ネフローゼ症候群(初発の見つけ方)

緊急

ネフローゼ症候群(初発の見つけ方)

腎・泌尿器β版・逐条レビュー継続中

2026-10-02更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/腎生検・小児腎臓専門外来なし/当直帯の尿検査は定性のみ(沈渣・蛋白定量は出ない)/夜間入院はできる(2026-09-14 確認)。

30秒要約

  • 「まぶたが腫れた」で来る。朝いちばんの眼瞼浮腫→夕方に下腿へ移る。アレルギーと間違えて抗ヒスタミン薬を出すと日が延びる。
  • むくみを見たら、その場で尿を出させる。試験紙の蛋白3+〜4+と低アルブミン血症なら強く疑う。病型と危険な合併症の評価を並行する。
  • 診断基準(ISKDC):高度蛋白尿(夜間蓄尿で40 mg/時/m²以上、または早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0 g/gCr以上)+低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)。
  • 2〜5歳がいちばん多く、約半分が5歳未満で発症。年間小児人口10万人あたり6.5人(欧米の約3倍)。
  • 当直で怖いのは腎臓ではなく合併症。循環血漿量減少によるショック・血栓症・腹膜炎。むくんでいるのに血管内は脱水、という状態がありうる。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119強い腹痛+発熱(腹膜刺激症状)特発性細菌性腹膜炎を疑う。血培・腹水。当院で持てない即時
119頻脈・CRT延長・四肢冷感・乏尿(浮腫はあるのに)循環血漿量減少性ショック。生食ボーラス+アルブミン製剤の適応を専門施設と相談即時
119片側の下肢腫脹・胸痛・突然の呼吸困難・けいれん血栓症(深部静脈・肺・脳静脈洞)。ネフローゼは血栓リスクが高い即時
119呼吸困難・起座呼吸・SpO2低下胸水・肺水腫。胸部X線(胸部X線)即時
緊急肉眼的血尿・高血圧・腎機能低下・低補体血症を伴う浮腫微小変化型以外の可能性。腎生検の適応になりうる=専門施設当日
緊急1歳未満の発症先天性/遺伝性を考える。専門施設へ当日
緊急陰嚢・陰唇の高度浮腫、腹部膨満(腹水)入院管理。当院は院内当直帯でも入院を受けられる(夜間は当院で持つ)当日
緊急発熱+水痘や麻疹の曝露歴ステロイド開始前に必ず確認。免疫抑制下の重症化当日
当日眼瞼浮腫+尿蛋白3+以上、全身状態良好入院で治療を始める病気。当日〜翌日に受け入れ先を決める当日

鑑別:よくあるもの(「むくんだ」で来たとき)

病態見分け次の一手
アレルギー(血管性浮腫・じんましん)痒み・膨疹・急な発症。尿蛋白は出ない尿を見れば区別がつく(じんましん)
急性糸球体腎炎血尿が主役、高血圧、乏尿、体重増加。低補体血症(C3低下)急性糸球体腎炎
心不全頸静脈怒張・肝腫大・頻呼吸胸部X線・心電図
肝疾患による低アルブミン血症黄疸・肝腫大・AST/ALT上昇黄疸・肝機能異常
蛋白漏出性胃腸症/低栄養慢性下痢・体重減少。尿蛋白が出ない低アルブミン血症炎症性腸疾患
局所の腫れ(虫刺され・蜂窩織炎)片側・熱感・発赤蜂窩織炎

「むくみを見たら尿を見る」。これだけで上の半分が片づく。

鑑別:見逃してはいけないもの(当院の扱い)

病態見逃しの形当院の扱い
特発性細菌性腹膜炎「ネフローゼの腹水でお腹が張っている」で済ませる持てない。搬送を遅らせない範囲で血培採取。提出・保管条件を確認
血栓症「歩かないのは浮腫のせい」持てない
循環血漿量減少性ショック浮腫があるから輸液は不要、と判断する初期循環対応は当院で開始、呼吸・血圧・尿量を再評価し専門施設へ相談
ステロイド開始後の水痘・麻疹曝露歴を聞かない曝露歴は初診で必ず取る
先天性ネフローゼ(1歳未満)通常のネフローゼとして扱う持てない
膜性増殖性糸球体腎炎・ループス腎炎など二次性低補体・血尿・高血圧を無視してステロイドを始める腎生検が要る=持てない

治療ワークフロー(当院でやること/やらないこと)

