化膿性関節炎・骨髄炎はその場で疑い、培養して送る
当直の仕事は「疑う・培養を採る・送る」。ドレナージも長期抗菌薬も当院では持てない。化膿性股関節炎は関節破壊が進む緊急疾患で、時間の勝負として扱う。
始める前に
- 小児の化膿性骨髄炎は、「歩きたがらない」、「腕をあげない」など、痛みによる可動域制限を主訴に来院することが多く、ときに発熱を伴う
- 関節炎と骨髄炎を分ける。骨髄炎は抗菌薬で治りうるが、化膿性関節炎は外科的ドレナージが要る。当院に関節ドレナージがないなら、関節炎を疑った時点で送る
- 股関節を軽度屈曲・外転・外旋位に保って動かさない場合は関節内に液体が溜まっているサイン。エコーで確認する
- 新生児・乳児で肢を動かさない(偽性麻痺)場合は所見が乏しいまま進むため、疑う閾値を下げる
- いつから、どの動きができないか(歩く・立つ・腕をあげる・おむつ替えで泣く)
- 発熱の有無と期間(熱がないこともある)
- 外傷歴(ないことがむしろ手がかり)
- 先行感染(咽頭炎・皮膚の傷・とびひ・水痘)
- 予防接種歴(Hib・肺炎球菌)
- 基礎疾患(免疫不全・鎌状赤血球・カテーテル留置)
- 夜間痛・体重減少・寝汗(悪性腫瘍を外す)
- 抗菌薬の使用歴(培養が出にくくなる)
手順
- 1
バイタルを確認する。敗血症徴候があれば小児敗血症の対応へ
- 2
全身の関節を見る。乳児は服を全部脱がせ、動かさない肢を探す
- 3
痛がる部位を、関節の他動運動 vs 骨の一点圧痛で特定する
この関節/骨で分ける整理は本シートの実務上の組み立てであり、引用元の記載そのものではない(要確認)
- 4
血液培養を採る
抗菌薬の前に
- 5
血算・CRP・赤沈・生化を調べる
- 6
X線を撮る
初期は陰性のことが多い
- 7
関節エコーで関節液貯留を見る
- 8
関節液の穿刺は、ドレナージができる施設で行うのが原則
- 9
抗菌薬を当院で始めるか、搬送先で始めるかを電話で決める
培養を採った後なら開始してよい
- 10
搬送する。関節炎を疑うなら急ぐ
やってはいけない
- 血液培養を採る前に抗菌薬を開始しない(培養を採った後なら開始してよい)
- 発熱+跛行が2日以上を単純性股関節炎として様子を見ない
- 熱がないから感染ではない、けがをしていないから感染ではない、とは言えない
- 新生児・乳児で肢を動かさない場合、所見が乏しいことを理由に様子を見ない(偽性麻痺は所見が乏しいまま進む)
終わったあと
- 単純性股関節炎として当院でフォローする場合は、再診の条件を必ず渡す
この場で持てない・送る
- 化膿性関節炎を疑う → 持てない。時間の勝負として搬送
- 化膿性股関節炎を疑う → 持てない。緊急
- 骨髄炎を疑う → 持てない(4〜6週の治療が要る)。血培を採って搬送
- 敗血症を伴う → 初期輸液・抗菌薬は当院で開始。持てない
- 単純性股関節炎として矛盾がない → 当院でフォロー可
- 化膿性か単純性か決められない → 決められないこと自体が搬送の理由。送る
- 要確認:小児の関節ドレナージができる紹介先(夜間・休日)
- 要確認:当院で関節エコーを当直帯に撮れるか、誰が撮るか
- 要確認:MRIを当日〜翌日に撮れるか
- 要確認:経験的抗菌薬(MRSAを考慮するか)。本シートは意図的に薬剤名と用量を書いていない
- 要確認:当院で関節穿刺を行うか
- 要確認:赤沈を当院で出せるか
- 要確認:単純性股関節炎を当院でフォローする場合の再診間隔
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。