2-1RSV・細気管支炎
乳児のウイルス性下気道炎
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 細気管支の浮腫・分泌物による閉塞が主体。呼吸仕事・空気の入り・哺乳を評価し、典型例では気管支拡張薬・ステロイド・抗菌薬をルーチンに使わない。
- それまで目立っていた陥没呼吸・多呼吸がかえって減少し、活気低下・顔色不良を伴う場合は「改善」ではなく疲労徴候。喘息のサイレントチェストと同型の落とし穴。
- 重症度の目安:呼吸数60〜70回/分以上、SpO2が90%を下回る、無呼吸、チアノーゼ、哺乳不能は重症。
- 初発の喘鳴を反射的に細気管支炎と診断しない。肝腫大・ギャロップ・心雑音・成長不良(先天性心疾患)、先行症状なく突然発症・左右差(気道異物)、発作性の咳嗽・無呼吸が前景で低月齢(百日咳)は除外する。
- 生後8-28日の発熱は血液培養・カテーテル尿(培養含む)・髄液検査(LPは安全条件を優先し、禁忌時は穿刺せず安定化・治療・専門相談を先行)を全例検討し、結果を待たず経験的抗菌薬・入院。生後29-60日は血液培養・尿検査・炎症マーカーを全例施行し原則入院(夜間は培養提出不可。採取・保存・搬送方法を検査室/上級医と確認し、必要時は紹介先へ相談)。60〜89日は全身状態・経過で個別判断。RSV陽性でもこれらの検査を省略する理由にはならない(院内方針院内)。
2鑑別のながれ
- 喘鳴・多呼吸+肝腫大・ギャロップ・心雑音・成長不良→先天性心疾患の初発・増悪→先天性心疾患/心不全
- 先行するかぜ症状なく突然発症、左右差のある呼吸音→誤嚥エピソード→気道異物
- 発作性の咳嗽・無呼吸が前景、低月齢かつワクチン未接種→咳が先行しないことがある→百日咳
- 鼻汁・咳嗽が先行しその後喘鳴・多呼吸→多くは2歳未満、ピークは生後2〜6か月→RSV細気管支炎
3重症度の目安(病歴・身体所見)
| 軽症 | 鼻汁・咳嗽が主体、喘鳴や陥没呼吸があっても軽度、哺乳良好、SpO2は室内気で正常域 | 支持療法で経過観察、帰宅を検討 |
|---|---|---|
| 中等症 | 喘鳴・軽〜中等度の陥没呼吸あり、哺乳量がやや低下、SpO2が90〜94%程度で変動することがある | 支持療法(補液・酸素の要否を評価)、入院を検討 |
| 重症 | 高度陥没呼吸・鼻翼呼吸・呻吟、呼吸数60〜70回/分以上の多呼吸、チアノーゼ、無呼吸、SpO2が90%を下回る、哺乳不能・経口摂取困難 | 入院。無呼吸・チアノーゼ・意識レベル低下があれば上位施設へ搬送 |
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4検査
- パルスオキシメトリによるSpO2評価(酸素投与を要さない児での連続モニタリングは必須ではない)
- 胸部X線・血液検査・迅速ウイルス抗原検査のルーチン施行は不要(重症度と相関するエビデンスは不十分)
- 生後8-28日の発熱は血液培養・カテーテル尿(培養含む)・髄液検査(LPは安全条件を優先し、禁忌時は穿刺せず安定化・治療・専門相談を先行)を全例検討し、結果を待たず経験的抗菌薬・入院。生後29-60日は血液培養・尿検査・炎症マーカーを全例施行し原則入院。60〜89日は全身状態・経過で個別判断。RSV等ウイルス陽性はこれらの検査を省略する理由にならない。重症細菌感染症(特にUTI、報告により0.8〜3.1%)の合併リスクが残る(院内方針院内)
- 夜間は尿定性のみで、尿・血液培養の提出はできない。保存・搬送条件は未確認のため検査室と上級医へ確認し、必要な評価を確保できない場合は紹介先と相談する。治療開始を提出待ちで遅らせない
5対応の注意
支持療法が基本。酸素はSpO2が90%を上回れば必須としなくてよい。水分・栄養は経口困難なら経鼻胃管または静脈路。輸液は等張液を基本とし低張液は避ける。頻回・深い鼻咽頭吸引はかえって入院期間の延長と関連するため必要時のみ浅い吸引にとどめる。 避けること・注意:気管支拡張薬(アルブテロール/サルブタモール吸入)、アドレナリン吸入、全身性ステロイド、二次感染の疑いがない抗菌薬、胸部理学療法、ルーチンの深い鼻咽頭吸引、市販の総合感冒薬・咳止め(コデイン類含有製剤は12歳未満禁忌)。
↑ このページの入口へ6鼻汁吸引・鼻腔洗浄(支持療法の実務)
