血液ガス検査

血液ガス検査

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-07-31更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

家族説明を開く

当院の夜間に血液ガスは出せる(静脈血でも可。2026-09-14 確認)。当直帯に使える数少ない「深い」検査なので、肥厚性幽門狭窄症の低Cl性アルカローシス、糖尿病性ケトアシドーシス小児敗血症、呼吸不全の評価は夜でもそのまま組める。
乳酸が同時に出るかは未確認。出ないなら灌流はCRT・末梢冷感・尿量・意識で見る。

30秒要約

  • 血液ガス検査。家族説明と同じ受診サインで切る。
  • まず毒性・気道・循環を見る。迷ったら上級医。
  • 家族には説明ページを渡し、様子見の自己判断を止めさせる。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
119ぐったりしている、呼びかけへの反応が弱い、意識がぼんやりしている、けいれんが起きた家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日唇や皮膚の色が悪い(紫色っぽく見える)、まだらな色になっている家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
119呼吸が止まって見える瞬間があった、または呼吸が不規則になる家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急強い陥没呼吸(肋骨の間や胸が大きくベコベコとへこむ)、小鼻が大きく広がる呼吸家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急一度苦しそうだったのに急に呼吸が楽になったように見えて、それなのにぐったりしている・顔色が悪い(呼吸をがんばりすぎて疲れきってしまったサインのことがあります)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日呼吸が苦しそう(小鼻がひろがる、肋骨の間や胸がへこむ、ゼーゼー・ヒューヒューという音がする)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日水分やおっぱい・ミルクをほとんど受けつけない、おしっこの回数や量が明らかに少ない家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日目がくぼんで見える、皮膚を軽くつまむとゆっくりとしか戻らない(脱水が進んでいるサインのことがあります)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日嘔吐が止まらない、お水をとる量やおしっこの量が急に増えて体重が減ってきた(糖尿病のサインの可能性があります)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急生後3か月未満(12週未満)の赤ちゃんで、呼吸の様子がいつもと違う、元気がない家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日上記ほどではないものの、症状が長引く、少し気になる変化があるとき家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. ABC と毒性を先に見る。
  2. 上のレッドフラグで 119 / 今日受診 / 説明して帰宅 を分ける。
  3. 検査・薬は施設プロトコル。用量は書かない。
  4. 家族説明を渡す。

家族に渡す一文

この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。
https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/血液ガス検査について_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • レッドフラグ、判断に迷う → 上級医

出典

  • Family Guide blood-gas と整合

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
計算

血液ガスの読み(代償とアニオンギャップ)

mmHg
mEq/L

アニオンギャップ(任意)

mEq/L
mEq/L

値を入れると判定します

    静脈血は動脈血の代用になる項目とならない項目がある。pH(静脈は平均0.033低い)とHCO3⁻(静脈は平均1mEq/L高い)はばらつきが狭く代用に適するが、PCO2は静脈血単独での代用は困難(静脈PCO2 55mmHgのとき動脈は44.3〜57.4mmHgの幅)。呼吸性の異常が疑われる場面(細気管支炎の疲弊によるCO2貯留、喘息重積)は、経時的なトレンドと臨床所見(努力呼吸・意識レベル・SpO2)と組み合わせて判断する。

    いつ使う

    代謝性の酸塩基平衡異常(脱水・DKA・敗血症の乳酸評価など)はpHとHCO3⁻が動脈血とよく相関するため静脈血ガスを積極的に使ってよい。呼吸性の異常は静脈血だけでの代用が難しい。

    落とし穴
    • 新生児・低月齢乳児は腎での重炭酸再吸収閾値が生理的に低く、HCO3⁻がやや低め(軽度の代謝性アシドーシス寄り)に振れやすい。この年齢層は哺乳・活気・体重増加とあわせて評価する
    • AGの基準値は施設依存。一般に12とすることが多いが、本邦のようにClをイオン選択電極法で測定する場合は10程度と低くなる。古典的な基準範囲として12±4(8〜16)を挙げる教科書もある
    • 呼吸性代償の予測よりPaCO2が高ければ代償不全=疲弊・呼吸障害の合併を疑う。数字が「代償されている」ように見えても臨床像を見る
    次の一手

