9-11夜尿症(おねしょ)
初診・生活指導・薬剤の開始/増量/休薬と安全管理
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次11項目
3対応の緊急度
| 119 | 現在の呼吸困難・チアノーゼ・意識障害・けいれん | ABCを評価し救急対応。夜尿治療を優先しない |
|---|---|---|
| 緊急 | 多飲多尿+体重減少、または薬剤使用中の頭痛・嘔吐 | 糖尿病や低Na血症等を当日評価。薬剤使用中は休薬して速やかに受診 |
| 当日 | 発熱/排尿時痛・肉眼的血尿 | 感染・腎尿路疾患を評価 |
| 外来 | 夜尿のみで全身状態良好 | 通常外来で分類・日誌・生活指導。本人の困り感に合わせて治療 |
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7外来での薬剤調整・再診の手順
治療の項目へ移動8項目
開始前:比べる記録と安全条件をそろえる
- 治療前の夜尿日数/記録日数を残し、開始後も同じ長さの期間で比べる。夜尿回数・濡れる量・夜間尿量・乾いた夜・昼間症状・便通も記録する。少ない夜尿頻度を数日だけで判定しない。
- 原則6歳以上で尿濃縮低下と禁忌を確認。夕方のスポーツ後の補水や遅い夕食など、飲水管理が難しい日は使わない計画を先に決める。併用薬と検査計画を確認してから120μgを就寝前1回で開始する。
開始後1〜2週間:120μgを続けるか、240μgへ進むか
- 評価の時期
- 国内GLは早期の効果判定を勧め、引用するICCS指針では1〜2週間が目安。添付文書は増量までの日数を固定していない。夜尿の変化、安全性、服薬できた日数を確認して処方医が判断する。
- 増量前に確認
- 改善が十分なら120μgを継続し、乾燥を急いで増量しない。不十分でも、飲み忘れ、水なしの舌下服用、食直後の服用、夕食・服薬の時刻、就寝前排尿、飲水、便秘・昼間症状を先に確認する。
- 用量と上限
- 正しく使えていて効果不十分、かつ飲水管理と安全性に問題がなければ就寝前240μgへ。夜尿症では240μgを超えず、同じ夜の追加服用や翌日の倍量服用を指示しない。
- 変更時の注意
- 食後から食前への変更で吸収が増え、副作用リスクが上がる可能性がある。服薬時刻の修正と増量を無計画に重ねず、変更内容を記録して効果・体調を再確認する。
240μgでも不十分:効いていない理由を分ける
- 増量後も早めに再診し、同じ期間の日誌で効果と安全性を再評価する。適切に服用しても無効なら漫然継続せず中止・治療変更を検討する。
- 夜間尿量は減ったが漏れるなら、膀胱容量・昼間症状・便秘・覚醒の問題を再評価。尿量も変わらないなら実際の服薬、食事時刻、飲水と診断を見直す。日誌は判断材料であり、それだけで病型を断定しない。
- アラームへの変更または併用を相談する。持続漏れ、排尿困難、残尿が疑われる例、反復感染、神経所見、適切な治療でも改善しない例は専門外来へ。
維持中:毎月の評価と検査
- 1週間以上継続する場合は血清Na・血漿浸透圧を検査し、投与中は毎月状態を観察する(国内添付文書)。採血日は開始時に決め、増量・併用薬変更・体調変化時の追加検査は個別に判断する。毎月一律採血という意味ではない。
- 夜尿記録、飲水管理、副作用、便通、昼間症状、本人・家族の負担を確認する。頭痛・倦怠感・悪心/嘔吐があれば予約日を待たず中止して速やかに医師へ連絡し、低Na血症を評価する。意識障害・けいれんは救急対応。
約3か月:休薬して必要性を確認する
- 添付文書では約3か月ごとに1〜2週間休薬して夜尿状況を観察するなど、漫然投与を避ける。薬を飲まずに乾いているかを日誌で確かめ、再発を直ちに治療失敗と扱わない。
- 有効例で終了を目指す場合は、240μgから120μgへの減量を含む段階的終了も相談できる。ただし減量の最適間隔は確立しておらず、減量中も飲水管理を続ける。
- GLに引用された研究には60μgや隔日投与を含む方法があるが、60μgは夜尿症の適応がなく、隔日投与も承認用法ではない。一般外来の標準処方として自動採用しない。
休薬後の再開・飲み忘れ・宿泊行事
- 再発時は頻度と困り感、便秘、昼間症状、新しい多飲多尿や併用薬を再評価する。以前の処方を自己判断で戻さず、再開用量と検査を処方医が決める。
- 発熱・胃腸炎など補水が必要な間や、過度に飲水した日は休薬。水分補給を優先し、体調と通常の飲水に戻ってから処方医の指示で再開する。水中毒を疑って止めた場合は診察・評価前に再開しない。
