3-1気道異物・窒息
誤嚥・完全閉塞と不完全閉塞・背部叩打
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
前の画面から引き継いだ体重です。
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このページの目次10項目
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1ポイント
- 完全閉塞か、不完全閉塞かで対応がまったく違う。声が出る・咳ができるなら咳を妨げない。
- 乳児に腹部突き上げは行わない。背部叩打と胸部突き上げを組み合わせて繰り返す。
- 異物が見えないのに、やみくもに指を入れて探らない。押し込んで完全閉塞にする。
- 咳込みのあとに症状が消えても否定できない。異物が末梢に落ちると無症状期に入り、後から肺炎・無気肺で見つかる。
- 腹部突き上げを行った患者は、内臓損傷の可能性があるため必ず医師の診察を受けさせる。搬送時に「実施した」と伝える。
有効な咳は妨げない。重度閉塞で反応があれば年齢別の手技、反応がなければCPRへ。見えない異物を指で探らない。AHA/AAP・2025 Pediatric Basic Life Supportを参照。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴(夜間増悪・経過数日)→先行感染がある→クループ(気道異物は突然発症で先行感染がない)
- 呼気性喘鳴(両側性)→既往あり、吸入に反応する→喘息発作
- 喘鳴・咳(乳児・流行期)→先行する鼻汁・咳、両側性→細気管支炎
- 発熱・流涎・嚥下困難・前傾姿勢→気道緊急の姿勢→喉頭蓋炎・咽後膿瘍(のどを触らない・気道確保を試みず即搬送、院内方針院内)
- 片側性でない・原因のはっきりしない気道症状→目撃なし。頸部を含めてX線で確認→食道の異物が気道症状を出している(消化管異物)
- 突然の咳込み・喘鳴・呼吸困難(片側性の所見)→目撃あり・食事中、吸入に反応しない→気道異物
↑ このページの入口へ3計算・スコア
計算
気管チューブのサイズと固定長(JRC 2020)
歳
cm(任意)
kg(任意・上の体重欄と連動)
算出式は指標であって、確定ではない。実際のサイズは声門・気管の見え方と換気の状態で決める。挿管後は聴診で両肺換気を確認し、頭位が変わるたびに確認し直す(前屈で深く、後屈で浅くなる)。体重が不明なときに年齢から体重を推定して代用しない — JRCは実際の体重を用い、わからない場合はあらかじめ投与量が計算された身長テープを用いることを示している。
いつ使う
2歳以上の小児で、年齢からチューブ内径と経口固定長の目安を出す。固定長は式ごとに数cm違うので、幅として持っておいて聴診で詰めるのが正しい使い方。
落とし穴
- 2歳未満はこの算出式の対象外。年齢式を無理に当てない
- カフなしとカフ付きで式が違う。さらにカフ付きにもMotoyama(大きめ)とKhine(小さめ)の2流儀があり、JRCはどちらも併記している。Motoyamaはシーリング性が高い反面サイズ過大の可能性、Khineは過大を避けられる反面リークでチューブ交換が必要になる可能性
- 内径×3 の固定長はカフなしチューブを前提とした式で、カフ付きにそのまま適用できない
- 狭すぎるチューブは気道抵抗と呼吸仕事量を増やし、リークを減らそうとして過大なカフ圧を要することになる
- 「引き抜き法」は信頼性が低い可能性がある。深さマーキングも製品ごとに位置が違い統一されていない
次の一手
カフ付きを使うときは、カフを膨らませない状態で陽圧換気によるリークを確認し、カフ圧を最大20(〜25)cmH2O となるようモニタリングする。カフ圧も頭位で変わり、頭頸部の回旋・前屈・後屈で2.6〜6.9 cmH2O変化する。
出典
JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 小児の蘇生(PLS)p.172-173「4)カフなしチューブとカフ付きチューブ」。Cole の式・Motoyama の式・Khine の式、固定長の3式、内径×3の簡便式、カフ圧の記載はいずれも同ページ。原文PDFで直接確認(2026-09-13)。
