急性中毒・誤飲(薬・洗剤・たばこ・石油製品)

急性中毒・誤飲(薬・洗剤・たばこ・石油製品)

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-10更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし。解毒薬・血液浄化が要るものは持てない。

30秒要約

  • 吐かせない。日本中毒情報センターは「家庭で吐かせることは勧められていません。吐物が気管に入ってしまうことがあり危険です」としている。
  • 水・牛乳は「飲ませてよいもの」と「絶対にいけないもの」が分かれる。ここを取り違えると悪化させる。石油製品・たばこ・防虫剤には飲ませない(防虫剤に牛乳は厳禁)。
  • 当直が使う中毒110番は医療機関専用の有料回線(365日24時間・1件につき2,000円)。一般市民用は無料。院内の支払い手順が決まっていないと、夜中に使えない
  • 残っている量から飲んだ量を推定する。製品そのものを持ってきてもらう。
  • 原因不明の意識変容・けいれん・不整脈では、鑑別に中毒を置く。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119意識障害・けいれん・不整脈・呼吸抑制ABCを先に。並行して原因物質を特定。中毒110番(医療機関用)へ待たない
緊急石油製品(灯油・除光液・液体殺虫剤)の誤飲後に咳・呼吸症状誤嚥性肺炎。吐かせない・飲ませない数時間で顕在化
緊急酸性・アルカリ性製品(漂白剤・トイレ洗浄剤)の摂取腐食。吐かせない(再度粘膜を通る)。水か牛乳は飲ませてよい数時間
緊急防虫剤(樟脳など)・なめくじ駆除剤吐かせない。牛乳は厳禁(吸収を促す)数時間
緊急摂取量が不明で、製品が強い毒性を持つ中毒110番(医療機関用)に相談して方針を決める物質による
当日少量・無症状で、毒性の低い物質観察と再受診条件の説明。物質名を記録に残す

吐かせる/飲ませる の分岐(日本中毒情報センター)

吐かせることは原則しない。 家庭でも医療機関到着前でも同じ。

物質水・牛乳
「酸性」「アルカリ性」と表記された製品(漂白剤・トイレ洗浄剤)飲ませる
界面活性剤を含む製品(洗剤・シャンプー)飲ませる
乾燥剤飲ませる
石油製品(灯油・マニキュア・除光液・液体殺虫剤)飲ませない
たばこ飲ませない
防虫剤(樟脳など)飲ませない。牛乳は厳禁

飲ませる場合も「飲ませる量が多いと吐いてしまうので、無理なく飲める量に」。

絶対に吐かせてはいけないもの: 石油製品(灯油、マニキュア、除光液、液体殺虫剤)/「酸性」「アルカリ性」表記の製品(漂白剤、トイレ洗浄剤)/防虫剤(樟脳など)・なめくじ駆除剤。

中毒110番の使い方(枠組み)

窓口料金受付
一般専用情報提供料 無料365日24時間
医療機関専用1件につき2,000円365日24時間

当直医が使うのは医療機関専用の有料回線。電話番号は院内の掲示・公式サイトで確認する(本シートには記載しない)。センターの対象は「家庭内の誤飲・誤食等の身近な事故から意図的な過量服薬、工場等の集団災害や化学物質によるテロ等の危機管理まで」。

問診チェック

所見の取り方

  • バイタルと意識レベルを最初に取る。中毒は経過で変わるので、時刻とセットで記録する。
  • 瞳孔、皮膚(発汗・乾燥)、粘膜(腐食性の摂取なら口腔内を見る)、におい。
  • 口腔・咽頭のびらん・発赤(酸・アルカリ)。ただし口腔内に所見がなくても食道の損傷を否定できない。
  • 心電図(不整脈をきたす物質がある)。

初期プラン(コア)

  1. ABCを先に。意識障害・けいれん・不整脈があれば中毒の特定より蘇生が先。
  2. 物質の特定。製品を見る。残量から摂取量を推定する。
  3. 吐かせない。水・牛乳は上の表で分岐する。
  4. 医療機関専用の中毒110番に相談して方針を決める。活性炭・胃洗浄・解毒薬の適応は物質と経過時間で変わる。
  5. 無症状でも、物質によっては遅れて悪化する。観察時間は物質ごとに決める(相談して決める)。

