細菌性髄膜炎

緊急

細菌性髄膜炎

発熱・感染症β版・逐条レビュー継続中

2026-10-02更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/小児集中治療なし/当直帯に頭部CT・MRIは撮れない。腰椎穿刺そのものは当院でできる。初期抗菌薬まで当院で行い、管理は送る前提。

30秒要約

  • 年齢が低いほど症状は軽微で、典型的な症状や徴候が出現しにくい。非特異的な症状の組み合わせから疑うしかない。
  • 髄膜刺激徴候が陰性でも否定できない。ガイドラインが明記している。新生児ではまれ、乳幼児でも必発ではない。
  • 発熱がなくても否定できない。年長児症例の44%は診断時に無熱だったという報告がある。
  • 検査のために抗菌薬を1時間以上遅らせない。CTがすぐ撮れないなら、まず抗菌薬。
  • 転院させる場合も、まず抗菌薬を開始してから送る(ガイドラインの明文)。
  • 当院の当直帯に頭部CTは無い(2026-09-14 確認)。CTが必要になりうる意識障害・神経巣症状・痙攣・乳頭浮腫・免疫不全や、ショック・呼吸循環の不安定さを評価する。安全性に疑いがあれば腰椎穿刺を急がず、抗菌薬開始と受入先への相談を優先する。CTが撮れないことは腰椎穿刺の安全を意味しない。
  • 腰椎穿刺と髄液測定は当院で可能(2026-09-14 確認)。患児が安定し、穿刺に危険な所見がなく、治療を遅らせない場合に実施する。画像や穿刺のために抗菌薬を待たない。
  • 培養は夜間に提出できない。採取できるなら抗菌薬前の血液培養を優先するが、採血に手間取って抗菌薬を遅らせない。抗菌薬投与後は検出率が下がりうるため、採取時刻と投与時刻を記録する。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること
119意識障害・ショック蘇生を優先しつつ、血液培養→抗菌薬。下のワークフローへ
119脳ヘルニアの徴候(視神経乳頭浮腫/一側・両眼の瞳孔固定または散大/除脳・除皮質肢位/Cheyne-Stokes呼吸/固定した眼球偏位)腰椎穿刺は禁忌。行わずに速やかに抗菌薬治療を開始する
119発熱+紫斑髄膜炎菌血症・電撃性紫斑病。抗菌薬を遅らせない
緊急発熱+痙攣で、痙攣前の傾眠傾向/項部硬直/出血性発疹/大泉門膨隆/痙攣後1時間以上の意識レベル低下のいずれか除外されるまで髄膜炎として扱う
緊急新生児の体温変動・呼吸窮迫・傾眠・無呼吸・腹部膨満・黄疸・嘔吐下痢・痙攣・筋緊張低下重症感染症の非特異的徴候。髄膜炎を鑑別に入れる
緊急乳幼児の哺乳不良・食欲低下・活気低下・易刺激性同上
緊急発熱・活気不良が主で、髄膜炎を示唆する症状がないがほかに明らかな原因が見当たらないガイドラインは、この場合も鑑別疾患に加えるとしている

経験的抗菌薬

決定=当院は院内J-SSCG2024型(第3世代セフェム+バンコマイシン)に一本化する。新生児期(〜2か月)はさらにアンピシリン(ABPC)を追加する。セフトリアキソン(CTRX)は全年齢で当院採用レジメンから除外する(理由は下記)。年齢による薬剤の分岐そのものをなくし、当直医が年齢で薬剤を選び間違えるリスクをなくすための一本化。
下の薬剤が院内にあるか、当直帯に出せるかは未確認(下の要確認)。
用量はJ-SSCG2024 Table 9-1-1(小児敗血症シートに全表を転記)どおり。細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(CQ 7-1-1)の投与例(カルバペネム系+第3世代セフェム)は、セフェム系に反応不良、または高度耐性肺炎球菌を疑う場合の代替に格下げする(下の表・「代替」の段落)。

選び方の原則(逐語・GL2014): 「抗菌薬投与前に可能な限り腰椎穿刺を行い、髄液のグラム染色の結果や年齢などから起炎菌を推定し、経験的抗菌薬治療を開始する(empiric therapy)。また、同時に血液培養を行う。起炎菌の分離後は薬剤感受性に応じて狭域の抗菌薬への変更を行う(de-escalation)(グレード B)」

