血液培養(採り方と読み方)

血液培養(採り方と読み方)

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/当直帯にエコーは無い/培養検体を夜間に検査室へ提出できない(2026-09-14 確認)。
採ること自体は当直帯でもできる夜に失われるのは結果であって、検体ではない——抗菌薬の前に採って保管し、翌朝提出する
この順番だけは絶対に崩さない。後から採り直しても意味のある培養にはならず、培養が取れないと起炎菌が最後まで分からないまま治療することになる
要確認:血液培養ボトルの翌朝までの保管方法(室温か・保温器に入れるか)。

30秒要約

  • 小児で最も大事なのは「採血量」。文献の検討では、汚染菌検出が低いと考える設定では、採取セット数よりも採血量が優先される可能性が示唆された
  • 量の目安は体重あたり 0.8 mL/kg(CLSIの提唱する安全な採血量=全血液量の1%をもとにした小児感染症学会セミナーのベストプラクティス案)。採血量0.5 mL以下では不十分という報告がある。
  • 抗菌薬を打つ前に採る。これだけは譲らない。髄液が採れない場面ほど、血液培養が起因菌同定の決め手になる
  • 採る場所はカテーテルではなく静脈穿刺鼠径部からの採血は腸内細菌目細菌のコンタミネーションの割合が高く、原因菌の判断が困難になるため可能な限り避けた方がよい
  • 「夜だから明日にする」をやめる夜間・休日などでも症状が認められれば血液培養2セット採取するように事前オーダーや指示を出しておくような、血液培養実施体制の確立も重要

いつ採るか(小児)

状況採る
細菌性髄膜炎を疑う強く推奨される特に、頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要髄液検査細菌性髄膜炎
敗血症を疑う必ず。抗菌薬より先に小児敗血症
生後3か月未満の発熱原則採る(生後3か月未満の発熱
発熱性好中球減少症必ず(白血病を疑うとき
不明熱採る。感染性心内膜炎は頻回の血液培養と早期の心エコー検査が重要不明熱
骨髄炎・化膿性関節炎を疑う採る(歩かない・手足を動かさない
中心静脈カテーテル留置中の発熱採る(カテーテル血流感染の評価)
入院を要する肺炎・腎盂腎炎施設の基準による(下の医師確認事項)

菌血症の予測因子(同セミナー報告の文献的考察より):3か月未満ではnot-well appearanceや細菌/白血球尿の存在、3〜36か月では好中球数・白血球数・体温少なくともnot-wellの児や細菌/白血球尿の児は血液培養採取の対象になると考えられた

どれだけ採るか(表をそのまま置く)

「何セット採るか」より先に「何mL採れるか」を決める。

ベストプラクティス案(日本小児感染症学会 安曇野セミナー 2012)

  • 体重あたり 0.8 mL/kgCLSIの提唱する安全な採血量(血液量の1%)を基に、0.8 mL/kgと仮定
  • アルコール綿での消毒は可
  • 静脈路確保時の採血は可
  • 複数セットが望ましいが十分に血液量が採取できれば1セットでも可

これは「ベストプラクティス案」であり、確立したガイドラインではない(下の医師確認事項)。

海外の推奨量(同報告が引用した4つ)

Melbourne大学(推奨量以上で培養陽性率が有意に上昇)

月齢推奨血液培養量
<1か月≧0.5 mL
1〜36か月≧1.0 mL
≧36か月≧4.0 mL

Cumitechガイドライン(York大学の推奨採血量を参考)

体重全血液量1セット目2セット目全血液培養量全血液量に対する割合
≦1 kg50〜99 mL2 mL2 mL4%
1.1〜2 kg100〜200 mL2 mL2 mL4 mL4%
2.1〜12.7 kg>200 mL4 mL2 mL6 mL3%
12.8〜36.3 kg>800 mL10 mL10 mL20 mL2.5%
>36.3 kg>2,200 mL20〜30 mL20〜30 mL40〜60 mL1.8〜2.7%

Mayo Clinic(癌患児を対象とした文献)

体重推奨血液培養量
<1.5 kg1.0 mL
1.5〜3.9 kg1.0 mL
4〜7 kg3.0 mL
8〜13 kg4.5 mL
14〜18 kg11.5 mL
19〜25 kg15.0 mL
26〜39 kg20.0 mL
≧40 kg30.0 mL