    AGが開大していれば高AG性の鑑別へ、正常AG(高Cl性)なら別の鑑別へ(本シート§3)。乳酸は正常なら動脈も正常域とみなせるが、上昇時は動静脈差が拡大する(高乳酸血症で1.06±1.30mmol/L)ため幅を持たせて解釈する。

    出典

    動静脈同時採血のメタ解析(本シート§2-1)/基準値は成書的な代表値(§2-2)/代償の予測式と酸血症の閾値は§2-3。URLは本シート詳細リファレンス参照。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    計算

    初期輸液・ボーラス量(場面別)

    kg

    場面

    この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。

    いつ使う

    体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。

    落とし穴
    • 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
    • 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
    • アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
    • 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
    • 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
    出典

    ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    処方

    処方

    処方の考え方

    静脈血ガスはpH・HCO3⁻については動脈血の代用としてよいが、PCO2は動静脈差のばらつきが大きく単独で呼吸不全の有無を判断しない。DKAの初期対応は、ショック時ボーラス→初期輸液→インスリン持続静注(輸液開始1時間後以降)の順を守り、インスリンのワンショット静注は行わない。重炭酸は原則投与しない。

    DKA初期対応の段階

    この数字の意味

    体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

    薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    詳細リファレンス8章(正本より)

    出所: 正本「血液ガスの読み方_2026-07-30.md」(起草→敵対的検証→一次資料照合→独立再検証済み)。同期日: 2026-08-14。
    用量・基準は「考え方」の記載であり、適用前に一次資料と院内採用・添付文書を確認すること。「医師確認事項」に残る論点は未確定。

    • 区分: 外来編/血液検査
    • 記録日: 2026-07-30
    • 状態: 下書き(要・本人確認)
    • 対象: 小児外来(愛育病院)

    ⚠ 本ファイルはAIが最新の文献・ガイドラインをWeb検索して起草した下書き。最終的な臨床判断は医師(岡本)が確認して確定する。用量は体重換算の「考え方」のみ・個別患者値や患者情報は書かない。

    0. 要点(3行)
    • 静脈血ガスのpH・HCO3⁻は動脈血とよく相関し、代謝評価(脱水・アシドーシスの程度)は静脈血で十分代用できる。PCO2は動静脈差のばらつきが大きく、静脈血1点だけで呼吸不全の有無を判断してはいけない[7]。
    • 脱水・胃腸炎の代謝性アシドーシスは「下痢によるHCO3⁻喪失」「循環不全による乳酸」「摂食不良による飢餓性ケトーシス」の複合であることが多く、アニオンギャップ(AG)を実際に計算しないと初発1型糖尿病(DKA)を見逃す[1][2][8]。
    • 細気管支炎はSpO2が保たれていても、静脈血HCO3⁻の上昇(呼吸性代償が進んだサイン)が入院後の人工呼吸管理の独立危険因子になる。低月齢児(特に生後1か月未満)は無呼吸・急速増悪のハイリスク群[5][6]。
    1. いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)
    • 使う(適応):
    • 中等症以上の脱水・嘔吐下痢で全身状態不良(活気低下・末梢冷感・頻脈)
    • 呼吸窮迫・努力呼吸の増強、意識レベルの変化を伴う細気管支炎・喘息発作
    • 多尿・多飲・体重減少・意識障害があり、DKA(特に初発1型糖尿病)を疑うとき(同時に血糖測定を必ず行う)
    • 敗血症を疑うショック徴候(末梢循環不全・意識変容・尿量低下)での乳酸評価
    • 痙攣後の意識障害遷延、哺乳不良・嘔吐を繰り返す乳児で先天代謝異常症を除外したいとき
    • 使わない・過剰になりがち:
    • 軽症脱水(経口摂取可・活気良好・毛細血管再充満正常)にルーチンで穿刺する
    • SpO2良好・努力呼吸軽度の軽症細気管支炎で、経過観察のために反復採血する
    • 「動脈血でないと評価できない」という思い込みで、静脈血ガスで足りる場面まで動脈穿刺を選ぶ(小児では特に侵襲・苦痛が大きい)
    • 静脈血PCO2が高値というだけで「呼吸不全あり」と断定する、逆に正常というだけで「疲弊なし」と安心する(PCO2は動静脈差のばらつきが大きく単独では判断力が弱い[7])
    2. 実際(読み方・基準値・手技・スケジュール等)