年齢想定する起炎菌当院の第一選択
新生児(〜2か月)GBS・大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌・リステリア菌決定=セフォタキシム(CTX)300 mg/kg/日・6時間毎 + バンコマイシン(VCM)60 mg/kg/日・6時間毎(トラフ15〜20 µg/mL維持) + アンピシリン(ABPC)300 mg/kg/日・6時間毎。セフトリアキソンは使わない(後述)
生後2か月〜16歳未満インフルエンザ菌・肺炎球菌が大半決定=セフォタキシム(CTX)300 mg/kg/日・6時間毎 + バンコマイシン(VCM)60 mg/kg/日・6時間毎(トラフ15〜20 µg/mL維持)。セフトリアキソンは使わない(後述)
頭部外傷・脳外科処置後・シャント留置ブドウ球菌(MRSA含む)・グラム陰性桿菌など「メロペネムまたはパニペネム・ベタミプロン」+バンコマイシン(GL2014投与例。今回の決定の対象外・未確認のまま残す)

代替(セフェム系に反応不良、または高度耐性肺炎球菌を疑う場合):細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014の投与例に格下げして残す——生後1〜4か月未満は「パニペネム・ベタミプロン 100〜160 mg/kg/日・分3〜4 または メロペネム 120 mg/kg/日・分3」、生後4か月〜16歳未満も同量。GL2014はこの代替レジメンについて「効果が十分でない場合はバンコマイシンを追加(60 mg/kg/日・分3〜4、生後1〜4か月未満では40〜60 mg/kg/日・分3〜4、トラフ15〜20 µg/mL維持)」としている。新生児期の用量はガイドラインCQ 7-1-4・表1を参照(本シートに転記していない)。

髄液由来肺炎球菌の薬剤耐性上昇:一次資料(JIHS IASR vol47/552)でメロペネム非感性率は全年齢5.0%→20.9%(2018→2023)、小児0-4歳限定では12.5%→36.0%(同・ただし年平均検出数19.8例と少数)。二次資料(carenet.com記事)が紹介する「JANIS2023年18.2%」は成人16-49歳/50歳以上の区分のみを扱っており小児記述がないため、単一の確定値としては使わない。方向性(耐性上昇に伴いバンコマイシン併用の重要性が増す)は、むしろ一次資料の小児限定データが強く支持する。

セフトリアキソンを全年齢で使わない理由:①添付文書上、高ビリルビン血症の低出生体重児・新生児に禁忌(2.2項)。②カルシウム含有輸液との同時投与で新生児の死亡例(肺・腎への結晶沈着、8.3項)が報告されている。③一本化の元にしているJ-SSCG2024 Table 9-1-1自体が、新生児・2か月〜のどちらの行もセフォタキシムのみを使用例に挙げ、セフトリアキソンに言及していない。①②はもともと新生児だけの禁忌だが、年齢で薬剤を分岐させると当直医が選び間違えるリスクがあるため、2か月以降も含め全年齢で除外する。

新生児にセフトリアキソンを使わない理由(逐語・GL2014): 「セフトリアキソンは、高ビリルビン血症の未熟児・新生児には投与しないこととされており、またカルシウムを含有する注射剤と同時に投与した場合に死亡に至った症例が報告されていることから、新生児に使用する第3世代セフェムにはセフォタキシムを選択する」

デキサメタゾン(補助療法)

投与例(逐語): 「デキサメタゾン:0.15mg/kg・6 時間毎の静脈内投与。抗菌薬投与 10〜20 分前に開始し、4 日間投与」
「デキサメタゾン静注は抗菌薬の投与前または投与開始と同時に行うべきである」
例外: 「ただし、外科的侵襲後の細菌性髄膜炎に関する副腎皮質ステロイド薬の併用は推奨しない」

小児での位置づけは、米国小児科学会2003年勧告を引いて「インフルエンザ菌髄膜炎の乳幼児および小児に対して推奨される」「肺炎球菌髄膜炎の乳幼児および小児(6週齢以上)に対しては有効性と危険性を比較検討したうえで考慮される」とし、日本については「その可能性が考えられる年齢層(乳幼児期)においてはデキサメタゾン併用が推奨される」としている。

