おなかの超音波検査(エコー)

おなかの超音波検査(エコー)

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-07-31更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

家族説明を開く

当院の当直帯に、この検査は無い(2026-09-14 確認)。装置の問題ではなく、当直帯に読める人がいない。慣れない医師が軽く当てることはできるが、その陰性を否定の根拠に使ってはいけない
したがって当直帯にこのシートを開いたときの使い道は2つだけ。(1) 送り先が何を見るのかを理解して電話すること、(2) 翌日の外来・健診で撮るときの基準を確認すること。
エコーが要る急性腹症は、エコーを待つのではなく送る。入口は急性腹痛、個別は腸重積急性虫垂炎肥厚性幽門狭窄症卵巣腫瘍茎捻転急性陰嚢症

30秒要約

  • おなかの超音波検査(エコー)。家族説明と同じ受診サインで切る。
  • まず毒性・気道・循環を見る。迷ったら上級医。
  • 家族には説明ページを渡し、様子見の自己判断を止めさせる。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
当日緑色や黄色っぽい吐き物 が出た(母乳・ミルクの色と違う吐き方)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急顔色が悪くぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日血の混じった便(イチゴジャムのような便)が出た家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日火がついたように激しく泣く、体を丸めて痛がる様子が繰り返し・急に増えてきた家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日おなかがパンパンに張ってきた、触ると痛がる家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急嘔吐が続いて水分が摂れない、半日以上おしっこが出ていない家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日発熱が続く、または高熱が出てきた家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. ABC と毒性を先に見る。
  2. 上のレッドフラグで 119 / 今日受診 / 説明して帰宅 を分ける。
  3. 検査・薬は施設プロトコル。用量は書かない。
  4. 家族説明を渡す。

家族に渡す一文

この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。
https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/おなかの超音波検査(エコー)について_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • レッドフラグ、判断に迷う → 上級医

出典

  • Family Guide abdominal-ultrasound と整合

手技

手技

腸重積・虫垂炎・肥厚性幽門狭窄をエコーで見分ける

腸重積は間欠的な不機嫌・啼泣が最初のサインで、血便は遅発所見。胆汁性嘔吐を見たら、肥厚性幽門狭窄より先に腸回転異常症・中腸軸捻転を除外する。

始める前に

  • 腸重積の疑診基準を確認する:A項目(腹痛ないし不機嫌/血便/腹部腫瘤ないし膨隆)が2つ、A1つ+B1つ、ないしB3つ以上。腹痛ないし不機嫌が間欠的な場合はそれだけで疑診とする(三主徴を待たない)
  • 腸重積の非観血的整復の禁忌を確認する:ショック、腹膜刺激症状、腹部単純X線で遊離ガス(消化管穿孔疑い)
  • 胆汁性(緑〜黄色)嘔吐があれば、肥厚性幽門狭窄の精査より先に腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で除外する

手順

  1. 1

    腸重積を疑ったら超音波でtarget sign(短軸像)とpseudokidney sign(長軸像)の両方を確認する

  2. 2

    非観血的整復はバリウムを使わず、水溶性造影剤(6倍希釈アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン)または空気を用いる

  3. 3

    6倍希釈水溶性造影剤は100cm溶液柱前後から開始し120cm溶液柱まで、空気整復は80mmHgから開始し120mmHgまで上げる。6か月未満の乳児はさらに低い圧(水溶性造影剤80cm溶液柱、空気60mmHg)から開始する

