1-10細菌性髄膜炎
発熱・活気不良・非特異的所見・痙攣からの疑い
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次10項目
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1ポイント
- 年齢が低いほど症状は軽微で、典型的な症状や徴候が出現しにくい。非特異的な症状の組み合わせから疑うしかない。
- 髄膜刺激徴候が陰性でも否定できない。新生児ではまれ、乳幼児でも必発ではない。
- 発熱がなくても否定できない。年長児症例の44%は診断時に無熱だったという報告がある。
- 画像・腰椎穿刺で抗菌薬を遅らせない。新規の巣症状・瞳孔異常・重度または進行する意識低下では穿刺を見送り、抗菌薬・安定化・専門施設への相談を先行する。
- 発熱+紫斑(出血性発疹)、または意識障害・ショックがあれば最優先。髄膜炎菌血症・電撃性紫斑病を疑い抗菌薬を遅らせない。ショックには蘇生を優先しつつ血液培養→抗菌薬。
髄膜刺激徴候がなくても除外できない。腰椎穿刺の安全性に疑いがある、または治療が遅れる場合は、穿刺を待たず抗菌薬と搬送相談を優先する。NICE NG240・Bacterial meningitis and meningococcal disease(2024)を参照。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 発熱+痙攣→痙攣前の傾眠傾向・項部硬直・出血性発疹・大泉門膨隆・痙攣後1時間以上の意識レベル低下のいずれか→除外されるまで細菌性髄膜炎として扱う
- 熱性痙攣に見える発作(特に6か月未満)→局所の痙攣・繰り返す痙攣・熱性痙攣の家族歴がない・昏睡状態の遷延・頭蓋外の感染巣→複雑型熱性痙攣の1.5%は細菌性髄膜炎だった。所見があれば鑑別に残す
- 新生児の非特異的所見→体温変動・呼吸窮迫・傾眠・無呼吸・腹部膨満・黄疸・嘔吐下痢・痙攣・筋緊張低下→重症感染症の非特異的徴候として髄膜炎を鑑別に入れる
- 抗菌薬前投与歴のある発熱児→髄液が単核球優位の細胞増多を示す→ウイルス性髄膜炎に見えるが実は抗菌薬投与後の細菌性髄膜炎のことがある。前医での抗菌薬使用を必ず聞く
↑ このページの入口へ3計算・スコア
スコア
BMSの所見確認(当直帯は原式を完成できない)
↑ このページの入口へ4検査
- 当院の夜間にCT/MRIはない。新規巣症状・瞳孔異常・重度または進行する意識低下では、明らかな脳ヘルニア徴候がなくても穿刺せず画像評価のできる施設へ相談する
- 血液培養は治療を遅らせず可能なら抗菌薬前に採取。夜間提出不可のため検査室に保管・搬送条件を確認し、翌朝までの保管を独断で決めない
- 腰椎穿刺(初圧・細胞数分画・糖/血糖・蛋白・グラム染色・培養・肺炎球菌抗原)は当直帯にできる。1時間以内の完了を目標にし、間に合わないなら待たず抗菌薬へ
- 髄液所見の目安: 細菌性は細胞数1,000〜5,000/mm³・多形核球比率80%以上・蛋白100〜500mg/dL・糖/血糖比0.4未満
- 抗菌薬前投与例・グラム染色陰性例では肺炎球菌抗原定性検査を検討する
↑ このページの入口へ5処置・処方例
Rp. 1デキサメタゾン(補助療法)
0.15 mg/kg・6時間毎、4日間 点滴静注抗菌薬投与10〜20分前に開始する。デキサメタゾンは抗菌薬の投与前または投与開始と同時に行う
- 1回量 —を、抗菌薬投与の10〜20分前から6時間ごとに4日間、緩徐に静注する
- インフルエンザ菌髄膜炎の乳幼児・小児に推奨
- 肺炎球菌髄膜炎(生後6週以上)は有効性と危険性を比較検討したうえで考慮する
- 国内ではその可能性が考えられる年齢層(乳幼児期)で併用が推奨される