決定=国内の2つのガイドラインで初期選択が違っていた点は、J-SSCG2024型(第3世代セファロスポリン+バンコマイシン、新生児はさらにアンピシリン)に一本化して解消した(上の表)。
J-SSCG2024(日本版敗血症診療ガイドライン2024)Table 9-1-1 は、中枢神経を感染巣とする小児敗血症の経験的抗微生物薬として、
新生児(〜2か月): 第3世代セファロスポリン+バンコマイシン+アンピシリン(CTX 300 + VCM 60 + ABPC 300 mg/kg/day・いずれも6時間毎)、
2か月〜: 第3世代セファロスポリン+バンコマイシン(CTX 300 + VCM 60 mg/kg/day・6時間毎)としている(小児敗血症に全表を転記)。
上の髄膜炎GL2014 の表(カルバペネム系+第3世代セフェム、バンコマイシンは効果不十分時に追加)は、セフェム系に反応不良、または高度耐性肺炎球菌を疑う場合の代替に格下げした。 小児敗血症シートと同じレジメンに揃えたので、当直医が2つのシートで迷うことはない。

当直帯の当院での意味: 腰椎穿刺・髄液の測定・血液培養の採取・抗菌薬の投与は、すべて夜間にできる(2026-09-14 確認)。足りないのは、この表のどれを院内で出せるかという1点だけ。

治療ワークフロー(時刻を決めて動く)

原則(ガイドラインCQ7-1-1): ①できるだけ早期に適切な抗菌薬を静脈内投与する ②迅速に神経放射線学的検査が施行できない場合および転院の場合には、まず抗菌薬の投与を開始する

経過やること分岐
0分バイタル・意識・脳ヘルニア徴候の確認。酸素・ルート確保脳ヘルニア徴候あり → 腰椎穿刺せず、すぐ抗菌薬へ
すぐ血液培養を採る髄液が採れない場合、血液培養の結果が起炎菌同定に重要になる
画像と穿刺の安全性を判断意識障害・神経巣症状・痙攣発作・乳頭浮腫・免疫不全、ショック・呼吸循環の不安定さを確認する。CT推奨条件は主に成人データに基づき、小児への適用は個別判断。当直帯の当院にCTは無いCTが必要な可能性や穿刺の危険があれば、腰椎穿刺を見送り、抗菌薬を開始して受入先へ相談。CTが撮れないことを穿刺許可と扱わない
安全で治療を遅らせない場合腰椎穿刺。初圧・細胞数分画・糖/血糖・蛋白・グラム染色・培養などを採る穿刺・髄液検査で治療開始が遅れるなら、抗菌薬を優先する
抗菌薬経験的抗菌薬を静脈内投与(このシートの節「経験的抗菌薬(ガイドラインの投与例)」に年齢別の表。院内採用の確認が要る)デキサメタゾンは抗菌薬の10〜20分前に開始。「デキサメタゾン静注は、抗菌薬の投与前または投与開始と同時に行うべき」
48時間後治療開始後48時間以内に髄液が無菌化されないと神経学的後遺症のリスクが高くなる。新生児などでは48〜72時間に再度髄液検査菌が消失しなければ抗菌薬の変更

画像・腰椎穿刺のために抗菌薬を遅らせない。 ガイドラインは検査で治療開始が1時間以上遅れる場合に穿刺先行を求めないが、「1時間までは待てる」という意味ではない。

成人データ: 病院到着から適切な抗菌薬投与までの時間は平均4時間で、6時間以上になると有意に死亡率が高くなる。主因は腰椎穿刺前の神経放射線検査の実施にある。→ CT・MRIが直ちにできない場合は、まず抗菌薬を開始する。この定量値は成人対象で、小児対象の同種データはガイドライン本文になし。

髄液所見(ガイドライン表1)

項目正常(小児/乳児)細菌性ウイルス性結核性
初圧(mmCSF)50-180 / 100>180<180>180
細胞数(/mm³)≦5 / ≦81,000-5,000100-1,00025-500
多形核球比率(%)0 / 60≧800<50
蛋白(mg/dL)≦45 / 20-170100-50050-100>50
糖/血糖比0.6 / 0.81<0.4>0.6<0.5

研究で検討された鑑別スコア: グラム染色陽性・髄液多形核球1,000/mm³以上・髄液蛋白80 mg/dL以上・末梢血好中球10,000/mm³以上・痙攣発症の5項目。感度98.3%という報告は、髄液細胞増多のある小児を対象にした研究の結果であり、全て陰性でも細菌性髄膜炎を絶対に否定できるわけではない。臨床像と経過を合わせて判断する。

