紫斑・出血斑(ITPとIgA血管炎)

紫斑・出血斑(ITPとIgA血管炎)

内分泌・代謝・血液β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/小児血液専門医なし・骨髄検査なし/当直帯に末梢血液像(鏡検)は出ない/夜間入院はできる(2026-09-14 確認)。

30秒要約

  • 紫斑を見たら、まず血算。ここで血小板が減っているか、いないかで道が2本に割れる。
  • 血小板が減っている → ITPか、白血病か「血小板だけが減っている」のがITP、「他の血球も変」なら白血病を疑う
  • 血小板が正常 → IgA血管炎(紫斑病)下肢中心の触知可能な紫斑・関節痛・腹痛消化器症状が紫斑より先に出ることが14〜36%あり、診断がつかないまま不要な外科手術が施行されることもある
  • ITPの治療方針は血小板数ではなく出血症状で決める。ガイドライン2022は修正Buchanan出血重症度分類を採用し、粘膜出血のない皮膚出血だけなら、血小板数にかかわらず無治療経過観察が原則
  • 小児ITPの多くは6か月〜1年以内に自然寛解し、慢性化するのは約25%。当直で慌てて治療を始める病気ではない。ただし重症出血は新規発症から1か月以内に多い

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119頭痛・嘔吐・意識障害・けいれん+血小板減少頭蓋内出血(Grade 5)。頭部CT。血小板数にかかわらずIVIG療法と他の治療法による速やかな止血と血小板数増加が求められる持てない即時
119消化管出血・大量鼻出血・止まらない出血(Grade 4以上)高用量IVIG療法(1 g/kg)が第一選択。ステロイド併用も検討。血小板1万/μL未満で出血コントロール困難なら血小板輸血を検討即時
119血小板減少+発熱+肝脾腫+リンパ節腫大白血病持てない白血病を疑うとき即時〜当日
119血小板減少+貧血+腎障害+血性下痢の先行HUS細菌性腸炎とHUS即時
119発熱+点状出血が急速に拡大・ショック髄膜炎菌血症・敗血症性紫斑小児敗血症即時
緊急Grade 3以上(粘膜出血あり):鼻出血>5分、血尿、血便、痛みを伴う口腔紫斑、著しい月経過多短期の副腎皮質ステロイド治療またはIVIGを推奨当院で始めるかは要確認当日
緊急IgA血管炎+強い腹痛・嘔吐・血便腸重積を合併しうる。当直帯はエコーが無いので、疑ったら確かめずに相談腸重積当日
緊急IgA血管炎+陰嚢痛・腫脹(男児)精巣捻転との鑑別(急性陰嚢症即時
緊急1歳未満の紫斑/説明のつかない出血斑虐待・凝固異常・先天性血小板減少症当日
当日血小板正常、下肢の触知可能な紫斑のみ、全身状態良好IgA血管炎として外来で尿を追う数日
当日血小板減少のみ(Grade 0〜2)、他の血球正常、全身状態良好無治療経過観察が原則。ただし症状の変化を把握できる環境下で慎重に数日

まず分ける:血小板が減っているか

血小板主に考えるもの次の一手
減少(10万/μL未満)ITP/白血病・骨髄不全/先天性血小板減少症/HUS・TTP/敗血症・DIC/薬剤性末梢血液像を必ず見る当直帯は出ない=翌朝に回し、それまで帰さない)。肝脾腫・リンパ節を触る
正常IgA血管炎/血管性紫斑(外傷・咳・嘔吐後の顔面点状出血)/凝固異常(血友病・VWD・ビタミンK欠乏)/血管炎・感染触知可能か・分布・PT/APTT

ITPの定義:血小板減少を10万/μL未満とする(2022年ガイドラインで変更。旧来の基準と違う)。

ITP:診断と病期

  • 診断に特異的な検査はなく、除外診断による。詳細な家族歴と病歴の聴取、注意深い身体診察、血算、末梢血液像が必須である。
  • 典型的小児ITPの診断に骨髄検査は必須ではないが、肝脾腫がある場合や赤血球、白血球の数的・形態的異常を有する非典型例では骨髄検査を実施する。
  • 白血病、骨髄不全症や先天性血小板減少症の鑑別を常に念頭におく必要がある。
病期定義
新規診断診断から3か月未満
持続性3か月〜12か月未満
慢性12か月以上