- 飲み忘れを深夜の追加服用や翌日の倍量で埋め合わせない。宿泊行事は直前の初回服用を避け、事前に自宅で効果と飲水管理を確かめ、本人と引率者が休薬条件を共有する。
併用薬:市販薬も毎回確認する
- 三環系抗うつ薬、SSRI、カルバマゼピンなどは低Na血症のリスクに注意。NSAIDs、ロペラミド、利尿薬なども相互作用を確認する(添付文書10.2)。併用は一律禁忌ではないが、必要性・代替薬・Na等の監視を処方医と薬剤師で検討する。 ただし、利尿薬治療を要する心不全など、禁忌に該当する場合は投与しない。
- 他院薬、市販の鎮痛薬・下痢止めも申告してもらう。発熱や下痢に薬を追加してデスモプレシンを継続するのではなく、まず補水の必要性と休薬条件を確認する。
抗コリン薬・三環系薬を考える場合
- 抗コリン薬は単一症候性夜尿症の第一選択単剤にしない。昼間の尿意切迫・尿失禁や難治例では、便秘と排尿機能を評価し、専門医と追加を相談する。薬剤ごとに小児適応・適応外使用・用量が異なるため、成人用量を流用しない。
- 追加前に尿線・排尿困難・残尿を確認し、必要時に尿流測定や超音波で評価する。開始後は口渇、便秘悪化、排尿困難・尿閉を確認する。口渇で飲水が増えるとデスモプレシンの安全管理が難しくなる。
- 三環系薬は過量時の不整脈・心毒性と保管上の危険があり、専門医管理で検討する。デスモプレシン併用時は低Na血症にも注意し、一般外来で安易に追加・増量しない。
6処置・処方例
Rp. 1ミニリンメルトOD錠(デスモプレシン) 尿濃縮低下を伴う夜尿症に原則6歳以上。1日1回就寝前120μgから、効果不十分なら240μgへ。体重で換算しない。 内服
夜間の尿生成を抑える。処方は原則6歳以上で、観察期に夜尿翌朝の平均尿浸透圧800mOsm/L以下または平均尿比重1.022以下を目安に濃縮低下を確認する。
- 低Na血症、多飲症、利尿薬治療を要する心不全、SIADH、中等度以上の腎障害、成分過敏症を確認し、禁忌には使用しない。
- 水なしで舌下に溶かす。食直後は避け、食事との時間を一定にして処方医の指示に従う。60μg規格は夜尿症の適応を持たない。
- 投与2〜3時間前(夕食後)から翌朝まで飲水を極力避ける。過度に飲んだ日は投与しない。補水が必要な発熱・胃腸炎などの間も中止する。
- 頭痛・倦怠感・吐き気/嘔吐が出たら中止して速やかに医師へ連絡。意識障害・けいれんは救急対応。再開は体調・飲水が戻ったことを確認し処方医の指示に従う。
- 1週間以上継続する場合は血清Na・血漿浸透圧を検査し、投与中は毎月状態を観察する。約3か月ごとに1〜2週間中止して夜尿状況を確かめる等、漫然投与を避ける。
国内の夜尿症用法は120μg→240μgの固定用量。海外の増量上限や中枢性尿崩症の用法を流用しない。詳細はPMDA電子添文(2025年6月改訂、5〜8項)で確認する。 避けること・注意:抗コリン薬の単独投与を第一選択にすること、三環系抗うつ薬を安易に第一選択にすること、夜尿を理由に叱る・罰する対応、就寝前に限らない過度な水分制限。
↑ このページの入口へ9診療中の疑問と回答
- デスモプレシンが効かない。何を確認してから増量する?
- 投与時刻、食事との間隔、舌下での服用と飲水、夜尿日誌を確認する。便秘・昼間症状や尿量型の見立ても再評価する。国内の夜尿症用量の範囲で医師が増量し、自己判断で追加しない。上限でも不応なら治療併用や専門紹介を検討する。
根拠:PMDA ミニリンメルト電子添文具体的な用量・増量前の確認と評価時期 → - 発熱・胃腸炎の日もいつもの薬を飲ませる?
- 補水が必要な発熱や胃腸炎では休薬する。投与前から翌朝までの飲水制限を安全に守れない日や、多く飲水した日も投与しない。頭痛、嘔気・嘔吐、むくみ、意識変化やけいれんは低Na血症を疑い中止して受診し、体調と飲水が戻った後の再開は処方医と決める。
根拠:PMDA ミニリンメルト電子添文休薬・再開・飲み忘れの手順 → - 夜尿が減ったら薬をずっと続けてよい?
- 月ごとに効果と安全性を確認し、継続時の血清Na・血漿浸透圧の監視を行う。約3か月ごとに1〜2週間の中断で継続の必要を見直す。再発時は日誌と生活条件を確認して再開を相談し、60μg製剤を用いた独自の減量法を夜尿症へ流用しない。
根拠:PMDA ミニリンメルト電子添文継続中の検査と、減量・終了の手順 →
- 乾いていたのに再び夜尿が始まったら?
