顔面神経麻痺
神経・発達・こころβ版・逐条レビュー継続中
2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について
施設プロファイル: 二次救急/当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない・鼓室形成術等の外科的治療は持てない/当直帯にCT・MRIも撮れない(2026-09-14 確認)。
30秒要約
- 圧倒的多数は末梢性。大部分は末梢性で、耳の奥の顔面神経の障害で麻痺が発症することがほとんどです。
- 最初の分岐は中枢性か末梢性か。末梢性では顔面片側の上部および下部を動かせなくなるのに対し、中枢性(脳卒中・腫瘍)は主に顔面下部の筋力が低下するが,前額部の筋は侵されないため,額のしわ寄せが可能。手や言葉にも異常があれば中枢性を最優先で外す。
- 原因はほぼ2つに集約される。「ベル麻痺」で約60%以上を占めています。次に頻度が多いのは「ハント症候群」で約20%を占めています(成人・耳鼻科領域のデータ)。
- 時間の勝負。顔面神経麻痺の場合、発症から3日以内の受診が、完治するか後遺症が残るかの分かれ道になる、重要分岐点と考えられています。
- こどもは大人と原因の内訳が違う。15歳以下302例の報告ではBell麻痺48%,Hunt症候群14%,耳炎性11%,外傷性11%,先天性8%で、中耳炎・外傷・先天性の割合が成人より高い。
レッドフラグ → 次の一手
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | その場で次にやること | 時間の勝負 |
|---|---|---|---|
| 119 | 顔だけでなく手足や言葉にも異常がある(片側の脱力・しびれ、ろれつが回らない、意識障害) | 中枢性(脳卒中・腫瘍)を最優先で外す。画像検査・脳神経内科/脳外科へ | 即時 |
| 119 | 発熱・意識障害・項部硬直を伴う | 細菌性髄膜炎を疑う。持てない(細菌性髄膜炎) | 即時 |
| 119 | 耳を打った直後から麻痺が現れた | 顔面神経の相当強いダメージが考えられ、緊急手術が行われることもあります。当直帯はCTが撮れないので、確かめずに耳鼻科のある施設へ | 即時 |
| 緊急 | 耳介や外耳道に水疱・発赤+顔面麻痺+難聴・耳鳴り・めまい | ハント症候群を疑う。自然治癒は30%(Bell麻痺70%)と予後が悪い。早期に耳鼻科へ | 即時〜当日 |
| 緊急 | 中耳炎の診断・耳漏がある乳幼児の顔面麻痺 | 耳炎性麻痺。急性中耳炎による顔面神経麻痺は成人と比較して小児に多い。耳鼻科と相談 | 当日 |
| 緊急 | 耳を打って数日~1週間ほどして麻痺が生じた | 外傷に伴う出血や炎症が原因と考えられ、薬による治療と電気生理学的検査で障害程度を評価(耳鼻科) | 当日 |
| 緊急 | マダニ刺咬歴・野山への外出歴があり、両側性の顔面麻痺 | ライム病を疑う(要確認:本シートで一次資料未確認、下記参照)。血清診断を相談 | 当日 |
| 当日 | 誘因なく突然、片側の顔全体(上下とも)が動かない | 典型的なBell麻痺像。発症から3日以内の受診が分かれ道。耳鼻科へ紹介 | 当日 |
鑑別:よくあるもの
| 病態 | 見分け | 次の一手 |
|---|---|---|
| Bell麻痺 | 誘因なく突然発症し、片側の顔全体(上下とも)が動かない。麻痺の前に耳の周囲の痛みや味覚の異常などが起こることもあります。多くのBell麻痺で単純疱疹ウイルス1型が原因であることがわかりました | 早期(3日以内)に耳鼻科紹介。ステロイド等の適応判断は耳鼻科 |
| ハント症候群 | 顔面麻痺に加え、耳介の発赤・水疱形成(図)や耳痛、難聴、めまいなどを合併する特徴がある。皮疹が麻痺に先行しない例(zoster sine herpete)もありBell麻痺と紛らわしい | Bell麻痺より予後不良。早期に耳鼻科紹介 |
| 耳炎性麻痺(急性中耳炎) | 中耳炎の診断・耳漏がある乳幼児に多い。急性中耳炎による顔面神経麻痺は成人と比較して小児に多い | 明らかな骨破壊がなければまずは保存的治療(耳鼻科と相談) |
| 外傷性麻痺(側頭骨骨折) | 耳を強く打った後に発症。受傷直後の発症は重症を示唆 | CT・耳鼻科紹介(頭部打撲) |
