8-6赤ちゃんの股関節の検査(発育性股関節形成不全)
開排制限を軸にリスク因子・皮膚溝で拾う
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
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1ポイント
- 最重要所見は開排制限(開排70度以下、または床から20度以上)。クリックサイン単独は非特異的で、頻回・強制的な誘発操作は骨頭を傷める危険があるため避ける。
- 一次健診(生後3-4か月)は開排制限陽性、または皮膚溝非対称・家族歴・女児・骨盤位分娩の4項目中2項目以上陽性で整形外科二次検診へ紹介する(紹介率の目安は10〜15%)。
- 超音波はGraf法でα角(骨性臼蓋の被覆)とβ角(軟骨性臼蓋の形態)を計測して評価する。X線は骨頭核出現後(生後4〜6か月頃)が有用で、それ以前は超音波が優位。
- 骨盤位分娩は経腟・帝王切開を問わずスクリーニング対象。見逃すと歩行開始後の跛行・脚長差につながる。『様子を見ましょう』で紹介を先延ばしにしない。
↑ このページの入口へ2Graf分類(要点)
| Ia/Ib(正常発達) | α角>60° | 経過観察 |
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| IIa+(生後3か月未満・週齢相応) | α角50〜59° | 経過観察 |
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| IIa-(生後3か月未満・週齢に対し未熟) | α角50〜59° | 継続的な超音波経過観察(IIbへの移行に注意) |
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| IIb(生後3か月以降・骨化遅延) | α角50〜59° | 継続的な超音波経過観察 |
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| IIc(危険状態) | α角43〜49°・β角70〜77° | 治療対象(整形外科紹介) |
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| D(非求心性) | α角43〜49°・β角>77° | 治療対象(整形外科紹介) |
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| IIIa/IIIb(脱臼) | α角<43°・β角>77° | 治療対象(整形外科紹介) |
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| IV(高位脱臼) | 計測不能なことが多い | 整形外科での精査・治療 |
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↑ このページの入口へ3計算・スコア
スコア
二次検診への紹介基準
↑ このページの入口へ4検査
- 開排制限(最重要所見):仰臥位で股関節・膝関節を90〜100度屈曲してやさしく開く。開排角度70度以下(または床からの角度20度以上)を陽性とする。無理に開かない
- 大腿皮膚溝・鼠径皮膚溝の非対称:深く・長く左右差があるものを陽性とする。浅く短い皺の左右差は正常でもよくみられる(偽陽性が多い)
- Allis徴候(脚長差):仰臥位で両膝を立て、両踵を床につけて両膝の高さの差をみる
- クリックサインは非特異的。強く・繰り返し誘発しない
- 二次検診への紹介基準:開排制限陽性は単独で紹介。または皮膚溝非対称・家族歴・女児・骨盤位分娩の4項目中2項目以上で紹介
- 骨盤位分娩・家族歴・臨床所見陽性のいずれかが1つでもあれば、紹介基準を満たさなくても経過観察のみとせず、目安の月齢を定めてX線または超音波検査を行う(院内方針院内)
- X線判読:骨頭核の位置(Y軟骨線の下・Ombrédanne線より内側が正常)、Shenton線・Calvé線の連続性、臼蓋角(30度未満が正常、30度以上は臼蓋形成不全)
↑ このページの入口へ5対応の注意
避けること・注意:クリックサイン単独陽性のみで反射的に二次検診へ紹介すること、Ortolani/Barlow法を検査目的で頻回・力任せに繰り返すこと、骨頭核成熟後(生後10〜12か月以降)の超音波単独評価、男児の左右対称な軽度開排制限を機械的に陽性扱いすること。
