13-2乳幼児健診
DDH・心雑音・斜視/白色瞳孔・停留精巣を月齢ごとに拾う
β版 · 紙面の最終確認 2026-09-27
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
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1ポイント
- 法定健診は1歳6か月・3歳児の2回のみ。1か月・3-4か月・9-10か月は任意実施だが、DDH・心雑音・斜視/白色瞳孔・停留精巣など「落とすと重い」項目は任意健診側に集中しており、実務上の重みは法定2回と変わらない。
- 数値基準を持つ項目は数値で判定し、「様子を見ましょう」で終わらせない(DDH開排制限、低体重3パーセンタイル未満、体重増加不良は発育曲線2本下降など)。
- 乳幼児健診は予防接種スケジュールと並走する。健診は予防接種歴確認のチェックポイントでもある。
2鑑別のながれ
- おむつ替え時の脚の開き方・皮膚溝の左右差→股関節90〜100度屈曲位で開排70度以下、または床から20度以上の制限→発育性股関節形成不全(DDH)。整形外科二次検診へ
- 聴診上の雑音→無害性雑音以外(拡張期雑音・高度雑音・チアノーゼ/哺乳不良を伴う)→先天性心疾患を疑い心エコー等で精査
- 目が合いにくい・片方の目だけ外側/内側を向く・フラッシュ写真で片方だけ白っぽく写る→暗室でのペンライト所見(紅色反射の左右差・白色反射)→斜視・弱視、網膜芽細胞腫(白色瞳孔)を疑う
- 4か月を過ぎても首がすわらない・10か月を過ぎてもお座りができない・1歳6か月を過ぎてもひとり歩きをしない→頚定の判定基準:引き起こしで45度まで首が保てない=遅れ→運動発達の遅れを疑い、小児神経科等へ紹介を検討
- 新生児期に両側とも精巣が触れない→外表異常(尿道下裂・小陰茎等)の有無を確認→両側非触知精巣。生後6か月まで待たない。判別不明性器に準じて迅速な評価が必要(性分化疾患の評価を含む)。早期に泌尿器科・小児外科へ紹介
- 生後6か月を過ぎても精巣が袋の中に触れない(片側)→自然下降が期待しにくい時期→停留精巣。手術適期(生後6か月以降〜2歳ごろ、目安1歳前後)を逃さないよう泌尿器科紹介を検討
- 健診での腹部腫瘤触知→腹部触診を省略しない→神経芽腫・Wilms腫瘍を疑い、精査・紹介
- 3歳児検尿の蛋白尿・血尿→再検を軽視しない→先天性腎尿路異常(小児の末期腎不全原因の約30%)を疑う
3計算・スコア
判定
乳幼児健診 — 時期別の診察項目と判定基準
どの健診か
判定は異常なし/要観察/要紹介(既医療含む)の3区分。公式の診察項目表・判定基準表が存在するのは3〜4か月/9〜10か月/1歳6か月/3歳の4区分だけで、1か月と6〜7か月には無い。無い回は施設の様式が実質の基準になる。
いつ使う
健診の枠に入る前に、その回で公式に見ることになっている項目と判定の線を確認する。回ごとに項目が入れ替わるので、記憶で流さない。
落とし穴
- 回によって見る項目が違う。3歳で眼・耳鼻咽頭が加わり、9〜10か月はDDH・心雑音・斜視・停留精巣を拾い直す最後の乳児期の機会になる
- 1か月と6〜7か月には公式の判定基準表が無い。「基準どおりに見た」と思い込まない
- 成長曲線は帯の中なら安心・外れたら異常ではない。その子なりのカーブから急に外れていないかを見る。体重増加不良の判定は「%タイル曲線を2本下降」
- 健診は母子健康手帳の接種歴を確認する定点観測ポイントでもある。接種漏れ・スケジュールのずれを必ず見る
出典
診察標準項目と判定基準=国立成育医療研究センター 乳幼児健康診査マニュアル。DDH=日本小児整形外科学会・日本整形外科学会「乳児健康診査における股関節脱臼二次検診の手引き」。3歳児視覚検査=日本眼科医会ほか「3歳児健診における視覚検査マニュアル」(令和3年7月)。M-CHAT日本語版。離乳=厚労省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定版。いずれも本シートの詳細リファレンスにURLを載せている。
4検査
- 心雑音疑いの心エコー:当直帯は装置があっても確定的に読める人がいない。慣れない当て方はできるが、陰性所見を否定には使わない
- 3歳児検尿の異常(蛋白尿・血尿):当直帯に出せるのは定性(尿テスト)のみ。沈渣・培養は夜間に提出できず、確定は翌朝提出になる
- DDH疑いのX線:当直帯でも撮影はできるが、夜間の読影は当直医自身が行う(確定読影は翌日以降)
5対応の注意