小児のITPは6か月〜1年以内に自然寛解する例が多く、慢性化するのは約25%に過ぎない。慢性化の予測因子は年齢であり、慢性化は10〜11歳以上の年齢の高い患者に多い。性別では小児は男児に多い。

ITP:修正Buchanan出血重症度分類(治療の分岐はここ)

Gradeリスク所見次の一手
0なし新しい出血が全くない無治療経過観察
1軽微少数の点状出血(合計<100個)および/または5個以内の小さな出血斑(直径<3 cm)、粘膜出血なし無治療経過観察
2軽症多くの点状出血(合計≧100個)および/または5個以上の大きな出血斑(直径≧3 cm)、粘膜出血なし無治療経過観察
3L低リスク中等症鼻孔の血痂、痛みのない口腔紫斑、口腔/口蓋の点状出血、臼歯に沿った頬側紫斑のみ、軽度の鼻出血≦5分治療介入が必要
3H高リスク中等症鼻出血>5分、血尿、血便、痛みを伴う口腔紫斑、著しい月経過多治療介入が必要
4重症重い粘膜出血または脳、肺、関節などの内出血の疑いがあり、直ちに医師の診察・介入が必要な場合緊急の治療介入
5生命を脅かす/致命的確定された頭蓋内出血または全部位での生命を脅かす、または致命的な出血緊急の治療介入

軽症は経過観察が可能、中等症は治療介入が必要、重症は致死的になる可能性があり、緊急の治療介入が必要である。

治療適応は、血小板数でなく、重症度および生活の質を考慮して決める。粘膜出血がない点状出血、出血斑などの皮膚出血症状のみを示し、経過観察に支障のない患者は、血小板数にかかわらず、無治療経過観察を原則とする。ただし、無治療の場合は症状の変化を把握できる環境下で慎重に経過を観察することを推奨する。

口の中を必ず見る。粘膜出血の有無がGrade 2とGrade 3の境目で、そこが治療するかどうかの境目になる。

ITP:治療ワークフロー(当院でやること/専門施設でやること)

やること
1血算+末梢血液像。他系統の異常・芽球の有無。当直帯は血算まで。鏡検は翌朝にオーダーし、その間は院内に留める
2肝脾腫・リンパ節腫大を触る。あれば非典型=白血病を疑う
3口腔内・鼻腔・皮膚を全身くまなく見る。修正Buchanan分類でGradeをつける
4尿定性(血尿)、便潜血(必要に応じて)
5PT/APTT・フィブリノゲン(凝固異常の除外)
6Gradeで分ける。Grade 0〜2 → 無治療経過観察が原則/Grade 3以上 → 治療
7小児血液疾患に精通した医師に相談することが望ましい。当院では相談して方針を決める
8保護者および患者に治療の利益・不利益について情報を提供し、保護者(代諾者)の意向を考慮して、同意に基づいて治療を選択する。可能な限り患者本人から了承を得て方針を決定する
9帰すなら再受診の条件(頭痛・嘔吐・意識の変化/止まらない鼻血/血尿・血便/頭を打った)

ファーストライン治療(専門施設と相談のうえ)

  • ファーストライン治療薬としては副腎皮質ステロイドと静注用免疫グロブリン(IVIG)を同程度に推奨する。
  • 粘膜出血のない軽症出血(Grade 1/2)または出血のない(Grade 0)新規診断ITP患者には、血小板数にかかわりなく無治療経過観察を推奨する。ただし、頭部外傷のリスクが高い乳幼児や生活の質が低下した患者には、副腎皮質ステロイド治療またはIVIGを考慮してもよい。
  • 粘膜出血のある(Grade 3以上)新規診断ITP患者には、短期の副腎皮質ステロイド治療またはIVIGを推奨する。
  • 粘膜出血のある新規診断ITP患者には、経口プレドニゾロン2 mg/kg/日を5〜7日間用いることを勧める。血小板数が3〜5万/μL以上になったら速やかに減量し、最長14日までとする。
  • 重症感染症や糖尿病の合併、水痘患者との接触歴など副腎皮質ステロイド治療が禁忌である場合、粘膜出血のある新規診断ITP患者にはIVIGを推奨する。また、緊急の外科手術前や重症出血(Grade 4以上)など速やかに血小板数を増加させたいときには、IVIGを推奨する。
  • IVIGの使用量:ASHガイドライン2019と同様に、0.8〜1 g/kgを1回で静脈注射することを推奨する。ただしわが国では、0.2〜0.4 g/kg/日を5日間までが承認用量
  • IVIGの副作用としては、無菌性髄膜炎(頭痛、嘔気・嘔吐)、発熱、発疹、アナフィラキシー、溶血、血栓症、腎障害、急性腎不全などが知られているので注意する。
  • 重症出血は新規発症から1か月以内に多く、IVIGによって治療後の1か月間は血小板数を有意に上昇させる。

