急性腹痛・嘔吐(外科のない当直で)

急性腹痛・嘔吐(外科のない当直で)

外科的緊急β版・逐条レビュー継続中

2026-09-10更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし/当直帯は超音波・CT・MRIが使えない。判断軸は「診断名」ではなく 持つ・送る・送るまでに何をするか当直帯に画像が無いことは、このシートの前提を壊さない——もともと確定を待たない設計だから。

30秒要約

  • 外科を持たない当直では、診断が確定しなくても送る判断はできる。確定を待って時間を使うほうが危ない。
  • 当直帯の当院に画像は無い(超音波・CT・MRIいずれも。2026-09-14 確認)。だから「確定を待たない」は選択ではなく唯一の道。当直帯に使えるのは問診・診察・簡易採血・迅速検査・尿定性・便、そして時間だけ。
  • 時間で結果が決まるのは4つ。胆汁性嘔吐(中腸軸捻転)/陰嚢痛(精巣捻転)/間欠的な啼泣(腸重積)/腹膜刺激(穿孔)。最初の3分でこの4つを外す。
  • 腹痛の子で腹だけを診ない。陰嚢・鼠径・咽頭・呼吸数・尿・血糖。腹以外の病気が腹痛で来る。
  • 「胃腸炎」と書いた瞬間に思考が止まる。嘔吐が先行し下痢が続く、痛みは排便で軽快する — この形から外れたら疑い直す。年少児の虫垂炎は胃腸炎と診断されて進行することがある。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119ショック(CRT>3秒・末梢冷感・頻脈・意識低下)ルート確保、等張晶質液ボーラス、上級医コール、受け入れ先へ第一報待たない
119板状硬・反跳痛・体動で悪化する持続痛(腹膜炎)絶食・ルート。立位/左側臥位X線で遊離ガス。外科のある施設へ即連絡待たない
緊急緑〜黄色の胆汁性嘔吐(特に新生児・乳児)胆汁性というだけで動く。当直帯は画像で確かめられない。腸回転異常症・中腸軸捻転として小児外科へ即相談数時間で腸管壊死
緊急男児の下腹部痛・陰嚢痛(本人が言わなくても診る)その場で陰嚢診察(挙睾筋反射・精巣高位/横位・硬さ)。当直帯はエコーが無いので、診察所見だけで送る急性陰嚢症発症6〜8時間
緊急3か月〜2歳の間欠的な啼泣+嘔吐これだけで腸重積の疑診が成立する。当直帯はエコーが無い。血便も画像も待たずに整復可能施設へ電話腸重積早いほど整復成功
緊急鼠径部〜陰嚢の硬い膨隆+不機嫌・嘔吐(嵌頓ヘルニア)用手整復の可否は施設方針に従う。整復不能・皮膚変色は外科へ数時間
当日反復する嘔吐+多飲多尿・体重減少・深く速い呼吸血糖・尿ケトン。DKAを外す当日
当日発熱+腹痛だが腹部所見が乏しい検尿・咽頭・鼓膜・呼吸数。UTI/溶連菌/下葉肺炎が腹痛で来る当日
当日紫斑+腹痛(IgA血管炎)腸重積の合併を念頭に置く。当直帯はエコーで合併を外せないので、腹痛が強ければ相談に回す。腹痛が紫斑に先行しうる当日

鑑別:よくある(頻度順)