髄液乳酸: カットオフ35 mg/dLで感度0.93・特異度0.99。ただしすでに抗菌薬治療を受けていた場合には有用でない可能性がある。

「これがないから違う」と言えないもの

  • 髄膜刺激徴候 — 新生児ではまれ。乳幼児でも必発ではない。陰性であっても細菌性髄膜炎を否定できない(ガイドラインの明文)。インフルエンザ菌b型・肺炎球菌髄膜炎でも60〜80%でしか陽性にならない。
  • 発熱 — 85〜99%に認めるが、年長児症例の44%は診断時に無熱だったという報告がある。
  • 大泉門膨隆 — 感度・特異度ともに高いとはいえない。髄膜炎患児の20%にみられるにすぎず、病状が進行するまでみられないことも多い。
  • グラム染色 — 抗菌薬使用前で75〜90%の検出感度だが、髄液検査前に抗菌薬が使用された場合は40〜60%に低下する。

見逃しパターン

  • 抗菌薬がすでに投与された細菌性髄膜炎は、単核球優位の細胞増多を示す。ウイルス性髄膜炎に見える。前医で抗菌薬が出ていないかを必ず聞く。
  • 抗菌薬前投与例やグラム染色陰性例では、肺炎球菌抗原定性検査を行うことが勧められる。
  • 熱性けいれんとの鑑別で細菌性髄膜炎に多い項目: 6か月未満、局所の痙攣あるいは繰り返す痙攣、熱性痙攣の家族歴がない、昏睡状態の遷延、頭蓋外の感染巣の存在。複雑型熱性痙攣の臨床像を呈した者の1.5%は細菌性髄膜炎だった。
  • 臨床症状が改善しても、途中での減量や推奨投与期間前の中止は慎む。

送る/持つ(当院=二次救急・小児集中治療なし)

状態当院の扱い
血液培養・腰椎穿刺・初期抗菌薬・デキサメタゾン当院で行う。転院でもまず抗菌薬を開始してから送る
脳ヘルニア徴候がある腰椎穿刺せず抗菌薬。画像と集中治療のできる施設へ
意識障害・ショック・人工呼吸管理持てない
48〜72時間後の再検・経過管理入院管理ができる施設で

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:ガイドラインが挙げる薬剤のうち、院内にあるのはどれか——アンピシリン/セフォタキシム/パニペネム・ベタミプロン/メロペネム/バンコマイシン/デキサメタゾン注。当直帯に出せるかも合わせて。セフトリアキソンは決定により候補から除外したため確認不要。

当院の第一選択そのものは節「経験的抗菌薬」の表に書き出したので、残るのは「当院で何が使えるか」だけ。画像が無いぶん、当院では抗菌薬の早さだけが武器になるので、この空欄の重みが他施設より大きい

  • 要確認:バンコマイシンを使う場合のトラフ測定(15〜20 µg/mL の維持)が当院でできるか
  • 決定:細菌性髄膜炎GL2014 と J-SSCG2024 の初期選択の違いは、J-SSCG2024型(第3世代セファロスポリン+バンコマイシン±アンピシリン)への一本化で解消した(節「経験的抗菌薬」)。GL2014のカルバペネム主体レジメンは、セフェム系に反応不良、または高度耐性肺炎球菌を疑う場合の代替に格下げした。
  • 未確認:蜂窩織炎・骨関節感染症・細菌性気管炎の3シートは「院内アンチバイオグラムを確認してから決める」方式だが、本シートと小児敗血症シートはガイドラインの用量表を先に確定する方式で、最初から型が違う。運用の一貫性としてどちらの型を採るかは今回の決定では扱っていない
  • 確定(2026-09-14):夜間に髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色は測定できる。穿刺も測定も当院でできるので、このシートのワークフローは当直帯に完走できる(肺炎球菌抗原の可否は未確認)
  • 確定(2026-09-14):培養は夜間に検査室へ提出できない。抗菌薬の前に採る原則は変わらない——髄液・血液とも採って保管し、翌朝提出する
  • 確定(2026-09-14):夜間に頭部CTは撮れない。「CTを待たず抗菌薬」が当院の既定
  • 要確認:小児の入院管理・集中治療ができる施設の受け入れ先