  4. 4

    透視下整復は3分間加圧を3回(rule of threes)を基準とする

  5. 5

    初回整復が不成功でも、全身状態が良好で先進部が部分的に移動していれば時間をおいて再度非観血的整復(delayed repeat enema)を試みる

    開腹しても10〜14%は既に整復されている

  6. 6

    2回以上再発する症例・年長児では、整復時の超音波検査で病的先進部(Meckel憩室・ポリープ・悪性リンパ腫等)を積極的に検索する

  7. 7

    虫垂炎は径>6mmかつ非圧縮性(プローブ圧迫で虫垂径が変形しない)を中核所見として判定する

  8. 8

    虫垂炎超音波陰性でも臨床的疑いが強ければ、補液後の再検査など経過観察・再評価を行う

  9. 9

    肥厚性幽門狭窄は幽門筋層厚3〜4mm以上・幽門管長14〜17mm以上を基準に判定する。判定に迷う場合は複数断面での再測定・時間をおいた再検査を検討する

  10. 10

    肥厚性幽門狭窄では、手術の前にまず輸液で脱水を補正し、電解質(Cl・K)を正常化してから幽門筋切開術を行う

やってはいけない

  • 腸重積の非観血的整復にバリウムを使わない(穿孔時にバリウム性腹膜炎を起こすと重篤化・洗浄しても除去困難)
  • 血便がないことで腸重積を否定しない(血便は遅い所見で、発症12時間以内の自然排便での血便はまれ)
  • 三主徴(腹痛・嘔吐・血便)が揃わないことで腸重積を否定しない(初診時に揃うのは10〜50%程度)
  • Dance徴候の陰性だけで腸重積を否定しない(出現頻度は10%程度と低く、陰性でも否定的所見にならない)
  • 整復不成功=即手術としない(全身状態良好で先進部が部分的に移動していればdelayed repeat enemaを検討する余地がある)
  • 整復圧の単位を安易に変換しない:媒体は水ではなく希釈造影剤であり比重が異なるため、cm表示(水柱高)で運用する施設はmmHg換算値を目標圧として流用せず、原典のcm数値をそのまま使う
  • 生後2週未満の嘔吐は、先天性消化管閉鎖・牛乳蛋白アレルギー等の除外前に「幽門狭窄ありき」でエコーだけに頼らない
  • 触診所見(オリーブ様腫瘤・Dance徴候)が陰性というだけで疾患を除外しない
  • 胆汁性嘔吐を見たら、幽門狭窄のエコー精査を先に行わない
  • 肥厚性幽門狭窄の電解質未補正のまま急いで手術に進めない(麻酔・周術期リスクが上がる)
  • 典型的な感冒性胃腸炎で腹部所見が軽微・経過が矛盾しない場合に、明確な臨床適応がない反復エコーをしない

終わったあと

  • 腸重積の家族説明:整復後、10人に1人くらいの割合で繰り返すことがあると伝える
  • 帰宅時の説明(safety-netting):ぐったりして反応が悪い、嘔吐に緑〜黄色の色がつく、血の混じった便が増える、お腹をひどく痛がる、顔色が悪い、のいずれかがあればすぐに受診するよう伝える
  • 整復後、全身状態良好・アクセス良好なら入院せず外来で一定時間観察後の帰宅も可。抗菌薬のルーチン投与は不要
  • 虫垂炎で今回の検査だけではっきりしない場合、数時間おいてもう一度エコーで確認することがあると伝える

この場で持てない・送る

  • 緑色や黄色っぽい吐き物が出たら要受診
  • 血の混じった便(イチゴジャムのような便)が出たら要受診
  • 手術適応:ショックが改善しない、腸管壊死・穿孔、腹膜炎、非観血的整復で整復できない、病的先進部がある
  • 要確認:夜間・休日の小児腹部エコー担当体制(放射線技師オンコール・当直医対応可否)
  • 要確認:腸重積の非観血的整復の実施体制(放射線科でのX線透視整復か超音波下整復か)と使用造影剤(水溶性造影剤の採用状況)
  • 要確認:虫垂炎疑い時の小児外科・外科コンサルトのタイミングと院内フロー
  • 要確認:肥厚性幽門狭窄疑い時の紹介先(小児外科)と輸液・電解質補正プロトコルの標準化状況

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

詳細リファレンス8章(正本より)

出所: 正本「腹部エコー_急性腹症_2026-07-30.md」(起草→敵対的検証→一次資料照合→独立再検証済み)。同期日: 2026-08-14。
用量・基準は「考え方」の記載であり、適用前に一次資料と院内採用・添付文書を確認すること。「医師確認事項」に残る論点は未確定。

  • 区分: 外来編/画像
  • 記録日: 2026-07-30
  • 状態: 下書き(要・本人確認)
  • 対象: 小児外来(愛育病院)

