当院で行う範囲
- 合併症がなく安定していれば、夜間は当院で入院観察し、日勤帯に小児腎臓専門施設へ治療導入を相談する。ステロイドは当直判断で開始しない(既存の2026-09-25院内方針)。
- 夜間は尿定性・血算・Alb・Cr・BUN・電解質を確認できる。尿沈渣・尿蛋白定量・尿培養は夜間に出せず、C3の夜間可否も未確認。専門医への相談や急変対応を検査待ちにしない。
- 第1〜8週の治療は専門医管理下の参考経過。国内2020は8週間治療を推奨。ここではKDIGO 2025の8週選択肢を具体化し、投与回数はIPNAの朝1回を表示する。既存の家族説明にある国内方式の分3と混同せず、採用法・剤形・丸めは治療担当医が確定する。
適用から外れる状況・急変時の対応
- 循環不良・血栓・感染合併
- 腎機能低下や非典型所見は早期専門相談
- ショック・肺水腫
- 強い腹痛や発熱・血栓疑い
- 乏尿・腎機能低下・高度高血圧
時期ごとの検査・指示
- 入院時|浮腫の量と血管内脱水を分ける:入院当日・ステロイド開始前
- 第1〜4週|連日投与と反応の記録:プレドニゾロン開始から28日間
- 4週時点|感受性・抵抗性の分岐:標準量の連日投与4週終了時
- 第5〜8週|隔日投与を間違えずに続ける:8週法の後半28日間
入院時|浮腫の量と血管内脱水を分ける
入院当日・ステロイド開始前 / 当院
- 基準となる体格・循環
- 身長、現在体重、発症前の体重を記録。血圧・脈拍・CRT・末梢温・呼吸状態・尿量を確認する。眼瞼、下腿、陰部、腹水を診察し、むくみがあっても循環血漿量減少がないか判断する。 [3][4]
- 尿と採血
- 尿定性、早朝尿蛋白/Cr比、沈渣。血算、Alb、Cr・BUN、Na・Kを確認する。蛋白定量は初回治療前に少なくとも1回行う。血尿・腎機能低下・全身性疾患を疑う場合はC3/C4、ANA、ANCA、溶連菌関連抗体などを専門医と選ぶ。 [3][4]
- 初発パスから外す所見
- 1歳未満、肉眼的血尿、持続する高血圧、低C3、低灌流で説明できない腎機能低下、皮疹・関節炎、遺伝性疾患を示唆する家族歴・腎外所見は専門評価へ。12歳超の初発も腎生検の必要性を個別に検討する。 [3]
- その夜に転院相談する状態
- 灌流不良・ショック、呼吸不全、血栓症疑い、発熱と強い腹痛・腹膜刺激症状、重症感染、重い高血圧症状があれば安定例の夜間観察から外す。感染時は可能なら治療前に培養採取し、検査提出待ちで治療・搬送を遅らせない。 [4]
- 免疫抑制前の情報
- 感染徴候、予防接種・水痘や麻疹の罹患/曝露、腎疾患の家族歴、薬剤を確認。未接種・既往不明なら必要な抗体検査を検討し、結核などの検査は曝露・渡航背景に応じて選ぶ。 [3]
次の段階へ進む条件
- 安定例は日勤帯に検査結果と循環・尿量・体重の推移を専門施設へ伝える。
- 非典型所見と合併症を評価し、専門医が治療法・管理施設を確定してからステロイド開始へ進む。
第1〜4週|連日投与と反応の記録
プレドニゾロン開始から28日間 / 専門医管理下
- 初発の8週法
- 連日投与28日+隔日投与28日を計画する。早く尿蛋白が消えても、初発の連日投与をその時点で打ち切らない。再発治療の『寛解したら隔日へ』と区別する。 [1][2][4]
- 寛解日を記録
- 早朝尿蛋白/Cr比0.2 g/g以下、または試験紙が陰性〜±の状態が3日以上続けば完全寛解。単日の陰性や浮腫消失だけで寛解としない。完全寛解の判定日を治療記録に残す。 [2]
- 浮腫管理を並行
- 血圧・循環・尿量・Naに合わせる。中等度の浮腫でも循環が保たれていれば減塩を基本とし、一律の水分制限や利尿薬を出さない。高度浮腫、低Na、低灌流は下記の分岐で再評価する。 [3]
次の段階へ進む条件
- 4週以内の完全寛解ならステロイド感受性として、予定した隔日投与へ。
- 4週時点で完全寛解していなければ、隔日投与へ機械的に切り替えず反応不十分の評価へ。
4週時点|感受性・抵抗性の分岐
標準量の連日投与4週終了時 / 専門医管理下
- 寛解が得られない
- 用量・服薬状況と診断を見直し、ステロイド抵抗性の評価を開始。腎生検・遺伝学的検査と次の治療を専門医が検討する。単純な初発8週パスを続けない。 [2]
