1-3かぜ症候群と抗菌薬適正使用
鼻汁・咽頭痛・咳の急性気道感染症・抗菌薬の要否
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- ほとんどの「かぜ」(ウイルス性上気道炎)に抗菌薬は不要。GAS陽性咽頭炎・中等症以上の副鼻腔炎・一部の中耳炎など基準を満たす例のみ検討する。
- 当院当直帯に心エコー・CT・MRIはない(X線は当直帯でも撮影・当直医が読影)。かぜ様症状のあとの元気のなさ・嘔吐の持続・顔色不良・頻脈や不整脈・肝腫大があれば心筋炎を疑い、心電図と全身所見で判断し、確かめずに循環器のある施設へ相談する。
- 生後28日以下で38.0℃以上の発熱は日齢によらず全例で血液培養・カテーテル尿・腰椎穿刺によるフル精査を行う。生後60日以下は原則入院とする(院内方針院内)。
- 川崎病の診断は主要症状を数えるもので当直帯でもできる(冠動脈評価は後日)。
- 咳が3週間以上遷延したら百日咳・マイコプラズマを鑑別に追加する。
2鑑別のながれ
- かぜ様症状後の元気消失・嘔吐持続・顔色不良・頻脈や不整脈・肝腫大→ウイルス性感染後に循環不全・心原性ショックへ進行しうる見逃されやすい重篤疾患→心筋炎(心電図・胸部X線・心エコー・循環器科紹介)
- 発熱のみでかぜ症状に乏しい乳児→局所症状が出にくく発熱のみが唯一の手がかりのことがある→尿路感染症(尿検査を検討)
- 5症状以上、または4症状以下でも冠動脈病変を伴う発熱→眼球結膜充血・口唇口腔所見・発疹・四肢末端の変化・非化膿性頸部リンパ節腫脹→川崎病
- 咳が3週間以上遷延→非感染性疾患(気道異物・喘息など)も含め鑑別に追加する→百日咳・マイコプラズマ
3検査
- GAS迅速抗原検査:3歳以上で突然発症・発熱・頭痛・嘔気嘔吐・腹痛・前頸部圧痛を伴うリンパ節腫脹・猩紅熱様皮疹があるとき
- 胸部レントゲン:咳主体で体温38℃以上/脈拍100回/分以上/呼吸数24回/分以上のいずれか、または聴診所見の異常があるとき。当直帯でも撮影・読影とも可能
- 尿検査:乳児の発熱でかぜ症状に乏しい/伴わないとき。当直帯は定性のみで培養は翌朝提出
- 血液培養・カテーテル尿・腰椎穿刺:生後28日以下の発熱は日齢によらず全例で施行する(院内方針院内)。腰椎穿刺・カテーテル尿は当直帯で完結できるが、血液培養は当直帯で採取・保管し検査室への提出は翌朝
- 心エコー:川崎病・心筋炎を疑うときに要るが当直帯にはない。心電図と全身所見で判断し、確かめずに紹介する
4処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン(感冒・発熱の対症療法) 1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて頓用。1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服
感冒(狭義)に抗菌薬は不要。対症療法と経口補液が中心
- シロップ(カロナールシロップ2%=20mg/mL):—〜— を1回
- 細粒(カロナール細粒20%=200mg/g):—〜— を1回
- 坐剤:1回 —〜— に一番近い規格・個数を選ぶ(アンヒバ/アルピニー 50・100・200mg)
- 次は4〜6時間以上あける。1日の合計は — まで
Rp. 2アモキシシリン水和物(急性中耳炎で抗菌薬適応時) 60〜90mg/kg/日 分3。90mg(力価)/kg/日を超えない 内服
全身状態良好・耳漏なしなら抗菌薬なしで2〜3日経過観察が先。耳漏あり/重症化リスクあり/鼓膜発赤膨隆で投与を検討する。初回3〜4日で評価し総投与期間7日間を基本とする(院内方針院内)
- ワイドシリン細粒20%(200mg/g)で1日 —〜—(60〜90mg/kg/日)を分3
- 添付文書の上限は90mg(力価)/kg/日。これを超えない
- 3〜4日目に再評価。改善または不変・悪化なら治療方針を見直す。総投与期間は7日間を基本とする(院内方針院内)
Rp. 3アモキシシリン水和物(GAS咽頭炎で迅速検査陽性時) 30〜50mg/kg/日(最大1,000mg/日)分2〜3、10日間 内服
GAS迅速検査または培養でGAS陽性の場合のみ投与を検討する。GASを除く急性咽頭炎に抗菌薬は不要
- ワイドシリン細粒20%(200mg/g)で1日 —〜—(30〜50mg/kg/日、上限1,000mg=5g)を分2〜3
- 10日間内服。熱が下がっても飲み切る
