4-2けいれん重積・無熱性けいれん
強直間代発作・意識障害・搬送判断
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 5分続いたら、そこが治療開始の時刻(t1)。「もう少し様子を」で時計を進めない。
- 30分が神経学的後遺症を残しうる時間(t2)。5分・10分・30分で段が変わる。
- 血糖を測る。低血糖なら薬より先にブドウ糖。
- 静脈ルートが取れなくても第一選択薬は投与できる(承認内はミダゾラム口腔用液=ブコラム〔当院の採用は未確定〕。ほかにミダゾラムの頬粘膜・鼻腔内・筋注〔いずれも適応外〕、ジアゼパムの直腸内)。ルート確保に時間を溶かさない。
- 当院は院内第三選択薬(持続静注・人工呼吸管理)に進めない。第二選択薬を使う段階で受け入れ先に連絡する。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- けいれん→発熱を伴い、年齢・病型が典型→熱性けいれん
- けいれん→生後6か月未満・6歳以上の初発→熱性けいれんの典型年齢から外れる。別疾患を疑う
- けいれん様→必ず血糖を測る→低血糖(薬より先にブドウ糖)
- けいれん様の動き→誘因・前駆症状・回復が速い→失神
- けいれん様→泣いた直後・短時間・回復が速い→憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)
- けいれん→薬・化学物質の曝露→中毒
- けいれん→発熱+意識障害+髄膜刺激徴候→細菌性髄膜炎
- けいれん→頭部外傷歴・局在徴候・頭痛の先行→頭蓋内病変(外傷・出血・腫瘍)
- けいれん→頭部外傷後・嘔吐を伴う・意識が悪い→頭蓋内病変。画像検査を検討(当直帯は単純X線のみ。CT/MRI要なら搬送先)
- けいれん後→片側性発作・発作後麻痺(Todd麻痺)→局在性病変を疑う
- けいれん様→運動中・臥位発症・家族歴→心原性(不整脈)
3病期区分(経過時間)
| 早期SE | 5〜10分 | 病院前治療、または第一選択薬 |
|---|---|---|
| 確定したSE | 10〜30分 | 第二選択薬へ進む |
| 難治性SE(RSE) | 30〜60分以上 | 第三選択薬へ進む=当院で持てない |
| 超難治性SE(SRSE) | 24時間以上 | 専門施設 |
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4検査
- 血糖測定(必要ならブドウ糖投与)。低血糖なら薬より先に治療する
- 電解質・血液ガス:夜間に出せる
- 画像検査:頭蓋内病変を疑う所見(頭部外傷歴・嘔吐・意識障害)があれば検討
- 脳波:発作が止まっても意識が戻らない場合に要るが、当院で持てない
5処置・処方例
Rp. 1ミダゾラム 0.15mg/kg。0.1〜0.3mg/kgの追加可。総量0.6mg/kgを超えない 静注(第一選択薬)
5分を超えたら投与
- ミダフレッサ静注0.1%(10mg/10mL=1mg/mL)を第一選択とする。ドルミカム注射液(10mg/2mL=5mg/mL)でも代用できるが、静注への使用は適応外になる
- —を1mg/分(ミダフレッサなら同じmL数/分)の速度で静注する
- 止まらなければ0.1〜0.3mg/kgを追加できる。初回と追加の総量で0.6mg/kgを超えない
Rp. 2ロラゼパム 0.05mg/kg(最大4mgまで)。0.05mg/kgの追加可。総量0.1mg/kgを超えない 静注(第一選択薬)
5分を超えたら投与
- ロラピタ静注2mg(ロラゼパム注射液)を使う。1管の含量は2mg
- 必要mg数に応じた本数・希釈方法は当院採用品の添付文書で確認する
- —を静注する(最大4mgまで)
- 止まらなければ0.05mg/kgを追加できる。初回と追加の総量で0.1mg/kgを超えない
Rp. 3ジアゼパム 0.3〜0.5mg/kg(最大10mg) 静注(静脈ルートあり・第一選択薬)