    2-1. 静脈血ガスと動脈血ガスの使い分け

    動脈血と静脈血を同時採取した研究のメタ解析では、以下の相関が報告されている[7]。

    項目動脈血との差ばらつき臨床的な意味
    pH静脈血は平均0.033低い95%CI 0.029〜0.038と狭い代用に適する
    HCO3⁻静脈血は平均1mEq/L高い95%CI 0.56〜1.50と狭い代用に適する
    PCO2静脈血は高め(一定しない)大きい(例:静脈PCO2 55mmHgのとき動脈は44.3〜57.4mmHgの範囲)単独での代用は困難
    乳酸静脈血の方が高め高乳酸血症では動静脈差がさらに拡大(1.06±1.30mmol/L)正常なら動脈も正常域とみなせるが、上昇時は幅を持たせて解釈

    運用の考え方: 代謝性の酸塩基平衡異常(脱水・DKA・敗血症の乳酸評価など)はpHとHCO3⁻が動脈血とよく相関するため、静脈血ガスを積極的に使ってよい。一方、呼吸性の異常(細気管支炎の疲弊によるCO2貯留、喘息重積など高二酸化炭素血症が疑われる場面)は静脈血だけでの代用は難しく、経時的なトレンドや臨床所見(努力呼吸・意識レベル・SpO2)と組み合わせて判断する[7]。

    2-2. 基準値の目安(成書的な代表値)

    項目動脈血備考
    pH7.35〜7.45静脈血はこれより約0.03低いのが目安
    PaCO235〜45mmHg静脈血は数mmHg〜十数mmHg高くなり得る(ばらつき大)
    HCO3⁻22〜26mEq/L静脈血はこれより約1mEq/L高い
    BE-2〜+2mEq/L
    乳酸<2mmol/L敗血症性ショックの診断基準の一部(後述)[4]
    AG12前後(Na−Cl−HCO3⁻、施設基準に依存)一般に基準値を12とすることが多いが、本邦のようにClをイオン選択電極法で測定する場合は10程度と低くなる。古典的な基準範囲として12±4(8〜16)を挙げる教科書もある[8]

    新生児・低月齢乳児は腎での重炭酸再吸収閾値が生理的に低く、HCO3⁻がやや低め(軽度の代謝性アシドーシス寄り)に振れやすい。この年齢層の解釈は、他所見(哺乳・活気・体重増加)とあわせて評価する。

    2-3. 代謝性アシドーシス評価の手順

    1. pHを見る:酸血症は動脈血pH<7.35(静脈血ではpH<7.32が目安)[8]。
    2. HCO3⁻の低下が一次性か確認する:代謝性アシドーシスはHCO3⁻の一次性低下でpHが低下する病態。
    3. 呼吸性代償の程度を評価する:慢性の代謝性アシドーシスでは、HCO3⁻が1mEq/L低下するごとにPaCO2は概ね1.0〜1.3mmHg低下するのが適切な代償とされる(代償の下限はPaCO2 15mmHg程度)[8]。この予測範囲より低いPaCO2=呼吸性アルカローシスの合併、高いPaCO2=代償不全(=疲弊・呼吸障害の合併)を疑う。
    4. アニオンギャップ(AG=Na−Cl−HCO3⁻)を計算する:高AG性か正常AG性(高Cl性)かで鑑別が大きく変わる(§3参照)。
    5. AG開大時はΔAGを評価する:ΔAG(=実測AG−基準AG)をHCO3⁻に足し戻し(補正HCO3⁻)、隠れた正常AG性アシドーシスの併存を確認する[8]。
    6. 低アルブミン血症があれば補正する:血清アルブミン1g/dLの低下でAGは約2.5低下するため、補正AG=AG+(4−血清Alb[g/dL])×2.5で評価する(重症患児・低栄養児で見落としやすい)[8]。

