心電図(失神・胸痛・動悸・学校心臓検診)

心電図(失神・胸痛・動悸・学校心臓検診)

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
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施設プロファイル: 二次救急/小児循環器なし・カテーテル治療なし

30秒要約

  • 当直で心電図を撮る理由は3つ。①突然死する不整脈を外す ②高カリウム血症を見つける ③「けいれんに見えた失神」を分ける
  • 小児の心電図は年齢で正常が変わる。大人の目で読むと右室優位・V1の高いR・右軸偏位を「異常」にしてしまう。逆に、大人なら見逃さないQT延長を見逃す
  • 突然死に直結する所見は決まっているQT延長(Fridericia補正QTcで小学1年0.43秒/中学1年0.44秒/高校1年 男0.44・女0.45秒を超える)、Brugada型、WPW型、3度房室ブロック、多形性/2連発以上/R on T の心室期外収縮、心室頻拍、明らかな心室肥大、左側胸部誘導の陰性T波
  • 家族歴を1問だけ聞く若年者の突然死の家族歴。これがあると、同じ心電図の意味が変わる。
  • 学校心臓検診の紙を持って来た子は、紙に書いてある所見名を読む。「すみやかに精密検診を考慮する心電図所見」に当たれば、当院で止めずに専門施設へ

当直で心電図を撮る場面

場面何を探すか
失神・前失神QT延長・Brugada型・WPW型・房室ブロック・心室肥大失神
「けいれん」だが誘因が立位・痛み・驚き同上。convulsive syncopeを外す初発の無熱性けいれん
運動中・水泳中の失神/溺水QT延長症候群(特にLQT1・LQT2)を強く疑う(溺水
胸痛(労作時・失神を伴う)心筋炎・肥大型心筋症・冠動脈異常
動悸(突然始まり突然終わる)上室頻拍。発作中の記録が取れれば決定的
川崎病心筋炎・虚血性変化(川崎病
高カリウム血症を疑うテント状T波→P波消失→QRS幅増大。急性腎障害・HUS・DKA(急性糸球体腎炎細菌性腸炎とHUS糖尿病性ケトアシドーシス
中毒(三環系・抗不整脈薬・抗ヒスタミン薬など)QRS幅・QT延長急性中毒
低体温・重症脱水・電解質異常不整脈・ST変化
学校心臓検診で引っかかった紙の所見名を読む(下の表)

すみやかに精密検診を考慮する心電図所見(そのまま使う)

この表に当たったら、当院で止めない。

所見条件
QSパターン胸壁上右隣の誘導に初期RがあるときのQSパターンI、II、V6(IIIおよびaVF)のいずれかにみられる場合V1〜V4のいずれにもみられる場合
明らかな右室肥大所見点数制による右室肥大判定基準で5点以上
明らかな左室肥大所見点数制による心室肥大判定基準で5点以上
高度ST低下ST-J降下≧0.2 mVでT波が陰性または2相性で陰性部分≧0.5 mVがみられる(I、II、aVL、aVF、V1〜V6のいずれか、T波はV3〜V6)
左側胸部誘導の陰性T波V3〜V6誘導(小学生ではV4〜V6誘導)にみられる場合
2度房室ブロックMobitz II型/2:1ブロック
3度房室ブロック高度房室ブロックを含む
完全左脚ブロック該当する心電図所見
多形性心室期外収縮心室期外収縮の波形が多形性を示す場合
2連発以上の心室期外収縮心室期外収縮が2連発以上連続して出現する場合
R on T 心室期外収縮心室期外収縮がR on T型を示す場合
後続心拍にT波異常を伴う心室期外収縮該当する心電図所見
心室頻拍多形性心室頻拍を含む
心房細動・心房粗動該当する心電図所見
上室頻拍該当する心電図所見
洞房ブロック、高度徐脈該当する心電図所見
QT延長接線法で測定しFridericia補正したQT時間(秒)が次の値を超える場合:小学校1年生男女 0.43/中学校1年生男女 0.44/高校1年男 0.44、高校1年女 0.45
Brugada型心電図右側胸部誘導V1、V2、V3のいずれかで、J点で0.2 mV以上STが上昇し、かつST-T部位がCoved型またはSaddleback型をとるもの
その他調査票などで上記に準ずる突然死の可能性のある所見あるいはその既往があると考えられる場合

QT延長の測り方(当直で最も実用的)

  • 自動計測のQTcだけで判断しない自動計測法でのQTc値は接線法のQTc値より約20ミリ秒長い
  • ガイドラインは自動計測法ではFridericia補正したQTc値で0.45秒以上を抽出の目安とし、抽出された場合、マニュアル法(接線法)で再判読することが推奨されるとしている。
  • 接線法によるQT延長のスクリーニング基準小学1年(男女児とも)0.43秒/中学1年(男女子とも)0.44秒/高校1年 男子0.44秒・女子0.45秒他学年についてはデータがないので上記の値を参考にする
  • T波の形状も診断の参考になる
  • B群所見として陰性U波も挙げられている。

