2-4こどもの肺炎(市中肺炎)
このページの目次16項目
1病態から診療を組み立てる
肺の炎症を、呼吸と全身状態の変化として読む
肺炎では炎症によって肺胞・間質のガス交換が妨げられ、呼吸数と呼吸仕事が増える。重症度は画像の白さだけではなく、酸素化、陥没、無呼吸、飲水、意識・循環で評価する。発熱や不安でも呼吸数は増えるため、可能な範囲で落ち着いた状態を観察する。乳幼児では胸痛を訴えられず、哺乳低下や活気低下が前景に出ることがある。診察・治療後の変化を同じ指標で記録すると、悪化を共有しやすい。[1][16]
年齢と背景は病原体の推測にも、入院判断にも使う
乳幼児ではウイルスが多いが、年齢だけで細菌性を除外しない。学童で長引く乾性咳嗽や家族内流行があればマイコプラズマを考える。一方、低月齢児の無呼吸や哺乳低下は一般的な外来肺炎と同じ枠で扱わない。心肺疾患、免疫不全、神経筋疾患や誤嚥リスクでは、軽い所見でも悪化しやすく、通常の市中肺炎以外の評価が必要になる。免疫不全、重症・複雑性肺炎では早く専門施設へ相談する。[2][16]
「肺炎らしい陰影」と「原因菌」は別の判断
典型的で軽症の市中肺炎は臨床診断でき、全例のX線・採血は不要である。中等症以上、診断不確実、入院や合併症を検討する場面では胸部X線を使う。陰影だけでウイルス・細菌やマイコプラズマを確実に分けることはできない。WBC・CRPは炎症の補助であり、単独で病原体を決めたり、低値を理由に重症を否定したりしない。当院の夜間にPCT・白血球分画/ANCを追加して判定する手順は作れない。[16]
片側の所見と治療反応不良から、合併症を探す
片側の呼吸音減弱・濁音、胸痛、呼吸状態の悪化、治療しても改善しない発熱では胸水・膿胸を考える。単純X線は当院の夜間にも可能だが、胸水の性状や隔壁を十分評価できず、小さな胸水も除外しきれない。2026年IDSA/PIDS追補は中等量〜大量胸水で超音波による評価を提案しているが、推奨の確実性は低く、当院の夜間は経験者の超音波・CTが使えない。呼吸障害を伴う胸水や膿胸疑いは、画像を揃えるために待たず、専門施設へ所見と酸素需要を伝える。[17]
抗菌薬の選択と、反応不良の診断を分けて考える
原因菌を十分推測できない場合でも、細菌性肺炎が疑わしければ年齢・重症度・地域の耐性状況から経験的治療を選ぶ。既存の院内用量表と薬剤確認を用い、海外の短期投与や薬剤構成をそのまま処方へ移さない。反応不良では内服状況、嘔吐、診断、他病原体、耐性、胸水・膿胸を順に再評価し、発熱だけで抗菌薬を増やし続けない。喘鳴優位なら細気管支炎・喘息、急な発症・片側所見なら異物も戻って検討する。[2][16][18]
再評価の約束は、悪化時の即時受診とセットにする
既存の48〜72時間の効果判定は、悪化している児をその時刻まで待たせる意味ではない。帰宅には安定した酸素化、呼吸仕事と経口摂取の改善、家庭での観察と再診の確保が必要である。発熱が続くことに加えて呼吸が苦しい、飲めない、疲労が戻らない場合は早く再評価する。咳が残っていても全身状態が回復している場合とは分けて説明する。NICE 2025の再診説明は小児部分を参照し、成人のCRB65/CURB65や成人のバイオマーカー手順を小児へ転用しない。[16][18]
2一目でわかるフロー
受診(発熱・咳嗽・呼吸困難感)
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① レッドフラグ評価(§1)
陥没呼吸/鼻翼呼吸/呻吟・SpO2低下・活気不良・哺乳/経口摂取不良・
チアノーゼ・3ヶ月未満・基礎疾患・片側性所見(胸水/膿胸疑い)
│
├─ あり → 精査・入院検討・上位/専門紹介(§1・§5)
│
▼ なし
② 診断は臨床が基本:頻呼吸(年齢別閾値・最重要所見)+陥没呼吸/SpO2+聴診(§2)
│
▼
③ 重症度・病型判定(軽症/中等症/重症、ウイルス性 vs 細菌性 vs マイコプラズマ)(§2)
│
▼
④ 検査の要否判断(§3)
外来軽症 → ルーチンX線・血液検査は不要(臨床評価を優先)
中等症以上/入院例 → X線・血液検査・必要に応じ病原体検査
│
▼
⑤ 治療(§4)
細菌性疑い → アモキシシリン(第一選択)
マイコプラズマ疑い(学童中心) → マクロライド
48〜72時間で無効 → 再評価(耐性マイコ・診断再検討・合併症検索)