York大学小児でもlow level bacteremia(<10 CFU/mL)が存在し十分な採血量は必要で、全血液量の4〜4.5%が信頼できる採血量として示された

各論文ともに採血量を推奨する明らかな根拠は示されていなかった(同報告の評価)。

少なすぎるとどうなるか

  • 採血量1 mL以上で陽性時間が早い
  • 採血量0.5 mL以下では不十分
  • 採血量は全血液量の1%を超えないようにすべき(安全側の上限)

何セット採るか

報告内容
セット数と陽性率陽性率はセット数で変わらないという報告
2セットの意義2セット採取により5%が疑陽性と判断でき、抗菌薬投与が8.2%減少した
量 vs セット数セット数より採血量が培養陽性率を左右する
セミナーの結論汚染菌検出が低いと考える設定では、採取セット数よりも採血量が優先される可能性が示唆された。しかし、いずれも検討症例数は少なく、今後のさらなる検討を要する

成人領域の標準は「同時複数セット」:日本臨床微生物学会の総説は「各種感染症が疑われる場合に同時複数セットの実施が推奨されている」とし、2セット採取率・血液量・陽性率・コンタミネーション率の定期的なモニタリングを求めている。

当院のルールを決めておく(下の医師確認事項)。決まっていないと当直ごとにバラバラになる。

どこから、どう採るか

項目内容
部位コンタミネーションを避けるため、血管内留置カテーテルからではなく、静脈穿刺が望ましい
避ける部位鼠径部からの採血は腸内細菌目細菌のコンタミネーションの割合が高く、原因菌の判断が困難になるため可能な限り避けた方がよい
カテーテルから採る場合採血困難な場合や頻繁に採血を行なうような症例、陽性検出時間を用いたカテーテル血流感染の診断などでは行なわれる場合もあるが、カテーテル由来血液培養検出菌の臨床的な判断には注意が必要
消毒(成人のデータ)70%イソプロピルアルコールとポビドンヨード併用時との汚染率は変わらなかった(0.46% vs 0.42%)グルコン酸クロルヘキシジンでの消毒ではポビドンヨードでの消毒より汚染率が低い
消毒(小児)小児対象研究は検索し得なかった。セミナー案はアルコール綿での消毒は可
クロルヘキシジンの運用1%クロルヘキシジングルコン酸塩アルコール製剤は比較的高価であるため、コンタミネーション率の高い部署や、やむなく鼠径部から採血する場合に用いるなど運用方法を工夫することで費用対効果の向上が期待される
静脈路確保時の採血汚染率に差は生じなかったという報告と、禁止したら汚染率が減少したという報告の両方がある。セミナー案はとした
嫌気ボトル小児の血液培養において偏在嫌気性菌が占める割合は2.1%と低いため、ルーチンでの嫌気性ボトルの使用は不要との報告。小児用ボトルのほうが培養陽性率が高く陽性時間が早いとの報告

手順(当院の型として)

やること
1抗菌薬の前に採る。すでに投与されているなら、そのことを検査室に伝える
2体重から採血量を決める(0.8 mL/kg を目安にし、当院の上限規定に従う)
3採る場所を決める静脈穿刺。鼠径部は避ける
4消毒(当院の採用薬に従う)。乾燥を待つ
5ボトルの口も消毒する
6採血 → 小児用ボトルへ。量が足りないときは好気ボトルを優先
7採取時刻・部位・量・抗菌薬の有無を記録
8速やかに検査室へ(夜間の受付方法を確認しておく)
9髄膜炎を疑うなら、髄液培養もセットで髄液検査
10結果を待たずに、経験的抗菌薬を開始する(重症なら)

結果の読み方

結果意味次の一手
陽性(2セットとも同一菌)真の菌血症の可能性が高い起因菌として扱う。感受性で狭める
陽性(1セットのみ、皮膚常在菌)コンタミネーションの可能性臨床像と合わせる。カテーテル留置中は真の起因菌でもありうる
陽性(グラム陰性桿菌)コンタミは少ない。真の菌血症として扱う直ちに対応
陽性検出時間が早い菌量が多い重症度の示唆
陰性除外にはならない抗菌薬投与後・採血量不足では偽陰性。臨床で判断する

