2-6吸入(ネブライザー)の治療
喘息発作・クループへの吸入療法
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
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1ポイント
- 喘息発作時のSABA吸入は、pMDI+スペーサーとネブライザーで有効性は同等〜スペーサーの方がED滞在時間・有害事象で有利という国際エビデンスがある。
- クループへのアドレナリン(ボスミン)吸入は添付文書上の承認適応(気管支痙攣等)に含まれない適応外使用(off-label)。効果は数十分〜2時間で減弱しうるため、院内で数時間の経過観察を省略しない。
- ICSは長期管理薬で発作時には効かない。SABAネブライザーの頻回・大量使用そのものが「コントロール不良のサイン」。
- マスクは顔に密着させる。啼泣時は吸気が浅く不規則になり肺内到達量が大幅に低下する。泣かせない工夫が薬剤選択より効果を左右する。
- 生理食塩水単独のネブライザー吸入の去痰効果は一過性でエビデンスも乏しい。他剤の希釈溶媒としての位置づけが基本。
↑ このページの入口へ2計算・スコア
参考
SABAネブライザー吸入液の量
添付文書は年齢・症状に応じたレンジ規定で、全身投与薬のような厳密なmg/kg換算ではない。体重では決まらない。
クループへのアドレナリン(ボスミン)吸入は適応外使用。ボスミン外用液0.1%の承認適応は「気管支喘息・百日咳に基づく気管支痙攣の緩解」等で、クループ(喉頭炎)の記載はない(PMDA原本 2026年3月改訂第3版を直接確認済み)。院内プロトコル化・保護者説明の際は、この適応外性を明記すること。
いつ使う
喘息発作時のSABAネブライザー。pMDI+スペーサーとネブライザーは有効性が同等で、JPGL2023 CQ9はどちらも提案するとして優劣をつけていない。重症度が高く反復投与・酸素同時投与が必要ならネブライザーが扱いやすい。
落とし穴
- Cochrane(Cates 2013)の小児サブグループではスペーサー使用群のED滞在時間が平均約33分短い(103分 vs 70分)。メタ解析では有害事象(頻脈等)もスペーサー群で少ない傾向
- JPGL2023は「国内は小児でのプロカテロールpMDI使用データが乏しく、用量設定・衛生面の留意が必要」として両論併記にとどめている
- 軽〜中等症でスペーサー手技を指導できる年齢・状況なら、pMDI+スペーサーは積極的に検討してよい(エビデンス上「劣る」わけではない)
次の一手
反応を見ながら20〜30分間隔で反復可能。発作強度の判定と全身性ステロイドの適応は「気管支喘息発作」のシートへ。
出典
プロカテロール(メプチン吸入液0.01%)・サルブタモール(ベネトリン吸入液0.5%)の各添付文書、JPGL2023 CQ9、Cates 2013(Cochrane)。本シート§2-1・2-2。
↑ このページの入口へ3検査
- 適応の確認:気管支喘息の急性増悪(中発作以上、またはSABA反応不良)、クループで中等症以上(安静時の吸気性喘鳴・陥没呼吸)
- 過剰になりがちな例:軽症クループ(安静時喘鳴なし)へのルーチンなアドレナリン吸入、単純な鼻汁への生理食塩水単独ネブライザー、ICSを発作時のレスキューとして期待すること
↑ このページの入口へ4処置・処方例
Rp. 1プロカテロール(メプチン吸入液0.01%)またはサルブタモール(ベネトリン吸入液0.5%)
プロカテロール1回10〜30μg(0.1〜0.3mL)、サルブタモール1回0.1〜0.3mL(0.5〜1.5mg) 吸入喘息発作の第一選択。年齢・症状により適宜増減し、反応を見ながら20〜30分間隔で反復可能というのが一般的な運用
- 乳児は低用量側(0.1mL前後)、学童期は高用量側(0.3mL)に寄せる
- マスクは鼻と口を覆い顔に密着させる。啼泣時はブロウバイでも一定量は届くが到達効率は落ちる
Rp. 2アドレナリン(ボスミン外用液0.1%)
