6-3 アナフィラキシーとアドレナリン注射(エピペン)

緊急

6-3アナフィラキシーとアドレナリン注射(エピペン)

気道・循環・皮膚粘膜症状・アドレナリン筋注
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30

日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。

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1ポイント

判断の流れ

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急なアレルギー症状でアナフィラキシーを見分け、アドレナリン筋注と救急対応へ進む判断図
皮膚症状がなくても、既知アレルゲン後の気道・呼吸または循環症状ではアナフィラキシーを考える。抗ヒスタミン薬を先行させない。日本アレルギー学会・アナフィラキシーガイドライン2022(修正版)を参照。
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2鑑別のながれ

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3重症度分類(グレード)

グレード1(軽症)皮膚粘膜症状のみ(部分的な紅斑・蕁麻疹、自制内の瘙痒、部分的な口唇腫脹など)。単独ではアナフィラキシーと判断しない対症療法で経過観察
グレード2(中等症)全身性の蕁麻疹・自制外の瘙痒、聴診上の喘鳴・軽い息苦しさ、頻脈(+15回/分)や血圧軽度低下・蒼白のいずれか呼吸器・循環器症状を伴えば直ちに筋注。皮膚症状のみなら経過観察
グレード3(重症)明らかな喘鳴・呼吸困難・チアノーゼ・呼吸停止・SpO2≦92%、不整脈・血圧低下・重度徐脈・心停止、ぐったり・不穏・失禁・意識消失のいずれか直ちにアドレナリン筋注
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4計算・スコア

計算

アドレナリン筋注量・エピペン区分

kg

年齢区分を選ぶと量が出ます(13歳以上は成人扱い・院内方針)

大腿部中央の前外側に筋注(殿部・上腕皮下は吸収が不確実で不可)。投与時刻を記録し、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復する。「1回打ったら終わり」ではない。

いつ使う

アナフィラキシーを疑った時点で直ちに。診断は「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」。体重が分かっていれば年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児で年齢区分と実体重が乖離するため)。

落とし穴
  • エピペンには体重15kg未満の承認用量区分が無い。15kg未満への0.15mg処方は適応外使用にあたり過量投与のおそれ — アンプルでの用量調整を検討する
  • 逆に体重が増えた患児の処方が0.15mgのまま更新されていないかを確認する
  • 投与部位の誤り(殿部・上腕皮下)は吸収が不安定・遅延する
  • 症状消失直後の帰宅 — 二相性反応は小児で最大11%、その約半数が6〜12時間以内。複数回投与例・重症例・投与が遅れた例では観察を延長する
  • エピペン処方だけで終わらせない。実技指導と学校・保育所の生活管理指導表までがセット
次の一手

投与後は仰臥位+下肢挙上、酸素・輸液路の確保、院内観察へ(本シート§2)。βブロッカー投与中でアドレナリン反応不良ならグルカゴンを考慮(小児20〜30μg/kg・最大1mg)。帰宅時はエピペン処方+実技指導+生活管理指導表まで。

出典

アナフィラキシーガイドライン2022(日本アレルギー学会)/エピペン注射液0.15mg・0.3mg 添付文書(2026年3月改訂 第6版)の用法・用量および警告(9)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

