6-4 蕁麻疹とアナフィラキシー

緊急

6-4蕁麻疹とアナフィラキシー

皮膚だけか、全身反応かを分ける
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30

日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。

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このページの目次11項目

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1ポイント

判断の流れ

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急なアレルギー症状でアナフィラキシーを見分け、アドレナリン筋注と救急対応へ進む判断図
皮膚症状がなくても、既知アレルゲン後の気道・呼吸または循環症状ではアナフィラキシーを考える。抗ヒスタミン薬を先行させない。日本アレルギー学会・アナフィラキシーガイドライン2022(修正版)を参照。
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2鑑別のながれ

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3アナフィラキシーの重症度分類(グレード)

グレード1(軽症)部分的な紅斑・蕁麻疹、軽い瘙痒(自制内)、弱い腹痛、間欠的な咳嗽・鼻汁経過観察
グレード2(中等症)全身性の蕁麻疹・瘙痒(自制外)、強い腹痛、断続的な咳嗽・軽い息苦しさ、頻脈(+15回/分)基準1・2に該当すれば直ちにアドレナリン筋注(該当しなければ経過観察を強化。様子見で反応を待たない)
グレード3(重症)明らかな喘鳴・呼吸困難・チアノーゼ・SpO2≦92%、血圧低下・重度徐脈・心停止、ぐったり・意識消失即アドレナリン筋注・入院
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4計算・スコア

計算

アドレナリン筋注量・エピペン区分

kg

年齢区分を選ぶと量が出ます(13歳以上は成人扱い・院内方針)

大腿部中央の前外側に筋注(殿部・上腕皮下は吸収が不確実で不可)。投与時刻を記録し、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復する。「1回打ったら終わり」ではない。

いつ使う

アナフィラキシーを疑った時点で直ちに。診断は「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」。体重が分かっていれば年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児で年齢区分と実体重が乖離するため)。

落とし穴
  • エピペンには体重15kg未満の承認用量区分が無い。15kg未満への0.15mg処方は適応外使用にあたり過量投与のおそれ — アンプルでの用量調整を検討する
  • 逆に体重が増えた患児の処方が0.15mgのまま更新されていないかを確認する
  • 投与部位の誤り(殿部・上腕皮下)は吸収が不安定・遅延する
  • 症状消失直後の帰宅 — 二相性反応は小児で最大11%、その約半数が6〜12時間以内。複数回投与例・重症例・投与が遅れた例では観察を延長する
  • エピペン処方だけで終わらせない。実技指導と学校・保育所の生活管理指導表までがセット
次の一手

投与後は仰臥位+下肢挙上、酸素・輸液路の確保、院内観察へ(本シート§2)。βブロッカー投与中でアドレナリン反応不良ならグルカゴンを考慮(小児20〜30μg/kg・最大1mg)。帰宅時はエピペン処方+実技指導+生活管理指導表まで。

出典

アナフィラキシーガイドライン2022(日本アレルギー学会)/エピペン注射液0.15mg・0.3mg 添付文書(2026年3月改訂 第6版)の用法・用量および警告(9)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

判定

年齢別のバイタルと低血圧の閾値

歳
回/分
/分
mmHg

年齢を入れると基準が出ます

    呼吸数60回/分以上・脈拍160/分以上は月齢によらず異常とされる。数値が基準内でも、陥没呼吸・鼻翼呼吸・呻吟・活気や哺乳の低下といった所見を優先する。血圧低下は代償が破れた後に現れる遅い指標で、正常でもショックを否定しない。

    いつ使う

    年齢を入れると、その年齢帯の呼吸数の生理的範囲と、低血圧とみなす収縮期血圧の閾値が出る。実測値も入れると基準と突き合わせる。

    落とし穴
    • 低血圧の定義は年齢の関数:乳児〜10歳以下は収縮期 [70+(2×年齢)] mmHg未満、成人は90mmHg未満。または平時比30%超の低下。年齢を当てはめずに「90未満」で判断すると、年少児の低血圧を見逃す
    • 呼吸数の生理的範囲は年齢で大きく違う(新生児30〜60/乳児30〜40/幼児20〜30)。成人の感覚で「多い」と判断しない
    • 細気管支炎では呼吸数60〜70回/分以上が重症化のサインとされるが、研究によって一貫しない
    出典

    低血圧の定義はアナフィラキシーのシート(血圧低下の定義)、呼吸数の年齢帯は気管支喘息発作のシート(年齢別標準呼吸数)と急性細気管支炎のシート(生理的範囲・60回/分以上は異常)。いずれも正本の記載。

    計算

    初期輸液・ボーラス量(場面別)

    kg

    場面

    この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。

    いつ使う

    体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。

    落とし穴
    • 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
    • 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
    • アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
    • 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
    • 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
    出典

    ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。

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    5検査

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    6処置・処方例

    Rp. 1アドレナリン(0.1%、1mg/mL) 0.01mg/kg、大腿部中央の前外側に筋注。最大量 成人0.5mg・小児0.3mg(13歳以上は成人扱いで0.5mg。院内方針院内) 筋注
    アナフィラキシー(診断基準1・2のいずれかを満たす、または強く疑う)の第一選択
    1. 0.1%アドレナリン(1mg/mL)を0.01mg/kgで大腿部中央の前外側に筋注する。上限は年齢で変わるため下の計算ツールで年齢区分を選んで計算する。ツールの年齢区分は「小児」が初期表示なので、13歳以上では必ず「成人」に切り替えてから計算する(切り替え忘れると上限0.3mgのまま計算され過小投与になる)
    2. 体位は仰臥位(呼吸困難があれば座位、意識消失なら回復体位)。急に立位・坐位にしない
    3. 効果不十分なら5〜15分ごとに反復投与する(ほとんどは1〜2回で効果が得られる)
    Rp. 2フェキソフェナジン塩酸塩(非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬の一例) 6か月以上2歳未満30mg/日、2歳以上12歳未満60mg/日、12歳以上120mg/日、分2 内服
    蕁麻疹単独(アナフィラキシーの徴候がない場合)の第一選択。製剤・採用品は院内で確認
    1. フェキソフェナジン塩酸塩ドライシロップ5%などを6か月以上2歳未満は30mg/日、2歳以上12歳未満は60mg/日、12歳以上は120mg/日で1日2回に分けて内服
    2. 症状消失を確認できれば内服中止する(急性の蕁麻疹に漸減は不要)
    3. 製剤・採用品は院内で確認する
    小児では第1世代抗ヒスタミン薬・経口ステロイド・それらの合剤の使用は可能な限り避ける。 避けること・注意:H1/H2抗ヒスタミン薬の急速静注。グルココルチコイドの急速静注。
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    7帰宅・入院の目安

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    8診療中の疑問と回答

    蕁麻疹の内服を出した後に咳・嗄声・ぐったりが出たら?
    抗ヒスタミン薬の効果を待たず、気道・呼吸・循環を再評価する。アナフィラキシーではアドレナリン筋注が第一選択で、抗ヒスタミン薬やステロイドは代わりにならない。皮疹が軽い・消えたことを安全の根拠にせず、救急要請・搬送を含む急性期手順へ進む。
    根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:症状出現時の対応
    毎日出る蕁麻疹は、毎回食物アレルギーの採血が必要?
    明らかな食事との時間的関係や再現性がなければ、広い食物パネルを一律に調べない。個々の皮疹が消えるまでの時間、薬・感染・刺激との関係を聞き、写真で確認する。6週間以上続けば慢性蕁麻疹として病型を見直す。検査陽性だけを根拠に除去食を増やさない。
    根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)
    第2世代抗ヒスタミン薬が効かない。倍量・4倍量にしてよい?
    まず連日服用できているか、年齢・体重と処方、眠気、刺激誘発型など病型を確認する。小児の増量の根拠は限られ、成人・海外の4倍量をそのまま適用しない。薬剤ごとの添付文書上の年齢と増量可否を確認し、標準量で制御できない場合は変更・追加治療を専門医と検討する。
    根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)
    皮疹が消えたら、その日から抗ヒスタミン薬をやめる?
    急性か慢性かで考える。慢性蕁麻疹では薬で出現を抑えているだけの場合があり、無症状を確認してから段階的に減量・服用間隔を調整する。2026年ガイドラインは完全抑制後1〜2か月の維持を目安とするが根拠は限定的。小児では経過と製剤特性に合わせ、再燃時の戻し方も事前に決める。
    根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)
    早く治すためにステロイドを繰り返してよい?
    漫然と繰り返さない。長期予後を改善する根拠は乏しく、小児では成長などへの有害作用が問題になる。必要な短期使用を検討する場合も、終了の見通しを立て、止めるたびに再燃するなら専門医へ相談する。抗ヒスタミン薬との配合剤にもステロイドが含まれるため、処方内容を確認する。
    根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)
    同じ皮疹が翌日も残り、痛みや紫斑があるときは?
    典型的な蕁麻疹として薬だけを追加せず、蕁麻疹様血管炎などを再評価する。発熱・関節痛・腹痛や尿所見も確認し、皮膚科等へ相談する。膨疹を伴わず口唇などの腫れを繰り返す場合も別病型を検討する。舌・喉頭の腫れや呼吸症状は病型精査より緊急対応を優先する。
    根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) / 食物アレルギー診療の手引き2023:症状出現時の対応
    蕁麻疹が強いからステロイドを使う?
    使わない。蕁麻疹の強さだけでステロイドを選ばない。アナフィラキシーならアドレナリンが第一選択。
    症状が消えたらすぐ帰していい?
    二相性反応(小児最大11%)のリスクを踏まえ、全例4〜6時間観察してから帰宅可否を判断する。
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    10家族への説明

    赤いぶつぶつだけでは、まず様子を見ることが多いです。息が苦しい、声がおかしい、ぐったり、吐いてぐったりは別物です。そのときは119番してください。

    一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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