家族に渡す一文

「髄膜炎は、脳や脊髄を包む膜に細菌が入る病気です。早く抗菌薬を始めることが何より大事なので、検査の結果を待たずに治療を始めることがあります。背中から髄液を採る検査(腰椎穿刺)で診断しますが、状態によっては安全のため先に薬を始めます。小さなお子さんでは、首が硬いといった典型的な症状が出ないことがよくあります。」

出典

  • 日本神経学会・日本神経治療学会・日本神経感染症学会(編).細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014.南江堂、2014年12月31日発行.索引 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/zuimaku_2014.html / Minds https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00273/ (2026-09-12閲覧・各章PDFを直接確認)。
  • 症状(CQ3-1・3-2, https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/zuimaku_guide_2014_04.pdf ): 「小児の細菌性髄膜炎の症状は、年齢が低いほど軽微で、かつ典型的な症状や徴候が出現しにくい」「髄膜刺激徴候が新生児でみられることはまれである。乳幼児においても、髄膜刺激徴候は必発の所見ではないので、陰性であっても細菌性髄膜炎を否定できない」、発熱を85〜99%に認めるが年長児の44%は診断時無熱、大泉門膨隆は髄膜炎患児の20%、発熱+痙攣で髄膜炎として扱うべき所見。
  • 検査(CQ4-1〜4-3, .../zuimaku_guide_2014_05.pdf ): 腰椎穿刺を速やかに行うが「検査を行うことで治療開始が1時間以上遅れる場合にはこの限りではない」、髄液検査必須項目の1時間以内完了目標、頭部CTの推奨基準(成人データに基づく)、腰椎穿刺の禁忌となる脳ヘルニア徴候、髄液所見の比較表、血液培養の推奨。
  • 鑑別(CQ6-2, .../zuimaku_guide_2014_07.pdf ): Nigrovic 2007の5項目スコア(感度98.3%)、髄液乳酸のカットオフ35 mg/dLと抗菌薬前投与での限界、抗菌薬前投与例が単核球優位を示すこと、熱性痙攣との鑑別項目、グラム染色感度の低下。
  • 治療(CQ7-1-1・7-1-3・7-2-2, .../zuimaku_guide_2014_08.pdf ): 「できるだけ早期に適切な抗菌薬を静脈内投与」「迅速に神経放射線学的検査が施行できない場合および転院の場合には、まず抗菌薬の投与を開始する」、成人での病院到着から抗菌薬投与まで平均4時間・6時間以上で有意に死亡率上昇、48時間以内の髄液無菌化と後遺症、デキサメタゾンは抗菌薬の投与前または同時。
  • 転帰・疫学(CQ2-2・CQ1-1/1-2): 2000年代の致死率5%以下・後遺症15%前後、国内調査の致死率0.3〜4.1%、Hib/PCV導入後にHib髄膜炎約90%・肺炎球菌髄膜炎約70%減少。
  • 改訂版: 「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026」が市販されている(有料書籍のため本文未確認)。本シートの数値は2014年版に基づく。
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)Table 9-1-1(小児敗血症シートに全表転記)。経験的抗菌薬の当院一本化(2026-09-26決定)の根拠:中枢神経の行は新生児・2か月〜のどちらもセフォタキシムのみを使用例に挙げ、セフトリアキソンへの言及なし。
  • セフトリアキソンNa静注用 添付文書(PMDA/JAPIC PINS、2026年6月改訂第2版)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058639.pdf 。2.2禁忌「高ビリルビン血症の低出生体重児、新生児」、8.3「新生児に本剤とカルシウムを含有する注射剤又は輸液を同一経路から同時に投与した場合に…死亡に至った症例が報告されている」。本セッションでpdftotextにより本文確認済み。当院がセフトリアキソンを全年齢で使わない決定(2026-09-26)の根拠。
  • 髄液由来肺炎球菌の薬剤耐性:JIHS IASR(一次資料)https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/552/552r03.html (全年齢メロペネム非感性率5.0%→20.9%[2018→2023]、小児0-4歳限定12.5%→36.0%・年平均検出数19.8例と少数)。carenet.com「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026」改訂ポイント記事 https://www.carenet.com/news/general/carenet/62988 (二次資料。成人16-49歳/50歳以上の区分のみでJANIS2023年18.2%と紹介・小児記述なし)。単一の確定値としては一次資料の小児限定データを主に引用する。

