6-4蕁麻疹とアナフィラキシー
皮膚だけか、全身反応かを分ける
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次11項目
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1ポイント
- 皮膚だけなら抗ヒスタミンでよい。気道・循環・反復嘔吐が混ざったらアナフィラキシーとして即アドレナリン筋注。
- 診断基準1・2のいずれかを満たす時点でアナフィラキシーとして扱う。蕁麻疹の見た目の軽さで判断しない。
- 皮膚症状を伴わないまま血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状だけが急速に進行することがある。既知アレルゲン曝露歴があれば皮疹なしでも対応する。
- 抗ヒスタミン薬・ステロイドを先行させて様子を見ない。医療事故調査データでも投与の遅れが死亡例の背景にあったと報告されている。
- 二相性反応(成人最大23%・小児最大11%)に備え、症状が消えても院内観察を打ち切らない。
皮膚症状がなくても、既知アレルゲン後の気道・呼吸または循環症状ではアナフィラキシーを考える。抗ヒスタミン薬を先行させない。日本アレルギー学会・アナフィラキシーガイドライン2022(修正版)を参照。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 皮膚症状のみ→気道/呼吸・循環器・重度消化器症状を伴わない→蕁麻疹単独(抗ヒスタミン薬で対応)
- 皮膚粘膜症状+重度の呼吸器/循環器/消化器症状→急速発症(数分〜数時間)→アナフィラキシー基準1(即アドレナリン)
- 典型的皮膚症状なし+既知アレルゲン曝露後→血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状が急速発症→アナフィラキシー基準2(即アドレナリン)
- 蕁麻疹・掻痒を伴わない孤発性の血管性浮腫→アドレナリンに反応しない喉頭浮腫、家族歴・ACE阻害薬内服歴→HAE等ブラジキニン起因性血管性浮腫(C1-INH製剤・専門医へ)
- 乳児・幼児の原因不明な行動変化(不機嫌、遊ばなくなる、親にまとわりつく等)→本人が症状を訴えられない年齢、既知アレルゲンへの曝露歴→アナフィラキシーとして評価する(皮疹や典型症状がなくても対象)
↑ このページの入口へ3アナフィラキシーの重症度分類(グレード)
| グレード1(軽症) | 部分的な紅斑・蕁麻疹、軽い瘙痒(自制内)、弱い腹痛、間欠的な咳嗽・鼻汁 | 経過観察 |
|---|
| グレード2(中等症) | 全身性の蕁麻疹・瘙痒(自制外)、強い腹痛、断続的な咳嗽・軽い息苦しさ、頻脈(+15回/分) | 基準1・2に該当すれば直ちにアドレナリン筋注(該当しなければ経過観察を強化。様子見で反応を待たない) |
|---|
| グレード3(重症) | 明らかな喘鳴・呼吸困難・チアノーゼ・SpO2≦92%、血圧低下・重度徐脈・心停止、ぐったり・意識消失 | 即アドレナリン筋注・入院 |
|---|
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
計算
アドレナリン筋注量・エピペン区分
kg
年齢区分を選ぶと量が出ます(13歳以上は成人扱い・院内方針)
大腿部中央の前外側に筋注(殿部・上腕皮下は吸収が不確実で不可)。投与時刻を記録し、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復する。「1回打ったら終わり」ではない。
いつ使う
アナフィラキシーを疑った時点で直ちに。診断は「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」。体重が分かっていれば年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児で年齢区分と実体重が乖離するため)。
落とし穴
- エピペンには体重15kg未満の承認用量区分が無い。15kg未満への0.15mg処方は適応外使用にあたり過量投与のおそれ — アンプルでの用量調整を検討する
- 逆に体重が増えた患児の処方が0.15mgのまま更新されていないかを確認する
- 投与部位の誤り(殿部・上腕皮下)は吸収が不安定・遅延する
- 症状消失直後の帰宅 — 二相性反応は小児で最大11%、その約半数が6〜12時間以内。複数回投与例・重症例・投与が遅れた例では観察を延長する
- エピペン処方だけで終わらせない。実技指導と学校・保育所の生活管理指導表までがセット
次の一手
投与後は仰臥位+下肢挙上、酸素・輸液路の確保、院内観察へ(本シート§2)。βブロッカー投与中でアドレナリン反応不良ならグルカゴンを考慮(小児20〜30μg/kg・最大1mg)。帰宅時はエピペン処方+実技指導+生活管理指導表まで。
出典
アナフィラキシーガイドライン2022(日本アレルギー学会)/エピペン注射液0.15mg・0.3mg 添付文書(2026年3月改訂 第6版)の用法・用量および警告(9)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。
判定
年齢別のバイタルと低血圧の閾値
歳
回/分
/分
mmHg