疾患拾う所見決め手外来での落とし所
ウイルス性胃腸炎嘔吐が先行→下痢、周囲の流行、痛みは持続せず排便で軽快臨床診断(実質は除外診断)経口補水をその場で実演して評価。胆汁性嘔吐・血便が出たら再受診と伝える
便秘排便間隔、硬便、左下腹部の索状物病歴+腹部所見(X線は補助であって根拠にしない)浣腸で痛みが完全に消えるかを確認。消えなければ別疾患を疑い直す
腸間膜リンパ節炎先行する上気道炎、圧痛点が移動する、エコーで腫大リンパ節+正常虫垂虫垂炎を外したうえでの診断この病名で安心させない。翌日の再評価を必ず約束する
細菌性腸炎血便、発熱、しぶり腹、食歴・渡航歴便培養抗菌薬は原則不要。HUSの兆候(乏尿・蒼白・浮腫)を家族に説明
腹部外に原因がある腹痛腹部所見が乏しいのに痛みを訴える咽頭・鼓膜・呼吸数・検尿「腹以外を診たか」を毎回自分に問う
機能性腹痛・起立性調節障害反復、臍周囲、夜間に痛みで起きない、登校と連動レッドフラグが無いことを積み上げる除外の努力を家族に見せる。初診で診断を完結させない

鑑別:見逃してはいけない

外科を持たない当院では、この表の多くが「診断」ではなく「送る」に直結する。

「確認法」の列は送り先で行われる検査当直帯の当院はここに書かれた画像を一つも撮れないので、右端の「当院の扱い」だけが当直の行動になる。

疾患これがあれば疑う確認法(送り先で時間の勝負当院の扱い
中腸軸捻転(腸回転異常症)胆汁性嘔吐。新生児〜乳児。腹部所見が乏しくても否定しない上部消化管造影が標準。エコーのSMA/SMV位置異常は補助数時間で広範囲腸管壊死持てない。診断を待たず小児外科のある施設へ
精巣捻転突然の陰嚢痛(夜間・早朝に多い)、嘔気嘔吐、挙睾筋反射消失、精巣高位・横位。急性陰嚢症の20〜30%を占める診察が中核。TWISTスコア5〜7点は高リスクでエコーを待たない発症6〜8時間(ゴールデンタイム)持てない。泌尿器科・小児外科へ即
腸重積3か月〜2歳の間欠的啼泣。痛みの合間はケロッとしている。血便は遅発所見エコーでtarget signとpseudokidney signの両方を確認早いほど整復成功率が高い整復の実施可否は要確認(穿孔時に開腹できない)。原則は整復可能施設へ
急性虫垂炎(特に年少児)最初から右下腹部痛とは限らない。不機嫌・食欲低下で始まる。糞石があると急速に穿孔エコーで径>6mm・非圧縮性。糞石・周囲脂肪織の変化は支持所見小児は炎症の進行が経過時間と並行しない持てない。外科のある施設へ
嵌頓鼠径ヘルニア鼠径〜陰嚢の硬い膨隆、不機嫌、嘔吐視診・触診+エコー数時間で腸管・精巣が阻血整復可否は施設方針。整復不能なら外科へ
卵巣捻転女児の突然の下腹部痛+嘔吐。卵巣嚢腫の既往エコー。ドプラで血流があっても否定しない数時間持てない。婦人科・小児外科のある施設へ
糖尿病性ケトアシドーシス嘔吐+多飲多尿+体重減少、深く速い呼吸、腹痛血糖・血液ガス・尿ケトン数時間初期輸液は当院で開始。管理は小児集中治療のある施設と相談
心筋炎嘔吐・腹痛で来る。発熱や脱水で説明できない頻脈、活気不良、肝腫大心電図・胸部X線・心エコー・心筋逸脱酵素急速に破綻しうる持てない。循環管理のできる施設へ
IgA血管炎(腹部型)紫斑+腹痛。腹痛が紫斑に先行することがある皮疹の分布。腸重積合併をエコーで検索合併症次第腸重積を合併すれば外科のある施設へ
消化管異物(ボタン電池・磁石)突然の嘔吐・流涎・胸腹部痛。目撃がなくても否定しない頸部〜腹部X線(正面+側面)食道停留のボタン電池は緊急内視鏡・外科が要る。持てない
敗血症・髄膜炎(乳幼児)腹部症状だけで来ることがある。ぐったり・末梢冷感腹部より全身評価を優先待たない初期対応後に上位施設へ
尿路感染症・腎盂腎炎側腹部痛、CVA叩打痛、膿尿。乳児は発熱のみのことがある検尿・尿培養・エコー当日多くは当院で開始できる