- 外科的侵襲後の細菌性髄膜炎には推奨しない
- 新生児への副腎皮質ステロイド薬の併用は、2014年のガイドライン改訂で推奨から外れた(新生児のレジメンには付けない)
Rp. 2生後2か月〜16歳未満:セフォタキシム+バンコマイシン(院内の第一選択)
セフォタキシム 300mg/kg/日・6時間毎(1日最大12g) + バンコマイシン 60mg/kg/日・6時間毎(1日最大2g、トラフ15〜20µg/mL) 点滴静注インフルエンザ菌・肺炎球菌を想定。セフトリアキソンは使わない(院内方針院内)
- セフォタキシム:1日量 —(300mg/kg/日、1日最大12g)を6時間ごとに4回に分けて静注
- バンコマイシン:1日量 —(60mg/kg/日、1日最大2g)を6時間ごとに4回に分けて点滴静注。トラフ15〜20µg/mLを保つ
- 溶解量・点滴時間は院内採用製剤の添付文書に従う
Rp. 3新生児(〜2か月):セフォタキシム+バンコマイシン+アンピシリン
セフォタキシム 300mg/kg/日(1日最大12g) + バンコマイシン 60mg/kg/日(1日最大2g) + アンピシリン 300mg/kg/日(いずれも6時間毎) 点滴静注GBS・大腸菌・リステリアを想定。セフトリアキソンは新生児に禁忌のため使わない
- セフォタキシム:1日量 —(300mg/kg/日、1日最大12g)を6時間ごとに4回に分けて静注する(生後2か月〜16歳未満の第一選択と同一用量)
- バンコマイシン:1日量 —(60mg/kg/日、1日最大2g)を6時間ごとに4回に分けて点滴静注する。トラフ15〜20µg/mLを保つ
- アンピシリン:1日量 —(300mg/kg/日)を6時間ごとに4回に分けて静注する
Rp. 4頭部外傷・脳外科処置後・シャント留置後:カルバペネム系+バンコマイシン
パニペネム・ベタミプロン 100〜160 mg/kg/日・分3〜4、またはメロペネム 120 mg/kg/日・分3(生後1〜4か月未満・4か月〜16歳未満とも同量)+ バンコマイシン 60 mg/kg/日・分3〜4(生後1〜4か月未満は40〜60 mg/kg/日・分3〜4) 点滴静注ブドウ球菌(MRSA含む)・グラム陰性桿菌などを想定(セフェム系に反応不良・高度耐性肺炎球菌を疑うときの代替)
- パニペネム・ベタミプロン:1日量100〜160mg/kgを3〜4回に分けて点滴静注する(生後1〜4か月未満・4か月〜16歳未満とも同量)
- またはメロペネム:1日量120mg/kgを3回に分けて点滴静注する(生後1〜4か月未満・4か月〜16歳未満とも同量)
- バンコマイシン:1日量 —を3〜4回に分けて点滴静注する(生後1〜4か月未満は1日量 —〜—を3〜4回に分ける)
- 1回あたりの点滴時間は60分以上かける(急速投与は避ける)
- 血中トラフ値 15〜20 µg/mL を目標にモニタリングする
上の投与量はガイドラインの投与例で、院内採用(在庫・当直帯に出せるか)は未確認。使う前に必ず確認する。セフォタキシム・バンコマイシンの1日最大量(12g・2g)は、当院と同じ第3世代セフェム+バンコマイシンの投与例を示す医学書(小児救急のストラテジー)から補った上限(体重が大きい年長児でmg/kg換算が上回らないよう確認する)。カルバペネム系の代替レジメンで効果が十分でなければバンコマイシン 60 mg/kg/日・分3〜4(生後1〜4か月未満は40〜60 mg/kg/日・分3〜4)を追加し、血中トラフ値15〜20 µg/mLを目標にモニタリングする。中枢神経を感染巣とする小児敗血症のガイドライン(J-SSCG2024)と同じセフォタキシム+バンコマイシン(新生児はアンピシリン併用)に揃えてあるので、当直医が2つのシートで迷うことはない。 避けること・注意:新規巣症状・瞳孔異常・重度または進行する意識低下では腰椎穿刺を行わない。ショック・呼吸不全・制御できないけいれん・出血リスクは先に安定化する。セフトリアキソンは全年齢で使わない(新生児は高ビリルビン血症のリスク・カルシウム含有注射剤との配合変化で死亡例報告があり、年齢で薬剤を分けると選び間違えるため2か月以降も含め使わない)→ 第3世代セフェムは全年齢でセフォタキシムを使う。