コンタミネーションは皮膚表面の常在菌を拾って血液培養が陽性になること1セットだけの採取では、それが真の起因菌かコンタミかを区別できない——これが複数セットの最大の意義。小児では採血量の制約があるため、当院として「どの場面で2セットを必須にするか」を決めておく必要がある。

送る/持つ(当院=二次救急)

状態当院の扱い
血液培養を採って抗菌薬を開始当院でやる。搬送前に必ず
培養結果のフォロー搬送した場合、結果の連絡経路を決めておく(当院に結果が返る)
陽性時の同定・感受性夜間は出ない。日勤帯の連絡体制が要る
感染性心内膜炎を疑う頻回の血液培養と早期の心エコー心エコーは当直帯に無い持てない不明熱

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:当院の小児血液培養ルール(採血量/セット数/小児用ボトルの採用/嫌気ボトルの要否)
  • 要確認:消毒薬の院内採用(アルコール綿/ポビドンヨード/クロルヘキシジンアルコール)
  • 要確認:夜間・休日の血液培養の受付とセット(保温・搬送・装置への装填)
  • 要確認:陽性時の連絡経路(誰に、何時でも連絡が来るか)
  • 要確認:搬送した患者の培養結果を当院で追う仕組み
  • 要確認:2セット採取率・血液量・コンタミネーション率のモニタリングを当院で行うか

家族に渡す一文

血液の中に細菌が入っていないかを調べる検査です。細菌を育てて確かめるので、結果が出るまでに2日ほどかかります。そのため、結果を待たずにお薬(抗菌薬)を始めることがあります。あとで細菌の種類が分かれば、より効くお薬に変えられます。この検査は、お薬を始める前に採ることがとても大事なので、採血を先にさせてください。また、必要な血液の量が取れないと、細菌がいても見つからないことがあるため、お子さんの体重に応じた量を採らせていただきます。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートの中核(0.8 mL/kg、アルコール綿可、静脈路確保時の採血可、十分量が採れれば1セットでも可)は、日本小児感染症学会の若手会員研修会(2012年 安曇野セミナー)で提示された「ベストプラクティス案」であり、学会のガイドラインではない。報告自体が「文献考察だけでは本提案の妥当性が検討できないこと、採血量、セット数に関していまだに解決されていない点が多いことから、多施設での共同研究が必要と考えた」と結んでいる。2012年の文献であることも含め、当院の運用として採るかどうかは判断が要る。
  • 要確認:成人領域の標準は「同時複数セット」である。当院で小児に1セットを許容するのか、年齢・体重で分けるのかを決める必要がある。
  • 要確認:小児用ボトル(PF)の院内採用。「FA好気ボトル1.5 mLとPF小児用ボトル0.5 mLは同等」「小児用ボトルのほうが培養陽性率が高く陽性時間が早い」という相反しない2つの報告がある。
  • 要確認:嫌気ボトルをルーチンで使うか。小児では偏性嫌気性菌が2.1%との報告があり不要とする意見があるが、当院の症例構成で決める。
  • 要確認:入院を要する肺炎・腎盂腎炎で血液培養を採るか。本シートは「施設の基準による」としており、閾値を書いていない。
  • 要確認:採血量の上限。「全血液量の1%を超えないようにすべき」という報告があるが、貧血のある児・新生児では別の配慮が要る。
  • 要確認:コンタミネーションと判断する基準を当院でどう文書化するか。本シートは判断の材料を並べただけで、基準を決めていない。