│
▼
⑥ 再診・帰宅指導 or 紹介・入院(§5・§6)図は横にスクロールできます →
3レッドフラグ(見逃し厳禁)
以下があれば精査・入院・上位/専門紹介を検討する。
- 呼吸不全の兆候: 陥没呼吸(肋間・胸骨下)、鼻翼呼吸、呻吟(うなり呼吸)、シーソー呼吸
- 無呼吸/呼吸休止(apnea): 特に生後2〜3ヶ月未満児で重要な見逃し厳禁所見。RSV等による細気管支炎・肺炎、百日咳(後述)で無呼吸発作から急変しうる[11][12]
- 低酸素: room airでのSpO2低下。院内採用の入院適応カットオフ値は要確認だが、国内GLの重症度分類では軽症の目安がSpO2≧93%、中等症以上が<93%(酸素投与下でも<93%なら重症)とされており、暫定値として参考にできる。決定=93%単一基準(GL2022)を正本として確定する。監修者・石和田稔彦教授(千葉大学)本人の公式解説(ラジオNIKKEI 2023-06-06、本セッションで実PDFを直接確認)で93%基準を確認した[1][5][15]。GL2022書籍本文・Minds本文そのものは2026-09-26時点も非公開のため未照合。SpO2が93%以上でも、全身状態不良・経口摂取不良・呼吸数異常・陥没呼吸/呻吟・無呼吸・循環不全・意識障害のいずれか1つでもあれば中等症以上と判定する(§2参照)。なお2017年版GLの基準(軽症≧96%・中等症90〜95%・重症<90%)は2022年版で置き換えられており、SpO2 93〜95%帯は2017年版なら中等症に該当していた点に注意(要確認:本院採用cutoff値は別途要確認、GL2022書籍本文・Minds本文の直接照合は未了)
- 頻呼吸+全身状態不良: 活気不良、哺乳・経口摂取不良、脱水兆候
- チアノーゼ
- 意識レベル低下(ぐったり、あやしても反応が乏しい)
- 年齢因子: 生後3ヶ月未満の発熱・呼吸器症状(新生児・若年乳児は重症化しやすく敗血症除外も要検討)。特に生後2ヶ月未満は百日咳による急速な呼吸不全・無呼吸・脳症・肺高血圧症の高リスク群であり、2024年以降マクロライド耐性百日咳菌の分離頻度増加も国内で報告されている(出典: 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「生後2か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について」2025年6月22日, 確認日 2026-09-25)。本院での百日咳PCR/LAMP検査の実施可否は§6参照。
- 基礎疾患: 慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫不全、神経筋疾患、早産児
- 片側性の呼吸音減弱・濁音・胸痛の訴え → 胸水・膿胸を疑う所見。持続する高熱・抗菌薬治療下での改善不良でも要疑い
- 抗菌薬開始後48〜72時間で解熱しない、または増悪 → マクロライド耐性マイコプラズマ、診断再検討(他病原体・非感染性疾患)、胸水/膿胸などの合併症を再評価[1][2]
4重症度・病型の判定
頻呼吸の年齢別閾値(診断における最重要所見)
臨床診断は問診・視診(呼吸数・陥没呼吸)・SpO2・聴診が基本で、外来軽症例でX線は必須ではない(§3参照)。頻呼吸の年齢別閾値は次の通り(WHO基準と国内文献はおおむね一致)。
| 年齢 | 頻呼吸の目安 |
|---|---|
| 2ヶ月未満 | ≥60回/分 |
| 2〜11ヶ月 | ≥50回/分 |
| 1〜5歳 | ≥40回/分 |
| 学童以上 | ≥20回/分(参考値。二次情報源経由でGL2022を確認した値で、原典未照合。年少児より基準が急落する点は生理的に妥当だが、運用前に原典表での確認を推奨)[1][5](要確認:原典未照合) |
表は横にスクロールできます →
出典: 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022の要約[1][5]、WHO IMCI(Integrated Management of Childhood Illness)の頻呼吸基準[4]
重症度分類