所見の取り方(当直で差がつくところ)

  • 腹部は泣かせない順で診る。視診(膨隆・腸型・皮膚)→聴診→痛くない場所から浅い触診→最後に痛い場所。反跳痛は最後の最後。
  • 歩かせる。踵落としやジャンプで右下腹部に響くかは腹膜刺激の代用になる。歩けない、体を曲げて歩く、は強いサイン。
  • 間欠を見る。腸重積は痛みの合間に嘘のように機嫌が戻る。1回の診察で決めず、時間を置いて2回診る。
  • 陰嚢と鼠径は毎回開ける。年長男児は羞恥から自分から言わない。「腹痛で来た男児の陰嚢を診ていない」が最も再現性の高い見逃し。
  • 呼吸数と血糖を取る。DKAのKussmaul呼吸も下葉肺炎の頻呼吸も、腹だけ診ていると落ちる。
  • 便は自分で見る(おむつを開ける)。イチゴゼリー状粘血便は遅い所見だが、見れば決まる。
  • 触診でオリーブ様腫瘤やDance徴候が触れないことは、否定の根拠にならない(いずれも出現頻度が低い)。

問診チェック

検査(順序と閾値)

当直帯の当院で出せるのは 2〜5X線は夜間も撮れる。2026-09-14 確認)。1 と 6 のエコーだけが当直帯に無い
エコーが担っていた仕事——腸重積・虫垂炎・卵巣捻転・精巣捻転を「確かめる」——は、当直帯では確かめずに送るに置き換わる。6 がもともと「陰性でも否定しない」と言っている検査なので、無いことで判断の向きは変わらない。変わるのは速さだけで、速いほうへ変わる。

  1. エコーが第一当直帯は当院で当てられない。送り先での検査)。腸重積(target/pseudokidney)、虫垂(径>6mm・非圧縮性)、遊離腹水、腎・膀胱、陰嚢血流。
  2. X線は目的を決めてから撮る夜間の可否は要確認)。遊離ガス(立位/左側臥位)、腸閉塞(鏡面像)、異物。「便秘の確認」でルーチンに撮らない。
  3. 血液検査は全身状態不良・脱水・虫垂炎疑い・DKA疑いで。CRPは発症早期に上がっていないことがあり、初回低値を除外に使わない。
  4. 検尿の閾値は低く。UTI・DKA・結石が一度に拾える。
  5. 血糖は腹痛+嘔吐なら測る
  6. エコー陰性は否定ではない。虫垂炎は年少児・肥満児で感度が落ちる。疑いが強ければ時間を置いて再検するか、送る。当直帯はそもそも撮らないので、この原則がそのまま「疑いが強ければ送る」になる

初期プラン(コア)

  1. ABCとショックの有無を先に。腹部より全身。
  2. レッドフラグの4つ(胆汁性嘔吐・陰嚢痛・間欠啼泣・腹膜刺激)を最初の3分で外す。
  3. 外せなければ、確定診断を待たずに受け入れ先へ連絡しながら検査を並行する。
  4. 帰宅させる場合は再受診の条件を具体的な所見で紙に渡す(家族ページ)。「明日おかしければ」では条件にならない。

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし・当直帯は画像なし)

送ると決めた時点でやること(診断の確定を待たない)

  1. 絶食・ルート確保。脱水があれば等張晶質液で補正を開始する。
  2. 受け入れ先へ先に電話する。検査を全部終えてから電話しない。並行が原則。
  3. 家族に転院の可能性を先に伝える。「うちでは手術ができないので、必要なら移ります」を検査前に言っておくと、決まってからの説明が揉めない。
  4. 画像は「撮ってから送る」ではなく「送ると決めたうえで、送り先の判断に効くものだけ」撮る。当直帯はそもそも撮れないので、この迷いは起きない。電話で「当院で画像は撮っていない」と明示する。
  5. 鎮痛は外科診察を妨げない範囲で行う。痛みを我慢させたまま搬送しない(院内方針は要確認)。