呼吸数60回/分以上・脈拍160/分以上は月齢によらず異常とされる。数値が基準内でも、陥没呼吸・鼻翼呼吸・呻吟・活気や哺乳の低下といった所見を優先する。血圧低下は代償が破れた後に現れる遅い指標で、正常でもショックを否定しない。
いつ使う
年齢を入れると、その年齢帯の呼吸数の生理的範囲と、低血圧とみなす収縮期血圧の閾値が出る。実測値も入れると基準と突き合わせる。
落とし穴
- 低血圧の定義は年齢の関数:乳児〜10歳以下は収縮期 [70+(2×年齢)] mmHg未満、成人は90mmHg未満。または平時比30%超の低下。年齢を当てはめずに「90未満」で判断すると、年少児の低血圧を見逃す
- 呼吸数の生理的範囲は年齢で大きく違う(新生児30〜60/乳児30〜40/幼児20〜30)。成人の感覚で「多い」と判断しない
- 細気管支炎では呼吸数60〜70回/分以上が重症化のサインとされるが、研究によって一貫しない
出典
低血圧の定義はアナフィラキシーのシート(血圧低下の定義)、呼吸数の年齢帯は気管支喘息発作のシート(年齢別標準呼吸数)と急性細気管支炎のシート(生理的範囲・60回/分以上は異常)。いずれも正本の記載。
計算
初期輸液・ボーラス量(場面別)
kg
場面
この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。
いつ使う
体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。
落とし穴
- 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
- 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
- アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
- 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
- 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
出典
ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。
↑ このページの入口へ5検査
- 診断は臨床所見のみで可能。アナフィラキシー診断基準・蕁麻疹の病型分類とも検査は必須ではない
- 全身状態が不安定な場合は初期対応と並行して血算・血液ガス・CRP・一般生化学検査を行う
- 誘因(アレルゲン)確定検査は急性期ではなく発症後3〜4週間を目安にアレルギー専門医へ紹介して行う
- 典型的な蕁麻疹以外に身体症状がなく治療反応もよい場合、I型アレルギーのルーチン検査は行わない
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1アドレナリン(0.1%、1mg/mL)
0.01mg/kg、大腿部中央の前外側に筋注。最大量 成人0.5mg・小児0.3mg(13歳以上は成人扱いで0.5mg。院内方針院内) 筋注アナフィラキシー(診断基準1・2のいずれかを満たす、または強く疑う)の第一選択
- 0.1%アドレナリン(1mg/mL)を0.01mg/kgで大腿部中央の前外側に筋注する。上限は年齢で変わるため下の計算ツールで年齢区分を選んで計算する。ツールの年齢区分は「小児」が初期表示なので、13歳以上では必ず「成人」に切り替えてから計算する(切り替え忘れると上限0.3mgのまま計算され過小投与になる)
- 体位は仰臥位(呼吸困難があれば座位、意識消失なら回復体位)。急に立位・坐位にしない
- 効果不十分なら5〜15分ごとに反復投与する(ほとんどは1〜2回で効果が得られる)
Rp. 2フェキソフェナジン塩酸塩(非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬の一例)
6か月以上2歳未満30mg/日、2歳以上12歳未満60mg/日、12歳以上120mg/日、分2 内服蕁麻疹単独(アナフィラキシーの徴候がない場合)の第一選択。製剤・採用品は院内で確認
- フェキソフェナジン塩酸塩ドライシロップ5%などを6か月以上2歳未満は30mg/日、2歳以上12歳未満は60mg/日、12歳以上は120mg/日で1日2回に分けて内服
- 症状消失を確認できれば内服中止する(急性の蕁麻疹に漸減は不要)
- 製剤・採用品は院内で確認する
小児では第1世代抗ヒスタミン薬・経口ステロイド・それらの合剤の使用は可能な限り避ける。 避けること・注意:H1/H2抗ヒスタミン薬の急速静注。グルココルチコイドの急速静注。
↑ このページの入口へ7帰宅・入院の目安
- 帰宅皮疹のみで活気があり、蕁麻疹単独として対応できる
- 入院グレード3(重症)・アドレナリン複数回投与例、二相性反応リスクが高い症例(重症だった・心血管疾患合併・気管支喘息合併・βブロッカー内服中・遠方在住等)
- 搬送・紹介蕁麻疹・掻痒を伴わずアドレナリンに反応しない喉頭浮腫はHAE等ブラジキニン起因性血管性浮腫を疑う → C1-INH製剤・専門医(アレルギー科/小児科上位施設)へ
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 蕁麻疹の内服を出した後に咳・嗄声・ぐったりが出たら?