国内GLは全身状態(良好/不良)・経口摂取障害/脱水の有無・SpO2・呼吸数・呼吸努力・無呼吸・循環不全・意識状態の8項目を評価項目とし、軽症・中等症・重症の3段階で判定する。中等症以上は該当項目が1つでもあればその段階と判定する枠組みを採用している[1][5]。SpO2は軽症≧93%・中等症<93%・重症は酸素投与下でも<93%が目安として引用される。決定=この8項目・SpO2 93%単一基準は、監修者・石和田稔彦教授(千葉大学)本人の公式解説(ラジオNIKKEI 2023-06-06、表5-1、本セッションで実PDFを直接確認)で確認した[1][5][15]。GL2022書籍本文・Minds本文そのものは2026-09-26時点も非公開のため未照合(各項目の詳細な採点基準は原典表での最終確認が望ましい)。SpO2 93〜95%帯は2017年版GL(軽症≧96%・中等症90〜95%・重症<90%)では中等症に該当していたが、2022年版では単独では軽症の目安となる点に注意(要確認:原典書籍・Minds本文の直接照合は未了)。
病型鑑別(臨床像による見分け)
- ウイルス性: 乳幼児に多い。先行するかぜ症状から徐々に増悪、喘鳴を伴うことが多い(RSV等の季節性ウイルスが背景にあることが多い)
- 細菌性(肺炎球菌等): 急な高熱・患側性の聴診所見・CRP高値の傾向。全年齢で起こりうるが乳幼児で重要
- マイコプラズマ: 学童〜若年成人に好発。乾性咳嗽が遷延し、聴診所見の割に全身状態が保たれる(「歩く肺炎」と称されることがある)のが典型だが非典型例もある。家庭内・学校等での集団発生に注意。2024年半ばから全国的な流行が継続しており、2025年以降も動向注視が必要[3]
見逃しやすい鑑別・背景因子
- 細気管支炎(RSV等): 生後24ヶ月未満、特に乳児の喘鳴を伴う下気道感染では肺炎との鑑別が問題になる。呼吸窮迫の増悪・チアノーゼ・嗜眠・無呼吸の既往・低酸素血症・哺乳不良は入院適応となる点は肺炎の重症化サインと共通する[12]
- 気道異物(誤嚥): 突発発症・窒息エピソードの問診が鍵。片側性の呼吸音減弱・喘鳴・遷延する咳嗽は胸水/膿胸だけでなく気道異物の典型像でもあり、特に1〜3歳で誤嚥・誤飲事故が多い[13]
- 百日咳: 生後2ヶ月未満では百日咳菌感染により急速な呼吸不全・無呼吸・脳症・肺高血圧症を来しうる致死的経過が報告されている。2024年以降、国内でマクロライド耐性百日咳菌の分離頻度増加も報告されており、生後2ヶ月未満の遷延性咳嗽・無呼吸では百日咳菌のPCR/LAMP検査を検討する(2025年6月改訂の学会注意喚起)[11]
- ワクチン接種歴: PCV13/15(肺炎球菌結合型ワクチン)・Hibワクチンの接種状況は重症度・起炎菌の推定に影響する。国内ではPCV13定期接種導入後、対象血清型による侵襲性肺炎球菌感染症が乳幼児で大幅に減少したと報告されており、未接種・接種不完全児では侵襲性感染症のリスクが相対的に高い点を問診で確認する[14]
5検査
- 必要:
- 臨床評価(視診・呼吸数・SpO2・聴診)を診断の中心とする
- 中等症以上・入院検討例: 胸部X線、血液検査(WBC/CRP等)
- マイコプラズマ疑い(特に学童・遷延する乾性咳嗽): 迅速抗原検査やLAMP法等の病原体検査を臨床経過に応じて検討
- 胸水疑い(片側性の濁音・呼吸音減弱): 胸部X線(側臥位含む)・エコー、必要に応じCT
- 不要・過剰になりがち:
- 外来軽症例へのルーチン胸部X線。国内GLは重症度評価や治療方針変更の判断材料としての位置づけであり、軽症の確定診断目的でのルーチン施行までは求めていない[1][5]
- 外来軽症例へのルーチン血液検査(CRP等)。ウイルス性・細菌性の鑑別に単独では限界があり、臨床像とあわせた判断が優先される
- 軽症ウイルス性が強く疑われる乳幼児喘鳴例への広範な培養検査
6治療
- 第一選択(細菌性・肺炎球菌等を想定した通常の市中肺炎):
- 外来: アモキシシリン内服。国内GLは「アモキシシリン/アンピシリンの5日間投与」を推奨度1A(強い推奨)としており、体重換算の考え方としては30〜40mg/kg/日・分3〜4が第一選択として示される(GL2017の推奨表を引用した査読誌の総説[10]と、GL2022のCQ要約を掲載する二次情報源[5]の双方で一致した値。原典=GL2022書籍・Mindsサマリー本文は本レビュー時点で直接確認できていない)[1][5][10](要確認:原典=書籍・Minds本文での最終照合が望ましい)