電話で伝える順(ISBAR)

  • I:誰が・どこから・何歳何か月・体重
  • S:いま何を疑っていて、発症から何時間目か
  • B:経過・既往・ワクチン・最終飲食
  • A:バイタル・意識・腹部所見・実施した検査と結果
  • R:お願いしたいこと(受け入れ/整復/緊急手術/相談だけ、を明示する)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:夜間・休日の第一受け入れ先(小児外科/小児救急)と直通番号。小児外科は決まった連携先に直接電話する運用(施設名・番号は保留中)
  • 確定(2026-09-14・当直帯):腸重積の非観血的整復は当直帯では行わない(確診の手段が無く、不成功時に開腹できない)。原則は整復可能施設へ搬送。日勤帯の方針は要確認
  • 確定(2026-09-14):夜間の腹部エコー・CTはいずれも当院で撮れない。このシート全体が「画像なしで送る」前提で書いてある
  • 要確認:救急車要請の院内手順(誰が要請し、誰が同乗するか)
  • 要確認:消化管異物の緊急内視鏡の対応先

家族に渡す一文

「お腹の痛みには、様子を見てよいものと、時間で結果が決まるものがあります。緑色の吐物、うずくまるほどの痛みが波で来る、血の混じった便、ぐったりして反応が鈍い — このどれかが出たら、次の診療時間を待たずに来てください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 決着(2026-09-14):当直帯は疑った時点で整復可能施設へ搬送。残るのは日勤帯(超音波が使える時間帯)に当院で整復を試みるかの1点。
  • 要確認:嵌頓鼠径ヘルニアの用手整復を当院で試みるか、試みずに搬送するか。
  • 要確認:急性腹症での鎮痛(外科診察前の鎮痛の可否)についての院内方針。
  • 要確認:ボタン電池・磁石誤飲での緊急内視鏡の依頼先と、当院での初期対応の範囲。
  • 要確認:本シートを「症状から引く入口」として当直で使う前提でよいか(既存の疾患別シートとの重複をどう扱うか)。

出典

  • 日本小児外科学会.急性陰嚢症.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/seisou-nentenshou (2026-09-10閲覧):急性陰嚢症の20〜30%が精巣捻転症、新生児と思春期に発症のピーク、精巣挙筋反射の確認、発症6〜8時間以内(ゴールデンタイム)の記載を確認。
  • 日本小児外科学会.急性虫垂炎.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/kyusei-tyusuien (2026-09-10閲覧):4〜5歳頃から増えるが2〜3歳でも発症しうること、最初から右下腹部痛とは限らないこと、糞石があると急速に穿孔しうること、胃腸炎と診断されているうちに重症化しうることを確認。
  • Barbosa JA, et al. Development and initial validation of a scoring system to diagnose testicular torsion in children. J Urol. 2013;189(5):1859-64. PMID 23103800(TWISTスコアの原著)。項目は精巣腫脹2点・硬い精巣2点・挙睾筋反射消失1点・嘔気嘔吐1点・精巣高位1点。0〜2点=低リスク、3〜4点=中リスク、5〜7点=高リスク。日本語二次情報(HOKUTO計算機)経由で項目・配点を確認しており、原著本文の直接確認は未
  • 日本小児救急医学会ガイドライン作成委員会(編).エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン.https://www.convention-axcess.com/jsep/information/docs/guideline/20121017_Guideline.pdf :疑診基準(間欠的な腹痛・不機嫌だけで疑診が成立)、血便が遅発所見であること、超音波所見、整復の禁忌を、正本「腹部エコー_急性腹症_2026-07-30」経由で参照。改訂第2版(2022年)での数値・推奨度の変更有無は要照合
  • 正本「腹部エコー:急性腹症(腸重積・虫垂炎・肥厚性幽門狭窄)」2026-07-30(多層検証済み・医師確認前):虫垂炎の超音波基準(径>6mm・非圧縮性)、胆汁性嘔吐=中腸軸捻転を最優先で除外、病的先進部の年齢依存性はこの正本から。
  • 獨協医科大学埼玉医療センター小児外科.腸回転異常症.https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-k/ped_surg/malrot.html :新生児期の胆汁性嘔吐で発症し、中腸軸捻転で広範囲腸管壊死に至りうる。