→ 当直での実務:自動計測でQTc 0.45秒以上が出たら、自分でII誘導かV5で接線法をあて直す。それでも上の年齢別の値を超えるなら、失神・突然死の家族歴・薬剤歴を必ず取り、専門施設へつなぐ。

WPW型の基準

学年基準
一般PR時間<0.12秒 かつ QRS幅≧0.12秒 かつ VAT>0.06秒(I、II、aVL、V4、V5、V6のいずれか)
小学生のみPR時間<0.10秒 かつ QRS幅≧0.10秒 かつ VAT>0.05秒(I、II、aVL、V4、V5、V6のいずれか)
WPW型(間歇性)も抽出対象(A群)

他の伝導所見:PR時間≧0.20秒PR時間<0.08秒も判定コードに含まれる。

所見の取り方(撮る前後にやること)

所見取り方所見があったら次にどうする
失神の状況立位か/運動中か/驚いた瞬間か/水に入った直後か/排尿・咳の後か運動中・水中・驚愕は心原性を強く疑う失神
前駆症状眼前暗黒感・悪心・冷汗があったか前駆なしの突然の意識消失は心原性寄り
家族歴若年者の突然死の家族歴、原因不明の溺死・交通事故死、難聴(Jervell-Lange-Nielsen)あれば心電図の意味が変わる
QT延長を起こす薬(マクロライド・抗ヒスタミン薬・向精神薬など)、市販薬中止の可否を検討
電解質K・Ca・Mg低K・低Ca・低MgはQTを延ばす
心雑音座位と立位で肥大型心筋症は立位・Valsalvaで増強
発作中の記録動悸があるうちに撮る止まってからでは分からない
学校心臓検診の紙所見名・判定区分・前年との比較上の表に当たるか照合

高カリウム血症の心電図(当直で拾う)

段階所見
初期テント状T波(幅が狭く尖る)
進行PR延長 → P波の平低化・消失
危険QRS幅の増大 → サインカーブ様 → 心室細動・心停止

心電図変化があれば、Kの値を待たずに治療を始める。 対象になりやすいのは急性腎障害(急性糸球体腎炎・HUS)、DKA、横紋筋融解、溶血、大量輸血、副腎不全

本シートは高カリウム血症の治療薬と用量を書いていない(院内採用と小児用量の確認が要る。下の医師確認事項)。

小児の心電図を読むときの注意

  • 年齢で正常が変わる。新生児〜乳児は右室優位で、V1の高いR波・右軸偏位・V1〜V3の陰性T波は生理的でありうる。
  • 左側胸部誘導(V3〜V6、小学生ではV4〜V6)の陰性T波は異常。ここは右側と扱いが違う。
  • 心拍数が速いのでQT補正の影響が大きい。ガイドラインはFridericia補正を用いている。
  • 学校心臓検診の基準は「学年」で書かれている他学年についてはデータがないので上記の値を参考にするとされており、当直で来る乳幼児には直接は当てはまらない。
  • 成人の自動診断コメントをそのまま信じない

学校心臓検診の紙を持って来たとき

紙に書いてあること当院ですること
「すみやかに精密検診を考慮する心電図所見」に該当当院で止めない。専門施設へ紹介
A群(2次以降の検診に抽出すべき所見)2次検診の予約が済んでいるか確認
B群(その所見単独では必ずしも抽出しなくてもよい所見)症状・家族歴があれば紹介
C群(学校心臓検診では取りあげなくてもよい所見)説明して安心させてよい
川崎病の既往主治医での管理状況を確認。不明なら紹介

アンケート(保健調査・心臓検診調査票)で抽出される条件心疾患(川崎病既往を含む)の既往があり、主治医での管理状況が不明/過去に心疾患を疑われたが、現在まで医療機関受診をしていない/心疾患を疑う自覚症状がある/若年者の突然死の家族歴があり、遺伝性心疾患などが疑われる

送る/持つ(当院=二次救急・小児循環器なし)

状態当院の扱い
心室頻拍・心室細動119。蘇生は当院で開始
3度房室ブロック・高度徐脈持てない
Brugada型・QT延長・WPW型持てない。専門施設へ
上室頻拍の発作中初期対応(迷走神経刺激)は当院。薬物・電気的治療の体制は要確認
高カリウム血症の心電図変化治療開始は当院。透析が要れば持てない
心筋炎を疑う(胸痛+ST変化+心不全)持てない
学校心臓検診の所見のみ、症状なし紹介先を決めて予約するのが当院の仕事
典型的な血管迷走神経性失神で心電図正常当院で対応失神

