小児の血便・下血

緊急

小児の血便・下血

消化器β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし・内視鏡なし/当直帯に腹部エコーは無い(2026-09-14 確認)。便は自分で見られるし、便の検査も夜に出せる——このシートの主役はもともと画像ではなく、便そのもの。

30秒要約

  • 年齢で鑑別が変わる。ここを外すと当たらない。乳児なら食物蛋白誘発胃腸炎と腸重積、幼児なら腸重積とポリープ、年長児なら感染性腸炎とポリープ。
  • 便の色で出血部位を推定する。胃・十二指腸=黒色タール便、小腸=アズキ色、大腸〜肛門=イチゴジャム様または鮮血便。
  • 前触れなく大量に下血したら、Meckel憩室。「この出血は、一度に大量に出ることが多く、痛みなどの前触れなく下血することがあります」。
  • 間欠的に激しく泣く乳幼児のイチゴゼリー状便は腸重積。血便を待たずに動く。
  • 新生児は「本当に本人の血か」を先に確かめる。分娩時に嚥下した母体血を排泄するだけの新生児仮性メレナは治療不要。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見次の一手
119大量下血+ショック(蒼白・頻脈・CRT延長)ルート確保・輸液。輸血と外科が要る=当院で持てない。緊急搬送
119血便+腹膜刺激症状穿孔・腸管虚血。急性腹痛
緊急間欠的な啼泣+嘔吐+イチゴゼリー状便(3か月〜2歳未満)腸重積。当直帯はエコーが無いので、この所見だけで整復可能施設へ電話する。血便を待たない(腸重積)
緊急前触れなく、一度に大量の下血(腹痛が乏しい)Meckel憩室を疑う。99mTcシンチが要る=専門施設
緊急乏尿・蒼白・むくみを伴う血便HUS(細菌性腸炎とHUS)
緊急新生児の下血+全身状態不良壊死性腸炎・腸回転異常症を考える(中腸軸捻転)
緊急胆汁性嘔吐を伴う腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で外す
当日哺乳開始後の乳児の血便+不活発・腹部膨満・哺乳力低下新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎。治療乳への変更を検討し専門外来へ
当日硬便・排便時痛を伴う、便に付着する少量の鮮血肛門裂傷。便性の改善(便秘)
当日排便時の無痛性の鮮血(幼児〜学童)若年性ポリープ。内視鏡が要る=専門施設
当日発熱+血便+下痢細菌性腸炎(細菌性腸炎とHUS)
当日慢性の下痢・体重減少・成長障害を伴う血便炎症性腸疾患を疑う。専門施設へ

便の色で部位を推定する

色推定される部位
黒色タール便胃・十二指腸からの出血
アズキ色の便小腸からの出血
イチゴジャム様の便または鮮血便大腸から肛門までの出血

年齢別の鑑別

新生児期

病態見分け次の一手
新生児仮性メレナ分娩時に嚥下した母体血を排泄するだけ。全身状態良好治療不要。まずこれを外す
新生児メレナビタミンK欠乏が最多。ほかに胃・十二指腸潰瘍、壊死性腸炎、腸回転異常症ビタミンK投与歴を確認。全身状態が悪ければ外科疾患を疑う
壊死性腸炎腹部膨満、全身状態不良、早産児持てない。新生児外科のある施設へ
腸回転異常症・中腸軸捻転胆汁性嘔吐最優先で外す(中腸軸捻転)

乳児期

病態見分け次の一手
新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎(消化管アレルギー)哺乳開始後に、不活発・腹部膨満・嘔吐・胆汁性嘔吐・哺乳力低下・下痢・血便のいずれか。体重増加不良や活動性低下など非特異的な症状のみで、消化器症状が見られない場合が20%程度ある治療乳(アレルギー用ミルク)への変更で症状消失を確認。確定診断の負荷試験は専門施設。母乳栄養児の「母乳性血便」もある
腸重積3か月から2歳未満。間欠的な腹痛(不機嫌)、嘔吐、顔色が悪くなり、イチゴゼリー状の便エコー。24時間以内なら8割が非観血的に整復できる(腸重積)
肛門裂傷硬便・排便時の痛み・肛門部の裂傷便性の改善