    2-4. DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)の診断と初期対応の考え方

    ISPAD 2022/日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」に基づく生化学的診断基準は以下の3つ全ての充足[1][2]。

    • 高血糖:血糖値>200mg/dL(11mmol/L)
    • 酸血症:静脈血pH<7.3 または 重炭酸イオン<18mmol/L
    • 高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸≧3mmol/L)またはケトン尿

    HCO3⁻閾値の改訂経緯(確認済み):この重炭酸イオン閾値はISPAD 2018版では<15mmol/Lだったが、ISPAD 2022版で<18mmol/Lに引き上げ改訂された(「表記に幅がある」のではなく、2018→2022で基準自体が変更された)[2]。日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会2024コンセンサスGL第9章の本文解説もISPAD2022と同じ<18mmol/Lを採用しており一致するが、同GL自身に新旧混在が残る:同じ第9章冒頭の【ポイント】要約ボックスには旧版(ISPAD2018)由来の「重炭酸イオン<15mmol/L」という表記がそのまま残っている(原文PDFで直接確認済み・2026-07-31)。同GLが「本項目の解説の内容はISPADガイドライン2018の内容を原則としているが、一部ISPAD2022の内容を参照している」と明記しているための混在であり、GLの誤記や本ファイルの誤りではない。本ファイルは本文解説・ISPAD2022と一致する<18mmol/Lを採用するが、日本のGL要約ボックスだけを見ると<15mmol/Lという古い数値が目に入る可能性がある点に留意する[1][2]。さらにISPAD2022は重症度分類も定めている。

    • 軽症:pH<7.3 または HCO3⁻<18mmol/L
    • 中等症:pH<7.2 または HCO3⁻<10mmol/L
    • 重症:pH<7.1 または HCO3⁻<5mmol/L

    最低限必要な検査は血液ガス分析、血算、血糖値、電解質、血液尿素窒素、クレアチニン、浸透圧、HbA1c(可能なら尿ケトン体・血中β-ヒドロキシ酪酸も)[1]。

    初期対応の考え方(体重換算のみ・個別処方値ではない)[1]:

    • ショック状態なら0.9%生理食塩水20mL/kgをボーラス投与し必要なら反復
    • 初期輸液は0.9%生理食塩水10mL/kgを30〜60分かけて投与(低張液による脳浮腫リスクに留意)
    • インスリンは初期輸液開始少なくとも1時間後(=循環血液量が増大した後)から0.1単位/kg/時で持続静注を開始し、血糖値が300mg/dLまで低下したら0.05単位/kg/時へ減量する。開始時の血糖値が300mg/dL以下のとき、またはインスリン感受性の良い年少児では0.05単位/kg/時で開始してもよい(血糖低下速度は100mg/dL/時を超えないよう調整)。ワンショット静注は行わない(原文で0.1→0.05の時系列を確認済み・単なる許容範囲ではない)[1]
    • 重炭酸の投与は原則として行わない(脳浮腫リスクの観点から)
    • 脳損傷(DKAの死亡原因のうち最も多い合併症で、報告により50〜80%台と幅がある)を示唆する頭痛・不穏・易刺激性・傾眠・血圧上昇・徐脈・酸素飽和度低下に注意する[1]

    2-5. 脱水の重症度評価(日本小児救急医学会・小児急性胃腸炎診療ガイドライン)