ステロイドを当直で始める病気ではない。 診断をつけて、受け入れ先を決めるところまでが当院の仕事。

順やること
1体重を測る。むくみの評価は体重が最も鋭い。前回受診時との差を出す
2血圧を年齢の基準値で読む
3尿定性(できれば早朝尿)+尿沈渣+尿蛋白クレアチニン比。当直帯に出るのは定性だけ。試験紙の蛋白3+以上+浮腫+低アルブミン血症があれば、定量を待たずに動いてよい
4採血:血清アルブミン・総蛋白・Cr・BUN・電解質・総コレステロール・C3、血算
5循環血漿量の評価(心拍数・CRT・四肢冷感・尿量)。浮腫=血管内も満ちている、とは限らない
6腹部所見(腹水・圧痛)。発熱+腹痛なら腹膜炎を外す
7胸部X線(胸水・心拡大)を必要に応じて
8水痘・麻疹の罹患歴とワクチン歴、直近の曝露歴を記録(治療開始前に要る情報)
9受け入れ先に連絡。「初発ネフローゼ疑い、蛋白◯+、Alb◯、血圧◯、浮腫の程度◯、循環は保たれている/いない」を伝える

専門施設で行われる標準治療(家族への説明のため。当院では開始しない)

  • はじめてネフローゼ症候群と診断された場合には、1日3回のステロイドを28日間、そのあと1日1回のステロイドを1日おきに28日間使って治療する。
  • 1日3回のステロイドを28日間使っても尿の中の蛋白が消えない場合には、精密検査(腎生検)をおこなって別の治療法に変更する。
  • ガイドラインの推奨は、初発時治療は8週間治療(ISKDC法)を選択することを推奨する(推奨グレード1B、一致率100%)。
  • 体の中のアルブミンが少なく症状がひどい場合にはアルブミン製剤を使用する(使う前には医師から説明をうけたうえでご家族・ご本人の同意が必要)。

診断基準(そのまま使う)

国際小児腎臓病研究班(ISKDC)の診断基準に基づき、高度蛋白尿(夜間蓄尿で40 mg/時/m²以上または早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0 g/gCr以上)、低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)によりネフローゼ症候群と診断する。

厚生省特定疾患調査研究班の診断基準を用いてもよい:

項目基準
①蛋白尿(必須)1日の尿蛋白量が3.5 g以上ないし0.1 g/kg、または早朝起床時第1尿で300 mg/100 mL以上の蛋白尿が持続する(持続とは3〜5日以上)
②低蛋白血症(必須)血清総蛋白:学童・幼児6.0 g/100 mL以下、乳児5.5 g/100 mL以下/血清アルブミン:学童・幼児3.0 g/100 mL以下、乳児2.5 g/100 mL以下
③高脂血症(必須ではない)血清総コレステロール:学童250 mg/100 mL以上、幼児220 mg/100 mL以上、乳児200 mg/100 mL以上
④浮腫(必須ではない)—

高脂血症・浮腫は診断のための必須条件ではないが、これを認めればその診断はより確実となる。

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
眼瞼浮腫朝いちばんに最も強い。家族に「朝の顔」を聞く/写真を見せてもらう尿定性
下腿・足背の圧痕浮腫脛骨前面を母指で5秒押す尿定性
陰嚢・陰唇の浮腫見ないと分からない。必ず見る高度。入院適応
腹水腹部膨満・波動・臍の突出腹膜炎の除外
体重前回値との差数kgの増加は数日で起きる
血圧年齢の基準値で読む。カフサイズを確認高ければ微小変化型以外を疑う
循環(CRT・心拍・末梢温)浮腫に惑わされない血管内脱水なら初期輸液
発熱+腹痛毎回聞く腹膜炎として動く

検査

検査何がわかるか読み方
尿定性蛋白の有無3+〜4+が典型
尿蛋白クレアチニン比(早朝尿)定量。2.0 g/gCr以上が診断基準随時尿では過大・過小になりうる
尿沈渣血尿・円柱血尿があれば微小変化型以外を疑う
血清アルブミン2.5 g/dL以下が診断基準診断の要
Cr・BUN・電解質腎機能・脱水腎機能低下は非微小変化型のサイン
C3(補体)低補体なら微小変化型以外(腎炎・ループス・MPGN)腎生検の適応判断に使われる
総コレステロール補助的上昇
血算血液濃縮・感染Ht上昇は血管内脱水の示唆
胸部X線胸水・心陰影呼吸症状があれば

