1-25不明熱(長引く発熱)
3大不明熱疾患(感染症・悪性腫瘍・膠原病)の順で詰める
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 当直で診断名をつける病気ではない。当直の仕事は①今夜死ぬ病気を外す ②川崎病を外す ③次の検査と次の受診日を決めるの3つ。
- 枝分かれの順番を守る。まず3大不明熱疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病)を確認する。
- 小児で最初に外すのは川崎病。5日以上の発熱があれば、他の主要症状を毎回取り直す。
- 「熱の形」より「熱以外の所見」。体重・成長曲線・皮疹・関節・リンパ節・肝脾腫・眼を毎回見る。
- 安定した不明熱に無目的の抗菌薬を出さない。投与後は培養の検出率が下がり得る。一方、FNや重症感染では採取を理由に治療を遅らせない。
- 不明熱の定義(小児・国内):腋窩温38℃以上の発熱が2週間(14日間)以上持続し、1週間(7日間)の入院精査でも原因を特定できない。
2鑑別のながれ
- 発熱+意識障害・けいれん・項部硬直→ABCを最優先で確認する→髄膜炎・脳炎(細菌性髄膜炎)
- 発熱+頻脈・CRT延長・乏尿・末梢冷感→循環不全の徴候→敗血症(小児敗血症)
- 発熱+急速に拡大する紫斑→出血斑の広がりを見る→髄膜炎菌血症・DIC(紫斑・出血斑)
- 起座呼吸・顔面や頸部の腫れ(長引く発熱児)→気道・血管圧迫を示唆する所見→前縦隔腫瘤。仰臥位にしない・鎮静をかけない(白血病を疑うとき)
- 5日以上の発熱+眼球結膜充血・口唇紅潮・発疹・手足の腫脹・頸部リンパ節腫脹・BCG痕の発赤→主要症状を毎回取り直す→川崎病(疑った時点で専門施設〈小児循環器〉へ紹介・搬送。院内方針院内)
- 末梢血に芽球/2系統以上の血球減少/肝脾腫+リンパ節腫大→痛みのないリンパ節の腫れ・原因が明らかでない発熱や寝汗・体重減少→血液悪性腫瘍(持てない)
- 2週間以上続く弛張熱+発熱時だけ出るサーモンピンク疹+関節痛→血小板・フェリチンが上がる(白血病と逆)→全身型若年性特発性関節炎
- 発熱+心雑音の新出/既知の心疾患→頻回の血液培養と早期の心エコー検査が重要。最後まで疑う必要がある→感染性心内膜炎
- 発熱+好中球減少(化学療法中)→見た目が良くても急変しうる→FNを疑う発熱はANCを待たず主治医・血液腫瘍担当・上級医へ直ちに連絡し、初回抗菌薬の開始時点とレジメンを確認する。搬送調整と初期安定化を並行し、連絡・搬送待ちで治療を遅らせない。連絡がつかない場合や搬送に時間を要する場合は院内上級医・救急連携へ直ちにエスカレーションする。
- 腹部腫瘤感・持続する腹痛→血液検査や画像検査の進歩で診断しやすくなったが特に注意が必要。エコー・CT→深部膿瘍(腹腔内・後腹膜、診断がつきにくい)
- 骨の圧痛・跛行→診断がつきにくい→骨髄炎
- 結核の曝露歴がある→肺内結核・肺外結核・粟粒結核の全てで念頭に置く。届出が要る→結核(肺内/肺外/粟粒)
- きれいに周期的な発熱→間欠期は完全に元気・成長も正常→PFAPA(周期性発熱症候群、緊急性なし)
3検査
- 血算をまず出す(末梢血液像・白血球分画の鏡検は当直帯に出せない。異型リンパ球・芽球の確認は翌朝の鏡検に回す)
- CRP(赤沈は当直帯に出せない。翌日以降の評価に回す)
- LDH・尿酸(悪性腫瘍で高値)
- 血液培養は治療を遅らせず可能なら抗菌薬前に採取。夜間提出不可のため検査室へ検体の保管/搬送条件を確認し、独断で翌朝まで保管しない
- 胸部X線(結核・肺門リンパ節・前縦隔腫瘤)
- 心エコー・腹部エコー・造影CT・MRIは当直帯にできない。不明熱は時間をかけて詰める病気なので、夜に画像が無いことは大きな支障にならない。当直の仕事は敗血症・川崎病・悪性腫瘍という『今夜動く理由』があるかを外すことに絞る