⚠ 本ファイルはAIが最新の文献・ガイドラインをWeb検索して起草した下書き。最終的な臨床判断は医師(岡本)が確認して確定する。用量は体重換算の「考え方」のみ・個別患者値や患者情報は書かない。本ファイルは超音波診断が主題であり、薬剤の体重換算用量そのものは対象外(記載していない)。

0. 要点(4行)
  • 腸重積は「間欠的な不機嫌・啼泣」が最初のサイン。イチゴゼリー状血便は遅発所見で、ないことは否定にならない。超音波はtarget sign/pseudokidney signで感度・特異度ともに100%近く、疑ったら躊躇せず施行する[1][5]。
  • 虫垂炎は径>6mmかつ非圧縮性が中核所見(糞石・血流増加・周囲脂肪織の変化は支持所見)。超音波陰性でも臨床的疑いが強ければ「否定」とせず経過観察・再評価する[2][3][4]。
  • 肥厚性幽門狭窄は筋層厚おおむね3〜4mm以上・幽門管長14〜17mm以上、生後2〜8週(ピーク3〜6週)の非胆汁性・射乳様嘔吐と低Cl性代謝性アルカローシスが典型。手術は緊急ではなく、まず輸液・電解質補正を優先する[6][7]。
  • レッドフラグ:乳児の嘔吐が緑〜黄色の胆汁性であれば、幽門狭窄など非胆汁性嘔吐を前提とした鑑別より先に腸回転異常症・中腸軸捻転(malrotation/volvulus)を最優先で除外する。中腸軸捻転は発症から数時間単位で腸管壊死に至りうる真の外科的緊急症であり、「乳児の嘔吐=まず幽門狭窄エコー」と短絡しない[8]。
1. いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)
  • 使う(適応):
  • 間欠的腹痛・不機嫌、嘔吐、血便のいずれかがあり腸重積を疑う乳幼児(三主徴が揃うのを待たない)
  • 右下腹部痛・圧痛・腹膜刺激症状があり虫垂炎を疑う小児(年長児だけでなく年少児でも疑えば施行)
  • 生後2〜8週前後で非胆汁性・進行性の嘔吐(射乳様)があり肥厚性幽門狭窄を疑う乳児
  • 使わない・過剰になりがち:
  • 典型的な感冒性胃腸炎で腹部所見が軽微・経過が矛盾しない場合の反復エコー(明確な臨床適応がないルーチン再検)
  • 生後2週未満の嘔吐で、先天性消化管閉鎖・牛乳蛋白アレルギー等の除外前に「幽門狭窄ありき」でエコーだけに頼る
  • 触診所見(オリーブ様腫瘤・Dance徴候)が陰性というだけで疾患を除外する(いずれも出現頻度が低く、陰性=否定にならない)[1]
2. 実際(読み方・基準値・手技・スケジュール等)

2-1 腸重積症

診断基準(試案・日本小児救急医学会ガイドライン)[1]

