6-17薬疹・SJS/TEN・DIHS
薬を飲んだあとの発熱+粘膜症状
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 「薬を飲んだあとの発熱+粘膜」で止まる。主要徴候は3つ — 発熱(38℃以上)/粘膜症状/多発する紅斑。
- 早期症状のいずれかがあり、持続や急激な悪化を認めた場合には早急に入院設備のある皮膚科の専門機関に紹介する。
- 目の症状が早期に来る。眼の充血・眼脂・まぶたの腫れ・目が開けづらい、で「ただの結膜炎」にしない。
- 服用後2週間以内が多いが、数日以内〜1か月以上のこともある。DIHSは2〜6週と遅い。
- DIHSは原因医薬品を中止しても2週間以上遷延する。中止して良くならないことが手がかり。
2鑑別のながれ
- 発熱+粘膜症状+多発する紅斑→全身の10%以上に水疱・表皮剥離→TEN(熱傷に準じた全身管理が要る)
- 発熱・粘膜症状の患者に呼吸困難・循環不全→皮膚病変の広さを問わない→気道・呼吸器の粘膜病変(119・集中治療のできる施設へ)
- 発熱・眼の充血・眼脂・まぶたの腫れ・口唇や陰部のびらん・咽頭痛→持続・急激な悪化→SJS(早急に専門機関へ)
- 原因医薬品中止後も発疹+発熱+肝機能障害が遷延→2週間以上続く→DIHS(持てない。専門機関へ紹介)
- 薬剤歴のある発疹→粘膜症状なし、全身状態良好→単純な薬疹(被疑薬中止で経過観察)
3検査
- まず被疑薬を中止する(複数あれば時系列で絞る)。中止は重症度の判断を待たず全例で行う
- 口腔・眼・陰部の粘膜を必ず見る。粘膜を見たかが分岐点
- 薬剤歴を時系列で並べる。市販薬・サプリも聞く
- 血算・肝機能・腎機能を確認する。夜間はCBC総数のみ可能で、好酸球・異型リンパ球の分画(自動分画・鏡検とも)は当直帯に出せない→専門機関搬送先または翌朝の分画で確認する
- DIHS診断基準(日本皮膚科学会)は血液学的異常として白血球増多11,000/mm³以上・異型リンパ球5%以上・好酸球増多1,500/mm³以上のいずれかを含む。異型リンパ球・好酸球の割合は夜間の分画に依存するため当直帯では確定できない
- 眼症状があれば眼科の関与を求める(後遺症を残しうる)。当院の夜間眼科対応は未確認→専門機関への搬送時に眼科評価も依頼する
4帰宅・入院の目安
- 帰宅単純な薬疹(粘膜症状なし・全身状態良好)、被疑薬中止と経過観察で対応できる。再診の日を決め、悪化の条件(発熱・粘膜症状の出現・急激な拡大)を紙で渡す
- 搬送・紹介呼吸困難・循環不全(皮膚病変の広さを問わない)→119・集中治療のできる施設へ、全身の10%以上に水疱・表皮剥離(TEN相当)、発熱+粘膜症状+多発する紅斑の3主要徴候が揃う(SJS)、中止後2週間以上遷延する発疹+発熱+肝機能障害(DIHS)
5診療中の疑問と回答
- 発疹は少ないが眼が痛い。薬だけ中止して翌日再診でよい?
- 服薬後の発熱に眼痛・羞明・充血、口腔や外陰部のびらんがあれば、皮疹の少なさで軽症としない。SJS/TENの早期を疑い、被疑薬の中止と同日専門施設への連絡を進める。眼合併症は後遺症に関わるため、眼科を含む評価を遅らせない。
根拠:日本皮膚科学会 SJS/TEN診療ガイドライン補遺2025 - 新しい薬を複数飲んでいる。全部アレルギー登録する?
- 処方薬、市販薬、頓用、サプリを開始・中止日と症状出現日で並べる。緊急時は必要性の低い被疑薬を中止し、必須薬の代替は担当科と相談する。原因確定前は疑いと確定を分けて記録し、安全な代替薬の情報も専門医と共有する。
根拠:日本皮膚科学会 SJS/TEN診療ガイドライン補遺2025 / NICE CG183 薬剤アレルギー:記録・回避・重症反応の紹介 - 薬疹が疑われた薬を少量で飲み直して確認できる?
- SJS/TENが疑われる薬の再投与を外来や自宅で試さない。重い反応の再誘発につながり得る。原因薬評価は専門施設に依頼し、商品名だけでなく成分、投与時期、皮膚・粘膜・臓器所見を保存して、以後の処方時に参照できるようにする。
根拠:日本皮膚科学会 SJS/TEN診療ガイドライン補遺2025 / NICE CG183 薬剤アレルギー:記録・回避・重症反応の紹介
- 解熱していれば軽症?
- 発熱の有無だけで判断しない。粘膜症状の有無と発疹の進展速度を必ず確認する。
- 市販薬は薬疹の原因になる?
- なりうる。薬剤歴は市販薬・サプリも含めて時系列で聴取する。
- 被疑薬が複数あるときは?
- 時系列で絞る。いつ始めた薬か、市販薬・サプリも含めて記録する。
- 再投与を防ぐには?
- 被疑薬をカルテと患者本人に明示して残す。
7家族への説明
お薬による皮膚の反応が疑われます。発熱と、目・口・陰部の粘膜の症状を伴うときは、重い型の可能性があり、入院できる皮膚科で診てもらう必要があります。とくに目の症状は後に視力に影響が残ることがあるので、早めに眼科にも診てもらいます。原因と考えられるお薬は中止します。このお薬の名前を必ず覚えておいて、今後どこの病院にかかるときも必ず伝えてください。お薬手帳にも記録します。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。