幼児〜学童

病態見分け次の一手
若年性ポリープ小児の消化管ポリープの約90%。好発年齢は3〜5歳で10歳までに見つかることが多い。S状結腸〜直腸に多く、肛門に近い場所にある場合には指で触知されることもある多くは血便をきっかけに見つかる。内視鏡が要る=専門施設
Meckel憩室解剖例の約2%にみられるが、症状が出るのは4%前後。一度に大量に出ることが多く、痛みなどの前触れなく下血する99mTc(テクネシウム)シンチが要る=専門施設
感染性腸炎発熱・下痢を伴う便培養(細菌性腸炎とHUS)
IgA血管炎(腹部型)紫斑+腹痛。腸重積を合併しうる皮疹の分布。当直帯はエコーで合併を外せないので、腹痛が強ければ相談に回す
炎症性腸疾患慢性の経過、体重減少、成長障害専門施設へ。本シートでは国内の小児IBDガイドラインを確認していない(要確認)

治療ワークフロー(当院でやること)

順やること
1全身状態とバイタル。ショックがあれば血便の原因追及より先に蘇生
2年齢を確定する。鑑別の枠が変わる
3便を自分で見る(おむつを開ける)。色と性状を記録する
4腹部診察。間欠的な不機嫌があれば腸重積を疑う。当直帯はエコーで確かめられないので、疑った時点で電話する
5男児は陰嚢、全例で鼠径部も見る
6血算(Hb・血小板)・生化(Cr・電解質・ALT)。HUSの3主徴を意識する
7発熱・下痢があれば便培養。止痢薬を出さない
8肛門周囲の視診(裂傷・ポリープの脱出)
9帰すなら再受診の条件を具体的に渡す(量が増える・顔色・尿量・元気のなさ)

送る/持つ(当院=二次救急・内視鏡なし)

状態当院の扱い
ショック・大量出血持てない。輸血と外科が要る
腸重積整復の可否は要確認(腸重積)
Meckel憩室の疑い持てない。シンチと手術が要る
若年性ポリープの疑い持てない。内視鏡が要る
炎症性腸疾患の疑い持てない。専門施設へ
食物蛋白誘発胃腸炎の疑い治療乳への変更は当院で開始しうる。負荷試験は専門施設
肛門裂傷・便秘当院で対応
細菌性腸炎当院で対応(細菌性腸炎とHUS)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児の消化管内視鏡ができる施設の紹介先
  • 要確認:99mTcシンチができる施設
  • 要確認:新生児外科の受け入れ先
  • 要確認:治療乳(アレルギー用ミルク)の院内採用

家族に渡す一文

「便に血が混じる原因は、年齢によって変わります。便の色や出方が手がかりになるので、できればおむつや便を持ってきてください(写真でも構いません)。少量が便に付着する程度なら肛門の切れであることが多いですが、急にたくさん出た・顔色が悪い・繰り返し激しく泣く・おしっこが減った、このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。」

出典

  • 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気(http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/ 、いずれもhttpでアクセス。2026-09-12閲覧)
  • 腸重積症 http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/tyou-jusekishou : 「3か月から2歳未満のお子さんによくみられる」「腹痛(不機嫌)はあったりなかったり(間欠的)するのが特徴」「やがて顔色が悪くなったり、血が混ざったねっとりした便(イチゴゼリー状)を認める」「24時間以内であれば、8割は造影剤や空気を肛門から注入して圧を加えることにより整復することが出来ます」「整復後の再発は約10%」。
  • メッケル憩室 http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/mekkel-keishitu : 「解剖例の2%くらいの人にみられますが、大部分は無症状に経過し、症状が出るのは4%前後」「主な症状は、下血あるいは腹痛」「この出血は、一度に大量に出ることが多く、痛みなどの前触れなく下血することがあります」「アイソトープを用いた99m(テクネシウム)Tcシンチ検査」。
  • 消化管ポリープ、ポリポーシス http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/shoukakan-polyp : 「小児でみられる消化管ポリープの約90%は若年性ポリープ」「好発年齢は3〜5歳で10歳までに見つかることが多い」「場所はS状結腸〜直腸に多い」「多くは血便をきっかけに見つかることが多く、肛門に近い場所にある場合には指で触知されることもあります」。
  • 国立成育医療研究センター.新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎(新生児-乳児消化管アレルギー)診断治療指針(2017/11/11版).https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/shokakan_shishin20171111.pdf (2026-09-12閲覧)。「新生児期、乳児期に哺乳開始後、不活発、腹部膨満、嘔吐、胆汁性嘔吐、哺乳力低下、下痢、血便のいずれかの症状が見られた場合に疑う」「体重増加不良、活動性低下など非特異的な症状のみで、消化器症状が見られない場合が20%程度あり、注意が必要である」、治療乳への変更と負荷試験による確定診断、病型別の症状出現時間と除去後の症状消失までの期間、母乳性血便。
  • 獨協医科大学埼玉医療センター小児外科.下血.https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-k/ped_surg/melena.html (2026-09-12閲覧)。便の色による出血部位の推定(胃・十二指腸=黒色タール便/小腸=アズキ色/大腸〜肛門=イチゴジャム様または鮮血便)、新生児メレナ(ビタミンK欠乏が最多、胃・十二指腸潰瘍、壊死性腸炎、腸回転異常症)と新生児仮性メレナ(分娩時に嚥下した母体血・治療不要)の区別、痔裂の特徴。大学医療機関の解説ページであり、学会一次資料ではない。
病態・根拠7章
色より先に循環と腹部を評価する