5分を超えたら投与。時刻を記録してから開始する
- ジアゼパム注射液(セルシン注射液・ホリゾン注射液、5mg/1mL)の原液をそのまま使う(希釈しない)
- —〜—を2〜3分かけてゆっくり静注する(最大10mg)
- 濃度は5mg/1mL。必要mg数をそのまま5で割った数がmL数になる
Rp. 4ミダゾラム 筋注0.2〜0.5mg/kg/鼻腔内0.2mg/kg/頬粘膜0.2〜0.5mg/kg 筋注・鼻腔内・頬粘膜(静脈ルートが取れないとき)
ルート確保に時間を溶かさない。非静脈路で先に投与する
- ドルミカム注射液(10mg/2mL=5mg/mL)を注射器で吸う。鼻腔内・頬粘膜は針を外して使う
- 筋注: —〜—を大腿外側などに筋肉内注射する
- 鼻腔内: —を左右の鼻腔に半量ずつ滴下する
- 頬粘膜: —〜—を下顎の乳臼歯と頬の内側の間に注入する
- ドルミカム注射液にてんかん重積状態の適応はなく、筋注・鼻腔内・頬粘膜はいずれも適応外使用。呼吸状態の悪化に注意して観察する
- 承認内の非静脈路はミダゾラム口腔用液(ブコラム。効能・効果はてんかん重積状態、年齢区分ごとの固定量で用量は添付文書で確認)。当院の採用は未確定
Rp. 5ジアゼパム注射液 0.3〜0.5mg/kg 直腸内(静脈ルートが取れないとき)
ルートが取れないときの代替経路
- セルシン注射液・ホリゾン注射液(5mg/1mL)の原液を使う(希釈しない)
- —〜—をシリンジに吸い、栄養チューブを接続して肛門から挿入し、緩徐に注入する
- 注入後にシリンジへ空気を2mL引いて押し出し、チューブ内に残った薬液を送り込んでから抜去する
Rp. 6ホスフェニトイン 22.5mg/kg 静注(第二選択薬)
10〜30分で止まらなければ投与。この時点で受け入れ先に連絡する。フェニトインより心拍・血圧への影響は少ないとされるが、同系統の薬剤のため投与前後は心電図・血圧をモニターし、洞性徐脈や高度房室ブロックがあれば投与しない
- ホストイン静注(750mg/10mL=75mg/mL)を生理食塩水または5%ブドウ糖液で希釈する
- 希釈例: 750mg/10mLバイアルに生食または5%ブドウ糖液20mLを加えて総量30mL(1mL=25mg)とする
- —を3mg/kg/分以下(総量で7.5分以上かけて)点滴静注する
Rp. 7フェニトイン 15〜20mg/kg 静注(第二選択薬)
15〜20分かけて緩徐に静注する(即効性に欠ける)。強アルカリ性で血管外漏出時に組織壊死・purple glove syndromeのリスク。投与前に心電図を確認し、洞性徐脈・高度房室ブロックがあれば投与しない。投与中・投与後は心拍と血圧をモニターし、徐脈や血圧低下が出れば投与を中止する
- アレビアチン注(250mg/5mL=50mg/mL)を使う。ブドウ糖液を混ぜると白濁するため生理食塩水で希釈する
- —〜—を1mg/kg/分以下で15〜20分以上かけて緩徐に静注する
- 投与前後に生理食塩水でラインをフラッシュする(血管外漏出で組織壊死のリスク)
Rp. 8フェノバルビタール 15〜20mg/kg 静注(第二選択薬)
10〜30分で止まらなければ投与
- ノーベルバール静注用250mgを生理食塩水で溶解し計25mLとする(10mg/mL)
- —〜—を100mg/分以下・10分以上かけて緩徐に静注する
- 急速投与で血圧低下を起こしうる。ベンゾジアゼピン投与後は呼吸抑制が重なるため、気道確保の準備をしてから投与する
Rp. 9レベチラセタム 20〜60mg/kg 静注(第二選択薬)
10〜30分で止まらなければ投与
- イーケプラ点滴静注500mg/5mL(100mg/mL)を生理食塩水などで希釈する
- —〜—を15分間かけて点滴静注する