- 部分寛解なら確認期間
- 4週時点で部分寛解の症例では、専門医が4〜6週の確認期間を設けることがある。6週までに完全寛解ならlate responder、なお未寛解なら抵抗性として扱う。自己判断で連日ステロイドを延長する指示ではない。 [2]
次の段階へ進む条件
- 4週以内に完全寛解した例のみ、標準8週法の後半へ。4週以降に寛解したlate responderは専門医が期間・用量を個別に計画する。
- 抵抗性・非典型例はこのパスを終了し、専門医の個別治療計画へ切り替える。
第5〜8週|隔日投与を間違えずに続ける
8週法の後半28日間 / 専門医管理下
- 投与日はカレンダーで指定
- 隔日投与は48時間ごと。毎日投与や曜日固定の週3回投与と混同しない。開始日、各投与日、最終投与日を処方時に確認する。8週法の標準では隔日期間内の追加漸減は行わない。 [2][3]
- 再発を捉える
- 完全寛解後、尿蛋白3+以上または尿蛋白/Cr比2 g/g以上が3日連続で再出現すればIPNAの再発基準。浮腫の有無を問わない。発熱・腹痛・呼吸症状や乏尿があれば3日を待たず受診する。 [3][4]
- 依存性・頻回再発を識別
- 初発/再発に対する推奨ステロイド治療中または終了14日以内の再発が2回連続すれば依存性。KDIGO 2025/IPNAの頻回再発は初発寛解後6か月内に2回以上、または任意の12か月に3回以上。旧国内資料の年4回という定義と混同せず、再発日と治療量を残す。 [2][3]
次の段階へ進む条件
- 予定した治療が終了し、再発なく経過すれば専門外来で尿蛋白・成長・副作用を追跡する。
- 再発・依存性・頻回再発・副作用があれば、ステロイド節約薬を含む専門医の治療再設計へ。
治療量・期間
対象・重症度・製剤・併存症を確認し、治療を担当する専門医が個別に指示します。
プレドニゾロン|初発8週法の前半
専門医が標準治療の適応と判断した初発例。KDIGO/IPNA参考量。
60 mg/m²/日 または 2 mg/kg/日、上限60 mg/日。経口・朝1回(IPNA)。推定ドライウエイトに基づく体重または体表面積で計算し、両方式の用量を足さない。
期間・切替:連日28日間。早期寛解しても初発ではこの期間を維持する。4週で未寛解なら専門医が方針を再評価。 [2][3][4]
投与中に確認
- 早朝尿蛋白・体重・血圧・循環・尿量を追跡。
- 食欲、睡眠、気分/行動、感染、血糖上昇などの副作用を確認。
注意・適用条件
- 浮腫を含んだ実測体重で過量にならないよう計算体重を明記。
- 国内の分割投与法とIPNAの朝1回法を混在させない。剤形・丸め・服用時刻は専門医が処方で確定。
プレドニゾロン|初発8週法の後半
前半で寛解し、8週法を継続する症例。
40 mg/m²/回 または 1.5 mg/kg/回、上限40 mg/回。朝1回、隔日投与。
期間・切替:28日間。標準法ではこの隔日期間中の漸減は行わず、終了日は担当医が指定する。 [2][3]
投与中に確認
- 尿蛋白の再出現、血圧、体重、副作用、飲み間違いを確認。
注意・適用条件
- 『40 mg/m²/日を毎日』ではない。
- KDIGOには6週連日+6週隔日の12週法もある。8週法と途中で混ぜず、開始時に選択する。
再発時のプレドニゾロン|初発と期間が異なる
既知のステロイド感受性ネフローゼの再発。既往主治医と相談して開始。
60 mg/m²/日 または2 mg/kg/日(上限60 mg/日)を経口1日1回。完全寛解が3日以上続いたら40 mg/m²/回 または1.5 mg/kg/回(上限40 mg/回)の隔日投与へ。
期間・切替:再発の連日投与は寛解を基準に変更し、隔日投与を4週間行う。 [2]
投与中に確認
- 寛解までの期間、再発時の治療量、直前の減量/終了日を記録。
注意・適用条件
- 初発の連日28日間と区別。
- 頻回再発、依存性、重い副作用、4週未寛解は単純な再発パスを反復せず専門医へ。
高度浮腫のアルブミン・利尿薬|専門医が適応を判断
高度浮腫などで静注治療が必要な症例。低Alb値だけで自動投与しない。以下はショック蘇生用の投与法ではない。
