虫刺され・かぶれにその場で対応する
虫刺されの皮膚症状は「痛み」と「かゆみ」の2系統。 かゆみには刺咬直後に出る即時型と1〜2日後に出る遅延型があり、年齢で出方が変わる。日本に生息する虫のほとんどに致死的な猛毒はないが、全身症状が出ればこのシートの範囲を超える。小児で実務上いちばん問題になる合併症はとびひとされる(頻度の統計は一次資料で確認できていない)。接触皮膚炎の治療の軸は原因の除去+ステロイド外用。
始める前に
- いつ・どこで刺された/触れたかを聞く(屋外か屋内か、新しい宿泊先・引っ越し先か)
- 虫を見たか、実物や写真が残っているかを確認する(対処法が虫の種類で変わる)
- 新しい石けん・化粧品・虫よけ・洗剤・植物(庭木の手入れ)との接触を聞く
- 掻破の程度と経過日数を確認する(とびひ合併のサイン:黄色い痂皮・急な拡大・発熱)
- 分布部位を確認する(膝から下=ノミ、首・腕=毛虫orトコジラミ、わき腹・下腹部・大腿内側=イエダニ、露出部=蚊)
手順
- 1
毛虫(ドクガ類)の毒針毛が付着していたら、すぐにセロハンテープなどの粘着テープで皮膚に付着した毒針毛を取り除き、よく泡立てたセッケンとシャワーで洗い流す
被害を最小限に留めるため
- 2
マダニが咬着していたら無理に引き抜かない(それ以上の具体的な除去手技は一次資料で確認できていない)
頭部が皮膚に残って炎症を起こすことがある
- 3
接触皮膚炎は原因となるアレルゲン・接触刺激因子を見つけ出し除去する
接触皮膚炎の治療で最も大切なこと
- 4
赤み・痒みが強ければ副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用薬を使う。軽症なら市販のかゆみ止め外用薬でもよい
- 5
症状が強い(内服が要る)場合は皮膚科専門医を受診するよう勧める
- 6
原因虫が不明なら実物を保管するか虫の写真を撮って記録するよう勧める
やってはいけない
- マダニを無理に引き抜く(頭部が皮膚に残って炎症を起こすことがある)
- 毛虫皮膚炎を掻かせる(掻くことで皮疹が次第に増数する)
- 皮膚所見と不釣り合いな強い痛み・急速な拡大・全身状態不良を単なる虫刺されとして経過観察する(蜂窩織炎・壊死性筋膜炎の可能性)
- セアカゴケグモ・ヒアリによる全身症状(筋肉痛・吐き気・下痢・頭痛・血圧上昇、アナフィラキシー症状)を軽視する
終わったあと
- 虫刺されの多くは1〜2週間以内に自然によくなることを伝える
- 爪を短く切り、なるべく掻かせないよう伝える(とびひ予防)
- 傷が急に広がる・黄色いかさぶたや汁が出る・熱が出た場合は再受診するよう伝える
- 息苦しさ・声のかすれ・ぐったりなど全身症状が出たらすぐ救急要請するよう伝える
- 庭木の手入れのあとに首や腕に強いかゆみのブツブツが出た場合は毛虫皮膚炎の可能性があると伝え、粘着テープで毒の毛を取り除き石けんでよく洗うよう伝える
- 塗り薬を使っても1〜2週間で改善しない・むしろ広がっている場合は皮膚科紹介とする
この場で持てない・送る
- 皮膚・粘膜症状+気道/呼吸・循環・重度消化器症状 → アナフィラキシー。動物咬傷/じんましんのプロトコルへ(即時)
- ハチに刺され、刺されて30分〜1時間で呼吸困難・腹痛・意識消失・血圧低下 → アナフィラキシーショック(即時)
- 皮膚所見と不釣り合いな強い痛み・急速に拡大する発赤・全身状態不良 → 蜂窩織炎・壊死性筋膜炎疑い(即時〜当日)
- 咬まれた/刺された後に激しい痛み+筋肉痛・吐き気・下痢・頭痛・血圧上昇 → セアカゴケグモ疑い(当日)
- 港湾・輸入コンテナ周辺で刺され、痛みやアナフィラキシー症状 → ヒアリ疑い(当日〜即時)
- 口・目・鼻のまわりが急に赤くなり皮がめくれる、黄色い痂皮・膿 → とびひ(当日)
- 塗り薬で1〜2週間改善しない・広がっている → 皮膚科紹介
- 要確認:セアカゴケグモ咬傷・ヒアリ刺咬の当院での対応方針(治療プロトコル・搬送基準は一次資料未確認)
- 要確認:毛虫皮膚炎で広範囲・眼瞼腫脹の場合の当院対応可否(皮膚科紹介の閾値)
- 要確認:外用ステロイドのランク表と院内採用、皮膚科の紹介先(夜間・休日)
- 要確認:とびひ・蜂窩織炎との判断が難しい症例の上級医コンサルト基準
- 要確認:本シートの虫刺され各論(蚊・ノミ・ブユ・トコジラミ・イエダニ・ハチ・毛虫)は日本皮膚科学会の一般向けQ&Aを一次資料としており、診療ガイドラインではない
- 要確認:接触皮膚炎診療ガイドライン2020の本文には「小児」「子ども」「乳児」「幼児」の語が一度も出てこず、小児特有の接触皮膚炎(おむつかぶれ・虫よけ・日焼け止め等)への言及はガイドライン本文にはない
- 要確認:マダニ咬着時の除去手技(当院でどう抜去するか、無理に引き抜かない以外の具体的な手順)は一次資料で確認していない
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。