化学眼外傷—その場で洗眼する
化学物質が目に入ったら、問診より先に洗眼する。眼を開けたまま流水で10分以上洗い、接触時間が長いほど障害は重症化する。アルカリ性物質は角膜を透過して眼の内部まで傷める。ただし眼球破裂・穿孔を疑うときは逆に、押さえない・洗わない・異物を抜かない——硬いもので覆って搬送する。
始める前に
- 点眼麻酔と開瞼器を先に用意する(傷ついた眼を開けたまま洗うのは痛いため、これが洗眼の最大の障壁になる)。
- 物質の容器・ラベル・写真を持ってきてもらう。何が入ったかで予後が変わる。
- 粉末(石灰・セメント)は乾いたまま払ってから洗う(要確認:一次資料未確認の記載)。
- 要確認:点眼麻酔薬・フルオレセイン試験紙・開瞼器の院内在庫、洗眼用の器具(洗眼用レンズ・輸液ラインでの持続洗浄)と洗浄液(生理食塩水かリンゲル液か)、結膜嚢pH試験紙の有無。
手順
- 1
電話の時点でその場で洗い始めてもらい、受診を待たせない。流水で10分以上洗う
- 2
来院直後は問診より先に洗眼する。何が入ったかは洗いながら聞く
- 3
点眼麻酔を行う(院内採用を確認)。開瞼器または介助者の指で開ける
- 4
大量の洗浄液で持続洗浄する。上下の結膜嚢(フォルニクス)を翻転して洗い、固形物・粉末は用手的に除去する
- 5
結膜嚢のpHを試験紙で確認し、中性に戻るまで洗浄を繰り返す
要確認:洗眼の具体的な時間・洗浄液量・pH終点の基準は本シートで一次資料を確認していない
- 6
洗眼後はただちに眼科へ。時間・物質名・洗眼時間を伝える
- 7
眼球破裂・穿孔を疑う所見があれば、硬いもの(紙コップの底など)で眼を覆って触れないようにする。安静・鎮痛・制吐、絶飲食(手術に備える)とし、ただちに眼科のある施設へ
要確認:この禁忌事項自体、本シートで一次資料を確認していない(広く行われている原則だが裏取りが要る)
やってはいけない
- 眼を押さえる・圧迫眼帯をしない(眼内容が押し出される)
- 洗眼しない(同上)
- 刺さった異物を抜かない(抜いた瞬間に眼内容が出る)
- 点眼薬を入れない(眼内に入る)
- 無理に開けて診察しない(泣いていきむだけでも圧が上がる)
- 接着剤で睫毛が付いた場合、無理に剥がさない
- 要確認:これら破裂・穿孔時の禁忌事項は本シートで一次資料を確認していない
終わったあと
- 打撲で外見上の異常なし・視力良好でも、後から緑内障・白内障・網膜剥離が出ることがあるため、眼科でフォローする
- その場で「大丈夫」と言い切らない。翌日に眼科を受診させる
この場で持てない・送る
- 119相当:アルカリ性物質(洗剤・漂白剤・セメント・石灰・パーマ液)が入った場合。洗眼を最優先し、洗いながら眼科へ連絡
- 119相当:角膜が白く濁っている/結膜が白い(虚血)。洗眼を続けながら搬送
- 119:眼球破裂・穿孔を疑う(瞳孔変形・前房消失・眼内容の脱出・強い視力低下)。押さえない・洗わない・眼帯で圧迫しない。硬いカップで覆って搬送
- 119:眼窩壁骨折を疑う(複視・眼球運動制限・眼球陥凹・鼻をかんで腫れた)。画像評価し眼科・耳鼻科・形成外科へ
- urgent:視力低下・視野欠損、前房出血(血液が水平面をつくる:安静・頭部挙上)、角膜表面が完全に剥がれた、異物が刺さっている(抜かず固定して搬送)、熱傷・紫外線角膜炎
- today:表層の結膜異物・軽い擦過。洗浄・除去できるかは当院の体制による(要確認)
- 乳幼児の説明のつかない眼外傷は虐待を疑う(施設内の虐待対応の枠組みへ)
- 持てない:眼球破裂・穿孔/前房出血・視力低下/眼窩壁骨折/角膜混濁・結膜虚血
- 要確認:眼科の当直・オンコールがあるか。無ければ夜間の搬送先
- 要確認:小児で洗眼に鎮静が要る場合の体制
- 要確認:中毒110番への問い合わせ手順(物質の性質を聞く)
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。