項目内容
A項目腹痛ないし不機嫌/血便(浣腸を含む)/腹部腫瘤ないし膨隆
B項目嘔吐/顔面蒼白/ぐったりして不活発/ショック状態/腹部単純X線写真で腸管ガス分布の異常
C項目注腸造影・超音波・CT・MRI等の画像検査で特徴的所見
疑診A2つ、A1つ+B1つ、ないしB3つ以上で疑診。腹痛ないし不機嫌が間欠的な場合はそれだけで疑診(三主徴を待たない)
確診疑診に加え、さらにCを確認したもの
  • 病型: 回結腸型が90%以上を占め最多。小腸小腸型(target signが2〜3cmと小さい)は自然整復しうる(benign SBI)が、重積長が3.5cm以上あると手術に至る可能性が有意に高い[1]。
  • 年齢・性差: 1歳未満の乳児が国内報告で約58%(48.8〜68.5%)を占める。3か月未満・6歳以上は少ないが、ゼロではない。男女比は約2:1で男児に多い[1]。
  • 非典型年齢・再発例と病的先進部: 病的先進部(pathological lead point:Meckel憩室・良性ポリープ・悪性リンパ腫・腸重複症・血管性紫斑病等)の頻度は年齢とともに上昇し、1歳以下では約5%だが5歳以上の年長児では約60%に達する。学童期以降は悪性リンパ腫の関与も無視できない(腸重積として発症する悪性リンパ腫は平均年齢10歳前後との報告あり)。2回以上再発する症例・年長児では、非観血的整復時の超音波検査で病的先進部を積極的に検索し、疑わしければ小児外科へ紹介する(推奨度C1)[1]。
  • 超音波所見: 短軸像でtarget sign(同心円状)、長軸像でpseudokidney sign(腎様形態)。両方を確認することが推奨される。感度・特異度とも100%近い報告が多い(複数施設の集計で感度96〜100%、特異度88〜100%)[1][5]。
  • 整復(非観血的整復):
  • 媒体はバリウムは推奨しない(穿孔時にバリウム性腹膜炎を起こすと重篤化・洗浄しても除去困難)[1](推奨度D)。水溶性造影剤(6倍希釈アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン)または空気が第一選択(推奨度は明示されないが実質標準治療)。
  • 整復圧の目安(原典CQ38の数値をそのまま引用。媒体は水ではなく希釈造影剤であり、比重が水と異なるため「1mmHg≈1.36cmH2O」という水の物理変換をそのまま適用しないこと):6倍希釈水溶性造影剤(アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン等)は100cm溶液柱前後から開始し120cm溶液柱(原典記載で94mmHgに相当)まで。空気整復はマノメーターでmmHgを直接計測し、80mmHgから開始し120mmHgまで。6か月未満の乳児は穿孔リスクが高いため、さらに低い圧(水溶性造影剤80cm溶液柱、空気60mmHg)から開始し慎重に上げる(推奨度B)[1]。cm表示(水柱高)で運用する施設は、mmHg換算値を目標圧として流用せず原典のcm数値をそのまま使うこと。
  • 整復時間・回数:透視下では3分間加圧を3回が基準(rule of threes)。超音波下では被曝の制約がないため回数・時間の制限は少ない(推奨度A)[1]。
  • 禁忌:ショック、腹膜刺激症状、腹部単純X線で遊離ガス(消化管穿孔疑い)[1]。
  • delayed repeat enema(DRE):初回整復が不成功でも、全身状態が良好で先進部が部分的に移動していれば時間をおいて再度非観血的整復を試みる(推奨度B)。開腹しても10〜14%は既に整復されている、との報告もあり、安易に手術に進まず検討する価値がある[1]。
  • 整復後管理: 全身状態良好・アクセス良好なら入院せず外来で一定時間観察後の帰宅も可(推奨度C1)。抗菌薬のルーチン投与は不要(推奨度C2)。整復不十分・再発疑いには超音波で確認(推奨度B)[1]。
  • 再発率: 整復後全体で約10%(国内集計10.3%、海外集計9.7%)。観血的整復後は4%以下と低い[1]。
  • 手術適応: ショックが改善しない、腸管壊死・穿孔、腹膜炎、非観血的整復で整復できない、病的先進部がある(推奨度A)[1]。付加手術(回腸上行結腸固定・虫垂切除等)に再発予防効果を示す根拠はない(推奨度C2)[1]。

2-2 急性虫垂炎

  • 超音波診断基準[2][3][4]:
  • 短軸径>6mmを腫大と判定
  • 非圧縮性:プローブ圧迫で虫垂径が変形しない(graded compression)
  • 糞石の描出
  • 周囲脂肪織のエコー輝度上昇(炎症性変化)
  • パワードプラで血流シグナル増加(目安:虫垂全体の1/2を超える領域に血流信号)
  • 限局性膿瘍があればそれ自体で虫垂炎(穿孔後)と判断できる
  • 重症度の目安(参考:単施設報告の分類例、GL標準ではない)[4]:

Grade I(層構造明瞭・血流なし)→ Grade IIa(層構造不整・血流増加)→ Grade IIb(層構造不整・血流なし)→ Grade III(層構造消失・血流なし)→ 腫瘤形成性(周囲脂肪織に炎症波及・膿瘍形成)