手技

手技

急性腹痛・嘔吐:症状からの入口と送る判断

外科を持たない当直では、診断が確定しなくても送る判断はできる。時間で結果が決まるのは4つ—胆汁性嘔吐(中腸軸捻転)/陰嚢痛(精巣捻転)/間欠的な啼泣(腸重積)/腹膜刺激(穿孔)。最初の3分でこの4つを外す。腹痛の子で腹だけを診ない。陰嚢・鼠径・咽頭・呼吸数・尿・血糖も診る。「胃腸炎」と書いた瞬間に思考が止まる—この形から外れたら疑い直す。

始める前に

  • 腹部は泣かせない順で診る。視診(膨隆・腸型・皮膚)→聴診→痛くない場所から浅い触診→最後に痛い場所。反跳痛は最後の最後。
  • 歩かせる。踵落としやジャンプで右下腹部に響くかは腹膜刺激の代用になる。歩けない、体を曲げて歩く、は強いサイン。
  • 間欠を見る。腸重積は痛みの合間に嘘のように機嫌が戻る。1回の診察で決めず、時間を置いて2回診る。
  • 陰嚢と鼠径は毎回開ける。年長男児は羞恥から自分から言わない。
  • 呼吸数と血糖を取る。DKAのKussmaul呼吸も下葉肺炎の頻呼吸も、腹だけ診ていると落ちる。
  • 便は自分で見る(おむつを開ける)。
  • 浣腸で痛みが完全に消えるかを確認する。消えなければ便秘以外の疾患を疑い直す。