鑑別:見逃してはいけないもの
| 病態 | なぜ見逃すと危ないか | 当院の扱い |
|---|---|---|
| 中枢性(脳卒中・脳腫瘍) | 末梢性と違い額のしわ寄せが可能。「顔」だけでなく「手」「言葉」にも異常が出ることが多い | 持てない。画像・脳神経内科へ |
| 細菌性髄膜炎 | 発熱・意識障害・項部硬直を伴えば疑う | 持てない(細菌性髄膜炎) |
| 真珠腫性中耳炎による麻痺 | 麻痺の程度が強いことが多く、鼓室形成術を要することが多い(高度麻痺群の治癒率50%) | 持てない。耳鼻科(手術)へ |
| ライム病 | ベル麻痺と異なりその麻痺は両側性となることがある。マダニ刺咬歴・流行地滞在歴を見落としやすい | 要確認(本シートで一次資料未確認、下記参照) |
| 白血病などの神経浸潤 | まれだが顔面神経麻痺で気づかれることがある | 白血病・悪性腫瘍を疑うとき |
治療ワークフロー(当院でやること)
当院の仕事は「中枢性を外して、原因を絞って、早く耳鼻科につなぐこと」。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0分 | バイタル、意識レベル。手足の脱力・ろれつが回らないなど中枢性を疑うサインがないかを必ず確認 |
| 0〜5分 | 額のしわ寄せができるかを見る(できる→中枢性を疑う所見、できない→末梢性が示唆される) |
| 0〜5分 | 耳を診る。鼓膜(発赤・膨隆・耳漏)と、耳介・外耳道の水疱・発赤(ハント症候群のサイン) |
| 5〜10分 | 問診:発症様式(突然か緩徐か)、先行する耳周囲痛・味覚異常、頭部外傷歴、マダニ刺咬歴・流行地滞在歴 |
| 10〜20分 | 麻痺の範囲を記録(額を含む顔全体か、下半分だけか)。左右差がわかる記録を残す(写真運用は要確認) |
| 判断 | 中枢性を疑うサインがあれば画像・脳神経内科(持てない)。なければ末梢性として耳鼻科へ |
| 紹介前 | 発症時刻を明記して送る。「発症から3日以内の受診が分かれ道」であることを申し送りに含める |
所見の取り方
| 所見 | 取り方 | 所見があったら次にどうする |
|---|---|---|
| 額のしわ寄せ | 眉を上げてもらう/額にしわを寄せてもらう | できる→中枢性を疑う。できない→末梢性が示唆される |
| 閉眼 | 強く目を閉じてもらう。閉じきれるか(兎眼) | 閉じきれない→末梢性。角膜保護(点眼・眼帯)を検討 |
| 口角 | 「イー」と言ってもらう、口角の左右差を見る | 下がっている側が患側 |
| 耳介・外耳道 | 水疱・発赤の有無を見る | あればハント症候群を疑う |
| 鼓膜 | 発赤・膨隆・耳漏の有無 | あれば耳炎性麻痺を疑う |
| 味覚・涙・聴覚過敏 | 問診で確認(乳幼児では訴えが不正確なことがある) | あれば膝神経節より近位の障害が示唆される(耳鼻科の評価が要る) |
検査
| 検査 | いつ | 何のために |
|---|---|---|
| 頭部/側頭骨CT | 外傷後の麻痺、中枢性を疑うとき | 側頭骨骨折の確認、出血・腫瘍の除外 |
| 頭部MRI | 発症が緩徐、他の神経症状を伴う | 中枢性病変・小脳橋角部腫瘍の除外(当直帯は撮れない=後日または送り先) |
| 血液検査(血算・炎症反応・血糖) | 全例 | 糖尿病・全身の炎症・白血病など随伴疾患の除外 |
| ライム病の血清診断 | マダニ刺咬歴・流行地滞在歴があるとき | 要確認:依頼先・運用(下記参照) |
問診チェック
- 発症様式(突然か、数日かけてか)
- 麻痺の前に耳の周囲の痛みや味覚の異常などが起こることもあります(先行症状の有無)
- 耳の症状(耳漏・耳痛・難聴・耳鳴り・めまい)、中耳炎の既往・治療中か
- 耳介・頭部の水疱・発赤の有無(ハント症候群)
- 頭部外傷歴(特に側頭部を強く打っていないか)
- マダニ刺咬歴・野山への外出歴・流行地(本州中部以北(特に北海道))滞在歴(ライム病)
- 水痘の既往・水痘ワクチン接種歴
- 全身状態(発熱、リンパ節腫脹、体重減少など。白血病・伝染性単核症などの随伴症状の可能性)
- 顔の動きの左右差にいつ、どのように気づいたか(家族の観察)