  • スコアリング: Alvarado score・Pediatric Appendicitis Score(PAS)は症状評価の補助にはなるが、単独で虫垂炎の確定診断に用いるには正診率が不十分とされる[3]。
  • CTの位置づけ: 第一選択は超音波。技術的に困難(肥満・年少児で感度低下)、穿孔・膿瘍の範囲同定が必要な場合など限定的にCTを考慮する(被曝を考慮し造影のみとする施設もある)[2][3][4]。
  • 超音波陰性時: 正常虫垂の描出は容易ではなく、判断に迷う場合は補液後に再検査するなど、臨床的疑いが強ければ「陰性=否定」とせず経過観察・再評価する[4]。

2-3 肥厚性幽門狭窄症

  • 超音波診断基準(文献によりカットオフに幅があるため範囲で記載)[6][7]:
  • 幽門筋層厚:3〜4mm以上(正常は3mm未満とする文献が多い)
  • 幽門管長:14〜17mm以上(代表的には16mm以上とする教科書的基準)
  • 判定に迷う場合は複数断面での再測定・時間をおいた再検査を検討する
  • 好発年齢・性差: 生後2〜8週(ピークは3〜6週)、12週以降は稀。男児に多い(女児の数倍とされる)[6][7]。
  • 症状: 初期は溢乳程度だが進行すると非胆汁性の射乳様(噴水状)嘔吐となる。哺乳意欲は保たれ、嘔吐後すぐに欲しがることが多い[6][7]。
  • ⚠レッドフラグ(胆汁性嘔吐): 肥厚性幽門狭窄の嘔吐は定義上必ず非胆汁性(白色〜乳汁様)である。緑〜黄色の胆汁性嘔吐を認めた場合は本症を否定し、腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で除外する。中腸軸捻転は発症から数時間単位で腸管壊死・短腸症候群に至りうる外科的緊急症であり、上部消化管造影等による緊急評価と小児外科への即時相談を優先する(幽門狭窄のエコー精査を先に行わない)[8]。
  • 電解質異常の機序: 胃酸(HCl)の反復嘔吐による喪失で低クロール性・低カリウム性代謝性アルカローシスをきたす。循環血液量減少が進むと二次性アルドステロン症を介して腎での水素イオン・カリウム排泄が亢進し、アルカローシスが奇異性酸性尿を伴って増悪する[6]。
  • 治療方針: 手術は緊急ではない。まず輸液で脱水を補正し、電解質(特にClとK)を正常化することを優先する。電解質が是正されてから幽門筋切開術を行う(麻酔導入前の未補正アルカローシスは合併症リスクになる)[6][7]。
3. 鑑別・拾える疾患/注意すべき病態
  • 腸重積: 急性胃腸炎(血便を伴う場合の鑑別)、IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病)の腹部型、便秘、精巣捻転(放散痛)、年長児では急性虫垂炎や他の急性腹症との鑑別が必要(腸重積の頻度は年長児で低いが起こりうる)[1]。
  • 虫垂炎: 腸間膜リンパ節炎、右卵巣捻転・卵巣嚢腫、Meckel憩室炎、便秘、尿路感染症・腎盂腎炎、髄膜炎・敗血症(全身状態不良の乳幼児で)。
  • 肥厚性幽門狭窄: 胆汁性嘔吐であれば本鑑別より先に腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で除外する(レッドフラグ、4章参照)[8]。そのうえで、胃食道逆流症、牛乳蛋白アレルギー、先天性消化管閉鎖(生直後発症で鑑別)、副腎皮質過形成の塩喪失型(21水酸化酵素欠損:低Na・高K・アシドーシスで幽門狭窄の低Cl・低K・アルカローシスと対照的)、頭蓋内圧亢進による嘔吐。
4. 忘れがちポイント・落とし穴 ★
  • ⚠胆汁性嘔吐=レッドフラグ(最優先で腸回転異常症・中腸軸捻転を除外):非胆汁性・射乳様嘔吐は肥厚性幽門狭窄の典型像である一方、緑〜黄色の胆汁性嘔吐は腸回転異常症・中腸軸捻転を疑うべき所見。中腸軸捻転は発症から数時間単位で腸管壊死・短腸症候群に至りうる真の外科的緊急症であり、「乳児の嘔吐=まず幽門狭窄エコー」と短絡しない。胆汁性嘔吐を見たら幽門狭窄の精査より先に、上部消化管造影等による腸回転異常症の除外・小児外科への緊急相談を優先する[8]。
  • 腸重積:非典型年齢・再発例は病的先進部を疑う。病的先進部の頻度は1歳以下では約5%だが、5歳以上の年長児では約60%まで上昇する。2回以上再発する症例・年長児では、整復時の超音波検査でMeckel憩室・ポリープ・悪性リンパ腫等の病的先進部を積極的に検索する(推奨度C1)[1]。