緊急時(Grade 4〜5)

生命を脅かす重大出血(頭蓋内出血、消化管出血など)の場合は、血小板数にかかわらずIVIG療法と他の治療法による、速やかな止血と血小板数増加が求められる。高用量IVIG療法(1 g/kg)は、速やかな血小板数の増加を期待するための第一選択治療である。また、副腎皮質ステロイド療法の併用も検討する。さらに血小板数1万/μL未満でかつ出血のコントロールが困難な場合には、追加治療として血小板輸血を検討する。

ITP:生活管理(家族の最大の関心事)

重症出血を呈する頻度は少ないものの、血小板数と各スポーツの接触リスク(程度・頻度)から参加を決定することが望まれる。ただし、ITP患者における血小板数とスポーツの活動度の関係性についての明確なデータは存在しない。

分類出血リスクスポーツの例
高リスク意図的に身体への強い衝撃が与えられる可能性があるボクシング、アメリカンフットボール、アイスホッケー、ラグビー、柔道、レスリング
中間リスクルールでは意図的な接触を制限するが、偶発的な接触が起こりうる野球、バスケットボール、サッカー、バレーボール、乗馬
低リスク参加者間の接触がない水泳、ゴルフ、ジョギング、テニス、サイクリング、ダンス

月経の出血頻度や出血量のコントロールには、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤を中心としたホルモン療法は効果が期待できるが、その適応の判断には専門医受診が推奨される。また、抗線溶薬の必要に応じた併用が推奨される。月経過多では鉄欠乏の有無を評価し、必要に応じて鉄剤を投与する。

ワクチン接種後に発症するワクチン関連ITPは、小児では低年齢発症例が多く予後はおおむね良好である。

IgA血管炎(紫斑病)

押さえる数字

  • 小児(4〜7歳がピーク)に多く、男女比は1.2:1.8で、秋冬に多く、夏に少ない。
  • 症状の出現頻度:血小板減少および血液凝固異常を伴わない皮疹(100%)、関節痛・関節炎(60〜75%)、消化管症状(50〜65%)、腎炎(20〜55%)の各症状が順不同に、さまざまの程度で出現する。
  • 消化器症状は紫斑の出現以前に出現することが稀ではなく(14〜36%)、本症の診断がなされないまま不要な外科手術が施行されることもあるので注意する。
  • 小児IgA血管炎では、腎炎を除く全ての症状は1か月以内に寛解することが多い。寛解後2/3の症例は再発せず、1/3は4か月以内に少なくとも1回再発するが、最初の症状より軽症である。
  • 紫斑病性腎炎:IgA血管炎の約50%に合併する腎炎(日本小児腎臓病学会)。IgA血管炎の発症後、多くは2週間前後から血尿・蛋白尿が認められる年間10万人あたり約20人発症し、好発年齢は3〜7歳
  • 腎炎発症の危険因子:発症年齢(4歳以上)、強い消化管症状、1か月以上持続する紫斑、血漿第XIII因子活性低下、血漿第XIII因子補充療法、ステロイド治療を受けた既往歴

診断

  • 2006年のEULAR/PreSによる小児血管炎分類基準では、小児IgA血管炎は蛍光抗体直接法所見がなくても診断できる。小児血管炎の中でIgA血管炎は90%以上を占め、他の小型血管炎の可能性がほとんどないためと考えられる。
  • 小児では、典型的な臨床像なら皮膚生検をせずに診断してよい。
  • IgA血管炎の診断がついていれば、血尿・蛋白尿が見られた時点で紫斑病性腎炎の臨床診断は可能。軽い血尿のみであれば腎生検の必要もなく経過観察となるが、蛋白尿の量が多い場合や腎機能障害が認められる場合は、早期に腎生検を行う必要がある。