↑ このページの入口へ6一次健診の身体所見(開排制限・皮膚溝・Allis徴候・クリックサイン)
- 体位:仰臥位で骨盤を水平にする
- 開排制限(最重要所見):股関節・膝関節を90〜100度屈曲し、やさしく外転(開排)する。開排角度70度以下、または床からの角度20度以上を陽性とする。無理に開かない(骨頭損傷のリスク)
- 大腿・鼠径の皮膚溝:深く・長く、大腿内側から後面まで達する左右差を陽性とする。浅く短い皺の左右差は正常でもよくみられる(偽陽性が多い)
- Allis徴候:仰臥位のまま両膝を立て、両踵を床につけて両膝の高さの差をみる。脱臼側で短縮する
- クリックサイン:開排時に骨頭が臼蓋を出入りする感触を確認する。強く・繰り返し誘発しない
- Ortolani/Barlow法(主に新生児期・二次検診で整形外科医が実施):Ortolaniは脱臼・亜脱臼した骨頭を愛護的な外転で整復する手技、Barlowは安定した骨頭を内転して不安定性を誘発する手技。いずれも愛護的に、後方への圧を加えず1回の診察で行う
やってはいけない・落とし穴- 頻回・強制的な誘発操作(クリックサイン・Ortolani/Barlowの繰り返し)は骨頭を傷める危険があるため避ける
- クリックサイン単独陽性のみで反射的に二次検診へ紹介しない(非特異的で正常股でも触れることがある)
- 浅く短い皮膚溝の左右差だけを非対称と判定しすぎない(偽陽性が多い)
- 男児の左右対称な軽度開排制限を機械的に陽性扱いしない(左右差の有無を必ず確認する)
↑ このページの入口へ7紹介の目安
- 帰宅開排制限なし・4項目中2項目未満・臼蓋形成不全のみでGraf Ia/Ib〜IIb相当:経過観察。ただし骨盤位分娩・家族歴・臨床所見陽性のいずれかが1つでもあれば、経過観察のみとせず目安の月齢を定めてX線または超音波検査を行う(院内方針院内)
- 搬送・紹介開排制限陽性(単独でも):整形外科二次検診へ紹介、皮膚溝非対称・家族歴・女児・骨盤位分娩の4項目中2項目以上陽性:整形外科二次検診へ紹介、Graf IIc以上、またはX線でShenton線・Calvé線途絶:整形外科で治療(リーメンビューゲル等)
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 開排制限がないなら股関節脱臼を除外できる?
- 開排制限の有無だけでなく、皮膚溝の非対称、家族歴、女児、骨盤位など既定の危険因子を確認する。開排制限がある、または所定の危険因子が重なる場合は二次健診へ紹介する。痛がらないことや一度の正常所見だけで、その後の健診を省略しない。
根拠:日本小児整形外科学会 乳児股関節健診 - 骨盤位だったが帝王切開で生まれた場合、リスクは消える?
- 帝王切開かどうかだけで骨盤位のリスクを除外しない。妊娠・出生時の情報を確認し、他の危険因子と合わせて二次健診の基準に当てはめる。紹介時は単に「健診異常」とせず、開排制限の左右差と該当する危険因子を具体的に記載する。
根拠:日本小児整形外科学会 乳児股関節健診 - 予防のために脚をまっすぐ固定するよう説明してよい?
- 股関節と膝を伸ばして脚を閉じる姿勢の強制は避ける。自然な屈曲・開排を妨げない抱き方や衣服を説明する。外来で無理に開排したり、整復を試みたりせず、疑い例は専門評価へつなぐ。生活指導だけで紹介や画像評価の代わりにはしない。
根拠:日本小児整形外科学会 乳児股関節健診
- クリックサインだけ陽性なら紹介する?
- しない。クリック単独は非特異的で正常股でも触れることがある。開排制限・皮膚溝非対称・家族歴・女児・骨盤位分娩を確認する。
- 帝王切開なら骨盤位分娩のリスクはない?
- 変わらない。経腟・帝王切開を問わずスクリーニング対象で、子宮内の肢位(特に単殿位)がリスクを規定する。
- レントゲンで異常なしなら安心?
- 生後早期(骨頭核出現前)はX線の判断材料として不十分。身体所見が陽性なら超音波評価か整形外科紹介を優先する。
- IIa+とIIa-の違いは自分で判断していい?
- いいえ。区別と治療開始の判断は整形外科の評価事項。小児科では紹介するかどうかの判断に使う。
↑ このページの入口へ10家族への説明
この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。