  • 腸重積:血便は遅い所見。発症12時間以内に自然排便で血便を認めることはまれ(初発症状としては10%程度)。血便がないことで腸重積を否定してはいけない[1]。
  • 腸重積:三主徴(腹痛・嘔吐・血便)が揃うのは初診時で10〜50%程度。むしろ「間欠的な不機嫌・啼泣」だけでガイドラインの疑診基準を満たす(A項目単独)。「何となくぐったりして元気がない」「泣き方がいつもと違う」という保護者の訴えを軽視しない[1]。
  • 腸重積:Dance徴候(右下腹部の腫瘤蝕知空虚)の出現頻度は10%程度と低く、陰性でも否定的所見にならない。腹部腫瘤の触知率は愛護的な触診で約85%まで上がる[1]。
  • 腸重積:非観血的整復にバリウムは使わない(穿孔時の重篤化リスク)。水溶性造影剤か空気を選択し、特に6か月未満の乳児は穿孔リスクが高いため低圧から開始する[1]。
  • 腸重積:整復不成功=即手術ではない。全身状態が良好で先進部が部分的に移動していればdelayed repeat enema(DRE)を検討する余地がある(推奨度B)[1]。
  • 虫垂炎:超音波陰性でも臨床疑いが強ければ経過観察・再評価。年少児・肥満児では感度が下がる。正常虫垂の確実な描出には習熟が要る[3][4]。
  • 虫垂炎:圧痛の場所だけでなく「非圧縮性」を確認する。プローブ圧迫で虫垂径が変わらないことが径>6mmと並ぶ中核所見[2][3][4]。
  • 肥厚性幽門狭窄:手術は緊急でない。まず電解質(Cl・K)補正が最優先。未補正のまま急いで手術に進めると麻酔・周術期リスクが上がる[6][7]。
  • 肥厚性幽門狭窄:触診によるオリーブ様腫瘤は経験によって触知率が大きく変動する。触知できなくても超音波基準を優先して判断する[6][7]。
5. 患者・保護者への説明(要点)
  • 腸重積: 「腸の一部が、隣の腸の中にもぐりこんでしまう状態です。多くはお尻から水や空気を入れて元に戻す処置(整復)で治ります。一度でうまくいかなくても、時間をおいてもう一度試すことがあり、その場合でも緊急手術が必要になることはまれです。整復後、10人に1人くらいの割合で繰り返すことがあります。」
  • 虫垂炎: 「盲腸の先についている『虫垂』という小さな部分が炎症を起こす病気です。エコーで炎症の程度を確認します。今回の検査だけではっきりしないこともあり、その場合は数時間おいてもう一度エコーで確認することがあります。」
  • 肥厚性幽門狭窄: 「胃の出口の筋肉が厚くなって、母乳やミルクの通り道が狭くなる病気です。まず点滴で体の中の水分と塩分のバランスを整えてから、短い手術で通り道を広げます。手術を急ぐ病気ではなく、体の状態を万全にしてから行います。」
  • 共通・帰宅時の説明(safety-netting): 「ご自宅に戻られた後、次のような様子が見られたらすぐに受診してください:ぐったりして反応が悪い、嘔吐に緑〜黄色の色がつく、血の混じった便が増える、お腹をひどく痛がる、顔色が悪い。」(腸重積の整復後再発〈10人に1人程度〉・虫垂炎の再評価待ちのケースで特に強調する)
6. 院内ローカルルール(愛育・要確認)
  • 確定(2026-09-14):夜間・休日に小児腹部エコーを当てられる体制は無い。当直帯は「撮れない」前提でシート全体が書かれている
  • 確定(2026-09-14・当直帯):当院で非観血的整復は行わない(確診の手段が無く、不成功時に開腹できない)。日勤帯に行う方針を採るかは要確認で、採るなら実施体制と造影剤の採用を決める
  • 要確認:虫垂炎疑い時の小児外科・外科コンサルトのタイミングと院内フロー。小児外科は決まった連携先に直接電話する運用(施設名・番号は保留中)
  • 要確認:肥厚性幽門狭窄疑い時の紹介先(小児外科)と輸液・電解質補正プロトコルの標準化状況
7. 出典(日本のGL優先・URL+版年)
  • [1] 日本小児救急医学会ガイドライン作成委員会(編).エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン.へるす出版,2011(2012年10月版PDF).https://www.convention-axcess.com/jsep/information/docs/guideline/20121017_Guideline.pdf (2026-07-30閲覧)。本文中の整復圧(CQ38・推奨度B)、病的先進部(CQ5・CQ46・推奨度C1)、小腸小腸型のカットオフ3.5cmは、いずれも本PDF原文(初版)から直接確認済み。改訂第2版(2022年7月発行、へるす出版、ISBN 978-4-86719-046-3)が存在する(Amazon等で書籍のみ流通・無料PDF未確認)。運用前に改訂第2版で数値・推奨度の変更有無を照合すること。