尿のフォロー(帰すときに必ず組む)

リバプール大学小児病院のプロトコール(皮膚血管炎ガイドライン2023に紹介):

段階内容
診断後1週間以内尿検査を施行。尿蛋白+1以上か否かでフローチャートが分かれる
尿蛋白 異常2週、1か月、2か月、3か月、4か月、6か月の定期的検査
尿蛋白 正常1か月、3か月、6か月の定期的検査
検査内容血圧、尿検査による尿潜血、尿アルブミンクレアチニン比、顕微鏡的血尿、血液検査による血清アルブミン、GFR

「紫斑が消えたら終わり」ではない。尿を追わないと紫斑病性腎炎を落とす。

鑑別:紫斑を見たときの全体像

病態血小板見分け次の一手
ITP血小板だけが減る。全身状態良好末梢血液像。Grade評価
白血病他系統の異常・芽球・肝脾腫・リンパ節腫大・骨痛・発熱持てない白血病を疑うとき
再生不良性貧血・骨髄不全汎血球減少持てない
HUS貧血+腎障害+血性下痢の先行持てない細菌性腸炎とHUS
敗血症・DIC・髄膜炎菌血症発熱+急速に拡大する紫斑+ショック119小児敗血症
先天性血小板減少症家族歴、幼少期から、血小板が大きい/小さい専門施設
薬剤性服薬歴中止
IgA血管炎正常下肢中心の触知可能な紫斑+関節痛+腹痛尿のフォローを組む
血友病・VWD正常関節内出血・筋肉内出血・家族歴。APTT延長専門施設
ビタミンK欠乏性出血症(乳児)正常母乳栄養・K2シロップ未投与・頭蓋内出血119
機械的紫斑(咳・嘔吐後の顔面点状出血)正常上半身・顔面に限局、誘因が明確経過観察
虐待による外傷正常説明と合わない分布・年齢に合わない部位通告
伝染性紅斑(手袋靴下型紫斑)正常手足の紫斑性皮疹りんご病

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
触知可能か(palpable purpura)指で撫でて盛り上がりを感じるか盛り上がる=血管炎。IgA血管炎
分布IgA血管炎は下肢伸側・殿部が中心。ITPは全身分布が鑑別を決める
口腔内・眼瞼結膜必ず開けて見る。粘膜出血がGrade 3の境目粘膜出血あり=治療対象
肝脾腫肋弓下で触れるか触れる=ITPとして扱わない
リンパ節頸部・腋窩・鼠径腫大+発熱=白血病を疑う
関節腫脹・熱感・可動域IgA血管炎の関節炎は60〜75%
腹部圧痛・腫瘤・便の性状腸重積の合併を疑う
陰嚢(男児)腫脹・圧痛精巣捻転との鑑別
血圧年齢基準紫斑病性腎炎
頭部の外傷歴血小板減少があれば必ず頭部CTの閾値を下げる

検査

検査何がわかるか読み方
血算血小板数、他系統ITPは血小板のみが減る
末梢血液像(必須)芽球・巨大血小板・破砕赤血球診断に特異的な検査はなく、除外診断による当直帯には出ないので、夜に「ITPでよい」と決めない
PT/APTT・フィブリノゲンDIC・凝固異常ITPでは正常
尿定性血尿・蛋白尿IgA血管炎では必ず、繰り返し
便潜血消化管出血Grade 3Hの判定に
生化(Cr・アルブミン)腎障害・蛋白漏出紫斑病性腎炎
腹部エコー腸重積IgA血管炎+腹痛なら。当直帯は当院で撮れない
頭部CT頭蓋内出血頭痛・嘔吐・意識障害があれば
骨髄検査白血病・骨髄不全典型的小児ITPには必須ではない。肝脾腫がある場合や赤血球・白血球の数的・形態的異常を有する非典型例では実施当院では持てない