ベンゾジアゼピン投与後は呼吸抑制に備え、気道確保と酸素を準備する(薬剤によらず共通)。日本では第二選択薬のうちバルプロ酸とクロナゼパムの注射製剤は使用できない。第三選択薬(ミダゾラム持続静注0.05〜0.4mg/kg/時、チオペンタール、チアミラール、プロポフォール、ケタミン)は人工呼吸管理・昇圧剤・脳波モニタリングが前提で、当院では持てない。 避けること・注意:静脈ルート確保に時間を溶かして薬剤投与を遅らせること、無熱性の初発発作を熱性けいれんと同じ扱いにすること、初発の無熱性けいれんに抗けいれん頓用薬(坐剤等)を安易に持たせること(院内方針院内)。
↑ このページの入口へ6帰宅・入院の目安
- 帰宅短時間で自然に止まり、意識が戻り、神経学的に正常、生後6か月以上の無熱性初発発作で、止まって意識清明・神経学的異常なし:当院で初期評価(血液検査・必要時単純X線等)をした上で、家族の観察力を確認できれば外来フォロー(脳波は外来で予約)。てんかん初発として専門外来へつなぐ(院内方針院内)、誘因の検索と再発時の指導ができる、再受診条件を紙で渡せる
- 入院生後6か月未満の無熱性初発発作で発作後に回復:夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と転院・治療導入を相談する(院内方針院内)、生後6か月以上の無熱性初発発作で、夜間帯の家族の観察が難しい・不安が強い場合:入院とする(院内方針院内)
- 搬送・紹介第二選択薬を使った時点で受け入れ先に連絡する。止まらなければそのまま搬送、第三選択薬に進む段階(30〜60分以上):持てない。人工呼吸管理・脳波モニタが要る、発作が止まっても意識が戻らない:非けいれん性重積の可能性。脳波が要る=持てない
7診療中の疑問と回答
- 救急隊や家庭で薬を使っている。院内で初回量からやり直す?
- すでに投与した薬名・経路・量・時刻を必ず確認する。院外投与も累積量と呼吸抑制の評価に含め、投与歴不明のままベンゾジアゼピンを重ねない。発作が続けば気道管理の準備と第二選択薬・搬送相談を並行し、治療の時計を来院時にリセットしない。
根拠:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023 - けいれんの動きが止まったのに反応が戻らない。薬が効いたと判断する?
- 呼吸・血糖・循環を再確認し、投与薬の鎮静に加えて非けいれん性重積を疑う。眼球偏倚や微細な反復運動の有無も見て、脳波と原因評価が可能な施設へ相談する。外見上の停止だけで治療終了とせず、意識が回復する方向かを経時的に記録する。
根拠:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023 - 第二選択薬を使い切ってから搬送を探せばよい?
- 当院は院内持続麻酔・人工呼吸管理へ進めないため、第二選択薬を検討する段階で受入先へ連絡する。薬剤の準備・投与中も呼吸循環を監視し、搬送に必要な情報を揃える。難治化してから連絡すると気道管理や次段階治療が遅れるため、相談と治療を同時に進める。
根拠:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023
- 何分でお薬を使う?
- 5分を超えたら第一選択薬。ここが治療開始の時刻(t1)。
- ルートが取れないときは?
- 非静脈路(ミダゾラムの頬粘膜・鼻腔内・筋注、ジアゼパムの直腸内)で投与する。
- 搬送はいつ考える?
- 第二選択薬を使う段階で受け入れ先に連絡する。当院は院内第三選択薬(30〜60分以上)に進めない。
- 熱性けいれんと同じ扱いでいい?
- いいえ。無熱性の初発発作は低血糖・電解質・頭蓋内病変・中毒を外し、熱性けいれんとは別に評価する。
9家族への説明
けいれんは、5分を超えると止めるお薬を使います。止まったあとに意識が戻るかどうかが大事なので、しばらく様子を見せていただきます。熱がないけいれんは、熱があるときのけいれんとは調べることが変わります。当院では続けて治療できない段階があるので、その場合は設備のある病院へ移ります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。