  • [2] 日本小児救急医学会.エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅱ部 小児急性虫垂炎診療ガイドライン(2017年6月23日発行、初版;2022年改訂版あり).Mindsガイドラインライブラリ.https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00575/ (2026-07-30閲覧・2026-07-31再確認:本ページ掲載本文は2017年6月23日発行の初版のみで、2022年改訂版の記載・リンクはページ内になし。改訂版CQ本文の直接確認は今回も未達=引き続き要確認)
  • [3] つだ小児科クリニック.小児急性虫垂炎診療ガイドライン2022のCQ(要点まとめ).https://tsudashonika.com/disease-cat/acute-pediatric-appendicitis-guideline/ (2026-07-30閲覧・2026-07-31にWebFetchで再確認:ページタイトルが「小児急性虫垂炎診療ガイドライン2022のCQ」であり2022年改訂版に基づくと明記。CQ4〈超音波・CT〉の要旨〈超音波第一選択、技術的困難・肥満・年少児・穿孔疑い時に限定的にCT〉は本文2-2章の記載と一致。ただし径>6mm等の具体的数値はこのページに記載がなく、2022年版原文での数値再確認はできていない)
  • [4] 小児急性虫垂炎における画像診断の有用性.日本小児放射線学会雑誌 35(2):72-,2019.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspr/35/2/35_72/_html/-char/ja (2026-07-30閲覧)
  • [5] 腸重積症の診断と治療.日本小児放射線学会雑誌 38(2):92-,2022.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspr/38/2/38_92/_html/-char/ja (2026-07-30閲覧)
  • [6] MSDマニュアル プロフェッショナル版(日本語).肥厚性幽門狭窄症.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/新生児および乳児における消化管疾患/肥厚性幽門狭窄症 (2026-07-30閲覧・2026-07-31に版年をWebFetchで直接確認:ページ内表記「最終更新日:2023年9月」「完全なレビュー:2023年9月」)
  • [7] 獨協医科大学埼玉医療センター小児外科.肥厚性幽門狭窄症.https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-k/ped_surg/hps.html (2026-07-30閲覧)
  • [8] 獨協医科大学埼玉医療センター小児外科.腸回転異常症.https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-k/ped_surg/malrot.html (2026-07-30閲覧):新生児期に胆汁を含んだ嘔吐で発症し、中腸軸捻転を起こすと血便・広範囲の腸管壊死に至りうると明記。国際的にも「新生児・乳児の胆汁性嘔吐は腸回転異常症・中腸軸捻転を除外するまで外科的緊急症として扱う」がAAFP等で標準的な扱い(例:Applegate KE. Bilious vomiting in the newborn. Am Fam Physician. 2000;61(9):2791-2798.https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2000/0501/p2791.html は年代が古いため参考情報に留め、運用前に国内小児外科の最新解説で再確認すること)。

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