11-10紫斑・出血斑(ITPとIgA血管炎)
血小板減少・触知可能紫斑・出血症状
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 紫斑を見たら、まず血算。血小板が減っているかどうかで道が2本に割れる。
- 血小板減少 → ITPか、白血病か。血小板だけが減っていればITP、他の血球も変なら白血病を疑う。
- 血小板正常 → IgA血管炎。下肢中心の触知可能な紫斑・関節痛・腹痛。消化器症状が紫斑より先に出ることが14〜36%ある。
- ITPの治療は血小板数でなく出血症状(修正Buchanan分類)で決める。粘膜出血のない皮膚出血だけなら血小板数にかかわらず無治療経過観察が原則。
- 小児ITPの多くは6か月〜1年以内に自然寛解し、慢性化は約25%。ただし重症出血は発症から1か月以内に多い。
- 当院のIgA血管炎入院時:IVIG 1.0 g/kgで治療を開始し、入院3日目・7日目ごろに採血する(院内方針院内)。ITPのIVIG用量とは区別する。
2鑑別のながれ
- 紫斑+血小板減少→血小板だけが減る。全身状態良好→ITP(末梢血液像・Grade評価)
- 紫斑+血小板減少→他系統の異常・芽球・肝脾腫・リンパ節腫大・骨痛・発熱→白血病(持てない)
- 紫斑+血小板減少→汎血球減少→再生不良性貧血・骨髄不全(持てない)
- 紫斑+血小板減少→貧血+腎障害+血性下痢の先行→HUS(持てない)
- 紫斑+血小板減少→発熱+急速に拡大する紫斑+ショック→敗血症・DIC・髄膜炎菌血症(119)
- 紫斑+血小板正常→下肢中心の触知可能な紫斑+関節痛+腹痛→IgA血管炎(尿のフォローを組む)
- 紫斑+血小板正常→関節内出血・筋肉内出血・家族歴、APTT延長→血友病・VWD(専門施設)
- 紫斑+血小板正常(乳児)→母乳栄養・K2シロップ未投与・頭蓋内出血→ビタミンK欠乏性出血症(119)
- 紫斑+血小板正常→上半身・顔面に限局、誘因が明確(咳・嘔吐後)→機械的紫斑(経過観察)
- 紫斑(1歳未満)→説明のつかない出血斑・分布や年齢に合わない→虐待・凝固異常・先天性血小板減少症を考える(当日)
- IgA血管炎(男児)→陰嚢痛・腫脹を伴う→精巣捻転との鑑別が必要(急性陰嚢症として即時評価)
3ITP修正Buchanan出血重症度分類
| Grade0〜2 | 皮膚出血のみ | 無治療経過観察 |
|---|---|---|
| Grade3L/3H | 粘膜出血あり | 治療介入が必要 |
| Grade4 | 重い粘膜出血・内出血 | 緊急の治療介入。持てない(IVIGを開始しつつ搬送) |
| Grade5 | 頭蓋内・致死的出血 | 緊急の治療介入。持てない |
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4検査
- 血算:ITPは血小板のみが減る
- 末梢血液像(必須):芽球・巨大血小板・破砕赤血球を見る。当直帯は出ないので、夜に「ITPでよい」と決めず、鏡検を待つ間は入院で抱える
- PT/APTT・フィブリノゲン:ITPでは正常。異常ならDIC・凝固異常を考える
- 尿定性:IgA血管炎では必ず、繰り返し確認する
- 便潜血:Grade 3Hの判定に使う
- 腹部エコー:腸重積の合併を疑うとき。当直帯は当院で撮れない
- 頭部CT:頭蓋内出血の疑い(頭痛・嘔吐・意識障害)。当直帯は当院で撮れない→疑えばCT結果を待たずにIVIG開始・搬送
- 骨髄検査:典型的小児ITPには必須ではない。肝脾腫や血球の数的・形態的異常がある非典型例で実施。当院では持てない
5処置・処方例
Rp. 1プレドニゾロン 2mg/kg/日を5〜7日間。血小板数が3〜5万/μL以上になったら速やかに減量し、最長14日までとする 内服
粘膜出血のある新規診断ITP(Grade3以上)。小児血液専門医に相談のうえ開始する
- プレドニゾロン散「タケダ」1%(10mg/g)で1日 —(2mg/kg/日)を分2〜3、5〜7日間
Rp. 2免疫グロブリン(IVIG・ITP) Grade3以上は血小板数にかかわらず国内承認用量0.2〜0.4g/kg/日を5日間まで(ガイドライン推奨量は用いない) 静注