問診チェック

  • いつから、どこから出たか。押して消えるか(紫斑は消えない)
  • 先行感染(かぜ・胃腸炎)、ワクチン接種歴
  • 服薬(抗菌薬・NSAIDs・抗けいれん薬)
  • 出血の既往:鼻血の止まりにくさ、抜歯・手術時の出血、あざのできやすさ
  • 家族歴:出血傾向、血小板減少、血友病
  • 月経(女児):量・日数・貧血症状
  • 骨痛・関節痛・夜間痛(白血病のサイン)
  • 体重減少・寝汗・持続する発熱
  • 乳児では:ビタミンK2シロップの投与歴、養育環境

送る/持つ(当院=二次救急・骨髄穿刺なし)

状態当院の扱い
頭蓋内出血・重症出血(Grade 4〜5)持てない。IVIGを開始しつつ搬送
血小板減少+他系統の異常・肝脾腫・リンパ節腫大持てない(骨髄検査が要る)
Grade 3(粘膜出血あり)のITP当院で治療を開始するかは要確認。小児血液専門医に相談
Grade 0〜2のITP無治療経過観察が原則当院でフォローできるかは要確認
IgA血管炎(腹痛・血便なし、腎所見なし)当院で対応。尿のフォローを組む
IgA血管炎+腸重積の疑い持てない腸重積
IgA血管炎+ネフローゼ域蛋白尿・腎機能障害腎生検が要る=持てない
凝固異常(血友病・VWD)の疑い持てない

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児血液専門医のいる相談先・紹介先(夜間の連絡経路も)
  • 要確認:当院で新規診断ITPを診断・経過観察するか、初めから紹介か
  • 要確認:IVIGの院内在庫と、小児への投与手順(0.8〜1 g/kg単回 vs 0.2〜0.4 g/kg×5日)
  • 確定(2026-09-14)夜間に末梢血液像(鏡検)は出ない。当直帯は血算までで、鏡検を待つ間は入院で抱える(夜間入院可)
  • 要確認:血小板輸血の院内手配(緊急時)
  • 要確認:IgA血管炎の尿フォローを当院で6か月続けるか、かかりつけに戻すか

家族に渡す一文

ITPの場合:「血を止める血小板という細胞だけが、免疫のはたらきで減っている状態です。子どもでは、6か月から1年のうちに自然に治る方が多く、長引くのは4人に1人くらいです。大事なのは血小板の数そのものより、どこから出血しているかです。皮膚のあざや点だけで、口の中や鼻・おしっこ・便に出血がなければ、お薬を使わずに様子を見るのが原則です。頭を打たないことがいちばん大事なので、ぶつかるスポーツ(柔道・ラグビー・サッカーなど)はいったん止めてください強い頭痛、吐く、ぼんやりする、5分以上止まらない鼻血、血尿、血便、このどれかがあればすぐ来てください。」

IgA血管炎の場合:「足を中心に出る、押しても消えない盛り上がった紫色の斑点で、血管の炎症によるものです。血液が止まりにくくなっているわけではありません関節の痛みは3人に2人、お腹の痛みは2人に1人くらいに出ます。紫斑そのものはたいてい1か月以内に良くなります。いちばん大事なのは、あとから腎臓に炎症が出ることがある(およそ2人に1人)ことです。紫斑が消えても、決まった時期におしっこの検査に来てください強いお腹の痛み、吐く、便に血が混じる、おしっこが赤い、まぶたが腫れる、このどれかがあれば時間を待たずに来てください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院で新規診断ITPをどこまで持つか。ガイドラインは「小児血液疾患に精通した医師に相談することが望ましい」としており、当院の相談先を決めておかないと、Grade 0〜2の「無治療経過観察」を誰が担うかが決まらない。
  • 要確認:IVIGの用量。ガイドラインは0.8〜1 g/kg単回を推奨しつつ、わが国の承認用量は0.2〜0.4 g/kg/日を5日間までと明記しており、推奨と承認がずれている。当院でどちらを使うかは施設判断が要る。
  • 要確認:プレドニゾロン2 mg/kg/日を5〜7日間を当院で開始するか。開始するなら上限量・剤形を院内で決める必要がある。
  • 要確認:セカンドライン薬(エルトロンボパグ・ロミプロスチム・リツキシマブ)はわが国では小児での用法・用量が承認されていない。当院では扱わない前提でよいか。
  • 要確認:IgA血管炎の尿フォロー(6か月)を当院で行うか。本シートはリバプール大学小児病院のプロトコールを載せているが、これは皮膚血管炎・血管障害診療ガイドライン2023が紹介している海外のプロトコールであり、日本の標準として確立したものではない。当院の運用を決める必要がある。
  • 要確認:IgA血管炎の腹部症状・皮膚症状に対するステロイドの扱い。本シートは治療に踏み込んでいない(皮膚血管炎ガイドライン2023のCQ部分を本シートでは読み込んでいない)。
  • 要確認:「血小板減少および血液凝固異常を伴わない皮疹(100%)」という頻度は皮膚科学会ガイドラインの記載。小児だけの数字か、成人を含むかは本シートでは確認していない。