- 注意: 海外(米国PIDS/IDSA)のガイドラインはPRSP(肺炎球菌ペニシリン耐性)を念頭に高用量アモキシシリン90mg/kg/日を第一選択としており、この90mg/kg/日という数値がネット上の解説記事等で混在して引用されていることがある。国内GLは30〜40mg/kg/日を採用しており、海外の高用量レジメンとは別物である点に注意[10]
- ペニシリンアレルギー時は第三世代セファロスポリンを検討
- 入院例: アンピシリン静注へ切り替え。体重換算の考え方としては1回30〜40mg/kg・1日3回(総量約90〜120mg/kg/日相当)が査読誌の総説で引用されている。5日間投与を基本とする点は外来と同様[1][5][10](要確認:原典未照合)
- マイコプラズマ疑い・確定(学童中心):
- 第一選択はマクロライド系。体重換算の考え方として、アジスロマイシンは1日1回・3日間、クラリスロマイシンは分2〜3・10日間、という用法が日本小児科学会の資料・添付文書情報で示されている[2][9]
- マクロライド感受性であれば投与後48時間以内に大多数(8割以上)が解熱する一方、耐性株では大多数(約7割)が解熱しないとされる。この経過は無効判定・薬剤変更のタイミングの目安になる(投与後2〜3日以内の解熱で概ね評価)[2]
- 第二選択・無効時:
- マクロライド開始後48〜72時間で解熱しない、または臨床的に増悪する場合はマクロライド耐性マイコプラズマを考慮する。日本小児科学会の考え方(2025年3月改訂)では、マクロライド前投与があり症状改善がない場合の耐性率は90%以上、前投与がない場合は50%以下という枠組みが示されており、単純な「全体の耐性率○%」より治療反応で判断する構造になっている。なお2024年上半期の耐性率が60%という報告もあるが、これは大阪府など一部地域の調査に基づくもので全国代表値ではない点に注意(本文中の「54〜60%」という表現は地域限定データの一般化であり、本改訂で「マクロライド前投与への反応」ベースの判断枠組みに修正した)[2][6]
- 耐性が明らかな場合・マクロライド無効例では、トスフロキサシン(12mg/kg/日・分2、7〜14日間が目安。8歳未満でも「肺炎」例で他に有効な選択肢がない場合に使用を検討)またはテトラサイクリン系(ミノサイクリン)(2〜4mg/kg/日・分2、7〜14日間が目安。8歳未満は他の薬剤が使用できないか無効の場合にのみ、一過性骨発育不全・歯牙着色・エナメル質形成不全のリスクを踏まえて限定的に考慮)への変更を検討する[2][8]
- 使用条件・記録: いずれも適応外または限定的適応の使用であり、日本小児科学会「小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方」(2025年3月29日改訂)でも「使用する必要があると判断される場合」に限るとされる限定的選択であることを原文で確認した(出典: 同文書, 確認日 2026-09-25)。同文書に「同意取得を必須」とする明文規定はなく、実務上は保護者への説明(他の選択肢がない理由・歯牙着色等の副作用リスク)と同意の取得、カルテへの記載を行うことが、限定的適応薬剤の一般的な運用実務として望ましい。院内での具体的な説明・記録運用は§6参照。
- 通常の細菌性肺炎でアモキシシリン無効・非定型病原体の可能性が高い場合はマクロライドへの変更やカバー拡大を検討
- やってはいけない/非推奨:
- ウイルス性が強く疑われる軽症例への抗菌薬投与
- キノロン系薬のマイコプラズマ肺炎へのルーチン第一選択使用(マイコプラズマ感染症は自然軽快しうる疾患であり、抗菌薬投与が必須とは限らない点も含め、耐性の観点からルーチン使用は避ける)[2]
- 正当な理由のない広域抗菌薬(第3世代セフェム等)の外来第一選択使用
7再診・帰宅指導・保護者説明
- 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
- 呼吸が速い・苦しそう(陥没呼吸、肩で息をする)
- 顔色・唇の色が悪い
- 水分が摂れない、おしっこの回数が減る
- ぐったりして呼びかけへの反応が悪い
- 抗菌薬を始めて48〜72時間経っても熱が下がらない、または一旦下がった熱がまた上がる