IPNA参考:20%または25%アルブミン0.5〜1 g/kgを4〜6時間で静注。著明な血管内脱水・低Naがない場合、途中/終了時にフロセミド1〜2 mg/kgを5〜30分で静注を検討する。
期間・切替:反応と循環を再評価して1回ごとに判断する。定期反復オーダーにしない。 [3]
投与中に確認
- 投与前・中・後の血圧、脈拍、呼吸、酸素化、尿量、循環を監視。
- 呼吸状態の悪化や血圧上昇では容量過剰・肺水腫を疑い投与を再評価。
注意・適用条件
- 乏尿・高血圧では容量過剰に特に注意。
- 低灌流例では利尿薬を保留し、容量が回復したことを確認してから検討する。
- ショックは緊急蘇生・搬送の経路へ。濃厚アルブミンの緩徐投与を蘇生の代わりにしない。
- 当院の製剤在庫、同意、投与速度、監視体制は未確定。実投与は専門施設と相談する。
毎日の評価と記録
- 毎朝|体重と尿蛋白
- 同じ時刻・同じ体重計で体重測定し、前日差と発症前からの差を記録。寛解まで早朝尿蛋白を毎日測り、陰性〜±の連続日数を数える。 [4][3]
- 各勤務帯|水分出納と循環
- 飲水・食事中の水分・輸液と尿量を集計し、尿量をmL/kg/時で確認。血圧、脈拍、CRT、末梢温、呼吸、浮腫を合わせて読む。体重だけを減らす目標にしない。勤務帯ごとの記録は運用案で、病状に応じて観察間隔を短縮する。 [4][3]
- 食事・飲水の指示
- 蛋白摂取は年齢相応とし、尿中喪失を高蛋白食で補わない。浮腫時は減塩、寛解中は通常の塩分摂取。水分は一律に制限せず、Na 130 mEq/L未満または高度浮腫では入院下で制限を検討する。高脂血症による偽性低Naにも注意。 [3]
- 採血を追加する条件
- 乏尿、循環の変化、利尿薬/アルブミン使用、体重や浮腫の悪化ではCr・BUN・Na・Kなどを再評価する。Albを含む再検間隔は経過に応じ担当医が指定し、安定例にも全項目を毎日採血する固定指示にはしない。 [3][4]
- 感染・血栓を毎回確認
- 発熱・腹痛・皮膚感染、片側下肢腫脹、胸痛・呼吸困難、新しい神経症状を確認。長い不動や血管内脱水を避ける。小児全例への予防的抗凝固/抗血小板薬は行わず、血栓既往など個別リスクを専門医と評価する。 [3][4]
退院条件・外来への引継ぎ
- 退院の状態目標
- 浮腫が定期的な静注アルブミンなしで管理でき、体重が増え続けていないことを確認。適切な治療が開始され、家族への教育と受診予定が整っている。退院は治療8週間の終了と同義ではなく、残りは専門外来で管理できる。 [4]
- 服薬を家族が説明できる
- 薬名・1回量・投与日・連日から隔日への切替日・終了予定を確認。嘔吐で服薬不能、急病・外傷時の連絡先も決め、ステロイド終了後を含む副腎抑制の可能性を伝える。 [4]
- 自宅で測る尿
- 寛解までは毎朝。寛解後の初年度は少なくとも週2回を目安とし、その後は個別化。1+以上、発熱・感染、浮腫出現では毎日に戻す。試験紙の使い方・判定時刻を家族と実演し、尿蛋白と服薬を記録する。 [3][4]
- 相談・再受診の目安
- 蛋白3+が3日連続なら主治医へ再発相談。強い腹痛・発熱、息苦しさ、尿量低下・ぐったり、片脚の腫れ、新たな神経症状は当日緊急評価。水痘・麻疹への曝露も速やかに連絡する。 [3][4]
- 専門外来へ引き継ぐ
- 初回再診日を退院前に予約し、寛解日、治療開始日・用量、体重/血圧/尿蛋白の推移、残りの投与予定を共有。再発・副作用時は早めに受診し、長期には身長・体重・血圧、ステロイド副作用、予防接種計画を追跡する。 [3][4]
院内で決める事項
- 当院で治療導入を行うか、専門施設へ転院するか。現行は安定例の夜間観察と日勤相談まで。
- 採用する初発レジメンと1日の投与回数、推定ドライウエイト、体表面積の算出・端数処理・剤形。
- バイタルと出納の記録間隔、尿量/血圧の個別コール基準、再採血の条件。
- アルブミン製剤の在庫・同意手順・監視体制・専門施設との連絡経路。
- 退院後の担当外来、尿試験紙の入手、再発/曝露時の連絡先と追加予防接種計画。
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