送る/持つ(当院=二次救急・当直帯に耳鼻咽喉科なし)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 中枢性を疑う(手足・言葉にも異常) | 持てない。画像・脳神経内科/脳外科へ |
| 細菌性髄膜炎を疑う | 持てない |
| 典型的なBell麻痺像(顔のみ、突然、48〜72時間で完成) | 耳鼻科へ紹介(3日以内が目安)。当院で治療を開始するかは要確認 |
| ハント症候群を疑う(耳の帯状疱疹) | 耳鼻科紹介。自然治癒は30%(Bell麻痺70%)と予後不良のため早期治療が重要 |
| 耳炎性麻痺(中耳炎の合併) | 明らかな乳突蜂巣の破壊や膿瘍形成がなければ,まずは保存的治療を行い,改善を認めなければ外科的治療に切り替えてもよい(一次資料は小児2症例の報告)。耳鼻科と相談 |
| 側頭骨骨折を疑う外傷性麻痺 | CT。持てない。耳鼻科(受傷直後発症は緊急手術もありうる) |
| 真珠腫性中耳炎による麻痺 | 持てない。手術(鼓室形成術)が前提 |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 確定(2026-09-14 確認):当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない。夜間の搬送先は要確認(施設名・番号は保留中)
- 要確認:当院でステロイド・抗ウイルス薬を開始するか、耳鼻科紹介まで開始しないか(本シートは意図的に薬剤名・用量を書いていない。開始判断は耳鼻科医が行う前提)
- 確定(2026-09-14):夜間・休日の頭部/側頭骨CTは撮れない。外傷性麻痺を疑ったら、撮らずに送る
- 要確認:柳原法による麻痺の程度評価や筋電図(ENoG)ができる体制があるか(通常は耳鼻科の設備)
- 確定(2026-09-14 確認)(当直帯):夜は小児科が最初に診るしかない(院内に耳鼻科がいない)。日勤帯の動線は要確認
- 要確認:ライム病を疑った場合の血清診断の依頼先(国立健康危機管理研究機構、または感染症内科)
家族に渡す一文
「顔の片側が動きにくくなっています。多くは顔面神経という、顔の筋肉を動かす神経に炎症が起きて生じる麻痺で、ウイルスが関わっていることが多いとわかっています。まず確認したいのは、これが顔だけの問題か、それとも脳の病気のサインではないかということです。手や言葉に異常がないかも合わせて診ています。原因を確定し、できるだけ早く治療を始めるために、耳鼻咽喉科への受診が必要です。治療の開始が早いほど、跡を残さずに治る可能性が高くなるとされています。目が閉じにくいときは、乾燥や傷を防ぐために、目を潤す点眼薬や、寝るときの眼帯が必要になることがあります。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:「顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版」(日本顔面神経学会編、金原出版)は有償書籍であり、Mindsガイドラインライブラリのページ(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00819/ )も「本文は掲載準備中です」(公開ステータス:本文公開交渉中)で、本シートはこの一次資料の本文を確認できていない。本シートは日本顔面神経学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の一般向け解説ページを一次資料としている。
- 要確認:中枢性・末梢性の鑑別(額のしわ寄せ・顔面上下の障害パターン)はMSDマニュアル プロフェッショナル版(Merck Manualの日本語版、医療者向けの二次資料であり国内学会のガイドラインではない)に依拠している。国内の一次資料(学会ページ)では、この鑑別点を明記した記述を確認できなかった。
- 要確認:ライム病が顔面神経麻痺を起こすという記載は、国立健康危機管理研究機構の「ライム病(詳細版)」ページ本文には「顔面神経麻痺」という語自体が無く(神経症状として記載があるのは髄膜炎・脳脊髄炎等)、MSDマニュアルの記載(「ライム病は顔面神経麻痺を引き起こす可能性があり,ベル麻痺とは異なり,その麻痺は両側性となることがある」)に依拠している。本邦の小児での顔面神経麻痺合併の頻度は一次資料で確認できていない。