腎生検が要るサイン(=当院で持てないサイン)

腎生検の適応として、発症時に①持続的血尿・肉眼的血尿、②高血圧、腎機能低下、③低補体血症、④1歳未満などがあげられ、このような臨床所見を認める場合には微小変化型以外の組織型の可能性が考えられ、腎生検で組織型を確定したあとに治療方針を決定する。

逆に言えば、この4つがなければ微小変化型の可能性が高く、腎生検をせずにステロイドを先行させるのが一般的。小児の特発性ネフローゼ症候群は組織学的にはMCNSが70〜80%を占め、微小変化型の90%以上はステロイド感受性。

問診チェック

  • いつからむくんだか。朝/夕方のどちらが強いか
  • 体重の変化(母子手帳・保育園の記録)
  • 尿量・尿の泡立ち・尿の色
  • 先行感染(かぜ・咽頭炎)、虫刺され、予防接種
  • 水痘・麻疹の罹患歴とワクチン歴、直近の曝露(ステロイド開始前に必須)
  • 家族歴:腎疾患、遺伝性腎疾患
  • 服薬(NSAIDs・その他)
  • 既往のネフローゼ(再発かどうかで話がまるごと変わる)

送る/持つ(当院=二次救急・腎生検なし)

状態当院の扱い
初発ネフローゼ(合併症なし)初期診断は当院。治療導入は専門施設。入院受け入れ自体は当直帯でも可能(2026-09-14 確認)。夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する
循環血漿量減少性ショック初期輸液は当院。その先は持てない
血栓症・腹膜炎の疑い持てない
腎生検の適応サインあり(血尿・高血圧・腎機能低下・低補体・1歳未満)持てない
既知のネフローゼの再発主治医に連絡するのが先。自己判断で増量しない
ステロイド内服中の発熱感染症の評価。副腎不全も念頭に。主治医へ連絡

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児腎臓専門医のいる紹介先(夜間・休日の受け入れ)
  • 決定:合併症のない初発ネフローゼは、夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と治療導入を相談する
  • 確定(2026-09-25 確認):夜間に血清アルブミンは測れる。C3の夜間可否は未確認。尿蛋白定量は出ないので定性で代える
  • 要確認:アルブミン製剤の院内在庫と小児への使用手順
  • 要確認:既知のネフローゼ患者が当院に来たときの、主治医への連絡経路

家族に渡す一文

「おしっこにたんぱくが大量に漏れて、血の中のたんぱくが減り、むくみが出る病気です。子どもでは2〜5歳にいちばん多く、日本では1年に10万人あたり6.5人が発症します。おくすり(ステロイド)がよく効く型がほとんどですが、治療は入院で始めます。今日いちばん気をつけたいのは、むくみそのものよりお腹の痛みと熱(腹膜炎)、片足の腫れや急な息苦しさ(血栓)です。このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。また、水ぼうそうや麻しんにかかったことがあるか、予防接種を受けたかを必ず教えてください。治療の前に確認が要ります。」

処方

処方

処方の考え方

初発ネフローゼ症候群はステロイドを当直で開始しない。診断(尿蛋白・血清アルブミン)をつけて受け入れ先を決めるところまでが当院の仕事。専門施設での標準治療は8週間法(ISKDC法)だが、実投与量(体表面積あたり)は施設判断のため、本シートは意図的に用量を記載していない。

治療の位置づけ

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

病態・根拠13章
病態と根拠
蛋白が漏れる仕組みと、浮腫の二つの経路

糸球体の濾過障壁、とくに足細胞の働きが障害されると、通常は保持される蛋白が尿へ漏れ、血中アルブミンが減少する。これに伴う膠質浸透圧の低下は血管外への水移動を促す。一方、腎でのナトリウム保持も浮腫に関わり、全員が血管内脱水になるわけではない。体に水が多いことと、循環する血液量が十分なことは同じではない。[1][2]

血管内が不足する型では頻脈、末梢冷感、CRT延長、乏尿、腹痛、腎機能悪化が手がかりになる。循環血液量が保たれる、または過剰な型では高血圧、呼吸症状、肺水腫などが問題になる。浮腫の見た目とアルブミン値だけで、輸液・利尿薬・アルブミンを決めない。体重、血圧、心拍、呼吸、末梢循環、尿量を経時的に合わせる。[2]