- 経過の見通し・登園/登校の目安:
- 細菌性肺炎はアモキシシリン開始後、数日以内に解熱傾向となることが多い。咳嗽自体は数週間残ることがある旨を事前に伝えておく
- マイコプラズマ肺炎は解熱後も乾性咳嗽が遷延しやすい
- 登園・登校再開の一律の法的基準(学校保健安全法上の出席停止規定)は肺炎そのものには存在しないため、解熱し全身状態が良好であることを基本に個別に判断する(園・学校ごとの運用差がある)。
- 紹介・入院の閾値:
- §2の重症度分類で中等症以上、乳児(特に1歳未満)、基礎疾患あり、内服困難、経口抗菌薬で改善しない、胸水貯留などの合併症を認める場合は入院を検討[1][5]
- 外来治療開始後48〜72時間経過観察しても改善しない場合、または§1のレッドフラグに該当する場合は紹介・入院を検討
8出典(日本のGL優先・URL+版年)
- [1] 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022(日本小児感染症学会・日本小児呼吸器学会編、協和企画、2022年10月14日発行、2024年9月に一部内容更新の電子版あり)。改定で変わるため運用前に最新版確認。2022年改訂でCOVID-19の重症度評価に合わせてSpO2基準を96/90-95/<90%(2017年版)から93%単一基準へ変更(決定・2026-09-26、出典[15]で確認)。 https://www.jspid.jp/news/guideline/gaidorain2022/ / https://www.kk-kyowa.co.jp/service/publishing/book_list/d20221014/ / https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00758/
- [2] 小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会、2013年2月19日初版・2025年3月29日改訂) https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250422_maikopurazuma.pdf
- [3] マイコプラズマ肺炎流行に対する日本小児科学会からの注意喚起(2024年10月27日) https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241028_maiko.pdf
- [4] WHO Integrated Management of Childhood Illness (IMCI)における頻呼吸(fast breathing)の年齢別定義(NCBI Bookshelf掲載表) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK361919/table/part2.ch8.sec3.table3/
- [5] 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022のCQ要約(つだ小児科クリニック、二次情報源。原典GL本文での照合が望ましい。サイト自体にGL2022由来の出典表示はないが、数値は出典[15]・GL2022表5-1と一致することを別途確認済み) https://tsudashonika.com/disease-cat/respiratory/child-respiratory-infections-guideline/
- [6] マイコプラズマ肺炎、大阪府のマクロライド耐性率は約6割(CareNet 医師向け医療ニュース、2024年報告紹介。大阪府限定の調査であり全国値ではない) https://www.carenet.com/news/general/carenet/60695
- [7] 診療ガイドライン等に基づくマイコプラズマ肺炎治療の現況(国立健康危機管理研究機構 IASR、Vol.45 No.527) https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/45/527/article/010/index.html