手技

手技

細菌性髄膜炎は検査を待たず抗菌薬を先に入れる

髄膜刺激徴候・発熱の陰性だけでは否定できない。CTか髄液検査のどちらかで治療開始が1時間以上遅れるなら、待たずに抗菌薬を開始する。転院する場合も同様。

始める前に

  • バイタル・意識・脳ヘルニア徴候を確認し、酸素投与・ルート確保を行う
  • 脳ヘルニアの徴候(視神経乳頭浮腫/一側・両眼の瞳孔固定または散大/除脳・除皮質肢位/Cheyne-Stokes呼吸/固定した眼球偏位)の有無を確認する
  • 発熱+痙攣では、痙攣前の傾眠傾向/項部硬直/出血性発疹/大泉門膨隆/痙攣後1時間以上の意識レベル低下のいずれかがないか確認する
  • 前医で抗菌薬が投与されていないか必ず確認する

手順

  1. 1

    意識障害・ショックがあれば蘇生を優先しつつ、血液培養→抗菌薬の順で進める

  2. 2

    血液培養を採る

    髄液が採れない場合、血液培養の結果が起炎菌同定に重要になる

  3. 3

    意識障害・神経巣症状・痙攣発作・乳頭浮腫・免疫不全があれば頭部CTを推奨する

    CTのために治療開始が1時間以上遅れるなら、CTを待たず抗菌薬へ

  4. 4

    腰椎穿刺を1時間以内を目標に行う。初圧・細胞数分画・糖/血糖・蛋白・グラム染色・培養・肺炎球菌抗原を1時間以内に完了を目標にする

    髄液検査に1時間以上かかるなら、待たず抗菌薬へ

  5. 5

    抗菌薬前投与例やグラム染色陰性例では、肺炎球菌抗原定性検査を行う

  6. 6

    経験的抗菌薬を静脈内投与する

    デキサメタゾン静注は、抗菌薬の投与前または投与開始と同時に行うべき

  7. 7

    治療開始後48時間以内の髄液無菌化を目標とし、新生児などでは48〜72時間に再度髄液検査を行う

    治療開始後48時間以内に髄液が無菌化されないと神経学的後遺症のリスクが高くなる

やってはいけない

  • 脳ヘルニア徴候があれば腰椎穿刺は行わず、速やかに抗菌薬治療を開始する(腰椎穿刺は禁忌)
  • 検査のために抗菌薬を1時間以上遅らせない
  • 髄膜刺激徴候が陰性でも細菌性髄膜炎を否定できない
  • 発熱がなくても否定できない(年長児症例の44%は診断時に無熱だったという報告がある)
  • 大泉門膨隆が陰性でも否定できない(感度・特異度ともに高いとはいえず、髄膜炎患児の20%にみられるにすぎない)
  • 発熱+紫斑(髄膜炎菌血症・電撃性紫斑病の可能性)でも抗菌薬を遅らせない
  • 抗菌薬をすでに投与された細菌性髄膜炎は単核球優位の細胞増多を示し、ウイルス性髄膜炎に見えることがある。前医の抗菌薬投与歴を確認せずに髄液所見だけで判断しない
  • 臨床症状が改善しても、途中での減量や推奨投与期間前の中止は慎む

この場で持てない・送る

  • 血液培養・腰椎穿刺・初期抗菌薬・デキサメタゾンは当院で行う。転院でもまず抗菌薬を開始してから送る
  • 脳ヘルニア徴候があれば腰椎穿刺せず抗菌薬を投与し、画像と集中治療のできる施設へ送る
  • 意識障害・ショック・人工呼吸管理は当院では持てない
  • 48〜72時間後の再検・経過管理は入院管理ができる施設で行う
  • 要確認:経験的抗菌薬とデキサメタゾンの院内レジメン(年齢別)。ここが空だとワークフローが止まる
  • 要確認:夜間に髄液検査(細胞数・糖・蛋白・グラム染色・肺炎球菌抗原)を1時間以内に出せるか
  • 要確認:夜間に頭部CTが撮れるか。撮れないなら「CTを待たず抗菌薬」が既定になる
  • 要確認:小児の入院管理・集中治療ができる施設の受け入れ先
  • 要確認:頭部CTの適応基準は成人データに基づく基準がガイドラインに載っており、小児固有のCT基準(年齢閾値等)は別掲されていない。当院で小児にどう運用するか
  • 要確認:「1時間」の2つの判断基準(CT・髄液検査)を院内の掲示に落とすか