避けること・注意:DDHの開排制限を「男児だから硬いだけ」と決めつけて左右差を確認しない。心雑音を1回の聴診だけで判断する。停留精巣を「そのうち下りる」と手術適期を過ぎるまで経過観察する。成長曲線を数値だけカルテに記載してグラフに描かない。
6頚定・斜視・紅色反射の診かた
- 頚定(引き起こし反応):仰臥位の児の両手首を持つ(またはてのひらに検者の親指を握らせて手を包み込むように持つ)。ゆっくり座位まで引き起こす。判定は3条件——①腹臥位で頭を持ち上げられる/②引き起こし45度で頭が後ろに倒れない/③座位で揺らしても首が安定している
- 斜視スクリーニング(角膜反射法):児の顔から30cmの位置からペンライトで両方の瞳孔を照らす。瞳孔の中心に反射があれば正常
- 反射に左右のずれがあれば遮蔽試験を追加する:ずれていない(正常の)目を手または遮蔽板で隠し、患側の目が動くかどうかをみる
- 紅色反射(Red reflex法):児の瞳孔から50cmの位置から直像鏡(なければペンライトでも可)を照らし、眼底からの反射を左右で見比べる。暗室で行うと反射が見やすい
- 左右差または白色反射があれば、精査対象として眼科へ紹介する
やってはいけない・落とし穴- 頚定は引き起こしの所見だけで判定しない。伏臥位での頭部挙上・座位での安定性とあわせた3条件で見る
- 斜視は1回の判定で終わらせない。3〜4か月・9〜10か月・1歳6か月・3歳と毎回評価する連続的なプロセス
- 白色瞳孔(cat's eye reflex)を認めたら精査を急ぐ。網膜芽細胞腫は95%が5歳までに診断される小児がんで、暗くない診察室では見落としやすい
7帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介DDH開排制限陽性、または皮膚溝非対称・家族歴・女児・骨盤位分娩の2項目以上陽性(整形外科二次検診へ。緊急の当直対応ではなく後日フォローの紹介・連携先は院内で別途確認)、無害性雑音以外の心雑音(当直帯の心エコーは確定読影ができないため、疑わしければ経過観察と紹介の予定を翌日以降に確実に組む)、新生児期の両側非触知精巣(判別不明性器に準じて迅速な評価が必要。性分化疾患の評価を含め、生後6か月まで待たず早期に泌尿器科・小児外科へ紹介)、生後6か月を過ぎても自然下降を認めない片側の停留精巣(泌尿器科・小児外科へ紹介)、腹部腫瘤触知(神経芽腫・Wilms腫瘍を疑い精査・紹介)、3歳児検尿の蛋白尿・血尿の反復(先天性腎尿路異常を疑い小児腎臓科へ。緊急の当直対応ではなく後日フォローの紹介・連携先は院内で別途確認)、発達の遅れ(首すわり・お座り・独歩の遅れ)を認める場合は小児神経科等へ紹介(緊急の当直対応ではなく後日フォローの紹介・連携先は院内で別途確認)、説明のつかない傷やあざの反復(院内の虐待対応窓口へ報告)
8Q&A
- 股関節の開排が硬いのは男児だから普通?
- 決めつけない。男児は女児より股関節が硬い傾向はあるが、必ず左右差で判定する。向き癖の反対側の開排制限を見落としやすい。
- 心雑音を1回聴いて『無害性』と判断してよい?
- 1回の聴診で終わらせない。無害性雑音は体位変換で減弱するのが特徴で、体位を変えて再聴診する。
- 停留精巣はいつまで様子を見てよい?
- 片側なら生後6か月以降は自然下降しにくい。3-4か月・9-10か月時点で下降していなければ、1歳6か月を待たず泌尿器科紹介の検討を。新生児期に両側とも触れない場合は生後6か月まで待たず、判別不明性器に準じて迅速に紹介する。
- 股関節の開きに左右差があると言われた家族に何と伝える?
- 念のため骨の専門の先生(整形外科)にもう一度診てもらいましょう、10〜15人に1〜2人くらいの割合で紹介になるので特別なことではありません、と伝える。
- 心雑音を指摘した家族に何と伝える?
- 体位を変えても変わらない・少し強めの雑音が聞こえます、多くは心配のいらない音ですが念のため心エコーで確認しましょう、と伝える。
- 目の所見(斜視・見え方)を指摘した家族に何と伝える?
- 目の使い方・見え方は6〜8歳ごろまでに完成する発達の途中なので、今のうちに調べておくことで間に合ううちに治療できます、と伝える。
- 停留精巣を指摘した家族に何と伝える?
- 精巣が下りてきているかの確認です、まだ下りていない場合は手術のタイミングがあるので経過を見ながらしかるべき時期に専門の先生につなぎます、と伝える。
- O脚・歩容の異常があれば何を疑う?
- くる病を鑑別に入れる。母乳栄養や紫外線回避志向によるビタミンD欠乏性くる病の再興が指摘されている。
9家族への説明
今日の健診の結果は母子手帳に記録しました。気になる点があればいつでもご相談ください。
詳しい根拠・出典は 詳細リファレンス へ