0.01mL/kg(上限0.3mL)を生理食塩水で希釈して吸入。添付文書の「2〜5分経過後、効果不十分でももう一度投与を限度とし、続けて使う場合は4〜6時間以上あける」は気管支痙攣(喘息)の適応に基づく規定で、クループでは効果発現に10〜30分、持続は2時間程度のため、この短い時間だけで機械的に再投与を判断しない 吸入クループで中等症以上(Westleyスコア3点以上、安静時の吸気性喘鳴+陥没呼吸)に限る。添付文書上クループへの適応はなく適応外使用。添付文書は体重換算の規定を持たず一律0.3mg以内の上限のみを定めている。体重別0.01mL/kgは小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017が『体重別では0.01mL/kgを基準としているところが多い』とする国内の実地目安(上限0.3mLは添付文書の上限と一致)で、過度の使用で不整脈・心停止のリスクがあるため上限を超えない
- 吸入後30分で症状スコアが有意に改善するが、効果の多くは2時間程度で減弱する
- 添付文書の「2〜5分」という再投与の目安はクループには当てはまらない。再投与はモニター下でバイタル・呼吸状態の推移を見ながら30分以上あけて行う
- 院内観察は3〜4時間を基準とし、症状再燃がなければ帰宅可とする(院内方針院内)
ICS(吸入ステロイド)は長期管理薬で発作時には無効。当直で新規開始する薬ではない(参考:ネブライザー用ブデソニドは小児0.25mgを1日2回、または0.5mgを1日1回、1日最高量は1mgまで。ジェット式ネブライザーを使用、超音波式は不可)。 避けること・注意:海外文献の高い体重換算プロトコル(0.5mL/kg等)を持ち込んで院内方針院内の上限0.3mLを超えて投与すること、ICSを発作治療のつもりで増量すること、啼泣時吸入を「実施済み」として扱うこと。
↑ このページの入口へ5診療中の疑問と回答
- 吸入したのに改善しない。薬液を増やす前に何を見る?
- 呼吸仕事量、空気流入、会話、意識を再評価し、重症化なら治療強化と搬送を急ぐ。同時に実際の投与法、マスク密着、吸入中の協力、機器の作動を確認する。反応不良を量不足と決めず、左右差や突然発症なら異物など診断も見直す。
根拠:RCH 急性喘息 - ネブライザーを嫌がる児は吸入治療を諦める?
- pMDIとスペーサーは小児の急性喘息で使える投与法であり、適切なマスクやマウスピースを選んで実演する。複数噴霧をまとめて入れず、1噴霧ずつ呼吸させる。重症で十分な投与ができない場合は、そのまま帰宅させず監視下で別の投与法と治療を検討する。
根拠:RCH 急性喘息 - 反復SABA後に頻脈と頻呼吸が残る。さらに追加する?
- 気道閉塞の残存とSABAの有害作用を区別する。空気流入や呼吸仕事量を見直し、頻回投与では低Kや乳酸上昇も考えて必要な採血・監視を行う。頻呼吸だけを根拠に投与を重ねず、重症度と薬剤曝露を上級医と再評価する。
根拠:RCH 急性喘息
- ネブライザーの方がpMDIよりよく効く?
- 有効性は同等。スペーサー使用群はED滞在時間・有害事象でむしろ有利という報告がある。
- クループへのボスミン吸入は適応内?
- 適応外使用(off-label)。添付文書の承認適応はクループでなく気管支痙攣(気管支喘息・百日咳)。
- 吸入後すぐ帰宅していい?
- よくない。効果は数十分〜2時間で減弱しうるため、院内観察は3〜4時間を基準とし、症状再燃がなければ帰宅可とする。
↑ このページの入口へ7家族への説明
吸入薬は霧にして気管支に直接届けるので、飲み薬より少ない量で早く効きます。アドレナリン吸入後は今は良くなっていても、数時間後にまた咳や息苦しさが戻ることがあるので、しばらく病院で様子を見ます。帰宅後に息苦しそうな様子(ゼーゼー、犬の鳴き声のような咳、呼吸のたびに胸がへこむ)が出たら、すぐに受診してください。発作を抑える薬ではなく、発作を起こしにくい体にするための毎日のお薬(吸入ステロイド)は、症状がない日も続けることが大切です。