1-6りんご病(伝染性紅斑)
両頬紅斑からレース状紅斑へ広がる発疹症
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 両頬の紅斑(『頬を平手打ちされたような』外観)から上腕外側・体幹・大腿へ広がる網目状・レース状紅斑が典型。発疹出現時、感染力はほぼ消失している。
- 基礎に溶血性疾患(遺伝性球状赤血球症・鎌状赤血球症・サラセミア等)がある児の急な顔色不良・活気低下・頻脈・息切れはaplastic crisis(一過性骨髄無形成発作)を疑う。
- 免疫不全患児では遷延性の重症貧血に至ることがある。
- 妊娠中の同居家族が発疹出現7〜10日前に濃厚接触していたら産婦人科紹介の機会を逃さない。母体初感染の胎児感染率は約20%、そのうち約20%(初感染妊婦全体では約4%)が胎児貧血・胎児水腫に至る。
- アスピリン・ジクロフェナクナトリウム・メフェナム酸は使用しない。解熱鎮痛の第一選択はアセトアミノフェン。
2鑑別のながれ
- 意識がもうろう・呼びかけへの反応が乏しい、または唇や顔色が青白い・紫っぽい→ABC(気道・呼吸・循環)を最優先で見る→119(意識障害・チアノーゼ)
- 呼吸が苦しそう・呼吸が速い→呼吸窮迫の徴候→今日中に評価(呼吸促迫)
- 急激な顔色不良・活気低下・頻脈・息切れ(溶血性疾患の基礎あり)→B19が正常な赤血球産生を一時的にほぼ完全に停止させる→aplastic crisis(一過性骨髄無形成発作)
- カタル症状を伴う発熱が先行、解熱前〜発熱再上昇期に発疹、コプリック斑→麻疹疑い患者の約3割からB19ゲノムが検出された報告もあり紛らわしい→麻疹(最優先で除外)
- 1日1〜2峰性の弛張熱に同期して出没するサーモンピンク疹→頬部紅斑・レース状紅斑は解熱後も持続し発熱の峰に同期しない→全身型若年性特発性関節炎(JIA)
- 両側対称性の関節痛・関節腫脹が数週間以上遷延、抗核抗体陽性・低補体血症→B19関連関節炎は通常数週間で自然軽快する一過性の経過→SLE/RA(遷延例は鑑別)
- 紫斑・出血しやすい様子を伴う発疹→単なる発疹の再燃と区別する→血小板減少・出血傾向の評価(血算・血小板数を確認)
- 熱5日以上+両側眼球結膜充血・口唇紅潮/苺舌・頸部リンパ節腫脹・手足の腫脹や皮むけ・不整形の発疹(いくつか重なる)→りんご病の典型経過から外れる→川崎病(りんご病とは別に必ず受診・評価)
3病型
| 典型例 | 境界鮮明な両頬紅斑→網目状・レース状紅斑。発疹は数日〜1週間で消退 | 対症療法のみ。発疹出現時点で感染力はほぼ消失 |
|---|---|---|
| 関節症状型 | 学童期後半以降・特に女児で関節痛・関節炎が前面に出る | 対症療法と関節の安静で1〜2週間以内に自然軽快することが多い |
| aplastic crisis型 | 溶血性疾患・免疫不全を基礎に持つ児での重篤な急性貧血 | 血算・網状赤血球数を確認し血液科と連携。輸血を要することがある |
→ 横にスクロールできます
4検査
- 典型的な小児例は臨床診断のみで検査不要
- 溶血性疾患の基礎疾患がある児で急な顔色不良・活気低下・頻脈があれば直ちに血算・網状赤血球数を確認する(aplastic crisisの評価)
- 免疫不全児で遷延する貧血があれば血算に加えB19 PCRを検討する
- 妊娠中またはその可能性がある同居家族への曝露があれば産婦人科でのB19 IgM/IgG抗体検査につなぐ
5処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン 1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて。1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服
発熱・関節痛時の苦痛緩和目的。特異的な抗ウイルス薬・ワクチンはない
- シロップ(カロナールシロップ2%=20mg/mL):—〜—(10〜15mg/kg)を1回
- 細粒(カロナール細粒20%=200mg/g):—〜—(10〜15mg/kg)を1回