- 要確認:小児の原因疾患比率(Bell麻痺48%、Hunt症候群14%、耳炎性11%、外傷性11%、先天性8%)は、小児内科55巻13号(2023年)の総説冒頭部分(無料公開範囲=1ページ目のみ)からの引用で、引用元の柳原らによる原著論文そのものは確認していない。
- 要確認:耳炎性麻痺(急性中耳炎に伴う顔面神経麻痺)の治療方針について、参照した小児例の症例報告(小児耳鼻咽喉科44巻3号)自体が「特に小児ではエビデンスが乏しく明確な選択基準はない」と述べている。確立された診療ガイドラインではなく、症例報告レベルのエビデンスであることに留意。
- 要確認:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版は、「顔面神経麻痺・内耳障害などの合併症を呈する急性中耳炎」を明示的にガイドラインの対象外としている。つまり通常の中耳炎診療の枠組みでは対応方針が定められておらず、当院でどこまで診るかは個別に決める必要がある。
- 要確認:柳原法(40点満点の麻痺評価スコア)・ENoG(筋電図による予後評価)は複数の一次資料が言及するが、本シートではスコア表自体を掲載・検証していない。院内で評価するかは耳鼻科と相談。
- 要確認:本シートは薬剤名・用量を意図的に書いていない。ステロイド・抗ウイルス薬の開始可否・タイミングは耳鼻科医の判断とする前提でよいか。
出典
- 日本顔面神経学会.顔面神経麻痺Q&A(Q1~Q5).https://jsfnr.org/general/section1.html (2026-09-13閲覧)。Q1(羽藤直人・愛媛大学)「顔面神経麻痺は、高頻度な脳神経麻痺の一種です。大部分は末梢性で、耳の奥の顔面神経の障害で麻痺が発症することがほとんどです」「顔の筋肉(顔面表情筋)に力が入らなくなるので、目が閉じられない、眉が上がらない、口が閉まらず水がこぼれ、笑っても唇が動かない等の症状が、一側性に生じます」「通常は脳の中には異常がなく、難聴、耳鳴り、めまい、味覚の低下や耳の痛みを伴うことはあっても、他の神経麻痺を合併することは稀です」「顔を触った時の皮膚感覚は左右対称で、顔面の知覚麻痺は認めません」「顔面神経麻痺は、早く診断して、早く治療することが何より大切なので、できるだけ早くお近くの耳鼻咽喉科を受診してください」。Q2(山田啓之・愛媛大学)「顔面神経麻痺が起きる病気は沢山あります。その中でも最も多い病気はBell麻痺です。以前は原因不明と言われていましたが、現在では多くのBell麻痺で単純疱疹ウイルス1型が原因であることがわかりました」「Bell麻痺は急に顔面神経麻痺が出現する病気ですが、麻痺の前に耳の周囲の痛みや味覚の異常などが起こることもあります」「次に多い病気はハント症候群です。水痘帯状疱疹ウイルスが原因で発症します。典型的な症状は顔面神経麻痺と耳の帯状疱疹、難聴・耳鳴り・めまいですが、これらの症状の一部しか出ないこともあります」「また事故で頭の骨を骨折して発症する外傷性麻痺や中耳炎が原因で起こる耳炎性麻痺もあります」「さらに顔面神経にできる良性腫瘍(顔面神経鞘腫)や耳の前にある耳下腺にできる癌(耳下腺癌)などから顔面神経麻痺が起こることもあります(腫瘍性麻痺)」「これらの病気以外にも脳梗塞・出血で顔面神経麻痺が起こることもあります。その時は顔以外の麻痺も伴うことが多いです」。Q3(近藤健二・東京大学)「ある日突然に片側の口角から水が漏れるようになった、は典型的な顔面神経麻痺の症状です。顔面神経の変性を食い止めるためにできるだけ早く副腎皮質ステロイド等の薬物療法を開始する必要があります」。Q4(萩森伸一・大阪医科薬科大学)「耳を強く打ったあとに顔面神経麻痺になった場合、耳の中を通る顔面神経の周りの骨が折れて(側頭骨骨折、図)神経を圧迫したり、神経が切れている可能性があります(外傷性麻痺)。耳鼻咽喉科のある病院を早く受診し、麻痺の評価やCT検査を受けるようにしてください」「耳を打った直後から麻痺が現れた場合は、顔面神経の相当強いダメージが考えられ、緊急手術が行われることもあります。耳を打って数日~1週間ほどして生じた場合には外傷に伴う出血や炎症が原因と考えられ、薬による治療を行い電気生理学的検査で障害程度を評価します」。
