10-5起立性調節障害(OD)
レッドフラグ除外 → 新起立試験でサブタイプ判定
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
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1ポイント
- OD自体は生命を脅かさないが、「ODらしい症状」の裏に器質疾患(心原性失神・不整脈、頭蓋内病変、膠原病・悪性腫瘍、摂食障害、甲状腺疾患、鉄欠乏性貧血)が隠れていないか毎回確認する。
- 「怠け」「不登校」「サボり」と最初から決めつけない。OD身体症状11項目のうち3項目以上該当すれば新起立試験(午前中実施)へ。
- 専門機関を受診するODの70-80%に心理社会的要因の関与がある。身体面だけの評価では治療方針を誤る。
- 労作性失神・胸痛や動悸を伴う失神、突然発症の激しい頭痛、体重減少・発熱・関節痛・皮疹、強い希死念慮・自傷はレッドフラグ。OD診療の前に、または並行して精査・紹介する。
↑ このページの入口へ2新起立試験によるサブタイプ判定
| 起立直後性低血圧(INOH) | 起立後の血圧回復時間25秒以上、または20秒以上かつ血圧低下率60%以上 | ODで最多。重症型は起立後3-7分でも収縮期血圧が起立前比15%以上低下したまま |
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| 体位性頻脈症候群(POTS) | 起立後3分以降の心拍数115/分以上、または心拍数増加35/分以上 | 重症型は125/分以上・45/分以上。血圧の有意な低下を伴わない |
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| 血管迷走神経性失神(VVS) | 起立中に収縮期・拡張期血圧がともに急激に低下し失神/前失神 | 数値基準ではなく血圧の急激な低下パターンで判定 |
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| 遷延性起立性低血圧(DeOH) | 起立3-10分の間に収縮期血圧が15%以上、または20mmHg以上低下 | 起立直後は正常でその後緩徐に低下する点でINOHと鑑別 |
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↑ このページの入口へ3計算・スコア
スコア
OD身体症状11項目(新起立試験に進むかの目安)
スコア
「心身症としてのOD」診断チェックリスト(心理社会的因子の関与)
↑ このページの入口へ4検査
- 病歴聴取(発症時期・日内変動・学校状況・心理社会的背景・家族歴〔特に不整脈・突然死〕)
- 身体診察(心音・心雑音、甲状腺触診、るいそう、貧血様所見)
- 血液検査:血算・フェリチン(鉄欠乏性貧血の除外)、甲状腺機能(TSH・FT4)、必要に応じCRP・肝腎機能・電解質
- 思春期女児は月経歴を確認し、性成熟度に応じて妊娠の可能性を評価する
- 心電図:不整脈・QT延長の除外。動悸や失神が前景にあれば必須
- 新起立試験:午前中、静かな環境で。臥位10分後から起立後10分程度まで血圧・心拍を経時測定
- 診断確定前の頭部MRI・CT等の画像検査を全例にルーティンで行うのは不要(レッドフラグがない限り)
- 傾斜台試験などの専門的自律神経機能検査は一般外来の初期評価としてルーティン施行しない(難治例のみ専門機関で)
↑ このページの入口へ5対応の注意
避けること・注意:非薬物療法を経ずにいきなり薬物療法から開始すること、器質疾患の除外前に『気の持ちよう』として片付けること、『怠け』『甘え』として叱咤し無理な早期登校を強いること、長期臥床を漫然と容認すること。β遮断薬(プロプラノロール等)は気管支喘息に添付文書上禁忌のため導入前に既往を確認する。メラトベル(メラトニン受容体作動薬)の適応は小児期の神経発達症に伴う入眠困難のみで、OD一般の生活リズム障害への適応は含まれない。SSRI等は24歳以下で自殺念慮・自殺企図のリスク増加が報告されており、投与開始後・増量時は自殺関連事象の増悪に注意する。
↑ このページの入口へ6新起立試験(active standing test)
