12-14創処置と縫合の適応
当院は縫合ができない・縫える施設へ時間内に送る
β版 · 紙面の最終確認 2026-09-27
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 当院では縫合ができない。このシートの使い道は「縫わずにやることを全部やって、縫える施設へ、縫える時間内に着かせること」。
- 洗う。消毒しない。創傷部への消毒薬の使用は必ずしも必要ではなく、感染予防目的の創内消毒は行わない。
- 水道水でよい。水道水による洗浄は有効で、生理食塩水と感染率に差がないという報告がある。
- 抗菌薬はルーチンでは要らない。汚染や深部組織の損傷・露出がなく基礎疾患のない創には予防的抗生物質投与は必ずしも必要ではない。
- 破傷風は毎回考える。母子手帳で接種歴を確認するのが最短。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 頭部の咬創→2歳未満→皮膚損傷が軽微でも頭蓋内穿通創がありうる
- 頭部の創→意識障害・嘔吐・陥没を伴う→頭蓋内損傷を疑う
- 手指の創→屈側・知覚/運動の異常を伴う→腱・神経損傷を疑う。持てない
- 異物が残っている可能性のある創→ガラス・木片・砂利→X線でガラス・金属は写るが木片は写らない。写らない異物を否定できないまま閉じない
- 受傷機転と創が合わない→年齢に合わない部位・パターン→虐待を疑う
- Clean, minor wound(清潔で浅い創)+トキソイド接種3回未満→-→TTを接種する
- Clean, minor wound(清潔で浅い創)+接種3回以上・最終接種から10年以上→-→TTを接種する
- それ以外の創(汚染創・刺創・剥脱創など)+トキソイド接種3回未満→-→TTとTIGを投与する
- それ以外の創(汚染創・刺創・剥脱創など)+接種3回以上・最終接種から5年以上→-→TTを接種する
3洗浄・処置の手順(当院でやること)
- 止血(直接圧迫)。拍動性の出血は持てない
- 受傷機転・時刻・場所(土・水・動物)を聞き、説明と創が合うか確認する
- 深部構造の評価:知覚・運動・血流・関節可動域を縫う前に必ず確認する
- 痛みを取る(局所麻酔・表面麻酔)。リドカインの最大量はアドレナリン非添加4.5mg/kg・添加7mg/kg・総量300mgまで(新生児・乳児・小柄な子はより少なく。院内方針院内)
- 大量の流水(水道水でよい)で洗う。汚染が軽い浅い創なら100〜250mL程度、汚染が強い創なら1〜2L程度を目安に、異物が洗い流されるまで洗い続ける
- 創内は消毒しない。周囲の健常皮膚のみ、創内に入らないように消毒する
- 必要ならデブリードマンを行う
- テープ・被覆材で足りるか、縫える施設へ送るかを決める。受傷時刻から逆算して時間内に着けるかを先に確認する
- 破傷風:母子手帳で接種歴を確認し、必要なら接種する
- 再診日を決める。抜糸は顔面・特殊部位以外は当院で引き受け、縫った施設へその旨を伝える
- 感染徴候(赤み・腫れ・熱・痛みの増強・膿)を家族に具体的に渡す
やってはいけない・落とし穴
- 擦過創で異物(砂・アスファルト粒子等)を取り切らないまま上皮化させ、外傷性刺青を残す
- 創縁の緊張が強い、または縫合後の腫脹・浮腫による循環不全が危惧される創に一期的縫合を試みる(一次資料は成人対象が多く小児は水道水vs生食のRCT46例のみ)
- 「消毒したから大丈夫」で破傷風予防を省略する(破傷風菌の芽胞は消毒薬を含む化学物質に耐性)
4帰宅・入院の目安
- 帰宅浅い直線創で緊張がなくテープ・被覆材で閉じられる、単純な切創・裂創(体幹・四肢、深部構造に達しない)、汚染が強い・受傷から時間が経っている創は、急いで縫合施設へ送るのではなく、開放のまま洗浄・処置を繰り返し後日閉創する(当院で通院管理を追える場合。当院で縫えない以上、これが主力になる選択肢)
- 搬送・紹介腱・神経・血管・関節・骨に達する(持てない)、手指の創(屈側・深い、手外科)、眼瞼・涙小管・口唇の赤唇縁・耳介軟骨(形成外科・眼科)、顔面の大きな創・整容が問題になる創(受傷から24時間以内に形成外科へ)、単純な切創・裂創で縫合が要るなら受傷後6〜12時間以内に送る
5Q&A
- 傷の中も消毒したほうが早く治る?
- しない。創傷部への消毒薬使用は必ずしも必要ではなく、感染予防目的の創内消毒は行わない。組織毒性が正常組織を損傷しうる。
- きれいな傷には抗菌薬を出しておいたほうが安心?
- 汚染や深部組織の損傷がなければルーチンの予防的抗生物質投与は必ずしも必要ではない。
- すりむき傷は痛がるので軽く流すだけでよい?
- だめ。砂やアスファルト粒子が残ったまま上皮化すると外傷性刺青として一生残る。痛みを取る手段を用意したうえで異物を取り切る。
6家族への説明
傷の手当てでいちばん大事なのは、たくさんの水でよく洗うことです。消毒は、かえって傷の治りを悪くすることがあるので、傷の中には使いません。水道水で洗っても、生理食塩水で洗っても、感染しやすさは変わらないことが研究でわかっています。すりむき傷では、砂やアスファルトの粒が残ったまま皮膚ができてしまうと、黒い点が一生残ってしまう(外傷性刺青)ので、痛くても早いうちに取り切ります。抗生物質の飲み薬は、きれいな傷では必要ありません。破傷風の予防が要るかどうかを決めるので、母子手帳を見せてください。おうちに帰ってから、赤みが広がる・腫れが強くなる・痛みが増す・熱が出る・膿が出る、このどれかがあれば、予定より早く来てください。
詳しい根拠・出典は 本文の出典欄を参照。
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