- 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.顔面神経麻痺ってどんな病気?原因・治療・リハビリまで(改訂日:2024年6月24日).https://www.jibika.or.jp/owned/contents1.html (2026-09-13閲覧)。「顔面神経麻痺は「顔がまがってきた」、「眼が閉じにくい」、「水が口からこぼれる」、「口の動きが悪くなる」など、顔の筋肉が動きづらくなる病気です」「年間、人口10万人あたり50人ほど発症するといわれ、2割以上に後遺症が残ります。ですので、毎年ほぼ1万人ずつ、顔面神経麻痺後遺症の患者数が増えています」「中でも最も多いのは、「ベル麻痺」で約60%以上を占めています」「次に頻度が多いのは「ハント症候群」で約20%を占めています。耳の痛みや突然顔が動かしづらくなる症状が多く出ます」「「ベル麻痺」は、単純ヘルペスウイルスが関与し、「ハント症候群」は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により発症することがわかっています」「いずれも、適切な初期治療を早期に行うことにより、8割の方がほぼ元の状態に戻る病気です」「キーポイントは発症3日以内の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の受診」(原因疾患比率のグラフは愛媛大学調べ・1998~2017年の症例データによるもので、成人を含む耳鼻科外来のデータである)。
- 同学会.顔面神経麻痺-ネット調査.https://www.jibika.or.jp/owned/Internetresearch1.html (2026-09-13閲覧)。「顔面神経麻痺の場合、発症から3日以内の受診が、完治するか後遺症が残るかの分かれ道になる、重要分岐点と考えられています」「顔面神経は、顔面の筋肉を動かす大事な神経です。この神経の通り道の大部分が耳の骨、耳下腺、顔面にあり、これらはすべて耳鼻科の領域内にあります」「耳鼻科では柳原法という40点満点のスコア法により、麻痺がどの程度の強さなのか、今後治るか治らないかの診断ができます。最も発症数が多い「ベル麻痺」の早期治療では90%が完治。次に多いハント症候群も早期治療によって70%が完治しています」。
- 同学会.めまい・顔面神経麻痺(Last update: 2022年12月14日).https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=24 (2026-09-13閲覧)。「顔面神経麻痺を引き起こす疾患として代表的な「ベル麻痺」「ハント症候群」は、体内に潜在しているヘルペスウイルス属が原因であることが分かってきました。ある日突然、目が閉じられない、水を飲むと口からこぼれる、といった症状が出現します」「顔面神経麻痺は自然に回復する場合もありますが、診断・治療が遅れた場合や重度の場合は後遺症(顔面のこわばり、筋力低下、意図しない目や口の閉鎖:図)が残ることがあります」「顔面神経は耳の奥を走っているので、診療は耳鼻咽喉科が担当します」。
- 国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所).Ramsay Hunt症候群-重症例を減らすためには何が必要か-(IASR Vol.34 p.301-302: 2013年10月号、著者:大阪医科大学感覚器機能形態医学耳鼻咽喉科学 萩森伸一).https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/4016-dj404a.html (2026-09-13閲覧)。「Ramsay Hunt症候群(以下、Hunt症候群)は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患であり」「小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏し、後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹した神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症する。