↑ このページの入口へ6送る/持つ
- 入院血液培養は治療を遅らせず採取し、LPは安全な場合のみ実施。転院時も初期抗菌薬と安定化を先行する、髄液が正常/ウイルス性に見えても強い臨床的疑いは除外できない。抗微生物薬・再評価・搬送を上級医と直ちに判断し、院内観察は合意した安定例に限る
- 搬送・紹介脳ヘルニア徴候がある場合は画像と集中治療のできる施設へ、意識障害・ショック・人工呼吸管理が必要なら当院では持てない、48〜72時間後の再検・経過管理は入院管理ができる施設で
↑ このページの入口へ7診療中の疑問と回答
- 髄液検査に時間がかかる。結果まで抗菌薬を待つ?
- 重症や強い疑いでは血液培養など採取可能な検体を迅速に確保し、結果待ちで治療を遅らせない。呼吸循環不安定、制御不能の発作、局在神経所見など穿刺が危険な場合は先に安定化と抗菌薬を開始し、安全になってから検査を相談する。
根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄) - 初回髄液が正常に近い。抗菌薬を中止できる?
- 早期や抗菌薬前投与などでは所見の解釈に注意する。意識、発作、全身状態と培養・PCRを合わせ、臨床的疑いが強ければ単回の髄液所見だけで中止しない。再穿刺や脳炎治療、転送の必要性を上級医・感染症専門医と決める。
根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄) - 解熱したら退院し、聴力は家族が気づけば調べる?
- 治療日数は原因菌と合併症で判断し、解熱だけでは終了しない。回復後も聴覚・発達などの後遺症を計画的に評価する必要がある。退院前に専門診療、聴力検査、再診を手配し、再発熱・意識変化・けいれん時の連絡先を家族に渡す。
根拠:RCH Meningitis and encephalitis(海外指針・薬剤は院内欄)
- 髄膜刺激徴候が陰性なら否定できる?
- できない。新生児ではまれで乳幼児でも必発ではなく、インフルエンザ菌b型・肺炎球菌髄膜炎でも60〜80%でしか陽性にならない。
- 熱がなければ否定できる?
- できない。年長児症例の44%は診断時に無熱だった。
- 5項目すべて陰性なら除外できる?
- BMSは髄液細胞増多のある選択された小児集団で検証された補助指標。新生児、抗菌薬前投与、免疫抑制、重症例などへ一律に適用せず、全陰性でも絶対に除外できない。当直帯はANCが出ず原式を完成できない。
- 抗菌薬の前に検査を待つべき?
- 待たない。当院にCTはなく、髄液検査も1時間以上かかるなら、待たず抗菌薬を先に投与する。
- 髄液所見がウイルス性髄膜炎を示唆したら?
- 髄液が正常/ウイルス性に見えても強い臨床的疑いは除外できない。抗微生物薬・再評価・搬送を上級医と直ちに判断し、院内観察は合意した安定例に限る
↑ このページの入口へ9家族への説明
髄膜炎は、脳や脊髄を包む膜に細菌が入る病気です。早く抗菌薬を始めることが何より大事なので、検査の結果を待たずに治療を始めることがあります。背中から髄液を採る検査(腰椎穿刺)で診断しますが、状態によっては安全のため先に薬を始めます。小さなお子さんでは、首が硬いといった典型的な症状が出ないことがよくあります。