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)

状態当院の扱い
意識障害・けいれん・不整脈・呼吸抑制初期対応は当院。集中治療が要る場合は持てない
血液浄化(血液透析・血液吸着)が要る中毒持てない
特殊な解毒薬・拮抗薬が要る中毒院内に無い可能性が高い。要確認
腐食性物質の摂取で食道損傷が疑われる緊急内視鏡は持てない消化管異物と同じ受け入れ先)
少量・無症状・毒性の低い物質当院で観察しうる。再受診条件を具体的に渡す

送ると決めた時点でやること

  1. 物質名・摂取量の推定・摂取時刻をセットで伝える
  2. 製品そのもの(容器・説明書)を家族に持って行ってもらう
  3. すでに実施した処置(何も飲ませていない/水を飲ませた 等)を正確に伝える

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:中毒110番(医療機関専用・有料)の院内での使い方。誰が電話し、1件2,000円の費用処理をどうするか。決まっていないと夜間に使えない
  • 要確認:院内に常備している解毒薬・拮抗薬の一覧
  • 要確認:活性炭の院内採用と、投与を当院で行うかの方針
  • 要確認:血液浄化が要る場合の受け入れ先
  • 要確認:意図的な過量服薬(年長児)の場合の精神科的対応と院内手順

家族に渡す一文

「飲んだものによって、やってよい対応がまったく違います。吐かせないでください。飲ませてよい飲みものと、飲ませると悪化するものがあるので、自己判断で何かを飲ませないでください。飲んだものと同じ製品、容器、説明書を持ってきてください。残っている量から、どれだけ飲んだかを推定します。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:中毒110番(医療機関専用)の費用処理の院内手順。このシートで最も運用が詰まりやすい点
  • 要確認:院内の解毒薬・拮抗薬・活性炭の採用状況。
  • 要確認:本シートは日本中毒情報センターの一般向けページに基づく。医療従事者向けの詳細(活性炭・胃洗浄の適応、物質別の観察時間、少量でも危険な物質群)は、有料の医療従事者向け情報が中心で、本シートでは確認できていない。院内で使う前に、この部分を埋める必要がある。
  • 要確認:たばこ誤飲の具体的な危険量・観察時間は、今回参照した一般向けページでは確認できなかった(加熱式たばこのページには「葉の部分を1本以上食べた可能性がある場合や浸出液を飲んだ場合、金属片を飲み込んだ可能性がある場合」の受診勧奨の記載があるのみ)。

出典

  • 公益財団法人 日本中毒情報センター.中毒事故が起こったら(家庭でできること、やってはいけないこと).https://www.j-poison-ic.jp/general-public/response-to-a-poisoning-accident/at-home/ (2026-09-10閲覧)。家庭で吐かせることは勧められないこと、吐かせてはいけない物質(石油製品・酸性/アルカリ性製品・防虫剤・なめくじ駆除剤)、水や牛乳を飲ませる物質と飲ませない物質(石油製品・たばこ・防虫剤。牛乳は厳禁)、無理なく飲める量に留めること、残量から摂取量を推定すること。
  • 公益財団法人 日本中毒情報センター.トップページ.https://www.j-poison-ic.jp/ (2026-09-10閲覧)。一般専用電話(365日24時間・情報提供料無料)と医療機関専用有料電話(365日24時間・1件につき2,000円)の区分、活動領域。
  • 公益財団法人 日本中毒情報センター.家庭内で起こる中毒事故.https://www.j-poison-ic.jp/general-public/accidents/ (2026-09-10閲覧)。原因物質の分類(加熱式たばこ、ボタン電池、容器に移し替えられた物質〈灯油など〉、防水スプレー、カビ取り剤、漂白剤、ポット洗浄剤)。
  • 日本小児科学会.子どもが誤飲した時の応急処置.https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/sho_jiko_g_g.pdf (2026-09-10閲覧)。物質ごとの危険度分類と「なにも飲ませない」の区分。