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5処置・処方例

Rp. 1アドレナリン(0.1%、1mg/mL) 0.01mg/kg、大腿部中央の前外側に筋注。最大量 成人0.5mg・小児0.3mg(13歳以上は成人扱いで0.5mg。院内方針院内) 筋注
疑った時点で直ちに投与する。静注は心停止に近い状態以外は推奨されない
  1. 0.1%アドレナリン(1mg/mL)を0.01mg/kgで大腿部中央の前外側に筋注する。上限は年齢で変わるため下の計算ツールで年齢区分を選んで計算する
  2. 効果不十分・治療抵抗性なら5〜15分ごとに反復投与する(多くは1〜2回で効果が得られる)
Rp. 2生理食塩水(0.9%)急速輸液 小児10mL/kgを急速静注(成人の目安は最初の5〜10分で5〜10mL/kg) 点滴
循環不良(血圧低下・頻脈・蒼白)があれば、アドレナリン筋注と並行して投与する
  1. 14〜16Gの太い留置針・カテーテルで静脈路を確保する
  2. 0.9%生理食塩水を—、5〜10分程度で急速投与する
  3. 反応をみて追加投与を検討する
Rp. 3グルカゴン(アドレナリン抵抗性・βブロッカー内服中、適応外使用) 小児20〜30μg/kg(最大1mg)を5分以上かけてゆっくり静注 静注
アドレナリンに反応しない患者、特にβブロッカー投与中の患者に考慮する。日本では抗アナフィラキシー適応は未承認(適応外使用)
  1. —〜—(最大1mg)を5分以上かけてゆっくり静注する
  2. 必要に応じ5〜10分毎に1mgずつ反復、または5〜15μg/分で持続点滴する
H1抗ヒスタミン薬・ステロイドは補助薬。気道閉塞や血圧低下は防止できず、アドレナリン投与を遅らせる理由にならない。アドレナリン筋注と並行して仰臥位・下肢挙上(呼吸困難があれば楽な体位)、高流量酸素(6〜8L/分)を行う。
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6エピペン(アドレナリン自己注射薬)

  1. 体重15〜30kg未満は0.15mg製剤、30kg以上は0.3mg製剤を使用する(15kg未満は承認用量区分がなく適応外)
  2. 大腿部の前外側に垂直に「カチッ」と音がするまで強く押し付け、数秒間しっかり押しつける(衣服の上からでも可)
  3. 使用後は症状が良くなったように見えても必ず救急搬送・医療機関受診とする
やってはいけない・落とし穴
  • 殿部やその他の部位に注射しない(吸収が不安定・遅延する)
  • 体重区分の取り違え(過量投与のおそれ)
  • 急に立たせる・座らせる(体位変換で数秒で急変しうる)
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7帰宅・入院の目安

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8診療中の疑問と回答

エピペンで落ち着いた後、外来から帰してよい?
改善直後には帰さない。最終アドレナリン投与後の再燃、呼吸・循環、喘息合併を観察する。反復投与や輸液を要した例、夜間・遠距離で再受診が難しい例では入院観察を検討する。帰宅前に原因回避、使用実演、再燃時の救急要請を確認する。
根拠:RCH Anaphylaxis(海外指針・国内用量は既存処方欄)
喘息児の誤食後の喘鳴。吸入を先に試す?
誤食との時間関係、皮膚・消化器症状、声の変化、循環を確認する。アナフィラキシーが疑われる喘鳴では、吸入だけの効果を待たずアドレナリン筋注を優先する。皮疹がない場合も否定できず、喘息治療は必要に応じ並行する。
根拠:RCH Anaphylaxis(海外指針・国内用量は既存処方欄)
次の受診までに家庭・学校へ何を引き継ぐ?
体重に合う製剤、期限、保管場所、本人以外の使用者を確認し、訓練器で実演してもらう。症状別の行動計画と救急要請を文書化し、原因評価の専門外来につなぐ。疑い段階の食品を無制限に除去せず、確定診断と栄養も見直す。
根拠:RCH Anaphylaxis(海外指針・国内用量は既存処方欄)
心血管疾患があるとアドレナリンは使えない?
アドレナリン使用に絶対禁忌は存在しない。ためらわず投与する。
1回打ったら終わり?
効果は筋注後10分程度で最高、40分程度で半減する。治療抵抗性なら5〜15分ごとに反復投与する。
症状が消えたらすぐ帰していい?
二相性反応は小児最大11%に起こり、その約半数が6〜12時間以内に出現する。数時間の院内観察をあける。
アドレナリンが効かない。βブロッカー内服中は?
グルカゴン(成人1〜5mg、小児20〜30μg/kg・最大1mgをゆっくり5分以上かけて静注)を考慮する。日本では抗アナフィラキシー適応は未承認(適応外使用)。
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10家族への説明

息が苦しい、声がおかしい、ぐったり、吐いてぐったり、はアドレナリンの場面です。持っているエピペンを太ももの外側に、服の上からでもよいので押し当てて、119番してください。使ったあと良くなったように見えても、必ず救急車を呼んで病院を受診してください。

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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