触っても確認できない場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査を行うことがある。

  6. 6

    緊急性がなければ泌尿器科・小児外科の外来へ紹介する。手術時期の目安(停留精巣は1歳前後〜2歳頃)を家族に伝える。

  7. 7

    リラックスしているときなどに精巣が陰嚢内に触れるが、寒さや緊張などの刺激で精巣が一時的に陰嚢の外へ引き上がるかを見る。

    誘導すれば陰嚢内に戻れば移動性精巣(正常亜型)。

  8. 8

    硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合かを確認する。

    精索捻転・精巣上体炎・精巣腫瘍を疑う。

やってはいけない

  • 陰嚢腫脹が硬く緊満している場合、皮膚に発赤が見られる場合は水瘤の典型像ではない。精索捻転、精巣上体炎、精巣(上体)垂捻転、精巣腫瘍などを疑い、水瘤・停留精巣として様子見しない。
  • 成人の精巣水瘤の処置の方法(穿刺吸引や硬化療法)は禁忌とされている。
  • そけいヘルニアを合併していれば自然治癒の可能性はなく、早期の手術が必要になる。自然治癒を過度に期待して手術時期を遅らせない。

終わったあと

  • 水がたまっているだけの場合は1歳ごろまでに自然に治ることが多い状態であることを伝える。
  • 精巣が下りてきていない場合は、生後6か月を過ぎてから2歳ごろまでに手術をすることが勧められていると伝える。
  • 今後、急に強い痛みが出たり、押しても消えない硬いふくらみが出た場合は、様子を見ずにすぐ受診するよう伝える。
  • どちらも外来で泌尿器科・小児外科に診てもらう必要があるため、後日の受診を依頼する。

この場で持てない・送る

  • 生後6か月以降も下降しない停留精巣は持てない(精巣固定術は予定手術)。泌尿器科・小児外科の外来へ紹介する。
  • 触知できない停留精巣・左右差は画像検査ののち専門科へ紹介する。
  • 陰嚢水腫がヘルニアを合併・緊満・痛みが強い・本人が気にする場合は手術が望ましいとされ、専門科紹介とする。
  • 新生児の両側非触知精巣は持てない。専門科へ紹介する(要確認:緊急度)。
  • 要確認:泌尿器科・小児外科の外来紹介の枠・待機期間(当院に常勤医がいるか)
  • 要確認:新生児期に両側非触知精巣が見つかった場合の紹介ルートと緊急度(性分化疾患の評価が必要になりうる)
  • 要確認:夜間・休日に鼠径部・陰嚢のエコーを当てられる体制があるか
  • 要確認:停留精巣・陰嚢水腫について家族に渡す説明資材(パンフレット等)があるか
  • 要確認:本シートは日本小児外科学会「停留精巣」および日本小児泌尿器科学会「精巣水瘤と精索水瘤」の一般向け解説を一次資料としている。診療ガイドラインではない。薬剤・用量には触れていない。
  • 要確認:日本小児泌尿器科学会サイトの「停留精巣」専用ページは2026-09-13時点でアクセスすると疾患解説ではなく学会サイトの総合トップページが返る状態だった。手術時期の推奨は日本小児外科学会の記載を一次資料として採用しており、日本小児泌尿器科学会自身の記載とは突き合わせられていない。
  • 要確認:両側非触知精巣(特に新生児・外表異常を伴う場合)で性分化疾患の評価がどの程度緊急かは、本シートで一次資料を確認していない。
  • 要確認:精巣がん・不妊リスクの記載は「将来、精巣のがんが起こる可能性がやや高いといわれています」「将来精子を作る細胞の働きが徐々に低下することが知られています」という定性的な表現にとどまり、具体的な数値・リスク比は一次資料に無い。
  • 要確認:手術合併症の具体的内容(「手術合併症などを考慮した」の中身)は一次資料に明記がない。
  • 要確認:陰嚢水腫が緊満している場合に手術が勧められる閾値は一次資料に具体的基準がない。
  • 要確認:鼠径ヘルニアの手術適応・時期の詳細な基準は嵌頓鼠径ヘルニア側の一次資料(日本ヘルニア学会ガイドライン)を参照する前提で、本シートでは重複させていない。

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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