12-5胸のレントゲン
撮影条件・正常胸腺・気道異物・CTR
β版 · 紙面の最終確認 2026-09-28
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次6項目
1ポイント
- 当院の当直帯にCT・超音波は無い。胸部X線は撮れる。放射線科の読影体制(当直・遠隔読影)は未確認なので、当直医が自分で読む前提で使う。浸潤影・無気肺・気胸・明らかな胸水・心陰影の拡大に的を絞り、微妙な所見を否定の根拠にしない。
- 重症度そのものは呼吸数・陥没呼吸・SpO2・聴診・全身状態で決まる。X線はそれを覆さない。
- 所見を見る前に撮影条件(正面性・立位か否か・吸気)を確認する。誤読の大半は条件確認の省略で起きる。回旋・呼気位・臥位は心拡大・肺炎様陰影に見える。
- 0〜2歳の約50%の頻度にみられる正常胸腺(sail sign)は、気管・気管支の圧排偏位がなければ病変ではない。
- 片側air trapping+縦隔偏位はまず気道異物を疑う所見だが、異物の多くはX線透過性でX線正常でも否定できない(全国調査で診断1週間以上を要した例が14.4%)。
2鑑別のながれ
- 肺葉性に肺胞内へ滲出物が増加、均一な斑状陰影の中にエアブロンコグラム→細菌性肺炎に典型的→大葉性肺炎
- 肺門部を中心に不均一な浸潤陰影・斑状陰影、気管支に沿って病変が広がる→小児はこちらが多い→気管支肺炎(ウイルス性・非定型に多い)
- 区域〜肺葉の容積減少、患側への縦隔偏位、葉間裂の移動→気道閉塞(異物・粘液栓・喘息増悪時など)を背景に考える→無気肺
- 患側肺の肺気腫様過膨張(air trapping)+縦隔の健側偏位→呼気時に明瞭になりやすい→気道異物(X線透過性の異物は写らない)
- 患側肺の虚脱+肺紋理の消失→緊張性気胸では縦隔・心臓が健側へ圧排偏位する→気胸
3気胸の重症度(肺の虚脱割合)
| 軽度 | 肺のつぶれが軽微 | 当院は院内経過観察せず、程度によらず全例を決まった連携先へ直接電話し搬送する。搬送準備の間は酸素投与 |
|---|---|---|
| 中等度 | 肺が2/3以下につぶれている | 当院ではトロッカー留置はできない。酸素投与のうえ決まった連携先へ直接電話し搬送する |
| 重度 | 肺が完全につぶれている、または緊張性気胸 | 緊張性気胸で徐脈・ショック・高度呼吸不全のいずれかを伴うときに限り、搬送前に留置針(18G・第2肋間鎖骨中線、脱気不良なら第4〜5肋間中腋窩線)で緊急減圧する。トロッカー留置・持続吸引は当院でできないため決まった連携先へ直接電話し直ちに搬送する |
→ 横にスクロールできます
4検査
- 系統的読影の型:正面性(回旋の有無)→立位か否か(胃泡の鏡面像で判定)→吸気の評価(横隔膜の位置)→骨・軟部組織と肋骨横隔膜角(CPA)→縦隔の確認、の順で撮影条件を先に確認する
- CTR正常上限は立位PA・十分な吸気で50%以下、新生児は60%以下。ポータブルAP撮影(臥位が多い)は0.55〜0.57以下が目安で、PA立位の基準とは別枠
- 胸水の主所見は肋骨横隔膜角(CPA)の鈍化。仰臥位・ポータブル撮影ではCPAの性状だけで少量の胸水の有無を判定できない
- 気道異物を疑うときは吸気・呼気の2方向(乳児は上腹部圧迫で呼気を誘発)を依頼する。X線正常でも異物は否定できない
5Q&A
- X線が正常なら気道異物は否定できる?
- できない。異物の多くはX線透過性で、写真上に異物そのものは写らない。誤嚥エピソードがあればX線陰性でも精査を検討する。
- 上縦隔に影が見えたら精査する?
- 0〜2歳では約50%に正常胸腺(sail sign)がみられる。気管・気管支の圧排偏位がなければ病変ではなく、精査目的の反復撮影は不要。
- 臥位で撮った写真でCTRが50%を超えていたら心拡大?
- そのまま判定しない。臥位・呼気位・回旋があると心陰影は大きく写る。撮影条件を確認してから判定する。
- 撮影条件が良く、CTR異常(心陰影拡大等)を認めたらどうする?
- 全例、小児循環器科へ紹介し心エコーを依頼する。
- 軽度の気胸ならこの病院で経過観察できる?
- できない。程度によらず全例、決まった連携先へ直接電話し搬送する方針。搬送準備の間は酸素投与する。
6家族への説明
レントゲンで肺の白い影の場所や広がり方を見て、肺炎のタイプや重さを判断します。赤ちゃんの胸の中央に見える三角の影は、多くはこの時期に誰にでもある『胸腺』という正常な臓器の影で、病気ではありません。胸のレントゲン1回分の放射線量はごくわずかで、自然界から日常的に受けている放射線の3日分程度に相当します。もし何かを誤って気管に吸い込んだ可能性がある場合は、レントゲンで異常が写らなくても『異物ではない』とは言い切れません。
詳しい根拠・出典は 詳細リファレンス へ
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。