2-10細菌性気管炎
クループ様症状の悪化を疑う
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- クループとして治療を始めても良くならない、または悪化する子は細菌性気管炎を疑う。標準治療(アドレナリン吸入・ステロイド)に反応しない・急速に悪化するのが最大の手がかり。
- 先行するウイルス性感染症のあと数日で吸気性喘鳴と呼吸困難が出るのが典型パターン。咳嗽を契機に酸素飽和度が急激に低下することがある。
- 重症化すると挿管が必要になることが多い(症例集積データでは約70〜90%)。頻度自体はきわめてまれ。
- 気道の直接評価は専門チームが安全な気道管理下で行う。頸部X線は安定した例の補助検査で、単独で確定・除外しない。当院は院内夜間も頸部X線側面像を撮れ、当直医が読む。直達喉頭鏡は当院ではできない。
- 急性発症の吸気性喘鳴+高熱+多量の膿性分泌物、または陥没呼吸の増悪・チアノーゼ・意識障害があれば重症例=喉頭蓋炎と同じ扱い。触らない・刺激しない・体位を保つ。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 吸気性喘鳴→犬吠様咳嗽・嗄声が主体、アドレナリン吸入・ステロイドに反応する→ウイルス性クループ(反応が乏しければ再考)
- 吸気性喘鳴→犬吠様咳嗽を欠く、流涎・ふくみ声・前傾姿勢、分単位で進行→急性喉頭蓋炎(持てない)
- 吸気性喘鳴→頸部腫脹・頸部可動域制限・開口障害→咽後膿瘍・扁桃周囲膿瘍(持てない)
- 吸気性喘鳴→先行するウイルス性前駆症状を欠く突然発症、窒息・誤嚥エピソード歴→気道異物(持てない)
- 呼気性喘鳴(wheeze)→吸気性喘鳴(stridor)ではない→気管支喘息・RSV等の細気管支炎
3検査
- 頸部X線側面像は安定例で狭窄の部位・性状をみる補助検査。単独で確定・除外せず、中等症/重症では気道対応を先にする。夜間撮影は可能だが、画像のために搬送を遅らせない。
- 直達喉頭鏡検査 — 気道を迅速に確保できる管理下で行う確定診断法。膿性分泌物と声門下部の炎症を直接確認する
- 血算・CRP — 細菌感染を示唆する参考所見だが確定診断の手段ではない
4気道管理(当院でやること)
- クループとして治療開始した児の反応を確認する(改善するか、しないか)
- 本人が楽な姿勢のまま体位を保つ。呼吸数・SpO2・意識レベルを繰り返し確認する
- 刺激しない。啼泣を誘発する診察・処置は気道確保の準備が整うまで急がない
- 酸素を投与する(マスクを嫌がるなら無理に当てない)
- 重症感が強い・急速に悪化するなら検査結果を待たずに応援を呼ぶ
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 「反応しない=もう少し様子を見る」で片付けない
- 無理に仰臥位にしない、舌圧子で無理に咽頭を覗かない
- 血液検査・画像の結果を待って判断を遅らせない
- 当院では挿管を試みない(喉頭蓋炎と同じ扱い・院内方針院内)。失敗時の次の手段がないため、応援要請と搬送を急ぐ
5送る/持つの目安
- 帰宅典型的なウイルス性クループでアドレナリン吸入・ステロイドに反応する場合はクループとして経過観察
- 搬送・紹介クループ標準治療に反応せず急速に悪化、顕著な重症感・急速に進行する呼吸窮迫、直達喉頭鏡検査での確定診断が必要な例、咳嗽を契機とした急激なSpO2低下
6診療中の疑問と回答
- クループ治療後も悪化する。吸入を繰り返して待ってよい?
- 高熱、強い重症感、急速な呼吸悪化、分泌物増加があれば細菌性気管炎などを再評価する。アドレナリンで一時的に軽くなっても確定治療にはならない。気道対応が可能な専門チームへ早く連絡し、当院では挿管を試みず院内方針院内に従い搬送を調整する。
根拠:RCH 急性上気道閉塞 - SpO2が正常なら採血とX線を先に済ませてよい?
- 上気道閉塞の低酸素は遅い所見であり、陥没、空気流入、意識、疲労を優先して評価する。中等症以上なら苦痛を与える検査で完全閉塞を誘発し得る。楽な姿勢を保ち、採血・画像より気道チームへの連絡と安全な搬送を先行する。
根拠:RCH 急性上気道閉塞 - 喘鳴が小さくなったのは改善と考えてよい?
- 呼吸音だけでなく胸の動き、空気流入、意識を同時に確認する。喘鳴が弱くても空気が入らず疲弊していれば閉塞の悪化を疑う。啼泣させる咽頭診察や仰臥位を強制せず、応援と搬送を急ぎ、本人が選ぶ姿勢を保つ。
根拠:RCH 急性上気道閉塞
- クループと細菌性気管炎はどう見分ける?
- 標準治療(アドレナリン吸入・ステロイド)に反応しない、または急速に悪化することが最大の手がかり。多量の膿性分泌物や急性発症の吸気性喘鳴+高熱も手がかりになる。
- 診断のために頸部X線を先に撮る?
- 気道の安全を先に評価する。頸部X線は安定例の補助検査で、単独で確定・除外しない。直接評価・培養は気道管理可能な専門チームが行う。
- 重症化したらどう扱う?
- 喉頭蓋炎の治療と同様に扱う。挿管を要することが多いが、当院では挿管を試みない(院内方針院内)。応援要請と搬送を優先する。
8家族への説明
犬が吠えるような咳と診断されて治療を始めても、熱が下がらない、息苦しさがどんどん強くなる、せきをきっかけに顔色が悪くなる、というときは、気管の中で細菌の感染が起きている可能性があります。こうなると坂を下るように急に悪くなることがあるため、様子を見ずにすぐに連絡してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。