年齢と非典型所見が病型の見立てを変える

幼児期の典型的な初発はステロイド感受性の可能性が高く、すべての児に最初から腎生検を行うわけではない。ただし尿試験紙とアルブミンだけでは組織型は確定できない。乳児発症、家族歴、症候性の身体所見では遺伝的原因を考え、肉眼的血尿、持続する高血圧、低補体、循環低下だけで説明できない腎機能障害、発疹・関節症状では他の腎疾患や二次性病変を検討する。[1][3]

微量の血尿や一時的な血圧上昇があるだけで、微小変化型を完全に否定することもできない。逆に「よくある年齢」「尿蛋白が多い」ことだけで非典型所見を無視してステロイドを始めない。生検・遺伝子検査の適応は専門医が背景と治療反応を合わせて判断する。

診断と重症度評価は別の仕事

尿蛋白定量と低アルブミン血症は診断の軸である。国内の本稿はISKDCの尿蛋白/Cr比2.0 g/gCr以上、アルブミン2.5 g/dL以下を参照する。[1] 国際KDIGO 2025ではネフローゼ域蛋白尿に、アルブミン3.0 g/dL未満、またはアルブミン測定不可時の浮腫を組み合わせた定義を採用しており、版の異なる基準を混ぜて診断表を作らない。[3] 当院方針の数値は今回変更しない。

試験紙は尿の濃縮・希釈の影響を受ける半定量である。夜間は尿定性のみのため、高度蛋白尿と浮腫・低アルブミン血症から疑い例として入院・相談へ進め、日勤帯に定量と沈渣を確認する。尿試験紙が3+だから「微小変化型確定」、尿量が少ないから「利尿薬が必要」と短絡しない。血清Cr、電解質、アルブミンと、循環所見を合わせる。

合併症の病態からレッドフラグを読む
合併症起こる背景見逃さない症状
感染症・細菌性腹膜炎免疫関連蛋白の尿中喪失、腹水、免疫抑制療法など発熱・新しい腹痛・圧痛、ぐったり、循環不良。浮腫や腹水だけで説明しない
血栓症凝固関連蛋白の変化、血液濃縮、炎症、活動低下など片側肢の腫れ/痛み、急な呼吸困難・胸痛、強い頭痛・神経症状
急性腎障害血管内循環の不足、感染、薬剤、腎そのものの障害乏尿とCrの変化。浮腫の程度と一致しない
肺水腫・胸水体液貯留、過剰な循環負荷呼吸数増加、低酸素、起座呼吸、胸部所見

腹痛は循環血液量低下でも腹膜炎でも生じるため、原因を一つに決めない。疑う感染症では安全に採れる培養を検討するが、当院は院内夜間提出不可・保管条件未確認である。検体取扱いの調整のために抗菌薬・初期蘇生・搬送を遅らせない。[2]

治療を専門施設と相談する理由

低循環を伴う浮腫に利尿薬を先行させると、血管内不足、急性腎障害、血栓リスクを悪化させうる。アルブミン投与も急な循環負荷、高血圧、肺水腫を起こしうるため、適応と監視体制が必要である。[2] 当院の在庫・小児投与手順は未確認で、本文の初期循環対応以上の具体的レシピをこの追補から作らない。輸液後も末梢循環だけでなく呼吸・血圧・尿量を再評価する。

初発のステロイドは蛋白漏出を抑え、寛解へ導くための治療である。国内2020ガイドラインは8週間治療を推奨し、KDIGO 2025は8または12週間を選択肢としている。初期療法をむやみに長期化しても、頻回再発やその後の疾患経過の改善は明確ではない。[1][3] 具体的な量・回数・期間は専門施設が診断、体格、合併症、反応に応じて決める。当院では初発のステロイドを夜間に開始せず、安定した児を入院観察し日勤帯に治療導入を相談する。

寛解後も診療が続く

尿蛋白の消失と体重・浮腫の改善を追い、感染・血圧・腎機能・薬剤の副作用を評価する。再発は感染時に目立つことがあり、家族には主治医の指示した尿試験紙記録、体重・浮腫の変化、連絡条件を共有する。「蛋白がまた出た」だけで家庭や当直で自己増量せず、既往の治療反応と主治医計画を確認する。