手技

手技

誤飲・中毒は吐かせず、物質で飲ませる・飲ませないを分ける

吐かせない。日本中毒情報センターは「家庭で吐かせることは勧められていません。吐物が気管に入ってしまうことがあり危険です」としている。水・牛乳は「飲ませてよいもの」と「絶対にいけないもの」が物質で分かれる。残っている量から飲んだ量を推定する。

始める前に

  • 何を(製品名・成分)飲んだかを問診し、同じ製品を持参してもらう
  • いつ飲んだか(時刻)を確認する
  • どれだけ飲んだかを、残っている量から推定する
  • すでに嘔吐したか(吐いたか)を確認する
  • 誰が目撃したか。目撃がない場合、いつまで正常だったかを確認する
  • 家庭内の他の子どもの同時摂取の可能性を確認する
  • 年長児では意図的な過量服薬の可能性を確認する
  • バイタルと意識レベルを最初に取り、時刻とセットで記録する
  • 瞳孔、皮膚(発汗・乾燥)、粘膜(腐食性の摂取なら口腔内)、においを見る
  • 口腔・咽頭のびらん・発赤を確認する(酸・アルカリ)。ただし口腔内に所見がなくても食道の損傷を否定できない
  • 心電図をとる(不整脈をきたす物質がある)

手順

  1. 1

    ABCを先に。意識障害・けいれん・不整脈があれば中毒の特定より蘇生が先

  2. 2

    物質を特定する。製品を見て、残量から摂取量を推定する

  3. 3

    吐かせない

    吐物が気管に入ってしまうことがあり危険

  4. 4

    「酸性」「アルカリ性」表記の製品(漂白剤・トイレ洗浄剤)、界面活性剤を含む製品(洗剤・シャンプー)、乾燥剤は水・牛乳を飲ませる。ただし多いと吐くので無理なく飲める量にする

  5. 5

    医療機関専用の中毒110番に相談して方針を決める

    活性炭・胃洗浄・解毒薬の適応は物質と経過時間で変わる

  6. 6

    無症状でも物質によっては遅れて悪化するため、観察時間は物質ごとに(相談して)決める

やってはいけない

  • 吐かせない(家庭でも医療機関到着前でも同じ)
  • 石油製品(灯油・マニキュア・除光液・液体殺虫剤)は飲ませない
  • たばこは飲ませない
  • 防虫剤(樟脳など)は飲ませない。牛乳は厳禁(吸収を促す)
  • なめくじ駆除剤は吐かせない・飲ませない
  • 酸性・アルカリ性製品(漂白剤・トイレ洗浄剤)の摂取では吐かせない(再度粘膜を通るため)

終わったあと

  • 少量・無症状・毒性の低い物質は当院で観察しうる。再受診条件を具体的に渡す
  • 物質名を記録に残す

この場で持てない・送る

  • 意識障害・けいれん・不整脈・呼吸抑制は初期対応を当院で行うが、集中治療が要る場合は持てない
  • 血液浄化(血液透析・血液吸着)が要る中毒は持てない
  • 特殊な解毒薬・拮抗薬が要る中毒は院内に無い可能性が高い(要確認)
  • 腐食性物質の摂取で食道損傷が疑われる場合、緊急内視鏡は持てない
  • 送ると決めたら、物質名・摂取量の推定・摂取時刻をセットで伝える
  • 製品そのもの(容器・説明書)を家族に持って行ってもらう
  • すでに実施した処置(何も飲ませていない/水を飲ませた 等)を正確に伝える
  • 要確認:中毒110番(医療機関専用・1件2,000円・365日24時間)の院内での使い方。誰が電話し、費用処理をどうするか。決まっていないと夜間に使えない
  • 要確認:院内に常備している解毒薬・拮抗薬の一覧
  • 要確認:活性炭の院内採用と、投与を当院で行うかの方針
  • 要確認:血液浄化が要る場合の受け入れ先
  • 要確認:意図的な過量服薬(年長児)の場合の精神科的対応と院内手順
  • 要確認:本シートは日本中毒情報センターの一般向けページに基づく。医療従事者向けの詳細(活性炭・胃洗浄の適応、物質別の観察時間、少量でも危険な物質群)は本シートでは確認できていない。院内で使う前にこの部分を埋める必要がある
  • 要確認:たばこ誤飲の具体的な危険量・観察時間は、参照した一般向けページでは確認できていない

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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