3-1気道異物・窒息
このページの目次12項目
1病態・根拠(医師確認前の原稿)
小児の気道異物を病態から整理した医師確認前の学習用原稿。当院に気道異物摘出設備はない。窒息時の手技は院内で採用する蘇生教育と最新版の照合が必要であり、この節を手技の単独マニュアルにしない。
2この疾患をどう捉えるか
医師確認前の学習用原稿。当院に気道異物摘出設備はない。窒息時の手技は院内で採用する蘇生教育と最新版の照合が必要であり、この節を手技の単独マニュアルにしない。
喉頭・気管の異物による急性の換気障害と、気管支に残った異物による局所の換気障害・炎症を分けて考える。前者は声・咳・呼吸が失われると数分で低酸素性心停止に進みうる。後者は咳が落ち着き、一見元気に見える時間があっても、閉塞した区域に空気の貯留や無気肺が生じ、後から感染や気管支拡張症につながりうる。[1][2] 小児、とくに幼児では食物や小部品の誤嚥が多い。異物の位置、閉塞の程度、材質によって症状が変わるため、「典型的な窒息の様子がない」ことを除外根拠にしない。[1][2]
3完全閉塞・部分閉塞を最初に分ける理由
強い咳や発声ができる部分閉塞では、残った気流を使った自発的な咳が異物を排出しうる。咳の有効性と意識・呼吸状態を連続して見ながら、咳を妨げない。声が出ない、咳が弱くなる、呼吸ができない重度閉塞では自発的な排出を期待できず、直ちに異物除去と救急要請が必要となる。反応がなくなれば胸骨圧迫からCPRを開始し、口腔内に見える異物だけを除去する。盲目的な指の探索は行わない。[3][4]
乳児と1歳以上では推奨手技が異なる。AHA/AAP 2025は、重度閉塞の乳児に背部叩打と胸部突き上げ、1歳以上に背部叩打と腹部突き上げをそれぞれ交互に行い、乳児への腹部突き上げを避けるよう推奨する。[3] JRC 2020のBLS章も乳児では背部叩打と胸部突き上げ、1歳以上では背部叩打を先行させる。[4] 手の当て方を含む実技は講習・院内手順で統一する。 JRC 2025書籍版の該当手技は本原稿で原文照合できていないため、医師確認時の更新項目とする。[5]
4異物の位置と時間経過から所見を読む
| 位置・経過 | 病態と手掛かり | 判断上の限界 |
|---|---|---|
| 喉頭・気管 | 気流そのものが妨げられ、吸気性喘鳴、声の変化、流涎、呼吸困難が前面に出る。異物の移動で急に完全閉塞へ変わりうる。[1][2] | 気道が不安定なら画像撮影のために救命対応・専門相談を遅らせない。[2] |
| 主気管支以下 | 片側の呼吸音低下や限局性の単音性喘鳴、胸郭運動の左右差が手掛かり。部分閉塞では空気の貯留、より強い閉塞では無気肺を生じる。[1][2] | 正常な聴診所見もある。びまん性喘鳴を呈し、気管支拡張薬に一部反応する例もある。[2] |
| 数日から数週後 | 初回の激しい咳のあと無症状期があり、遷延する咳、局所の肺炎・無気肺、反復する同部位の浸潤影として見つかることがある。[1][2] | 誤嚥が目撃されていないことが多い。食事・遊び中の突然の咳込みを改めて聞く。[1][2] |
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5画像陰性が除外にならない理由
多くの吸入異物はX線透過性で、異物そのものは写らない。胸部X線では片側過膨張、縦隔偏位、無気肺、浸潤影など閉塞の結果を探すが、初期や小さな異物ではこれらも出ない。正常な胸部X線・正常な呼吸診察のどちらも誤嚥を否定しない。[1][2] Queenslandの小児救急ガイドラインは、気管気管支異物の30〜50%で単純X線が正常となりうると記載しているが、これは同資料が複数研究をまとめた範囲であり、個々の児の事後確率にそのまま当てはめない。[2]
協力可能な児の吸気・呼気像や、年少児の側臥位像は空気の貯留を探す補助になりうる。ただし撮影できるか・読影できるかは年齢と施設体制に左右される。画像の追加を、気道が不安定な児の搬送相談より優先しない。 CTの位置づけも専門科と相談し、単純X線が正常だから帰宅、CTが陰性だから必ず除外、という固定ルールを置かない。[1][2]