- 電動鼻汁吸引器(排気流量13〜15L/分程度)にオリーブ管または喀痰吸引用サクションカテーテルを接続する
- カテーテルを水などで湿らせて滑りをよくしてから、下鼻道に沿って挿入する。鼻尖部から鼻根部方向へ無理に挿入しない
- 鼻腔洗浄を行う場合は生理食塩水を両側鼻腔に1回5〜20mL程度、数回ずつ注入する
- 頻回・深い鼻咽頭吸引はかえって入院期間の延長と関連するため、必要時のみ浅い吸引にとどめる(正本)
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 鼻尖部から鼻根部方向へ無理に挿入すると鼻出血の原因になる
- 鼻腔・咽頭に急性炎症がある場合は鼻腔洗浄を行わない
7紹介・入院の閾値
- 帰宅軽症で哺乳良好、SpO2が室内気で正常域
- 入院SpO2が90%を下回る、または持続する低酸素、哺乳不良・脱水徴候(経口摂取困難で経鼻胃管/静脈路での補液を要する場合を含む)、高度陥没呼吸・呼吸数60〜70回/分以上の多呼吸、生後12週未満・早産児・血行動態的に問題となる先天性心疾患・慢性肺疾患・免疫不全(モニタリング入院)、生後8-28日の発熱(血液培養・カテーテル尿・髄液検査(LPは安全条件を優先し、禁忌時は穿刺せず安定化・治療・専門相談を先行)を全例検討のうえ入院)、生後29-60日の発熱(血液培養・尿検査・炎症マーカーを全例施行のうえ原則入院)。60〜89日は個別判断(院内方針院内)
- 搬送・紹介無呼吸(既往含む)・チアノーゼ、意識レベル低下
8診療中の疑問と回答
- ゼーゼーが残るので、気管支拡張薬やステロイドを追加する?
- 典型的な細気管支炎は浮腫と分泌物が主体で、これらの薬をルーチン追加しない。呼吸仕事量、空気の入り、哺乳、酸素化を評価して支持療法を調整する。反復喘鳴や非典型の経過では別病態を再評価し、通常の喘息と一律に扱わない。
根拠:RCH 細気管支炎(海外小児指針) / 厚生労働省 抗微生物薬適正使用第四版 - RSV陽性だから、低月齢の発熱精査は省略できる?
- 陽性でも細菌感染合併は除外できない。月齢、全身状態、尿路感染等のリスクで評価し、本文の院内方針院内に従う。哺乳低下・無呼吸・体温不安定を重視し、必要な培養採取と抗菌薬判断を検査の陽性だけで取り消さない。腰椎穿刺は安全条件を優先する。
根拠:RCH 細気管支炎(海外小児指針) / 厚生労働省 抗微生物薬適正使用第四版 - 酸素を外してSpO2が保てば、すぐ退院でよい?
- 睡眠時を含む酸素化の持続、呼吸努力、哺乳、無呼吸の有無と家庭の観察体制を確認する。低月齢・早産・基礎疾患があれば慎重に判断する。陥没や頻呼吸が減っても活気・空気の入りが悪ければ疲弊の可能性があり、改善として退院させない。
根拠:RCH 細気管支炎(海外小児指針) / 厚生労働省 抗微生物薬適正使用第四版
- 急に楽になったら安心?
- しない。それまで目立っていた陥没呼吸・多呼吸がかえって減少し、活気低下・顔色不良を伴う場合は疲労による呼吸停止の前兆であり「改善」と誤認しない。
- 酸素はどこまで下げていい?
- room airでSpO2が90%を上回っていれば酸素投与を必須としなくてよい。90%を目標にした場合と94%を目標にした場合でアウトカムは同等だったとする試験がある。
- 生後60日未満の発熱はどう扱う?
- 生後8-28日は血液培養・カテーテル尿(培養含む)・髄液検査(LPは安全条件を優先し、禁忌時は穿刺せず安定化・治療・専門相談を先行)を全例検討し、結果を待たず経験的抗菌薬・入院。生後29-60日は血液培養・尿検査・炎症マーカーを全例施行し原則入院(夜間は培養提出不可。採取・保存・搬送方法を検査室/上級医と確認し、必要時は紹介先へ相談)。60〜89日は全身状態・経過で個別判断。RSV等が陽性でも重症細菌感染症の合併リスクが残るため、これらの検査を省略する理由にしない(院内方針院内)。
10家族への説明
多くの赤ちゃんは自然に良くなります。鼻水をやさしく取って、水分をこまめに。苦しそうだったのに急に静かでぐったり・顔色が悪いときは、良くなったのではなく疲れ切っているサインです。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。