加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成(図1)や耳痛、難聴、めまいなどを合併する特徴がある」「逆に顔面神経麻痺のみの症状のみで、臨床所見ではBell麻痺(原因不明の顔面神経麻痺、近年、単純ヘルペスウイルスが関与することが明らかになった)と鑑別が困難なものをzoster sine herpeteという」「Hunt症候群はBell麻痺と比較して一般に予後が不良であり、自然治癒は30%(Bell麻痺70%)、初期から十分に治療を行っても治癒は60%(Bell麻痺90%)程度に留まる」「顔面神経自体の変性は発症後も進行を続け、7~10日で完成する。この時点で麻痺の予後が決まる」「水痘に罹患させない、つまり幼少児期の水痘ワクチン接種が予防に有効と考えられる」。
- 国立健康危機管理研究機構.ライム病(詳細版)(2019年3月20日改訂).https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ra/lyme/010/lyme.html (2026-09-13閲覧)。「ライム病(Lyme disease またはLyme borreliosis)は、野鼠や小鳥などを保菌動物とし、野生のマダニ科マダニ属(Ixodes)のダニによって媒介される人獣共通の細菌(スピロヘータ)による感染症である」「本邦においては、シュルツェ・マダニ(I.persulcatus、図3)の刺咬後にライム病を発症するケースがほとんどである。本マダニは北海道ならびに、本州や四国、九州の山間部に生息する」「播種期(stage II) 体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。これにともない、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる」。このページ本文に「顔面神経麻痺」という語は無い(下記医師確認事項を参照)。
- Merck & Co./MSD.MSDマニュアル プロフェッショナル版「顔面神経麻痺(ベル麻痺)」(完全なレビュー:2023年11月、執筆:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center).https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-神経疾患/神経眼科疾患および脳神経の疾患/顔面神経麻痺 (2026-09-13閲覧)。医療者向けの翻訳版総説(二次資料、国内学会のガイドラインではない)。「顔面筋は,同側の第7脳神経から末梢性支配(核下性支配)を受けており,対側の大脳皮質から中枢性支配(核上性支配)を受けている。中枢性支配は,顔面上部(例,前額部の筋)では両側性,顔面下部では片側性の傾向にある。その結果,中枢病変でも末梢病変でも顔面下部を麻痺させる傾向にある。しかしながら,末梢病変(顔面神経麻痺)は中枢病変(例,脳卒中)よりも顔面上部を侵しやすい傾向にある」「顔面神経麻痺は中枢性顔面神経病変(例,大脳半球の脳卒中または腫瘍)と鑑別可能であり,後者では主に顔面下部の筋力が低下するが,前額部の筋は侵されないため,額のしわ寄せが可能である;また,中枢性病変が原因の場合,通常は眉寄せと強い閉眼が可能である」「顔面神経麻痺の患者は顔面片側の上部および下部を動かせなくなるのに対し,中枢性顔面神経病変(例,脳卒中による)は主に顔面下部を障害する」「その他様々な疾患(例,糖尿病,ライム病,サルコイドーシス)が顔面神経麻痺を引き起こしうる。ライム病は顔面神経麻痺を引き起こす可能性があり,ベル麻痺とは異なり,その麻痺は両側性となることがある」「神経病変が膝神経節より近位である場合は,唾液分泌,味覚,および涙液分泌が障害されることがあり,聴覚過敏を呈することもある」。
- 馬場信太郎(東京都立小児総合医療センター耳鼻咽喉科).「顔面神経麻痺」小児内科55巻13号(2023年11月発行)pp.573-578(有料誌、無料公開範囲=冒頭「疾患概念」部分のみ).https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.24479/pm.0000001294 (2026-09-13閲覧)。「わが国において柳原らが15歳以下302例を分類した報告(原文に引用番号1)付き)によると,Bell麻痺48%,Ramsay Hunt症候群(以下Hunt症候群)14%,耳炎性11%,外傷性11%,先天性8%であった。その他の報告でもBell麻痺がもっとも多く(48~71%),ついでHunt症候群(4~17%),先天性,外傷性,耳炎性が10%前後であった」(図1として掲載)。