頻回再発・ステロイド依存では再発と薬剤有害事象の両方が問題になり、免疫抑制薬を含む方針を専門医が選ぶ。ステロイドの長期使用中・中止後の発熱や嘔吐では、感染に加えて副腎不全も考慮する。水痘・麻疹などの曝露、生ワクチン、予防接種時期は免疫抑制の内容に応じて主治医と調整する。寛解したから以後の通院が不要になるとは説明しない。[2][3]

参照資料
既存手順の参照資料
  • 小児慢性特定疾病情報センター.微小変化型ネフローゼ症候群 診断の手引き(告示番号24/バージョン1.1・2015-05-23更新/文責:日本小児腎臓病学会).https://www.shouman.jp/disease/instructions/02_01_003/ (2026-09-12閲覧)。ISKDC診断基準(高度蛋白尿:夜間蓄尿で40 mg/時/m²以上または早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0 g/gCr以上、低アルブミン血症:血清アルブミン2.5 g/dL以下)、厚生省特定疾患調査研究班の診断基準(蛋白尿・低蛋白血症・高脂血症・浮腫の数値と、蛋白尿・低蛋白血症は必須条件/蛋白尿の持続とは3〜5日以上)、MCNSの診断上の留意点(小児の特発性ネフローゼ症候群は組織学的にはMCNSが70〜80%/微小変化型の90%以上はステロイド感受性/一般には腎生検は行わずにステロイド療法を先行させる)、腎生検の適応(①持続的血尿・肉眼的血尿 ②高血圧、腎機能低下 ③低補体血症 ④1歳未満)、鑑別診断(FSGS)。
  • 日本小児腎臓病学会.小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」の一事業).全文PDF https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192051/201911032B_upload/201911032B202007161223573470004.pdf (2026-09-12閲覧)。「わが国では2013年に行われた疫学調査により、1年間に小児10万人に6.5人が発症し、欧米と比較して約3倍の頻度で発症する」「2000年以降の調査では、実に20〜50%と高率に疾患活動性を保ったまま成人に移行する」。CQ1「小児特発性ネフローゼ症候群の初発時治療は、8週間治療(ISKDC法)を選択することを推奨する」(推奨グレード1B、一致率100%)。対象は微小変化型・巣状分節性糸球体硬化症・びまん性メサンギウム増殖の小児期(骨端線閉鎖まで=目安として男児17歳頃、女児15歳頃)。
  • 日本小児腎臓病学会.患者、ご家族、一般の方向けQ&A「ネフローゼ症候群」(Copyright © 2021).https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-byoki-08.pdf (2026-09-12閲覧)。「我が国では、1年間に約1000人の患者さんが新たにネフローゼ症候群と診断されています(発症率:年間小児人口10万人あたり6.5人)」「2-5歳ごろのお子さんに最も多く発症し、約半分のお子さんが5歳未満で発症する」(出典としてClin Exp Nephrol (2017) 21:651–657を明示)、診断(早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0以上、血清アルブミン2.5 g/dL以下)、初回治療(1日3回のステロイドを28日間、そのあと1日1回のステロイドを1日おきに28日間/28日間使っても尿蛋白が消えない場合には腎生検)、アルブミン製剤の同意、再発(全く再発しない患者は26.7%/頻回再発型は32.7%/半年で2回再発、または1年で4回以上再発する場合は再発抑制治療)。
臨床医が迷う場面
むくみが強いので、すぐ利尿薬を増やす?

浮腫があっても血管内循環が不足することがある。血圧、心拍、灌流、尿量、呼吸と腎機能から体液状態を評価する。循環不足に強い利尿を加えると腎傷害や血栓の危険があるため、アルブミン・利尿薬の適応は腎臓専門医と判断する。

出典:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告

家庭の尿蛋白が陽性に戻った。残薬のステロイドを開始する?

発熱・感染、測定条件、持続日数と浮腫・尿量を確認し、個別の再発時計画に従って主治医へ連絡する。単回の試験紙だけで自己開始・増量しない。当院では初発のステロイド開始は専門施設へ委ねる。重い腹痛、呼吸苦、乏尿があれば緊急評価する。

出典:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告

治療中に発熱と腹痛が出た。いつもの再発として見てよい?

腹膜炎などの感染症、血栓、循環不全を評価する。ステロイド等の免疫抑制とワクチン・曝露歴も確認し、主治医へ速やかに連絡する。強い腹痛、片脚の腫れ、胸痛・呼吸苦は単純な浮腫として待たず、救急評価と入院の必要性を判断する。

出典:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告

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