4送る/持つ
- 帰宅全身状態がよく、水分が取れ、活動性が保たれている、敗血症・髄膜炎・川崎病・血液悪性腫瘍を、今日の所見と検査で外せている、体重が落ちていない・成長曲線から外れていない、再受診の日が決まっていて、家族がそれを書いたものを持っている、発熱日誌(時刻・体温・症状・食事・皮疹の写真)を始めてもらっている(どれか1つでも崩れたら帰さない)
- 搬送・紹介川崎病は疑った時点で専門施設(小児循環器)へ紹介・搬送する(院内方針院内)、敗血症・髄膜炎は持てない(初期治療は当院で開始)、FNを疑う発熱はANCを待たず主治医・血液腫瘍担当・上級医へ直ちに連絡し、初回抗菌薬の開始時点とレジメンを確認する。搬送調整と初期安定化を並行し、連絡・搬送待ちで治療を遅らせない。連絡がつかない場合や搬送に時間を要する場合は院内上級医・救急連携へ直ちにエスカレーションする。、血液悪性腫瘍・全身型JIA・SLE・感染性心内膜炎・結核・深部膿瘍・炎症性腸疾患を疑う場合は持てない
5診療中の疑問と回答
- 検査を一通りしたが原因不明。広い抗菌薬を試す?
- 全身状態が安定しているなら、無目的の抗菌薬より詳細な再問診と経時診察、段階的な検査を優先する。薬剤、旅行、動物、体重減少、発疹・関節症状を取り直す。敗血症や免疫不全を疑う場合は別で、必要な培養と治療を遅らせない。
根拠:RCH Prolonged fever - 熱型が規則的なら自己炎症性疾患と考えてよい?
- 熱の間隔だけで決めない。発熱中と解熱時の状態、成長、皮疹・口内炎・関節症状を記録し、感染・悪性疾患・炎症疾患を並行評価する。発作間も元気が戻らない、体重減少や血球異常がある場合は、周期熱として待たず専門診療へつなぐ。
根拠:RCH Prolonged fever - 元気な不明熱を外来でみる時、次に何を決める?
- 次の診察日、検査結果を確認する担当、悪化時の連絡先を決める。発熱と随伴症状の日誌をつけてもらい、診察では新しく現れた所見を毎回確認する。飲めない、活動性低下、出血、呼吸循環の変化は予定日を待たず再評価する。
根拠:RCH Prolonged fever
- 当直で不明熱の診断をつける?
- つけない。当直の仕事は今夜死ぬ病気(敗血症・髄膜炎)を外す、川崎病を外す、次の検査と次の受診日を決めるの3つ。
- 帰していい条件は?
- 全身状態がよく水分が取れ活動性が保たれ、敗血症・髄膜炎・川崎病・血液悪性腫瘍を今日の所見と検査で外せていて、体重が落ちていない/成長曲線から外れておらず、再受診の日が決まっていて発熱日誌を始めてもらっていること。どれか1つでも崩れたら帰さない。
- 抗菌薬をとりあえず出していい?
- 安定した不明熱では無目的の処方を避け、適応があれば治療を遅らせず可能な範囲で投与前培養を採る。FN・敗血症疑い等は緊急の初回治療を優先し、採取や保管調整で待たせない。
7家族への説明
熱が長く続いていますが、今日の診察と検査では、すぐに命に関わる病気は見つかりませんでした。ただし、原因がまだ分かっていないという状態です。長引く熱の原因は、①どこかの感染症 ②血液の病気 ③自分の免疫が起こす炎症の順に調べていきます。熱の出方だけでは原因は分かりませんので、次のことをお願いします。①体温を時刻と一緒に記録する ②熱が出ているときの体の写真を撮る(発疹は熱があるときだけ出ることがあります)③体重を測る。そして◯月◯日に必ず来てください。それまでの間、ぐったりする、息が苦しい、けいれん、意識がおかしい、紫色のあざが広がる、水分が取れない、このどれかがあれば時間を待たずに来てください。熱がある間、自己判断で解熱剤以外の薬(抗菌薬など)を使わないでください。診断が難しくなります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。