Grade3(粘膜出血。非致死的)は小児血液専門医に相談のうえ開始する。Grade4〜5(生命を脅かす重大出血)は相談を待たず直ちに開始しつつ搬送する。ほかに重症感染症・糖尿病合併・水痘接触歴などステロイド禁忌時、緊急の外科手術前も対象
- Grade3(粘膜出血):小児血液専門医に相談のうえ、血小板数にかかわらず国内承認用量で開始する:1日 —〜—(0.2〜0.4g/kg/日)を5日間まで点滴静注
- Grade4〜5(生命を脅かす重大出血:頭蓋内出血・消化管出血等):専門医への相談を待たず、血小板数にかかわらず直ちに開始する(用量は上と同じ)。開始しつつ搬送する
- 製剤(ヒト免疫グロブリン製剤)の濃度・希釈方法・投与速度は添付文書に従い、当院採用品で確認する
- 副腎皮質ステロイド療法の併用も検討する
- 血小板1万/μL未満で出血コントロールが困難なら血小板輸血を追加で検討する
- 投与中・投与後はアナフィラキシー、無菌性髄膜炎(頭痛・嘔気嘔吐)、発熱、発疹、溶血、血栓症、腎障害に注意する
Rp. 3免疫グロブリン(IVIG・IgA血管炎/院内方針) IgA血管炎で入院時、開始量1.0 g/kg。 点滴静注
当院の入院時方針。全例への一般的推奨と区別し、製剤の承認適応と個別指示を確認する。
- 開始時の量:—(1.0 g/kg)。投与回数・反復・速度はこの量から自動設定しない。
- 入院3日目・7日目ごろに血液検査を行う。悪化時は予定採血日まで待たず再評価する。
- 採用品の添付文書と個別指示を確認し、投与中・投与後の症状や腎機能などを観察する。
セカンドライン薬(エルトロンボパグ・ロミプロスチム・リツキシマブ)はわが国では小児での用法・用量が承認されておらず、当院では扱わない。慢性・難治例は専門施設へ紹介する。 避けること・注意:血小板数だけでITPの治療要否を決めること(重症度と生活の質で決める)、当直帯に末梢血液像を見ずにITPと決めつけて帰宅させること、IgA血管炎で消化器症状が先行する例を紫斑が出るまで見逃すこと。
↑ このページの入口へ6IgA血管炎:当院の入院時方針
院内方針院内(2026-10-28確認)。IgA血管炎で当院に入院した場合の運用であり、一般的な全例への第一選択を示すものではない。
入院時:IVIGで治療開始
- IVIGの開始量は1.0 g/kg。ITPの治療用量とは区別する。
- 投与回数・反復投与・投与速度は、この開始量から自動的に決めず、採用品の情報と個別指示で確認する。
入院3日目ごろ:採血・経過評価
- 血液検査を行う。採血項目は症状、腎所見、IVIG投与後の経過を踏まえて指示する。
- 採血日とは別に、血圧・尿所見・尿量、腹痛・血便、飲水・食事の状態を追う。
入院7日目ごろ:再採血・以後の計画
- 血液検査を再度行い、症状・腎所見と合わせて以後の治療、退院・外来フォローを判断する。
- 悪化時は予定日まで待たず再評価する。強い腹痛・血便では腸重積等を、乏尿・浮腫・高血圧では腎障害を評価し、必要時は専門施設へ相談する。
7帰宅・入院の目安
- 帰宅Grade0〜2のITPで無治療経過観察が原則(小児血液専門医への紹介経路を確保したうえで軽症例は当院でフォローする)、IgA血管炎で腹痛・血便なし、腎所見なし(当院の6か月計画を初期の節目として、6〜12か月の検尿・血圧追跡を専門科と計画する。尿異常があれば終了せず腎臓専門医へ紹介)
- 入院Grade3(粘膜出血あり)のITP:小児血液専門医に相談のうえ、当院での治療開始の可否を判断する、鏡検(末梢血液像)待ちの間は入院で抱える(夜間入院可)
- 搬送・紹介頭蓋内出血・重症出血(Grade4〜5):持てない。IVIGを開始しつつ搬送、血小板減少+他系統の異常・肝脾腫・リンパ節腫大:持てない(骨髄検査が要る)、IgA血管炎+腸重積の疑い:持てない、IgA血管炎+ネフローゼ域蛋白尿・腎機能障害:腎生検が要る=持てない、凝固異常(血友病・VWD)の疑い:持てない
8診療中の疑問と回答
- 血小板がとても低い。無症状でも必ずIVIGを使う?