- 日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会(編).小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版.金原出版.https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2024.pdf (2026-09-13閲覧・PDF)。「本ガイドラインの対象は,15歳未満の反復性中耳炎を含む小児急性中耳炎である。以下は対象としない。すなわち,滲出性中耳炎症例,鼓膜換気チューブが留置されている症例,頭蓋・顔面に先天的形態異常を有する症例,重大な免疫不全のある症例,顔面神経麻痺・内耳障害などの合併症を呈する急性中耳炎,ならびに急性乳様突起炎,頭蓋内合併症などがみられる急性中耳炎である」(PDFページに重なる「禁転載」の透かし文字を除いて引用)。
- 臼井智子・増田佐和子(国立病院機構三重病院耳鼻咽喉科).「急性中耳炎に伴う顔面神経麻痺を呈した1歳児の2症例」小児耳鼻咽喉科44巻3号(2024年)pp.403-410.日本小児耳鼻咽喉科学会(オープンアクセス).https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/44/3/44_403/_article/-char/ja/ (2026-09-13閲覧)。抄録より:「急性中耳炎による顔面神経麻痺は成人と比較して小児に多い。治療は保存的治療,手術治療があるが,特に小児ではエビデンスが乏しく明確な選択基準はない」「乳幼児の急性中耳炎では顔面神経麻痺の合併を認めても明らかな乳突蜂巣の破壊や膿瘍形成がなければ,まずは保存的治療を行い,改善を認めなければ外科的治療に切り替えてもよいと考える」。
- 深美悟ほか(獨協医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科).「初診時に顔面神経麻痺を呈した真珠腫性中耳炎の検討」Otology Japan 30巻2号(2020年)pp.82-90.日本耳科学会(オープンアクセス).https://www.jstage.jst.go.jp/article/otoljpn/30/2/30_82/_article/-char/ja/ (2026-09-13閲覧)。抄録より:「過去10年で経験した中耳真珠腫による顔面神経麻痺13例について検討した.」「術後の麻痺の改善度は,高度麻痺群で治癒率50%,中等度麻痺群で25%,軽度麻痺群で67%であった」「初診時のENoG不良例と顔面神経障害の程度が予後に関する重要な因子と考えられた」。
- 一般社団法人日本脳卒中学会/公益社団法人日本脳卒中協会.脳卒中の予防・発症時の対応.https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf (2026-09-13閲覧・PDF)。「「突然」の顔の歪み(Face)、手の力が入らない(Arm)、呂律が回らない・言葉がでない・他人の言うことが理解できない(Speech)ことに気がついたら、それは脳卒中の可能性があります」「片方の手足・顔半分のマヒ・しびれが起こる(顔のみ、手のみ、足のみの場合もある)」。成人の脳卒中啓発資材であり、小児例を直接扱ったものではない(下記医師確認事項を参照)。
- Mindsガイドラインライブラリ.顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版.https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00819/ (2026-09-13閲覧)。「本文は掲載準備中です」「公開ステータス:本文公開交渉中」。本シートはこの一次資料の本文を確認できていない。
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