出典

  • 石黒精、森麻希子、東川正宗.小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022.日本小児血液・がん学会雑誌 60(3): 228–233, 2023.doi: 10.11412/jspho.60.228.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspho/60/3/60_228/_pdf/-char/ja (2026-09-12閲覧)。原典は日本小児血液・がん学会血小板委員会(編集)「小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022年版」診断と治療社、2022。
  • 病名・定義:「病名を免疫性血小板減少症(ITP)に変更し、血小板減少の定義を10万/μL未満とした。病期を急性、慢性から、国際的な分類である新規診断(診断から3か月未満)、持続性(3か月〜12か月未満)、慢性(12か月以上)に変更した」。
  • 診断:「診断に特異的な検査はなく、除外診断による。詳細な家族歴と病歴の聴取、注意深い身体診察、血算、末梢血液像が必須である。典型的小児ITPの診断に骨髄検査は必須ではないが、肝脾腫がある場合や赤血球、白血球の数的・形態的異常を有する非典型例では骨髄検査を実施する。また、白血病、骨髄不全症や先天性血小板減少症の鑑別を常に念頭におく必要がある」。
  • 治療介入の基準:「治療適応は、血小板数でなく、重症度および生活の質を考慮して決める。粘膜出血がない点状出血、出血斑などの皮膚出血症状のみを示し、経過観察に支障のない患者は、血小板数にかかわらず、無治療経過観察を原則とする」「軽症は経過観察が可能、中等症は治療介入が必要、重症は致死的になる可能性があり、緊急の治療介入が必要である」。
  • 表1 Buchanan出血重症度分類(Grade 0〜5の全文はシート本文に引用)。Schoettler ML, et al: Pediatr Blood Cancer 64: 10.1002/pbc.26303, 2017 を参考に作成。
  • 自然歴:「小児のITPは6か月〜1年以内に自然寛解する例が多く、慢性化するのは約25%に過ぎない」「慢性化の予測因子は年齢であり、慢性化は10〜11歳以上の年齢の高い患者に多い」「性別では女性に多い成人に対して、小児では男児に多く見受けられる」。
  • ファーストライン:「ファーストライン治療薬としては副腎皮質ステロイドと静注用免疫グロブリンを同程度に推奨する」「粘膜出血のない軽症出血(Grade 1/2)または出血のない(Grade 0)新規診断ITP患者には、血小板数にかかわりなく無治療経過観察を推奨する。ただし、頭部外傷のリスクが高い乳幼児や生活の質が低下した患者には、副腎皮質ステロイド治療またはIVIGを考慮してもよい」「粘膜出血のある新規診断ITP患者には、経口プレドニゾロン2 mg/kg/日を5〜7日間用いることを勧める。血小板数が3〜5万/μL以上になったら速やかに減量し、最長14日までとする」「IVIGの使用量について、ASHのガイドライン2019と同様に、0.8〜1 g/kgを1回で静脈注射することを推奨する。ただしわが国では、0.2〜0.4 g/kg/日を5日間まで静脈注射が承認用量であり、今後の再検討が望まれる」「IVIGの副作用としては、無菌性髄膜炎(頭痛、嘔気・嘔吐)、発熱、発疹、アナフィラキシー、溶血、血栓症、腎障害、急性腎不全などが知られている」「重症出血は新規発症から1か月以内に多く、IVIGによって治療後の1か月間は血小板数を有意に上昇させる」。
  • 緊急時:「生命を脅かす重大出血(頭蓋内出血、消化管出血など)の場合は、血小板数にかかわらずIVIG療法と他の治療法による、速やかな止血と血小板数増加が求められる。高用量IVIG療法(1 g/kg)は、速やかな血小板数の増加を期待するための第一選択治療である。また、副腎皮質ステロイド療法の併用も検討する。さらに血小板数1万/μL未満でかつ出血のコントロールが困難な場合には、追加治療として血小板輸血を検討する」。