手順

  1. 1

    ABCとショックの有無を先に評価する。腹部より全身。

  2. 2

    レッドフラグの4つ(胆汁性嘔吐・陰嚢痛・間欠啼泣・腹膜刺激)を最初の3分で外す。

  3. 3

    外せなければ、確定診断を待たずに受け入れ先へ連絡しながら検査を並行する。

  4. 4

    帰宅させる場合は再受診の条件を具体的な所見で紙に渡す。

    「明日おかしければ」では条件にならない。

  5. 5

    ショック(CRT>3秒・末梢冷感・頻脈・意識低下)ではルート確保、等張晶質液ボーラス、上級医コール、受け入れ先へ第一報を行う。

  6. 6

    板状硬・反跳痛・体動で悪化する持続痛(腹膜炎)では絶食・ルート確保。立位/左側臥位X線で遊離ガスを確認し、外科のある施設へ即連絡する。

  7. 7

    緑〜黄色の胆汁性嘔吐(特に新生児・乳児)では、幽門狭窄のエコーより先に腸回転異常症・中腸軸捻転を外し、小児外科へ即相談する。

    数時間で腸管壊死に至りうる。

  8. 8

    男児の下腹部痛・陰嚢痛では本人が言わなくてもその場で陰嚢診察(挙睾筋反射・精巣高位/横位・硬さ)を行う。

    高リスクはエコー待ちで時間を溶かさない。

  9. 9

    3か月〜2歳の間欠的な啼泣+嘔吐では腹部エコー(target sign / pseudokidney sign)を行う。血便を待たない。

  10. 10

    鼠径部〜陰嚢の硬い膨隆+不機嫌・嘔吐(嵌頓ヘルニア)では、用手整復の可否は施設方針に従う。整復不能・皮膚変色は外科へ送る。

  11. 11

    反復する嘔吐+多飲多尿・体重減少・深く速い呼吸では血糖・尿ケトンを測定しDKAを外す。

  12. 12

    発熱+腹痛だが腹部所見が乏しい場合は検尿・咽頭・鼓膜・呼吸数を確認する。

    UTI/溶連菌/下葉肺炎が腹痛で来る。

  13. 13

    紫斑+腹痛(IgA血管炎)では腸重積の合併を念頭にエコーを行う。

    腹痛が紫斑に先行しうる。

  14. 14

    送ると決めたら絶食・ルート確保。脱水があれば等張晶質液で補正を開始する。

  15. 15

    受け入れ先へ先に電話する。検査を全部終えてから電話しない。

  16. 16

    家族に転院の可能性を先に伝える。

    「うちでは手術ができないので、必要なら移ります」を検査前に言っておくと、決まってからの説明が揉めない。

  17. 17

    画像は「撮ってから送る」ではなく、送ると決めたうえで、送り先の判断に効くものだけ撮る。

  18. 18

    鎮痛は外科診察を妨げない範囲で行う。痛みを我慢させたまま搬送しない(院内方針は要確認)。

  19. 19

    電話ではISBARの順で伝える:I=誰が・どこから・何歳何か月・体重、S=いま何を疑っていて発症から何時間目か、B=経過・既往・ワクチン・最終飲食、A=バイタル・意識・腹部所見・実施した検査と結果、R=お願いしたいこと(受け入れ/整復/緊急手術/相談だけ、を明示する)。

やってはいけない

  • 「胃腸炎」と書いた瞬間に思考が止まる。嘔吐が先行し下痢が続く、痛みは排便で軽快する—この形から外れたら疑い直す。年少児の虫垂炎は胃腸炎と診断されて進行することがある。
  • CRPは発症早期に上がっていないことがあり、初回低値を除外に使わない。
  • 腹部X線を「便秘の確認」のためだけにルーチンで撮らない。目的を決めてから撮る。
  • エコー陰性は否定ではない。虫垂炎は年少児・肥満児で感度が落ちる。疑いが強ければ時間を置いて再検するか、送る。
  • 触診でオリーブ様腫瘤やDance徴候が触れないことは、否定の根拠にならない(いずれも出現頻度が低い)。

終わったあと

  • 家族への一文:お腹の痛みには、様子を見てよいものと、時間で結果が決まるものがある。緑色の吐物、うずくまるほどの痛みが波で来る、血の混じった便、ぐったりして反応が鈍い—このどれかが出たら、次の診療時間を待たずに来てもらう。

この場で持てない・送る

  • 中腸軸捻転(腸回転異常症)は持てない。診断を待たず小児外科のある施設へ送る。
  • 精巣捻転は持てない。泌尿器科・小児外科へ即送る。
  • 急性虫垂炎(特に年少児)は持てない。外科のある施設へ送る。
  • 卵巣捻転は持てない。婦人科・小児外科のある施設へ送る。
  • 消化管異物(ボタン電池・磁石)は内視鏡・外科が要る。持てない。
  • 心筋炎は持てない。循環管理のできる施設へ送る。
  • 敗血症・髄膜炎(乳幼児)は腹部症状だけで来ることがある。初期対応後に上位施設へ送る。
  • 糖尿病性ケトアシドーシスは初期輸液を当院で開始したうえで、管理は小児集中治療のある施設と相談する。
  • 要確認:夜間・休日の第一受け入れ先(小児外科/小児救急)と直通番号
  • 要確認:腸重積の非観血的整復を当院で実施するか(穿孔時に開腹できない前提で、原則は整復可能施設へ搬送か)
  • 要確認:夜間の腹部エコー・CTの担当体制(技師オンコールか、当直医が自分で当てるか)
  • 要確認:救急車要請の院内手順(誰が要請し、誰が同乗するか)
  • 要確認:消化管異物の緊急内視鏡の対応先
  • 要確認:嵌頓鼠径ヘルニアの用手整復を当院で試みるか、試みずに搬送するか。
  • 要確認:急性腹症での鎮痛(外科診察前の鎮痛の可否)についての院内方針。

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

同じ場面のシート

ほかに開く

↑↓ 移動 / Enter 開く / Esc 閉じる