3-6胆汁性嘔吐・中腸軸捻転(腸回転異常症)
胆汁性嘔吐・新生児・whirlpool sign
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 胆汁性嘔吐が主訴なら、外科的疾患が完全に否定されるまで、外科疾患が隠れているものとして診療をすすめる。
- 腹部が張っていないことは否定の根拠にならない。中腸軸捻転では腹部は平坦か陥凹していることが多く、それ自体が手がかりになる。
- 中腸軸捻転による症状の約80%は生後1か月以内。ただし学童期以降にも慢性の顔で現れることがある。
- 腸管壊死は中腸軸捻転の5〜13%。中腸軸捻転の死亡率は20%程度、広範な腸管壊死をきたした場合は65%。
- 「乳児の嘔吐=まず幽門狭窄のエコー」と短絡しない。幽門狭窄の嘔吐は定義上、非胆汁性。
- 正常に胎便排出・哺乳良好だった新生児が、突然哺乳を拒否し嘔吐を始めたら中腸軸捻転を疑う(典型的な発症の仕方。腹部が平坦でも否定しない)。
- 当院で出生した新生児が胆汁性嘔吐を認めたら、日齢によらず直ちに小児科医(当直医)が評価する運用を産科と共有している(院内方針院内)。
2鑑別のながれ
- 胆汁性嘔吐+腹部平坦〜陥凹→急速に進行する→中腸軸捻転
- 非胆汁性(噴水状)嘔吐、生後3〜6週が最多→右上腹部にオリーブ様腫瘤→肥厚性幽門狭窄症
- 嘔吐+腹部膨満→他の腸閉塞を示唆→先天性腸閉鎖・ヘルニア嵌頓など
- 間欠的腹痛、イチゴゼリー状便→来院時に胆汁性嘔吐があれば腸閉塞がかなり進行した状態→腸重積
3検査
- 当院の当直帯では超音波・上部消化管造影・CTのいずれも実施できない(送り先で行われる検査)
- まず腹部超音波(弱く推奨)。統合で腸回転異常症全般の感度100%・特異度99%、中腸軸捻転限定で感度95%・特異度82%
- 診断がつかなければ上部消化管造影(弱く推奨)。腸回転異常症全般で感度95%・特異度62%
- 腹部単純X線は腸回転異常症の診断には推奨しない
- 1歳未満は超音波の感度が低い。年長児だからとリスクが下がるわけではない(オッズ比0.32、リスク増加なし)
- 腹部単純X線は診断確定の手段ではないが当直帯で撮れる唯一の画像。doublebubblesign(十二指腸閉塞を示唆する胃泡と十二指腸球部のガス像)・gaslessabdomen(腸管ガス像がほとんどみられない)があれば送り先への情報として有用。所見が無くても否定はできない。全身状態が不良なら確定診断にこだわらず緊急対応を優先する
4帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介胆汁性嘔吐にショックまたは血便を伴う場合は腸管壊死が進行している所見。ルート確保・絶食のうえ緊急搬送する(待たない)、胆汁性(緑〜茶色)嘔吐の新生児は、疑った時点で新生児開腹術のできる施設へ連絡する。検査を終えてから電話しない、腹部膨満・血便が新たに加わったら進行所見として搬送を急ぐ
5診療中の疑問と回答
- 緑色の嘔吐が1回だけで、今は元気でも待てる?
- 胆汁性の緑色嘔吐は、腸閉塞が除外されるまで外科的緊急疾患として扱う。色が曖昧なら写真や色の例を用いて確認する。反復や腹満を待たず、絶食と全身評価を行い、小児外科へ連絡する。当直帯に確定画像ができない当院では搬送相談を先行する。
根拠:RCH 小児の嘔吐 - 制吐薬で吐かなくなれば中腸軸捻転を除外できる?
- 嘔吐が止まったことは重い原因の除外にならない。胆汁性であった経過、痛み、血便、循環と腹部所見を再確認する。薬への反応を帰宅基準にせず、閉塞疑いが残る場合は小児外科での評価へつなぐ。ショックや血便があれば緊急搬送を急ぐ。
根拠:RCH 小児の嘔吐 - 下痢がない乳児の嘔吐を胃腸炎として帰してよい?
- 嘔吐だけの場合は胃腸炎以外の原因を積極的に見直す。胆汁性なら閉塞、非胆汁性の噴水状嘔吐なら幽門狭窄などを考え、月齢、哺乳、尿量、体重と全身状態で評価する。腹部が平坦でも安心とせず、外科疾患を疑う経過では専門科へ相談する。
根拠:RCH 小児の嘔吐
- 腹部が張っていないから違う?
- 違わない。中腸軸捻転ではむしろ腹部は平坦〜陥凹していることが多い。
- 上部消化管造影が陰性なら否定できる?
- できない。UGI単独の特異度は62%と低く、誤診率18%との報告がある。
- 1歳未満で超音波が陰性なら?
- 否定できない。1歳未満は超音波の感度が低いとガイドラインが明記している。
- 反復する腹痛・嘔吐・便秘や下痢・体重が増えない学童は考えなくていい?
- 考える。学童期以降は慢性の顔(間欠的腹痛・嘔吐・便秘/下痢・成長障害)で腸回転異常症が出ることがある。
- 早産児で症状がはっきりしないから疑いを弱めていい?
- 弱めない。早産児は症状が非特異的になりやすく診断が遅れ、腸管壊死率の高さに寄与している。
7家族への説明
吐いたものに緑色がついているのは、腸のどこかがつまっている可能性を示すサインです。赤ちゃんの場合、腸がねじれていることがあり、これは時間との勝負になります。当院では手術ができないので、手術のできる病院へすぐ移っていただきます。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。