出典

  • 松永展明、木村翔、阿部淳、佐藤公則、橘木浩平、古市宗弘(チューター:齋藤昭彦、笠井正志).レクチャー6 血液培養ベストプラクティス.日本小児感染症学会若手会員研修会 第3回安曇野セミナー.小児感染免疫 24(4): 506–508, 2012.https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02404/024040506.pdf (2026-09-13閲覧)。「菌血症の予測因子として、3カ月未満ではnot−well appearanceや細菌/白血球尿の存在、3〜36カ月では好中球数・白血球数・体温があった」「少なくともnot−wellの児や細菌/白血球尿の児は血液培養採取の対象になると考えられた」「小児でもlow level bacteremia(<10 CFU/ml)が存在し十分な採血量は必要で、全血液量の4〜4.5%が信頼できる採血量として示された」「採血量1 ml以上で陽性時間が早い、採血量0.5 ml以下では不十分、採血量は全血液量の1%を超えないようにすべき、という報告がみられた」「陽性率はセット数で変わらない」「2セット採取により5%が疑陽性と判断でき、抗菌薬投与が8.2%減少した」「セット数より採血量が培養陽性率を左右する」「汚染菌検出が低いと考える設定では、採取セット数よりも採血量が優先される可能性が示唆された。しかし、いずれも検討症例数は少なく、今後のさらなる検討を要すると考えられた」「FA好気ボトル1.5 mlとPF小児用ボトル0.5 mlは同等、小児用ボトルのほうが培養陽性率が高く陽性時間が早い、小児の血液培養において偏在嫌気性菌が占める割合は2.1%と低いため、ルーチンでの嫌気性ボトルの使用は不要、との報告がみられた」「小児対象研究は検索し得なかった。成人対象では、70%イソプロピルアルコールとポビドンヨード併用時との汚染率は変わらなかった(0.46% vs. 0.42%)、グルコン酸クロルヘキシジンでの消毒ではポビドンヨードでの消毒より汚染率が低い、との報告がある」「静脈穿刺時と静脈路確保時の採血を比較し、汚染率に差は生じなかった報告がある一方、静脈路確保時の採血を禁止したら汚染率が減少したとの報告もある」「CLSIの提唱する安全な採血量(血液量の1%)を基に、0.8 ml/kgと仮定したが、各種ガイドラインに比しても妥当な量と考えている」「①アルコール綿での消毒は可、②静脈路確保時の採血は可、③体重当たり0.8 ml、④複数セットが望ましいが十分に血液量が採取できれば1セットでも可、という案を提示した」「文献考察だけでは本提案の妥当性が検討できないこと、採血量、セット数に関していまだに解決されていない点が多いことから、多施設での共同研究が必要と考えた」。表1(Melbourne大学)・表2(York大学)・表3(Cumitechガイドライン)・表4(Mayo Clinic)の推奨量は本文の表に転記した。
  • 大城健哉.血液培養検査におけるDiagnostic Stewardship(総説).日本臨床微生物学会雑誌 32(1), 2022.https://www.jscm.org/journal/full/03201/032010001.pdf (2026-09-13閲覧)。「血液培養検査は血流感染症診療に必要不可欠な検査であり、各種感染症が疑われる場合に同時複数セットの実施が推奨されている」「血液培養検査が適切に実施されているか、検査件数や2セット採取率、血液量、陽性率、コンタミネーション率などの定期的なモニタリングと効果的なフィードバックが重要である」「夜間・休日などでも症状が認められれば血液培養2セット採取するように事前オーダーや指示を出しておくような、血液培養実施体制の確立も重要である」「血液の採取部位について、コンタミネーションを避けるため、血管内留置カテーテルからではなく、静脈穿刺が望ましいとされている」「採血困難な場合や頻繁に採血を行なうような症例、陽性検出時間を用いたカテーテル血流感染の診断などでは血管内カテーテルからの採血が行なわれる場合もあるが、カテーテル由来血液培養検出菌の臨床的な判断には注意が必要である」「鼠径部からの採血は腸内細菌目細菌のコンタミネーションの割合が高く、原因菌の判断が困難になるため可能な限り避けた方がよい」「採血部位の消毒はポビドンヨードよりも1%クロルヘキシジングルコン酸塩アルコール製剤を用いた方が汚染率は低いとされている。しかし、1%クロルヘキシジングルコン酸塩アルコール製剤は比較的高価であるため、コンタミネーション率の高い部署や、やむなく鼠径部から採血する場合に用いるなど運用方法を工夫することで費用対効果の向上が期待される」。
  • 「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会.細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014「4.細菌性髄膜炎の検査」CQ4-1.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/zuimaku_guide_2014_05.pdf (2026-09-13閲覧)。「細菌性髄膜炎を疑った場合には、血液培養を行うことが強く推奨される。特に、頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要となる」。

処方

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
処方

処方の考え方

「何セット採るか」より先に「何mL採れるか」を決める。体重あたり0.8 mL/kgは日本小児感染症学会セミナーの「ベストプラクティス案」であり確立したガイドラインではない。海外のCumitech・Mayo Clinic・Melbourne大学の体重(月齢)区分表も参考として併記する。抗菌薬投与前に、静脈穿刺で採る(鼠径部は避ける)。

採取量の考え方(出典別に併記)

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

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