浣腸の禁忌を確認してから行う
当直で最も多い失敗は「浣腸してはいけない子に浣腸すること」。添付文書の禁忌に「吐気、嘔吐または激しい腹痛等、急性腹症が疑われる患者」が明記されている。腹痛の子に「便秘だろう」で浣腸する前に、腸重積・虫垂炎・軸捻転を外す。浣腸で便が出ても、それは診断にならない。
始める前に
- 腹痛の子に「便秘だろう」で浣腸する前に、腸重積・虫垂炎・軸捻転を外す
- 硬便・排便時痛・便塊の触知、全身状態良好、急性腹症なし → 浣腸の適応になりうる
- 局所(腸管、肛門)に炎症・創傷のある患者は慎重投与(出血を促しグリセリンが吸収され溶血を、また腎不全を起こすおそれがある)
- 腸管麻痺のある患者は慎重投与(蠕動運動亢進作用により腹痛等の症状を増悪させるおそれがある)
- 重症の硬結便のある患者は慎重投与(浣腸剤では十分な効果が得られず、腹痛等の症状を増悪させるおそれがある)
- 重篤な心疾患のある患者は慎重投与(症状を増悪させるおそれがある)
- 乳児に投与する場合は慎重に投与すること。患児側の反応を十分に把握できない場合、過量投与に陥りやすい
- 好中球減少(化学療法中)は粘膜損傷から菌血症になりうる。主治医に確認してから(本シートの実務上の注意であり、この添付文書には記載がない)
- 本品をそのまま温湯に入れ、約40℃(体温程度)に温める
- 容器の挿入部を少量の内容液で潤すか、オリブ油、ワセリン等の潤滑剤を塗布して肛門内に挿入しやすくする
手順
- 1
患者を左側臥位にする
- 2
容器内の空気を追い出す
- 3
目盛を目安に、挿入部を肛門内に緩徐に挿入する(成人5〜6 cm・小児3〜6 cm・乳児3〜4 cm)
無理に挿入すると、直腸粘膜を損傷することがある
- 4
浣腸液をゆっくりと直腸内に注入する(通常、1回10〜150 mLを直腸内に注入する。年齢、症状により適宜増減する)
- 5
注入後、挿入部(レクタルチューブ)を静かに抜去し、肛門部を脱脂綿等で圧迫する
- 6
通常3〜10分後、便意が強まってから排便させる
- 7
患者の状態を観察しながら投与し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止する
やってはいけない
- 腸管内出血、腹腔内炎症のある患者、腸管に穿孔またはそのおそれのある患者は禁忌(腸管外漏出による腹膜炎の誘発、蠕動運動亢進作用による症状の増悪、グリセリンの吸収による溶血、腎不全を起こすおそれがある)
- 全身衰弱の強い患者は禁忌(強制排便により衰弱状態を悪化させ、ショックを起こすおそれがある)
- 下部消化管術直後の患者は禁忌(蠕動運動亢進作用により腸管縫合部の離解をまねくおそれがある)
- 吐気、嘔吐または激しい腹痛等、急性腹症が疑われる患者は禁忌(症状を悪化させるおそれがある)
- 立位の状態での浣腸は危険ですので行わないこと
- 胆汁性嘔吐は腸回転異常症・中腸軸捻転を疑い、浣腸しない
- 腹膜刺激症状・板状硬は穿孔・腹膜炎を疑い禁忌
- 間欠的な啼泣+嘔吐+不機嫌(3か月〜2歳)は腸重積を疑い、浣腸しない。エコーが先
- 右下腹部痛+発熱+歩行時に響くは虫垂炎を疑い禁忌
- 連続の使用を避け、1個を1回で使用し、使用残液は容器ごと廃棄すること
- 連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避けること
終わったあと
- 浣腸後に腹痛が完全に消えたかを必ず確認する
- 残るなら、便秘ではないとして再評価する
- 帰すときは、再受診の条件を渡す(痛みが戻る・嘔吐が増える・顔色が悪い・血便)
- 家族へ:処置のあと、お腹の痛みが完全になくなったかどうかを必ず確認させてください。便が出ても痛みが残る場合は、便秘以外の原因を考えます
- 家族へ:おうちで浣腸を繰り返すと、だんだん効かなくなり、薬に頼りがちになるので、続けて使うのは避けてください
この場で持てない・送る
- 急性腹症を疑う → 浣腸しない。原因の評価へ
- 腸重積の疑い → 浣腸しない。整復の可否は要確認
- 重症の硬結便で浣腸が奏効しない → 入院治療または全身麻酔下摘便を要することがある=持てない
- 浣腸中の出血・強い痛み → 中止。穿孔を疑えば持てない
- 好中球減少・免疫抑制中 → 原則行わない。主治医に確認
- 要確認:院内採用のグリセリン浣腸剤(銘柄・濃度・容量展開・S/Lタイプ)が本シートの引用元(ケンエー)と異なる場合、添付文書の置き換えが必要
- 要確認:小児の1回量の院内基準(添付文書は体重あたりの量を示していない)
- 要確認:全身麻酔下摘便が必要な例の紹介先
- 要確認:浣腸を看護師が実施する場合の指示の出し方(深さ・量・体位・中止基準を指示に含めるか)
- 要確認:浣腸後の観察時間と帰宅基準
- 要確認:迷走神経反射・ショックへの対応を当院の手順にどう書くか(添付文書は「ショックを起こすおそれ」までしか書いていない)
- 要確認:「浣腸してよい腹痛/いけない腹痛」の線引きを当直帯で誰が判断するか
- 要確認:浣腸の実施記録(体位・深さ・量・反応)を残す様式
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。