    臨床症状による脱水重症度評価が推奨されている(体重測定困難時も臨床症状から推測可能)[3]。未確認事項:本項は2017年版「小児急性胃腸炎診療ガイドライン」に基づくが、2024年11月に日本小児感染症学会・日本小児消化管感染症・免疫アレルギー研究会から後継となる「小児消化管感染症診療ガイドライン2024」が発行されており、脱水重症度判定の章がある(存在は検索で確認済み)。下表の体重減少率区分(<3%/3〜9%/>9%)が2024年版でも同じ数値かは書籍版のため未確認。運用前に2024年版を直接確認すること。

    症状軽度〜脱水なし(体重3%未満喪失)軽症〜中等症(3〜9%喪失)重度(9%超喪失)
    精神状態良好・覚醒疲れている・刺激に敏感嗜眠・意識不明
    口渇正常口渇ありほとんど飲めない
    心拍数正常増加頻脈(重症例は徐脈)
    正常減弱弱いか触れない
    眼窩正常わずかに陥凹深く陥凹
    皮膚ツルゴール正常2秒未満で復帰2秒以上かかる
    四肢温かい冷たい冷たい・斑状

    重度脱水(体重9%超喪失)またはショックの前兆がある場合は経口補水療法より経静脈輸液を優先する。それ以外は経口補水療法が優先される[3]。

    2-6. 敗血症性ショックと乳酸(小児は成人基準をそのまま使わない)

    「MAP65mmHg」は成人の基準であり小児にそのまま使わない:J-SSCG2024のCQ1-2は「敗血症性ショックは、敗血症の診断基準(SOFAスコアの合計2点以上の急上昇)に加え、平均動脈圧65mmHg以上を保つために輸液療法に加えて血管収縮薬を必要とし、かつ血中乳酸値2mmol/L(18mg/dL)を超える場合」と定義しているが、これはBQ(背景疑問)として成人を念頭に書かれた一般定義であり、J-SSCG2024自体の小児章(9.小児、CQ9-1〜9-8)はこの定義を年齢別血圧に置き換えた独自の小児敗血症性ショック定義を示していない(原文CQ一覧で確認済み)。小児は年齢によって正常血圧域が大きく異なるため(乳児は成人よりMAP・収縮期血圧とも低いのが正常)、成人のMAP65mmHgを無調整で乳児に当てはめると正常血圧の児を「基準未達」と誤って安心し、逆に年長児では真のショックを見逃しうる。

    小児敗血症・敗血症性ショックの定義は国際的にPhoenix基準(2024)に移行:Schlapbachらによる国際コンセンサス基準(Phoenix Sepsis Criteria;JAMA. 2024;331(8):665-674)が、SIRS基準に代わる小児敗血症の現行の国際標準として広く採用されている。

    • 小児敗血症:感染症(確定または疑い)+Phoenix Sepsis Score 2点以上(呼吸・心血管・凝固・神経の4領域の臓器障害を各0〜2点でスコア化した合計)
    • 小児敗血症性ショック:上記の敗血症基準を満たし、かつ心血管サブスコアが1点以上(=以下のいずれかを満たす)
    • 年齢別の重度低血圧(下表の年齢別平均動脈圧の閾値を下回る)
    • 血中乳酸値≧5mmol/L(Phoenix原著の心血管サブスコア表:<5=0点、5〜10.9=1点、≧11=2点)
    • 血管作動薬の投与を要する
    年齢正常(0点)のMAP目安1点2点(重度低血圧)
    生後0〜1か月未満≧31mmHg17〜31mmHg<17mmHg
    生後1〜12か月未満≧39mmHg25〜39mmHg<25mmHg
    1〜2歳未満≧44mmHg31〜44mmHg<31mmHg
    2〜5歳未満≧45mmHg32〜45mmHg<32mmHg
    5〜12歳未満≧49mmHg36〜49mmHg<36mmHg
    12〜18歳未満≧52mmHg38〜52mmHg<38mmHg