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

病態・根拠13章
病態・根拠(医師確認前の原稿)
0. 何が転帰を左右するか

細菌が血行性または隣接感染巣などから髄液腔に到達すると、菌体成分に対する宿主の炎症反応が髄膜と脳に及ぶ。血液脳関門の透過性上昇による脳浮腫、髄液循環・吸収の障害による水頭症、血管炎や血栓に伴う脳虚血が重なりうる。細菌を排除した後も炎症性の神経傷害が続きうるため、初期抗菌薬の遅れと神経学的悪化を別々に監視する。この一般的な病態説明の原典には成人データも含まれ、小児固有の発生頻度を示すものではない。[1]

当直での問いは、髄液結果だけで確定できるかよりも、「細菌性髄膜炎を疑い、蘇生・抗菌薬・専門施設への相談を同時に進めるべきか」である。検体採取は重要だが、検査のために治療開始が遅れる場合や腰椎穿刺が危険な場合は、治療を先行する。[2][3]

1. 年齢で症状と起炎菌の見方が変わる

新生児・乳児は頭痛や項部硬直を示せない、または示しにくい。哺乳不良、活気低下、易刺激性、体温異常、無呼吸、嘔吐などの非特異的な変化を重症感染症の文脈で捉える。年長児では発熱、頭痛、嘔吐、髄膜刺激徴候が手がかりになるが、典型的な三徴が揃うことを待たない。発症経過も数日の前駆症状、短時間の進展、電撃的な悪化がある。[2]

起炎菌の想定は年齢、予防接種歴、基礎疾患、頭部外傷・脳外科処置、地域の耐性動向で変わる。新生児ではB群レンサ球菌やグラム陰性桿菌などを、乳児以降では肺炎球菌やインフルエンザ菌などを考える。過去の起炎菌割合を現在の個別患児へそのまま当てはめず、培養と薬剤感受性が判明したら治療を再評価する。[3]

2. 病態から悪化所見を読む
所見疑う病態初期判断への意味
意識低下、反復・局所性けいれん、神経巣症状脳実質障害、脳浮腫、血管障害などABCと連続評価を優先し、専門施設へ緊急相談する。[1][2]
大泉門膨隆、進行する意識障害、瞳孔異常、異常肢位など頭蓋内圧亢進・脳ヘルニアの可能性脳ヘルニア徴候があれば腰椎穿刺を行わず、治療と搬送を先行する。[2][4]
紫斑、末梢循環不良、ショック菌血症・全身炎症・凝固障害の可能性髄液検査に固執せず蘇生と抗菌薬を急ぐ。[2][3]
3. 鑑別を広げる理由

年長児の発熱・頭痛・けいれんでは、ウイルス性髄膜炎、単純ヘルペス脳炎などの脳炎、急性脳症、熱性けいれん、脳膿瘍を並行して考える。新生児・乳児の活気低下では、尿路感染症を含む別の重症細菌感染症、代謝異常、けいれん性疾患なども鑑別に入る。熱性けいれんと判断する前に、けいれん前からの傾眠、遷延する意識障害、反復・局所発作、出血性発疹を確認する。[2][5]

髄液で好中球優位だから細菌性、単核球優位だからウイルス性と機械的に分けない。病初期のエンテロウイルス性髄膜炎は好中球優位になりえ、抗菌薬前投与後の細菌性髄膜炎は単核球優位になりうる。抗菌薬の前投与歴と症状の時間経過が解釈に必要である。[5]

4. 検査の読み方と限界

髄液の細胞数・分画、蛋白、糖と同時血糖、グラム染色・培養は病原体推定と後の抗菌薬調整に役立つ。血液培養は、腰椎穿刺ができない場合にも起炎菌同定の手がかりになる。可能なら抗菌薬前に採る一方、採取が治療を遅らせるときは治療を優先する。[4]