- 6か月以上乾燥していた後の再発は二次性。便秘、糖尿病等の身体疾患、睡眠・心理社会的な変化を確認し、ストレスだけと決めつけない。
- 薬を飲む日にたくさん飲水したら?
- その日は投与しない。発熱・胃腸炎などで補水が必要な間も休薬する。体調と飲水が戻ってから、処方医の再開指示に従う。
- 宿泊行事に間に合わせたいときは?
- 直前の初回投与を避け、早めに外来で効果と安全な使い方を確認する。行事中も飲水管理ができるか本人・保護者と相談する。
4検査
- 初診:夜尿の頻度と量、乾燥期間、昼間症状、尿線、便秘・便失禁、飲水、いびき、内服、本人の困り感を聞く。成長・腹部・必要な外陰部/腰仙部・神経診察を行う。
- 尿検査を基本に尿糖・蛋白・潜血・比重を確認し、症状に応じ尿培養や血糖等を追加する。当直帯の検査能力を確認し、検査待ちで緊急評価を遅らせない。
- 日誌に飲水、昼間の時刻/排尿量、夜尿、便を記録。夜間尿量はおむつ重量増加分・夜中の排尿・起床時第一尿を合計し、第一尿だけで代用しない。
- 典型的な単一症候性で画像を一律に行わない。昼間症状、持続漏れ、反復感染や神経所見があれば残尿/腎尿路評価等を小児泌尿器科と相談する。
5生活指導とアラーム療法
- 日中は必要な水分をとり、飲水を夕方以降に偏らせない。寝る前に排尿する。便秘を治療し、長い排尿我慢を避ける。
- 本人が実行できた行動をほめる。夜尿は本人の意思で止められず、罰や無理な夜間覚醒を治療の基本にしない。
- アラームは濡れ始めを感知して覚醒・排尿を助ける治療。初めは保護者が起こしてトイレへ付き添い、負担と使用方法を確認する。
- 開始2〜4週間を目安に早く振り返り、数週間では乾かなくても覚醒・夜尿量・回数の変化を見る。負担や反応に応じ継続期間を相談する。
生活指導と、薬剤服用時に必要な厳密な飲水管理は区別する。日中まで一律に脱水させない。
↑ このページの入口へ1ポイント
- 5歳以上で月1回以上の夜間尿失禁が3か月以上続く場合を夜尿症として評価する。まず昼間の排尿症状と、6か月以上乾燥した時期の有無を聞く。
- 単一症候性は夜尿のみ。昼間尿失禁・尿意切迫・排尿困難があれば非単一症候性として、昼間症状と便秘を先に、または並行して扱う。
- 多飲多尿・体重減少、発熱・排尿時痛、連続する尿漏れ、神経所見は別の病気を評価する。強いいびき・睡眠時無呼吸は専門評価へ。今ある呼吸不全は救急対応。
- 生活指導を土台に、本人の困り感・夜間尿量・続けられる方法を確認し、アラーム療法またはデスモプレシンを一緒に選ぶ。叱らず、乾いた夜を成功条件にしない。
2鑑別のながれ
- 口渇・多飲多尿・体重減少→血糖・尿糖、全身状態を確認→糖尿病・尿崩症等。嘔吐・腹痛・深い呼吸を伴えば救急評価
- 発熱・排尿時痛・混濁尿→尿検査、必要時尿培養→尿路感染症
- 昼間の尿意切迫・尿漏れ・排尿困難→排尿日誌、便秘、尿線・残尿感→非単一症候性夜尿症・排尿機能障害
- いつも少しずつ漏れる・尿線異常→間欠的な夜尿と区別→解剖学的異常等を疑い小児泌尿器科へ
- 腰仙部皮膚所見・歩行/下肢神経所見→診察で脊髄疾患を疑う所見→必要な画像を専門科と相談
- 強いいびき・睡眠中の呼吸停止→日中の眠気・扁桃肥大・成長→睡眠呼吸障害の評価。いびきだけで119にしない
8受診・紹介の目安
- 帰宅レッドフラグがなければ当直では外来再診案内でよい(生活指導で経過を見られる)
- 搬送・紹介糖尿病、腎尿路疾患、神経疾患等を疑う所見、昼間症状が強い・持続する尿漏れ・反復尿路感染、睡眠呼吸障害が疑われる場合は耳鼻科等へ。現在の呼吸不全とは区別、生活指導と適切な第一選択治療でも改善せず、本人・家族の負担が大きい場合
11家族への説明
夜尿は本人の努力不足や育て方のせいではありません。日中の水分、寝る前の排尿、便秘を整え、本人の困りごとに合わせて治療を選びます。薬を使う日は決められた飲水管理が必要です。たくさん飲んだ日や、発熱・胃腸炎で水分補給が必要な日は服用しません。頭痛や吐き気があれば中止して医師へ連絡し、意識がおかしい・けいれんする場合は救急を受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。