- 坐剤:1回 —〜— に一番近い規格・個数を選ぶ(アンヒバ/アルピニー 50・100・200mg。10kgなら100mgを1個)
- 次は4〜6時間以上あける。1日の合計は — まで
Rp. 2イブプロフェン 学童期後半〜思春期の関節症状型限定(日本小児科学会は概ね5歳以上を目安)。1回3〜6mg/kg、1日合計600mgまで。4歳以下は安全性未確立 内服
第二選択・関節痛が強い場合のみ。アスピリン・ジクロフェナクナトリウム・メフェナム酸は使わない
- 5歳以上のみ:1回 —〜—
- 1日の合計は600mgまで
避けること・注意:アスピリン(サリチル酸系)・ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)・メフェナム酸(ポンタール)は使用しない。発疹出現後の患児を『感染力あり』として不要に登校・登園停止扱いにしない。
↑ このページの入口へ6送る/持つ
- 帰宅レッドフラグなし・全身状態良好なら家族説明ページを渡して帰宅。登校・登園可(出席停止対象ではない)
- 入院aplastic crisisで重症貧血・循環動態不安定なら血液(専門)科と連携し赤血球輸血を検討
- 搬送・紹介免疫不全患者の慢性ウイルス血症は専門科紹介。ウイルス排出が続き得るため、外来動線・面会制限(妊婦との接触回避を含む)の要否も相談する、妊娠中の同居家族への曝露が判明したら産婦人科紹介、麻疹疑い・確定は空気予防策対応の医療機関へ、川崎病様所見を伴う場合は川崎病ワークフローに準じて評価・紹介
7診療中の疑問と回答
- 頬の発疹が残る間は登園を止める?
- 免疫が正常な児の典型的なりんご病では、発疹が出た段階で感染力は通常低く、発疹の残存だけで登園を止める必要はない。発熱や体調と園の運用で判断する。免疫不全や貧血を伴う例は同じ感染性の扱いにせず専門科へ相談する。
根拠:CDC Parvovirus B19 / CDC Parvovirus B19:感染性と予防 - 溶血性疾患のある児が急に青白い。発疹がなくても検査する?
- パルボウイルスB19による無形成発作は発疹が目立たないこともある。Hbと網赤血球、循環を確認し、急速な貧血や息切れ・頻脈は血液専門医へ急いで相談する。感染後の元気のなさとして待たず、必要な輸血と監視を評価する。
根拠:CDC Parvovirus B19 - 妊婦の家族がいたら、児の発疹が消えるまで待って連絡する?
- 妊娠中の接触者は症状の有無によらず産科へ早めに相談する。曝露時期と児の発症経過を伝え、母体の既感染・新規感染の評価と胎児の追跡を産科が判断する。接触しただけで胎児障害が確定すると説明せず、不安と必要な検査を分けて伝える。
根拠:CDC Parvovirus B19
- 発疹が出た時点でうつす?
- 通常はうつさない。感染力が最も強いのは発疹出現前の7〜10日間(かぜ症状の時期)で、発疹が出て診断がついた時点では周囲への感染力はほぼ消失している。ただし免疫不全患児はウイルス血症・排出が長期間持続し、感染力を保持していることがある。
- 妊婦への曝露はどう扱う?
- 母体初感染の胎児感染率は約20%、そのうち約20%(初感染妊婦全体では約4%)が胎児貧血・胎児水腫に至り、胎内感染が成立した場合の流産・死産は約10%とされる。産婦人科へつなぎIgM/IgG抗体検査を検討する。
- 登校はいつから?
- 発疹のみで全身状態が良好であれば、発疹が残っていても登校・登園は可能。伝染性紅斑は出席停止の対象ではない。
9家族への説明
りんご病(伝染性紅斑)です。両ほおが赤くなり、続いて腕や体に網目状の発疹が出ます。発疹が出た時点では、すでに周りにうつす力はほとんどありません。発疹は数日〜1週間で消えますが、その後数週間は日光や入浴、運動、発熱などで一時的に赤みが戻ることがあります。もともと血が壊れやすい体質のお子さんは、顔色が急に悪くなる、ぐったりする、動悸・息切れがあれば、すぐにご連絡ください。ご家族に妊娠している方がいる場合は、必ずお伝えください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。