新生児では典型的な髄液細胞増多・蛋白高値・糖低下が揃わないことがあり、単回の「正常らしい」髄液だけで否定しない。髄液正常値も年齢により変わる。グラム染色・培養は抗菌薬投与後に検出率が低下するため、陰性でも前投与歴と臨床像を合わせて判断する。PCRなどの迅速検査も、培養・感受性検査や臨床再評価の代わりにはしない。[4]

頭部画像は頭蓋内合併症の評価に役立つ場合があるが、腰椎穿刺の安全性を画像だけで保証できない。脳ヘルニア徴候、循環・呼吸状態を診察し、腰椎穿刺の可否を判断する。画像を直ちに撮れない状況や転院時には、画像を待って抗菌薬開始を遅らせない。[3][4]

5. 初期治療と搬送を同時に進める理由

細菌の増殖と炎症性障害が進むため、疑った時点で上級医、受入先、検査室と並行して動く。血液培養・安全に実施できる髄液採取を速やかに行い、検査や画像が治療を遅らせる場合は初期抗菌薬を開始する。転院先の確定診断を待ってから抗菌薬を始める手順にはしない。引用した「転院時は抗菌薬を先行」の明文は2014年版の成人治療CQ由来であり、小児への具体的な適用は受入先と協議する。[3][4]

経験的治療は年齢・起炎菌・耐性・薬剤の髄液移行を踏まえて選び、培養・感受性と経過に応じて見直す。補助療法の適応と投与時点も起炎菌や年齢で検討が必要である。この詳細節は上の院内オペシートの採用薬・用量を追加・変更しない。上段のレジメンは医師の方針決定済みだが、院内在庫と当直帯の調達は未確認であり、実行可能な手順として確定したわけではない。ショック、意識障害、呼吸不全、けいれん、脳ヘルニア徴候、集中治療を要する可能性があれば、初期対応と専門施設への搬送相談を並行する。[3]

6. 出典・更新待ち
  1. 日本神経学会ほか.細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014:症状・症候。病態と小児の年齢別症状を2026-10-01に本文確認。
  2. 同.症状・症候、鑑別診断。年齢別症状、けいれん、鑑別の原典。
  3. 同.治療。抗菌薬先行、起炎菌判明後の治療再評価の原典。
  4. 同.検査。腰椎穿刺・血液培養・髄液解釈・画像の限界の原典。
  5. 同.鑑別診断。小児の鑑別と髄液分画の限界の原典。

更新待ち:細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026は刊行済みだが、書籍本文の推奨・数値は未確認。上記は2014年版に基づく医師確認前の原稿であり、2026年版との照合、現行の予防接種・耐性動向、院内採用薬と夜間運用を担当医師が確認する。[6]

  1. 南江堂.細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026 書誌情報。刊行の確認のみ。
穿刺前の安全条件

新規巣症状・瞳孔反応異常・GCS9以下または進行/急速な意識低下等があればLPを延期する。明らかな脳ヘルニア徴候がないことだけで実施しない。気道・呼吸・循環、けいれん・出血リスクを先に評価・安定化し、抗菌薬と専門施設への相談を画像待ちで遅らせない。正常/ウイルス性に見える髄液も、強い臨床的疑いを否定しない。[5]

  1. NICE NG240 1.4.7–1.4.12。小児を含む推奨。新生児は別の新生児感染推奨も併用する。
臨床医が迷う場面
髄液検査に時間がかかる。結果まで抗菌薬を待つ?

重症や強い疑いでは血液培養など採取可能な検体を迅速に確保し、結果待ちで治療を遅らせない。呼吸循環不安定、制御不能の発作、局在神経所見など穿刺が危険な場合は先に安定化と抗菌薬を開始し、安全になってから検査を相談する。

根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄)

初回髄液が正常に近い。抗菌薬を中止できる?

早期や抗菌薬前投与などでは所見の解釈に注意する。意識、発作、全身状態と培養・PCRを合わせ、臨床的疑いが強ければ単回の髄液所見だけで中止しない。再穿刺や脳炎治療、転送の必要性を上級医・感染症専門医と決める。

根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄)

解熱したら退院し、聴力は家族が気づけば調べる?

治療日数は原因菌と合併症で判断し、解熱だけでは終了しない。回復後も聴覚・発達などの後遺症を計画的に評価する必要がある。退院前に専門診療、聴力検査、再診を手配し、再発熱・意識変化・けいれん時の連絡先を家族に渡す。

根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄)

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