- 検査は午前9〜12時に行う(午後は結果が正常化することがある)。静かな部屋で実施し、突然の失神発作に対応できるようスタッフが付き添う
- 水銀血圧計・聴診器・コッヘル(ゴム管を止めるクリップ)・ストップウォッチ・心電図・蘇生セットを用意する
- 安静臥位を10分間保つ。この間に血圧計を右上腕にセットする(可能なら四肢誘導心電図も装着)
- 臥位10分後、聴診法で収縮期・拡張期血圧を3回測定し、その中間値を基準の収縮期血圧とする。脈拍も測る
- 血圧計のカフに基準の収縮期血圧まで送気し、コッヘルでゴム管をクリップして脱気を防ぐ(コロトコフ音がわずかに聞こえるか聞こえないかの圧に合わせる)
- 聴診器を腕に当てたままストップウォッチをスタートし、同時に起立させる
- コロトコフ音がいったん聞こえなくなり、再び聞こえ始めた時点でストップウォッチを止める。この秒数が血圧回復時間(25秒以上で起立直後性低血圧を疑う)
- 起立後1・3・5・7・9・10分(可能なら1分ごと)に収縮期・拡張期血圧と脈拍を測定する
- 起立中の自覚症状(立ちくらみ・眼前暗黒感・頭痛・動悸・倦怠感)は検査終了後に本人へ聴取する
やってはいけない・落とし穴- 起立中はコロトコフ音が小さく聞き取りにくい。起立直後性低血圧では血圧回復が遅くさらに聞こえにくいが、聴診に気を取られて子どもの観察を怠らない
- 突然の失神発作が起こりうる検査。スタッフが必ず付き添う
↑ このページの入口へ7紹介・入院の目安
- 帰宅軽症(日常生活・登校に大きな支障なし):非薬物療法中心で2-3か月程度での改善を見込みフォロー
- 入院経口摂取困難・著明な脱水・重度のADL低下(連日臥床)を伴う場合
- 搬送・紹介失神の前後にけいれん様の動き・意識がなかなか戻らない:119番で搬送。てんかん・頭部外傷を評価、労作性失神・運動中の失神、胸痛や動悸を伴う失神:心原性失神・不整脈を疑い心電図。専門科へ、突然発症の激しい頭痛・増悪する頭痛・神経脱落症状:頭蓋内病変の除外へ、原因不明の体重減少・発熱・関節痛・リンパ節腫脹・皮疹:膠原病・悪性腫瘍の除外へ、著明なるいそう・体重体型への強いこだわり・食事制限:摂食障害の鑑別へ、強い希死念慮・自傷行為・重篤な抑うつ:精神科的緊急性を優先し身体評価と並行、重症ODで不安障害・気分障害が顕著:心療内科・精神科へ紹介(重症例の約4割に不安障害、約1割に気分障害)、自閉スペクトラム症の併存が疑われる:発達外来へ紹介(併存率は約35%と報告)
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 生活調整をしても朝起きられない。昇圧薬を増やす?
- 実際の飲水・睡眠、臥床時間、服薬と副作用を確認し、立位症状と血圧・脈拍の関係を見直す。貧血、内分泌疾患、摂食の問題なども再評価する。登校できたかだけで薬効を判断せず、専門医と病型・生活への支障に合わせて治療を調整する。
根拠:日本小児心身医学会 起立性調節障害 / RCH 失神(海外) - 運動中に失神した児も、以前ODなら同じ対応でよい?
- 運動中・臥位の失神、胸痛や動悸、突然死の家族歴は心原性を疑う。ODの既往があっても心電図と循環評価を行い、小児循環器へ相談する。発症状況、前駆症状、回復までを目撃者から聞き、脱水や心理的要因だけで説明しない。
根拠:日本小児心身医学会 起立性調節障害 / RCH 失神(海外) - 良くならないので、毎朝無理に起こして登校させる?
- 本人の意思の問題とせず、身体症状と生活機能を評価する。学校の配慮、無理のない活動、睡眠リズムと家族支援を段階的に整える。長期の臥床も漫然と続けず、抑うつ・自傷や家庭学校の負担があれば適切な支援へつなぐ。
根拠:日本小児心身医学会 起立性調節障害 / RCH 失神(海外)
- 朝起きられないだけなら経過観察でいい?
- OD身体症状11項目のうち3項目以上あれば新起立試験へ。器質疾患の除外が診断の必要条件。
- OD=心理的な問題と説明していい?
- 専門機関受診例の70-80%に心理社会的要因の関与があるが、身体面のみ・心理面のみに決めつけず両方を評価する。
- 失神様症状にはまず何をする?
- 心電図を確認しQT延長等の器質的異常を除外してから経過観察する。
↑ このページの入口へ10家族への説明
この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。