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児循環器の紹介先(夜間・休日の相談先を含む)
  • 要確認:当直帯で12誘導心電図を誰が撮り、誰が読むか。小児用の電極配置・記録条件(紙送り・感度)
  • 要確認:小児の心電図正常値の参照先を院内のどこに置くか
  • 要確認:高カリウム血症の初期治療薬の院内採用と小児用量
  • 要確認:上室頻拍に対するアデノシン等の院内採用と、電気的除細動の体制
  • 要確認:ホルター心電図・イベントレコーダ・運動負荷心電図をどこに依頼するか
  • 要確認:学校心臓検診の2次検診を当院が受けるか

家族に渡す一文

心電図は、心臓の電気の流れを見る検査です。子どもの心電図は大人とは正常の形が違うので、年齢に合わせて読みます。今日は、急に意識を失ったり、突然死につながることのある不整脈がないかを確かめるために撮りました。心電図が正常でも、その時に起きていない不整脈は写りません。ですから、動悸や気を失いそうになったときに、その場で心電図を撮れると診断がはっきりします。もしご家族に若くして急に亡くなった方がいる場合は、必ず教えてください。判断が変わります。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートの基準は「学校心臓検診のガイドライン(2016年改訂版)」(日本循環器学会/日本小児循環器学会合同ガイドライン ダイジェスト版)に基づく。学校心臓検診(小1・中1・高1のスクリーニング)の文脈で作られた基準であり、救急外来で乳幼児の心電図を読む基準としてそのまま使えるわけではない。特にQT延長のカットオフは学年で与えられており、他学年についてはデータがないとガイドライン自身が述べている。
  • 要確認:2025年3月にフォーカスアップデート版(JCS2025)が出ている。本シートは2016年改訂版のダイジェスト版を読んで書いており、アップデート版の変更点を反映していない。反映するかどうかの判断が要る。
  • 要確認:高カリウム血症の心電図所見(テント状T波→P波消失→QRS増大)は本シートで一次資料を確認していない。載せ続けるなら裏取りが要る。
  • 要確認:小児の心電図の生理的な特徴(右室優位・V1〜V3の陰性T波)も同様に、本シートでは一次資料を確認していない。
  • 要確認:点数制による右室肥大・心室肥大の判定基準(5点以上)の点数表は、本シートには載せていない(ダイジェスト版の該当ページを読み込んでいない)。当院で判定するなら表が要る。
  • 要確認:VAT(ventricular activation time)の測り方を当院の技師・医師が共有できているか。
  • 要確認:当院で心電図を撮る適応(失神・胸痛・動悸のどこまで撮るか)を決めておきたい。

出典

  • 日本循環器学会/日本小児循環器学会合同ガイドライン.2016年版 学校心臓検診のガイドライン【ダイジェスト版】(班長:住友直方).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2016_sumitomo_d.pdf (2026-09-13閲覧)
  • 表3「すみやかに精密検診を考慮する心電図所見の例」(日本学校保健会 2013、東京都医師会 2009、馬場國蔵 他 2006 より作表)の全項目・条件は本文の表に転記した。
  • QT延長:「自動計測法でのスクリーニング値のデータはないので本ガイドラインではFridericia補正したQTc値で0.45秒以上を抽出の目安とする(自動計測法でのQTc値は接線法のQTc値より約20ミリ秒長いことから0.45秒以上としてある)。抽出された場合、マニュアル法(接線法、下表)で再判読することが推奨される。T波の形状も診断の参考になる」。接線法によるQT延長のスクリーニング基準:小学1年(男女児とも)0.43秒/中学1年(男女子とも)0.44秒/高校1年(男子/女子)0.44/0.45秒。他学年についてはデータがないので上記の値を参考にする
  • WPW症候群(A群):「WPW型:PR時間<0.12秒かつQRS幅≧0.12秒かつVAT>0.06秒(I、II、aVL、V4、V5、V6のいずれか)」「WPW型:PR時間<0.10秒かつQRS幅≧0.10秒かつVAT>0.05秒(I、II、aVL、V4、V5、V6のいずれか)(ただし、小学生のみ)」「WPW型(間歇性)」。
  • Brugada型心電図(A群):「右側胸部誘導V1、V2、V3のいずれかで、J点で0.2 mV以上STが上昇し、かつST-T部位がCoved型、またはSaddleback型をとるもの」。
  • 表4「心電図所見についての1次検診での判定の目安」の抽出区分:「A群:2次以降の検診に抽出すべき所見/B群:その所見単独では必ずしも抽出しなくてもよい所見/C群:学校心臓検診では取りあげなくてもよい所見」(日本小児循環器学会 学校心臓検診 二次検診対象者抽出のガイドライン 2006年改定版 による)。
  • アンケート調査による抽出条件:「心疾患(川崎病既往を含む)の既往があり、主治医での管理状況が不明/過去に心疾患を疑われたが、現在まで医療機関受診をしていない/心疾患を疑う自覚症状がある/若年者の突然死の家族歴があり、遺伝性心疾患などが疑われる」。
  • 日本循環器学会.学校心臓検診のガイドライン フォーカスアップデート版(2025年3月29日発行)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Iwamoto.pdf (存在を確認したのみ。本シートには反映していない)。

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