低血糖
内分泌・代謝・血液β版・逐条レビュー継続中
2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について
施設プロファイル: 二次救急。低血糖そのものは当院で対応できる。原因の精査で送る場面がある。
30秒要約
- 意識障害・けいれんで来た子は、まず血糖を測る。けいれん重積のガイドラインでも、初期対応に「血糖測定(必要ならブドウ糖投与)」が明記されている。
- 6〜7歳以下は低血糖を自分で認知できない。訴えを待たない。
- 症状は不機嫌、空腹感、顔色不良、傾眠傾向、あくびなど個人差がある。進行すれば昏睡に陥る。
- 1型糖尿病の児では、臨床的な低血糖は 70 mg/dL未満(小児科領域)。
- 治してから考える。血糖を戻したあとに、なぜ下がったかを詰める。
レッドフラグ
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | その場で次にやること | 時間の勝負 |
|---|---|---|---|
| 119 | 意識障害・けいれん+低血糖 | 検査より先にブドウ糖。投与後に反応と血糖を再検 | 分単位 |
| 119 | 血糖を戻しても意識が戻らない | 低血糖以外の原因を並行して探す(意識障害) | 待たない |
| 緊急 | 乳児・新生児の低血糖 | 代謝疾患・内分泌疾患の初発でありうる。血糖を戻す前の採血(クリティカルサンプル)を検討 | — |
| 緊急 | 糖尿病治療中の重症低血糖 | 誘因(インスリン量・食事・運動のミスマッチ)を詰める。再発予防まで | — |
| 緊急 | 絶食・嘔吐が続いたあとの低血糖 | ケトン性低血糖。輸液で対応しつつ、繰り返すなら精査 | — |
| 当日 | 症状があり血糖が低め、補食で改善 | 原因を詰めて再受診条件を渡す | — |
定義(注意して使う)
- 日本糖尿病学会の記述では、小児科領域では臨床的な低血糖は 70 mg/dL 未満とされている。ただしこれは1型糖尿病患者における臨床的低血糖の定義で、非糖尿病児で症状が出る閾値としてそのまま一般化できるかは、本シートでは国内の一次資料を確認できていない(要確認)。
- 重症低血糖の頻度は 3〜7人/100人・年(1型糖尿病)。
- 6〜7歳以下の患者は低血糖を認知できないで重症低血糖となる可能性を考慮して低血糖対策を行う必要がある。
症状(日本小児内分泌学会)
「不機嫌、空腹感、顔色不良、傾眠傾向、あくびなど、症状には個人差があります」「進行すれば昏睡状態に陥ります」
乳児では「哺乳しない」「なんとなく元気がない」だけのことがある。
鑑別:なぜ下がったか
| 群 | 具体 | 拾い方 |
|---|---|---|
| 糖尿病治療中 | インスリン・経口薬の量と、食事・運動のミスマッチ | 治療内容と直前の経過 |
| 摂取不足 | 嘔吐・下痢・絶食(ケトン性低血糖) | 最終の食事、シックデイの経過 |
| 中毒 | アルコール、経口血糖降下薬の誤飲、β遮断薬 | 曝露歴(急性中毒) |
| 内分泌 | 副腎不全、成長ホルモン分泌不全、下垂体機能低下 | 色素沈着、低身長、電解質(低Na・高K) |
| 代謝 | 脂肪酸β酸化異常症、糖原病、有機酸代謝異常 | 乳児期発症、肝腫大、家族歴、新生児マススクリーニングの結果 |
| 高インスリン血症 | 先天性高インスリン血症、インスリノーマ | 高血糖を伴わない反復する低血糖 |
| 敗血症・重症感染 | 全身状態不良に伴う | 感染徴候 |
| 肝不全 | 黄疸、凝固異常 | 肝機能 |
初期対応
- 血糖を測る。意識障害・けいれんでは最優先。
- 低血糖なら、ブドウ糖を投与する。意識があり経口が可能なら補食、意識障害・けいれんがあれば静脈内投与。
- 投与後に血糖と意識を再検する。戻らなければ別の原因を探す。
- 原因の見当がつかない乳幼児の低血糖では、ブドウ糖を投与する前の採血(クリティカルサンプル)を検討する。投与後では代謝・内分泌の診断がつかなくなる。
- 再発を防ぐところまでやる(補液の継続、食事の指示)。
用量は本シートに記載していない。ブドウ糖の濃度・量は院内プロトコルと採用製剤で決まるため、薬剤一覧と院内の指示に従うこと(要確認)。
検査
- 血糖
- (可能なら投与前に)クリティカルサンプル: 血糖、血液ガス、電解質、ケトン体、遊離脂肪酸、インスリン、コルチゾール、成長ホルモン、アンモニア、乳酸、尿ケトン
- 肝機能・腎機能
- 感染の検索
送る/持つ(当院=二次救急)
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:クリティカルサンプルの項目と、夜間に提出できるか(提出できないなら保存の手順を決めておく)
- 要確認:小児内分泌・代謝の紹介先
- 要確認:院内のブドウ糖製剤(濃度・剤形)と、小児への投与量の院内標準
- 要確認:新生児マススクリーニングの結果を確認する経路
家族に渡す一文
「血糖が下がって症状が出ていました。まず糖を補って戻します。小さいお子さんは「低血糖だ」と自分で気づけないので、機嫌が悪い・顔色が悪い・うとうとする、といった様子が手がかりになります。なぜ下がったかを調べることが大事なので、いつ何を食べたか、薬を飲んでいるか、できるだけ詳しく教えてください。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:非糖尿病児の低血糖のカットオフ値(症状が出る閾値)について、国内の一次資料を確認できていない。「70 mg/dL未満」は1型糖尿病における臨床的低血糖の定義であり、そのまま流用してよいかの判断が要る。
- 要確認:クリティカルサンプルを当院で採る運用にするか。採らずにブドウ糖を投与すると、代謝・内分泌疾患の診断機会を失う。
- 要確認:ブドウ糖の投与量を本シートに載せるか(現在は載せず院内プロトコルに委ねている)。
- 要確認:けいれん・意識障害を主訴とする低血糖の頻度・原因内訳は今回調べられていない。
出典
- 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024 第18章 小児・思春期における糖尿病.https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/18.pdf (2026-09-12閲覧・PDF原文を確認)。「小児科領域では、臨床的な低血糖は70 mg/dL未満である」「重症低血糖の頻度は、3〜7人/100人・年である」「6〜7歳以下の患者は低血糖を認知できないで重症低血糖となる可能性を考慮して低血糖対策を行う必要がある」。この定義は1型糖尿病患者の文脈である点に注意。
- 日本小児内分泌学会.糖尿病.https://jspe.umin.jp/public/tounyou.html (2026-09-12閲覧)。低血糖の症状(不機嫌、空腹感、顔色不良、傾眠傾向、あくびなど、症状には個人差がある/進行すれば昏睡状態に陥る)。同ページに血糖値のカットオフの明記はない。
- 日本小児神経学会.小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023.https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/SE2023GL/03SE_vol01.pdf (2026-09-12閲覧)。けいれん重積の初期対応に「血糖測定(必要ならブドウ糖投与)」が含まれること。
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