- 抗ヒスタミン薬の効果を待たず、気道・呼吸・循環を再評価する。アナフィラキシーではアドレナリン筋注が第一選択で、抗ヒスタミン薬やステロイドは代わりにならない。皮疹が軽い・消えたことを安全の根拠にせず、救急要請・搬送を含む急性期手順へ進む。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:症状出現時の対応 - 毎日出る蕁麻疹は、毎回食物アレルギーの採血が必要?
- 明らかな食事との時間的関係や再現性がなければ、広い食物パネルを一律に調べない。個々の皮疹が消えるまでの時間、薬・感染・刺激との関係を聞き、写真で確認する。6週間以上続けば慢性蕁麻疹として病型を見直す。検査陽性だけを根拠に除去食を増やさない。
根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) - 第2世代抗ヒスタミン薬が効かない。倍量・4倍量にしてよい?
- まず連日服用できているか、年齢・体重と処方、眠気、刺激誘発型など病型を確認する。小児の増量の根拠は限られ、成人・海外の4倍量をそのまま適用しない。薬剤ごとの添付文書上の年齢と増量可否を確認し、標準量で制御できない場合は変更・追加治療を専門医と検討する。
根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) - 皮疹が消えたら、その日から抗ヒスタミン薬をやめる?
- 急性か慢性かで考える。慢性蕁麻疹では薬で出現を抑えているだけの場合があり、無症状を確認してから段階的に減量・服用間隔を調整する。2026年ガイドラインは完全抑制後1〜2か月の維持を目安とするが根拠は限定的。小児では経過と製剤特性に合わせ、再燃時の戻し方も事前に決める。
根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) - 早く治すためにステロイドを繰り返してよい?
- 漫然と繰り返さない。長期予後を改善する根拠は乏しく、小児では成長などへの有害作用が問題になる。必要な短期使用を検討する場合も、終了の見通しを立て、止めるたびに再燃するなら専門医へ相談する。抗ヒスタミン薬との配合剤にもステロイドが含まれるため、処方内容を確認する。
根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) - 同じ皮疹が翌日も残り、痛みや紫斑があるときは?
- 典型的な蕁麻疹として薬だけを追加せず、蕁麻疹様血管炎などを再評価する。発熱・関節痛・腹痛や尿所見も確認し、皮膚科等へ相談する。膨疹を伴わず口唇などの腫れを繰り返す場合も別病型を検討する。舌・喉頭の腫れや呼吸症状は病型精査より緊急対応を優先する。
根拠:日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版) / 食物アレルギー診療の手引き2023:症状出現時の対応
- 蕁麻疹が強いからステロイドを使う?
- 使わない。蕁麻疹の強さだけでステロイドを選ばない。アナフィラキシーならアドレナリンが第一選択。
- 症状が消えたらすぐ帰していい?
- 二相性反応(小児最大11%)のリスクを踏まえ、全例4〜6時間観察してから帰宅可否を判断する。
↑ このページの入口へ10家族への説明
赤いぶつぶつだけでは、まず様子を見ることが多いです。息が苦しい、声がおかしい、ぐったり、吐いてぐったりは別物です。そのときは119番してください。