血便は、裂肛などの局所出血から腸管虚血まで原因が広い。まず顔色、頻脈、末梢循環、意識、尿量を確認し、量の多い持続出血やショックなら蘇生と専門施設への連絡を優先する。赤い便は下部消化管を示唆するが、食品や飲み込んだ血液でも似た色になるため、便そのものや写真を確認する。[1]

硬便の表面に少量の鮮血がつき、排便時痛と裂肛があれば便秘関連を考える。一方、乳児の腹部膨満・胆汁性嘔吐・全身不良は腸回転異常に伴う軸捻転などの外科救急を疑う。元気に見える乳児の粘血便では食物蛋白関連大腸炎も候補だが、危険疾患を除外せず除去食だけで経過をみない。[1]

鑑別に沿った検査

発熱・腹痛を伴う血性下痢では感染性腸炎、反復する血便と体重減少・慢性症状ではIBD、痛みの乏しい反復出血では若年性ポリープやMeckel憩室を考える。痛みがないことは大量出血の安全性を示さない。服薬、ビタミンK投与歴、家族の出血・腸疾患歴も聞く。[1]

間欠的な啼泣、蒼白、嘔吐、説明できない傾眠があれば腸重積を考える。血便や腹部腫瘤がそろうのを待たず、症状のない間の元気さでも除外しない。血便は腸管うっ血・虚血が進んだ後に現れることがある。[2]

血算や凝固、腎機能などは出血と全身への影響を、便検査は感染性病原体を調べる目的で選ぶ。便培養の結果待ちは外科病変の除外を代行しない。当院の夜間腹部超音波・外科・内視鏡不在を踏まえ、胆汁性嘔吐、腹膜刺激、腸重積疑い、大量出血は搬送先へ直接相談する。帰宅例も血便の増加、蒼白、痛みの増悪、尿量低下で直ちに再診する。[1][2](当院運用)

出典
  1. 海外・Perth Children’s Hospital:Gastrointestinal bleeding lower GIT(本文確認:2026-10-23)
  2. 海外・RCH:Intussusception(本文確認:2026-10-23)

海外資料の薬剤・処置は国内の承認・院内採用を意味しない。本文の施設条件を前提に適用する。

臨床医が迷う場面
硬便の表面に血が付く。裂肛として下剤だけでよい?

排便痛、硬便、肛門の裂創を確認する。裂肛が見える少量出血なら便を軟らかくする対応を行うが、量が多い、反復する、体重減少・発熱・下痢を伴う場合は他疾患を評価する。肛門所見だけで腸管の出血源を全て否定しない。

根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding

痛みのない大量出血が止まった。翌週再診でよい?

出血が止まっても貧血・循環不全を評価する。小児の無痛性多量出血ではMeckel憩室などを疑い、小児外科・消化器へ速やかに相談する。顔色不良、頻脈、末梢循環不良があれば安定化と搬送を優先し、次の出血を待たない。

根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding

元気な乳児の血便ならすぐミルクを変更する?

母体血の嚥下、裂肛、感染、アレルギー性腸炎などを経過と診察で区別する。嘔吐・膨満・反応低下や循環不良は緊急疾患を考える。食事変更を行う場合も栄養と改善の評価を計画し、原因を確かめず複数食品の除去を長期化させない。

根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding

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