  • 生活管理:表2 スポーツにおける出血リスク(高/中間/低リスクの分類と例はシート本文に引用)。「ITP患者における血小板数とスポーツの活動度の関係性についての明確なデータは存在しない」「月経過多では鉄欠乏の有無を評価し、必要に応じて鉄剤を投与する」。
  • セカンドライン:「3製剤ともわが国では小児での用法・用量は承認されていない」。
  • 日本皮膚科学会.皮膚血管炎・血管障害診療ガイドライン2023 ―IgA血管炎、クリオグロブリン血症性血管炎、結節性多発動脈炎、リベド様血管症の治療の手引き 2023―.日本皮膚科学会雑誌 133(9): 2079–2134, 2023.https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/hifukekkannenn2023.pdf (2026-09-12閲覧)。「IgA血管炎は、小児(4〜7歳がピーク)に多く、男女比は1.2:1.8で、秋冬に多く、夏に少ない」「血小板減少および血液凝固異常を伴わない皮疹(100%)、関節痛・関節炎(60〜75%)、消化管症状(50〜65%)、腎炎(20〜55%)の各症状が順不同に、さまざまの程度で出現する」「消化器症状は紫斑の出現以前に出現することが稀ではなく(14〜36%)、本症の診断がなされないまま不要な外科手術が施行されることもあるので注意する」「2006年のEULAR/PreSによる小児血管炎分類基準では、小児IgA血管炎は蛍光抗体直接法所見がなくても診断できる。小児血管炎の中でIgA血管炎は90%以上を占め、他の小型血管炎の可能性がほとんどないためと考えられる」「小児IgA血管炎では、腎炎を除く全ての症状は1カ月以内に寛解することが多い。複数の分析疫学研究によると、寛解後2/3の症例は再発せず、1/3は4カ月以内に少なくとも1回再発するが、最初の症状より軽症である」「発症年齢(4歳以上)、強い消化管症状、1カ月以上持続する紫斑、血漿第XIII因子活性低下、血漿第XIII因子補充療法、ステロイド治療を受けた既往歴は、いずれも腎炎発症の危険因子である」、リバプール大学小児病院の尿フォロープロトコール(IgA血管炎診断後の1週間以内で尿検査/尿蛋白+1以上か否かでフローチャートが分かれる/尿蛋白異常なら2週、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月/尿蛋白正常なら1カ月、3カ月、6カ月/検査内容は血圧、尿潜血、尿アルブミンクレアチニン比、顕微鏡的血尿、血清アルブミン、GFR)。
  • 日本小児腎臓病学会.患者、ご家族、一般の方向けQ&A「紫斑病性腎炎」(Copyright © 2021).https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-byoki-05.pdf (2026-09-12閲覧)。「IgA血管炎の約50%に合併する腎炎です」「IgA血管炎の発症後、多くは2週間前後から血尿・蛋白尿が認められます」「男女比は1.3〜2.3:1とやや男性に多く、年間10万人あたり約20人発症し、好発年齢は3〜7歳です」「IgA血管炎の診断がついていれば、血尿・蛋白尿が見られた時点で紫斑病性腎炎の臨床診断は可能です。軽い血尿のみであれば腎生検の必要もなく経過観察となりますが、蛋白尿の量が多い場合や腎機能障害が認められる場合は、早期に腎生検を行い組織学的な重症度を見る必要があります」。

処方

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
処方

処方の考え方

ファーストラインは副腎皮質ステロイドとIVIGを同程度に推奨。出血のGradeで方針が変わる。⚠ IVIGは推奨用量と国内承認用量がずれている(ガイドライン推奨 0.8〜1 g/kg 単回 / わが国の承認用量 0.2〜0.4 g/kg/日 を5日間まで)。どちらを使うかは施設判断。

出血のGrade

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

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