    J-SSCG2024の小児章はこの定義そのものではなく、小児敗血症性ショックが疑われた後の管理(抗微生物薬選択・初期輸液・循環作動薬の選択と投与経路・ステロイド・輸血閾値・血糖管理)を扱っている。初期輸液は「調整等張晶質液に対する反応を評価しながら10〜20mL/kgずつボーラス投与を反復する」のが基本で、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する[4]。循環作動薬はアドレナリン・ノルアドレナリンなどを身体所見・循環動態パラメータ・心エコー所見から総合的に選択する(血管外漏出のリスクから通常は中心静脈路だが、末梢静脈路・骨髄路からでも短時間・適切な濃度であれば投与を遅らせるべきではない)[4]。

    静脈血乳酸で判定する際の注意:§2-1の通り静脈血乳酸は動脈血より高めに出て、高乳酸血症ではその差がさらに拡大する。敗血症の乳酸カットオフ(成人基準では2mmol/L、Phoenix基準の心血管スコアでは≧5mmol/L)を静脈血で運用する場合、動脈血より高めに出る分の解釈の幅を持たせる。

    3. 鑑別・拾える疾患/注意すべき病態
    • 高AG性代謝性アシドーシス:DKA・初発1型糖尿病、敗血症・循環不全による乳酸アシドーシス、腎不全、飢餓性ケトーシス(嘔吐・摂食不良の乳幼児)、先天代謝異常症(有機酸血症など、周産期〜乳児期の意識障害・哺乳不良・嘔吐の反復)、中毒
    • 正常AG性(高Cl性)代謝性アシドーシス:胃腸炎による下痢(腸管からのHCO3⁻喪失)、尿細管性アシドーシス、大量生理食塩水輸液後の希釈性アシドーシス
    • 呼吸性代償不全(疲弊)を疑うサイン:細気管支炎・喘息重積でHCO3⁻上昇に見合わないPCO2上昇、努力呼吸の「見かけの軽快」(陥没呼吸・呻吟の減弱が改善でなく疲弊による場合がある)
    • 呼吸性アシドーシス:細気管支炎の重症化、喘息重積の末期、低月齢児の無呼吸
    4. 忘れがちポイント・落とし穴 ★
    • 胃腸炎・脱水のアシドーシスを「下痢だから正常AG性」と決め打ちしない:実際には下痢によるHCO3⁻喪失(正常AG性)に、循環不全による乳酸(高AG性)や飢餓性ケトーシスが重なって複合パターンになることが多い。AGを計算せずに「脱水+アシドーシス=胃腸炎」で片づけると、下記の初発DKAを見逃す[1][2][8]。
    • 初発1型糖尿病(DKA)は嘔吐・多飲・体重減少で胃腸炎や心因性と誤診されやすい:脱水・嘔吐で受診した児では、多尿・多飲の病歴聴取と迅速血糖測定をルーチンに組み込む。DKAはわが国のように1型糖尿病発症率が低い地域ほど治療機会がまれで、不適切な対応により死亡・後遺症(脳損傷)につながり得る重症病態であることを常に念頭に置く[1]。
    • 細気管支炎はSpO2良好でも安心できない(ただし単施設・小規模研究が根拠):基礎疾患のないRSV細気管支炎87例の単施設後方視的検討では、入院後に人工呼吸管理(NPPV/BCV等)を要した群は、静脈血HCO3⁻が有意に高値(中央値27.5 vs 22.5mmol/L)で独立危険因子だった(オッズ比1.76/mmol/L、カットオフ25.7mmol/Lで感度0.83・特異度0.89)。一方で酸素需要の有無は2群間で有意差がなかった(57% vs 31%、p=0.61)。つまりSpO2・酸素需要だけでは重症化を見抜けず、静脈血HCO3⁻の上昇(=短期間で生じた呼吸性アシドーシスへの代謝性代償)こそが疲弊の早期サインになり得る。ただし根拠はn=87の単施設研究1件であり、多施設での再現性は確認されていない点は割り引いて解釈する[5]。