↑ このページの入口へ4検査
- 胸部X線。ただし多くの誤嚥物はX線に写らない。写らないことは否定にならない
- 間接所見(片側の過膨張、無気肺、縦隔偏位)を探す。呼気・吸気の2相撮影は国内一次情報で裏付けられている
- 食道異物を疑う要素があれば、頸部から骨盤までのX線(消化管異物)
↑ このページの入口へ5異物除去の手技(JRC蘇生ガイドラインに基づく)
- まず「声が出るか」を確認する。話せる・泣ける・咳ができるなら不完全閉塞で、咳を妨げないのが最善
- 口の中に異物が見えれば指で取り除く。見えないときは探さない
- 完全閉塞(話せない・声が出ない・チアノーゼ)はただちに除去手技。反応がなくなればCPRを開始する
- 1歳以上の小児・成人:まず背部叩打—患者の後ろから、手のひらの基部で左右の肩甲骨の中間あたりを力強く何度も叩く。除去できなければ腹部突き上げ—へその上方に握りこぶしを当て、すばやく手前上方に向かって突き上げる
- 乳児(1歳未満):腹部突き上げは行わない。片腕にうつぶせに乗せ、手のひらであごを支えて頭を体より低く保ち、背中の真ん中(肩甲骨の間)を力強く叩く背部叩打と、胸部突き上げをそれぞれ5回ずつ、交互に繰り返す
- 腹部突き上げ法を実施した場合は、内臓を傷める可能性があるため救急隊に伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせる
やってはいけない・落とし穴- 異物が見えない場合に、やみくもに指を入れて探らない
- 異物を探すために胸骨圧迫を中断しない
- 妊婦や乳児には腹部突き上げを行わない
↑ このページの入口へ6帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介完全閉塞はその場で手技を実施し、搬送を待たない、不完全閉塞は咳を妨げず刺激しないまま搬送を手配する。処置で完全閉塞に変えない、受け入れ先には、何を・いつ・目撃の有無・現在の閉塞の程度・すでに行った手技を伝える
↑ このページの入口へ7診療中の疑問と回答
- 喘息治療に一部反応したら異物は除外できる?
- 異物でも全体の喘鳴が気管支拡張薬で軽くなり、局所の喘鳴だけが残ることがある。食事や遊び中の突然の咳込み、片側の呼吸音低下、同部位の肺炎を確認する。反応した事実だけで除外せず、疑いが続けば気管支鏡対応施設へ相談する。
根拠:Queensland 小児気道異物 - 数日前の咳込みで、今は診察もX線も正常。紹介不要?
- 強い誤嚥の病歴があれば、正常診察と正常X線だけで帰宅を決めない。異物は写らず、無症状の期間を挟むことがある。安定例でも専門科へ速やかに相談し、持続する咳や説明できない呼吸症状があれば気管支鏡の適応を検討する。
根拠:Queensland 小児気道異物 - 吸気性喘鳴がある異物疑いにアドレナリン吸入を試す?
- 異物疑いにクループと同じ吸入を機械的に行わない。異物が移動して閉塞を悪化させる懸念があり、Queensland指針はアドレナリン吸入を推奨していない。楽な姿勢と監視を保ち、苦痛の強い処置や盲目的な除去を避け、気道対応可能なチームへ連絡する。
根拠:Queensland 小児気道異物
- 咳込みのあと症状が消えたら安心していい?
- いいえ。異物が末梢に落ちて無症状期に入っただけのことがある。後から肺炎・無気肺で見つかる。
- X線が正常なら異物は否定できる?
- できない。多くの誤嚥物はX線に写らない。
- 腹部突き上げをした後はどうする?
- 内臓損傷の可能性があるため、必ず医師の診察を受けさせ、搬送先にも実施したことを伝える。
↑ このページの入口へ9家族への説明
のどや気管にものが詰まった可能性があります。声が出て咳ができているうちは、咳を止めないことがいちばん大事です。むやみに口の中に指を入れないでください。取り出す処置は当院ではできないので、できる病院にお願いします。