- [8] トスフロキサシントシル酸塩細粒小児用15%「TCK」製品情報(今日の臨床サポート) https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=66226
- [9] アジスロマイシン細粒小児用10%「トーワ」/クラリスロマイシン錠50mg小児用「大正」添付文書情報(KEGG MEDICUS) https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065340 / https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070246
- [10] 坂田宏「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017に基づいた小児期市中肺炎の治療」日本化学療法学会雑誌 66(3):366-372, 2018(査読誌総説。GL2017のTable 3/4を引用し、外来アモキシシリン30〜40mg/kg/日・分3〜4、入院アンピシリン1回30〜40mg/kg・1日3回を明記。GL2022での数値変更の有無は未確認) https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06603/066030366.pdf
- [11] 生後2か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について(日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会、2025年6月22日) https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250623_jyushouhyakunitizeki.pdf
- [12] 細気管支炎(MSDマニュアル プロフェッショナル版、小児科) https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/幼児における呼吸器疾患/細気管支炎
- [13] 小児の誤飲・誤嚥事故(長村敏生、京都第二赤十字病院小児科、あんしんこども館掲載) https://anshinkodomokan.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/23_accidental_ingestionaspiration.pdf
- [14] 成人用肺炎球菌ワクチンファクトシート(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所、2025年7月4日。国内PCV13定期接種導入後の小児IPD減少データを含む) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001569888.pdf
- [15] 石和田稔彦(監修、千葉大学)ラジオNIKKEI資料「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022」解説(2023年6月6日放送分。表5-1〈全身状態・経口摂取・SpO2・呼吸数・努力性呼吸・無呼吸・循環・意識の8項目、1項目該当で中等症・重症〉、SpO2 93%以上で軽症・93%未満で中等症・酸素投与下93%未満で重症、2026-09-26に本セッションで実PDFを取得し全文確認)
- [16] Royal Children's Hospital Melbourne. Community acquired pneumonia. Updated 2023-10. https://www.rch.org.au/clinicalguide/guideline_index/Pneumonia/ (2026-10-02本文確認。臨床重症度・検査限界・合併症・転院・帰宅。豪州の抗菌薬用量・輸液量は院内オーダーに採用しない)
- [17] IDSA/PIDS. 2026 Guideline Update on the Management of Community-Acquired Pneumonia in Infants and Children Older Than 3 Months of Age: parapneumonic effusion/empyema recommendations. https://www.idsociety.org/~/link/018511fd86374a4ca01c5a77e570757c.aspx (2026-10-02本文確認。今回の適用は胸水・膿胸、全ての市中肺炎治療を更新した資料ではない)