    • 低月齢児の無呼吸リスクを軽視しない:AAPガイドライン(2014年改訂版、2006年版を更新したもの)は生後12週未満を細気管支炎重症化のハイリスクと位置づけており(2014年版でもこの年齢基準は維持されていることを確認済み)、上記RSV研究でも人工呼吸管理群の月齢中央値は1か月と有意に低かった。低月齢児では呼吸障害が急速に進行し得るため、CO2貯留の閾値を低めに構えて観察頻度を上げる[5][6]。
    • 静脈血PCO2を過信・過小評価しない:静脈血PCO2は動脈血より高めに出るが動静脈差のばらつきが大きく、1点の数値だけで呼吸不全を確定/否定しない。採血時の啼泣・過呼吸でCO2が実際より低く出ることもある。トレンド(複数回の測定)と臨床所見を併せて判断する[5][7]。
    • AGの「基準値12」を鵜呑みにしない:AGの基準値はNa・Cl・HCO3⁻の施設基準値に依存し一律に定義できない。一般に基準値を12とすることが多いが、日本国内の多くの施設ではイオン選択電極法でCl測定するため基準値が10程度になり得る(古典的には12±4、8〜16という幅を挙げる教科書もある)。院内の実測基準値を確認する[8]。
    • 低アルブミン血症児でAG開大を見落とさない:低アルブミン血症はAGを見かけ低下させる(アルブミン1g/dL低下でAG約2.5低下)。重症・低栄養児では補正AG=AG+(4−血清Alb[g/dL])×2.5で評価しないと高AG性アシドーシスを見逃す[8]。
    • DKAに重炭酸を投与しない:「アシドーシスだから重炭酸」という短絡的対応は、脳浮腫リスクの観点から原則禁忌とされる[1]。
    • 敗血症の乳酸正常=安心ではない:乳酸値は組織低灌流の指標として広く使われるが、必ずしも組織低灌流を反映しない場合がある。臨床所見(末梢循環・尿量・意識)と併せて評価する[4]。
    5. 患者・保護者への説明(要点)
    • 「血液の中の酸性・アルカリ性のバランスと、脱水や呼吸の状態を数字で確認する検査です」
    • 「多くの場合、点滴の針を刺すのと同じ静脈からの採血で確認できます。動脈からの採血(痛みが強い検査)が必ず必要というわけではありません」
    • DKAを疑う場合:「脱水の原因として、糖尿病の可能性も含めて調べる血液検査です。同時に血糖値も測ります」
    • 細気管支炎で入院観察中の場合:「今は指先の酸素の数値(SpO2)が良くても、赤ちゃんが呼吸で疲れてきていないかを血液検査で早めに見つけるために行います」
    6. 院内ローカルルール(愛育・要確認)
    • 要確認:静脈血ガス測定の適応判断・末梢静脈路確保時の同時採血運用フロー
    • 要確認:血液ガス分析装置の設置場所と外来・救急・病棟での迅速測定運用
    • 要確認:DKA疑い時の小児科・内分泌専門医・ICU(上位施設)への連携動線と搬送基準
    • 要確認:細気管支炎の入院基準、HFNC/NPPV導入基準と院内フロー
    • 要確認:敗血症疑い時の初期輸液プロトコル・乳酸再検のタイミング(J-SSCG2024準拠か)
    7. 出典(日本のGL優先・URL+版年)

    ※改定・アップデートの速い領域ではないが、運用前に各GLの最新版を確認すること。DKA診断基準(HCO3⁻閾値)はISPAD2018版(<15mmol/L)から2022版(<18mmol/L)へ実際に改訂されており、日本糖尿病学会2024コンセンサスGL第9章の本文解説も<18mmol/Lで一致する(ただし同GL冒頭の【ポイント】要約ボックスには旧版由来の<15mmol/L表記が残存しており、GL自体の中で新旧が併存している。§2-4参照)。現行の運用値は本文解説・ISPAD2022と一致する<18mmol/Lとする。小児敗血症性ショックの定義はJ-SSCG2024の一般定義(成人向けMAP65mmHg基準)をそのまま小児に適用せず、Phoenix基準[9]の年齢別心血管サブスコアに基づいて判断すること。

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