Rp. 4クリンダマイシン(重度ペニシリンアレルギー時の代替) 15mg/kg/日 分3(例5mg/kg/回 1日3回)、10日間 内服
アナフィラキシー等の既往がある重度ペニシリンアレルギーでGAS陽性のとき
- 1日 — を3回に分ける(1回5mg/kg)
- 国内の経口剤はダラシンカプセル75mg・150mgだけ。カプセルが飲めない年齢では使いにくい
- 多めの水で飲み、飲んだあと30分は横にならない(食道潰瘍の予防・添付文書)
- 10日間
避けること・注意:インフルエンザ・水痘罹患時のアスピリン含有解熱鎮痛剤・総合感冒薬、ジクロフェナクナトリウム(インフルエンザ罹患中は原則禁忌)、抗ヒスタミン薬、ジヒドロコデインを含む鎮咳薬、テオフィリン製剤、ロペラミド(6か月未満は禁忌・2歳未満は原則禁忌)、ピボキシル基を有する抗菌薬、ST合剤・セフトリアキソン(新生児・低出生体重児は禁忌)、フルオロキノロン系、テトラサイクリン系(8歳未満で歯牙着色)。ウイルス性上気道炎への経験的抗菌薬投与は避ける。
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- 帰宅鼻汁のみ/鼻閉±発熱±軽い咳/呼吸障害なし/全身状態良好/発熱3日以内/鼻汁10日以内/湿性咳嗽10日(2週間)以内をすべて満たす
- 入院生後28日以下の発熱は日齢によらず全例で血液培養・カテーテル尿・腰椎穿刺のフル精査のうえ入院。生後60日以下は原則入院(院内方針院内)、生後3か月未満のRSウイルス感染症で無呼吸の既往・目撃があれば入院を強く検討
- 搬送・紹介sniffing position/tripod position・安静時吸気性喘鳴・多呼吸・酸素飽和度低下は気道確保できる施設へ搬送、心筋炎・MIS-C・川崎病を疑う所見は専門施設へ
6診療中の疑問と回答
- 鼻水が緑色になったら抗菌薬を始める?
- 鼻汁の色だけで細菌感染とは判断しない。症状の長さと悪化の仕方、顔面痛、耳所見、呼吸状態を確認し、鼻副鼻腔炎・中耳炎・肺炎など病型ごとの基準で判断する。単純なかぜには抗菌薬を加えず、どの変化で再診するかを家族に具体的に伝える。
根拠:AMR臨床リファレンスセンター 抗微生物薬適正使用第四版ダイジェスト - 抗菌薬を希望する家族には、どう説明して再診につなぐ?
- 今回の診察で重い感染の徴候がないことと、かぜに抗菌薬が効かず副作用があることを説明する。鎮痛、飲水など今できる対処を示し、呼吸苦、飲めない、反応低下、いったん軽快後の再悪化を再診条件にする。説明だけで終えず、家族が何を観察するか確認する。
根拠:AMR臨床リファレンスセンター 抗微生物薬適正使用第四版ダイジェスト - かぜとして数日見たが、よくならない。別の抗菌薬を試す?
- 先に診断をやり直す。発熱の持続、呼吸所見、耳・咽頭、尿路感染、川崎病の徴候などを確認し、必要な検査を選ぶ。元気がなく嘔吐と不釣り合いな頻脈があれば心筋炎も検討する。診断なしに薬を順番に変更するのではなく、新たな所見を基に対応する。
根拠:AMR臨床リファレンスセンター 抗微生物薬適正使用第四版ダイジェスト
- かぜに抗菌薬はいつ検討する?
- GAS陽性の咽頭炎、中等症以上の副鼻腔炎、耳漏や重症化リスクを伴う中耳炎など、病型ごとの基準を満たす場合に限る。
- 生後3か月未満の発熱はどう扱う?
- 生後28日以下は日齢によらず全例で血液培養・カテーテル尿・腰椎穿刺のフル精査を行う。生後60日以下は原則入院とする(院内方針院内)。
- かぜ症状に乏しい発熱の乳児は?
- 尿路感染症・重症感染症を必ず鑑別に残す。局所症状が出にくく発熱のみが手がかりのことがある。
- GAS陽性の咽頭炎はどう治療する?
- アモキシシリン30〜50mg/kg/日(最大1,000mg/日)分2〜3、10日間。重度ペニシリンアレルギーがあればクリンダマイシン15mg/kg/日 分3、10日間。
8家族への説明
多くの「かぜ」はウイルスが原因で、抗菌薬は効きません。休養と水分・栄養が回復の中心です。抗菌薬を使うとお腹の中の良い菌まで一緒に減らしてしまうことがあります。3日以上経過しても改善しない場合、日常生活に支障が出るほど悪化した場合は再受診してください。ぐったりしている、呼吸が速い・苦しそう、水分が摂れない、一度良くなりかけたのにまた熱が上がってきた、熱が3日以上続く、といった様子があればすぐにご連絡ください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。