6気管支鏡と搬送をどう判断するか
誤嚥を強く示す病歴、片側の聴診・画像異常、あるいは画像が正常でも続く説明困難な呼吸症状があれば、耳鼻咽喉科・小児呼吸器科へ速やかに相談し、気管支鏡の適応を判断する。[1][2] 硬性気管支鏡は換気路を確保しながら多様な鉗子を使用でき、異物摘出に適する。軟性気管支鏡は末梢の観察・診断に強みがあるが、小児では器具径や鉗子・吸引路に制約がある。実際の選択は異物と児の状態、麻酔・術者の体制で決まる。[6]
当院では摘出できないため、疑いを持った時点で受入先に連絡する。上気道閉塞徴候、呼吸窮迫、異常なバイタル、ボタン電池の吸入疑いは緊急の専門支援・搬送調整を要する。[1][2] 搬送まで呼吸・意識・SpO₂を継続観察し、可能なら児が楽な体位を保つ。鎮静、口腔内操作、苦痛の強い検査は気道を悪化させうるため、受入先と気道管理の計画を共有する。[1][2] 食止めなどの手順は気道と搬送の安全を優先して決める。
7初期に安定して見える場合
8出典と適用範囲
- Royal Children's Hospital Melbourne.Foreign bodies inhaled, Clinical Practice Guideline(2026-10-01閲覧)。病態の位置差、正常診察・正常X線の限界、専門相談と観察。日本の搬送体制への直接適用ではない。
- Children's Health Queensland.Inhaled foreign body: Emergency management in children(2026-10-01閲覧)。症状、画像の限界、気管支鏡・搬送判断。X線正常率は同資料の引用研究に由来する。
- American Heart Association / American Academy of Pediatrics.2025 Pediatric Basic Life Support Guidelines, §6.3 Foreign-Body Airway Obstruction(2026-10-01閲覧)。完全・部分閉塞、乳児と小児の推奨、CPR、盲目的な指探索の禁止。
- 日本蘇生協議会.JRC蘇生ガイドライン2020 第1章 一次救命処置(2026-10-01原文閲覧)。国内の年齢別気道異物除去手技。
- 日本蘇生協議会.JRC蘇生ガイドライン2025 案内(2026-10-01閲覧)。書籍版の発刊を確認。異物除去の該当本文は未照合。
- American Thoracic Society.Official Technical Standards: Flexible Airway Endoscopy in Children(2026-10-01閲覧)。硬性・軟性気管支鏡の特性。実施は専門チームで判断する。
9臨床医が迷う場面
10喘息治療に一部反応したら異物は除外できる?
異物でも全体の喘鳴が気管支拡張薬で軽くなり、局所の喘鳴だけが残ることがある。食事や遊び中の突然の咳込み、片側の呼吸音低下、同部位の肺炎を確認する。反応した事実だけで除外せず、疑いが続けば気管支鏡対応施設へ相談する。
11数日前の咳込みで、今は診察もX線も正常。紹介不要?
強い誤嚥の病歴があれば、正常診察と正常X線だけで帰宅を決めない。異物は写らず、無症状の期間を挟むことがある。安定例でも専門科へ速やかに相談し、持続する咳や説明できない呼吸症状があれば気管支鏡の適応を検討する。
12吸気性喘鳴がある異物疑いにアドレナリン吸入を試す?
異物疑いにクループと同じ吸入を機械的に行わない。異物が移動して閉塞を悪化させる懸念があり、Queensland指針はアドレナリン吸入を推奨していない。楽な姿勢と監視を保ち、苦痛の強い処置や盲目的な除去を避け、気道対応可能なチームへ連絡する。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。