- [18] NICE. Pneumonia: diagnosis and management. NG250. Published 2025-09-02. 小児の治療・回復と再診説明(1.10.2–1.10.4). https://www.nice.org.uk/guidance/ng250/chapter/recommendations (2026-10-02公式HTML本文確認。成人のスコア・バイオマーカーは対象外。英国の投与期間を院内方針として採用しない)
9抗菌薬の選び直しと既存処方の補足(2026-10-27)
ペニシリンアレルギーは原因薬、発現時間、呼吸循環症状、粘膜障害などを確認し、反応型に応じて代替薬を選ぶ。重篤な即時型反応・重症薬疹では、セフェムへ自動変更せず上級医へ相談する。RCH市中肺炎
マクロライド投与後48〜72時間で解熱しない場合は、診断・服薬状況・混合感染・胸水などを再評価する。代替薬が必要なマイコプラズマ肺炎と判断した場合に限り、トスフロキサシンは1日12mg/kgを分2(1回6mg/kg、1日最大360mg)、7〜14日間を検討する。ミノサイクリンは1日2〜4mg/kgを分2(1日最大200mg)、7〜14日間が目安である。ミノマイシン顆粒2%は20mg/gで、1日最大200mgは製剤10gに相当する。8歳未満のテトラサイクリン系は他薬が使用できないか無効の場合にのみ考慮する。数字だけで代替を決めず、適応・年齢・薬剤の有害作用と必要性を判断する。日本小児科学会2025年改訂・表2
10臨床医が迷う場面
2026-10-27追記。海外指針の評価の考え方は参考とし、国内承認用量・既存の院内方針と区別する。
11抗菌薬開始翌日、まだ発熱している。変更する?
全身状態・呼吸・飲水が改善傾向なら、24時間の発熱だけで広域薬へ変更しない。外来例は24〜48時間で再診を設定し、48〜72時間で改善が乏しければ用量、飲めた量、診断、胸水などの合併症を再評価する。酸素化低下や呼吸苦の悪化はその時点で評価し、予定の再診まで待たない。
12マクロライドを2〜3日使っても解熱しない。耐性で決まり?
耐性を疑う時点だが、無効だけでは確定しない。服薬状況、マイコプラズマ診断、他病原体・混合感染、胸水や重症化を再評価する。日本小児科学会2025年改訂は必要性を判断した肺炎例で代替薬を考慮とし、自動変更は勧めていない。8歳未満のテトラサイクリン系は他薬が使えないか無効の場合に限って検討する。
13マイコプラズマ抗体陽性ならマクロライドを始める?
単回のIgM・抗体陽性だけでは既感染との区別が難しい。肺炎の臨床像と採取時期を合わせ、必要なら核酸同定・迅速抗原で急性期診断を補う。検査陽性だけで治療を延長しない。解熱後に咳が残る場合も、呼吸状態と経過を再評価してから変更を決める。
14胸部X線がまだ白い。抗菌薬を延長して撮り直す?
順調に回復した非合併性肺炎では、陰影の残存だけで延長したり全員に再撮影したりしない。発熱・呼吸症状の悪化や48〜72時間の治療不応で画像を再評価する。反復して同じ部位に起こる場合は背景病変を調べる。胸水・膿胸など合併性肺炎の画像フォローは別に計画する。
15点滴から内服へ変えるのは解熱してから何日?
一律の日数より、呼吸状態・酸素需要の改善、飲水と内服の確実さ、合併症の有無で判断する。非重症では入院中も内服で治療できる場合がある。膿胸、菌血症、重い基礎疾患は通常の外来コースと分ける。変更時は抗菌薬の総治療日数を整理し、内服開始日を「1日目」にして漫然と延長しない。
16ペニシリンアレルギーなら自動的にセフェムへ変える?
原因薬、投与から発症まで、蕁麻疹・呼吸循環症状、粘膜障害などを具体的に聴取する。即時型重症反応や重症薬疹では安易なβラクタムへの置換を避け、病原体・重症度に応じ上級医へ選択を相談する。「アレルギーあり」だけで一律に広域薬へ変更しない。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。