- 数値だけで治療せず、口腔・鼻・消化管などの粘膜出血と生活上のリスクを評価する。典型的ITPの皮膚出血のみなら、専門科の追跡と安全指導を確保して経過観察できる。頭痛、嘔吐、神経症状や重篤出血は直ちに入院・救急対応する。
根拠:RCH Immune thrombocytopenic purpura - ITPと思ったが貧血や白血球異常もある。ステロイドを始める?
- 典型的ITPは孤立性血小板減少で、血液像を含め他の異常がないことを確認する。他系統の異常、骨痛、肝脾腫、リンパ節腫脹があれば白血病等を除外する。診断前に安易にステロイドを開始せず血液専門医と検査を相談する。
根拠:RCH Immune thrombocytopenic purpura - 血小板数が改善したらすぐ通常生活に戻す?
- 出血症状、数値の推移と活動の外傷リスクを合わせて決める。頭部打撲時の対応と新たな粘膜出血の連絡先を確認する。鎮痛薬は血小板機能を妨げる薬を避ける方針を共有し、再検日とスポーツの再開条件を専門科と決める。
根拠:RCH Immune thrombocytopenic purpura
- ITPは血小板の数で治療を決める?
- 決めない。重症度(修正Buchanan分類)と生活の質で決める。粘膜出血のない皮膚出血だけなら血小板数にかかわらず無治療経過観察が原則。
- Grade2とGrade3の境目は?
- 口の中の粘膜出血の有無。口腔内・鼻腔・皮膚を全身くまなく見る。
- IgA血管炎はいつまで尿を追う?
- 紫斑が消えても検尿・血圧を追う。既存の6か月計画を最初の節目とし、国内2026年資料の6〜12か月の定期検尿を踏まえて継続期間を決める。尿異常・再燃や高血圧があれば6か月で終了しない。腎専門科と連携し、次回の検査日と担当先を明確にする。
- ぶつかるスポーツはいつまで止める?
- 血小板数と各スポーツの接触リスクから参加を決める。明確なデータはないため、頭を打たないことを優先する。
- IgA血管炎で入院した場合の当院の治療と採血は?
- IVIG 1.0 g/kgで治療を開始し、入院3日目・7日目ごろに血液検査を行う院内方針院内。採血項目や追加投与は個別に指示する。症状が悪化すれば予定日を待たず評価し、退院後も検尿・血圧を追う。
10家族への説明
ITPの場合:血を止める血小板という細胞だけが、免疫のはたらきで減っている状態です。子どもでは6か月から1年のうちに自然に治る方が多く、長引くのは4人に1人くらいです。大事なのは血小板の数そのものより、どこから出血しているかです。皮膚のあざや点だけで、口の中や鼻・おしっこ・便に出血がなければ、お薬を使わずに様子を見るのが原則です。頭を打たないことがいちばん大事なので、ぶつかるスポーツはいったん止めてください。強い頭痛、吐く、ぼんやりする、5分以上止まらない鼻血、血尿、血便、このどれかがあればすぐ来てください。
IgA血管炎の場合:足を中心に出る、押しても消えない盛り上がった紫色の斑点で、血管の炎症によるものです。血液が止まりにくくなっているわけではありません。関節の痛みは3人に2人、お腹の痛みは2人に1人くらいに出ます。紫斑そのものはたいてい1か月以内に良くなります。いちばん大事なのは、あとから腎臓に炎症が出ることがある(およそ2人に1人)ことです。紫斑が消えても、決まった時期におしっこの検査に来てください。強いお腹の痛み、吐く、便に血が混じる、おしっこが赤い、まぶたが腫れる、このどれかがあれば時間を待たずに来てください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。