5-13小児の血便・下血
年齢別の鑑別・便の色で部位を推定
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 年齢で鑑別が変わる。乳児は食物蛋白誘発胃腸炎と腸重積、幼児は腸重積とポリープ、年長児は感染性腸炎とポリープ。
- 便の色で出血部位を推定する:胃・十二指腸=黒色タール便、小腸=アズキ色、大腸〜肛門=イチゴジャム様または鮮血便。
- 前触れなく大量に下血したらMeckel憩室。一度に大量に出ることが多く、痛みなどの前触れなく下血する。
- 間欠的に激しく泣く乳幼児のイチゴゼリー状便は腸重積。血便を待たずに動く。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 血便→腹膜刺激症状(筋性防御等)→穿孔・腸管虚血(急性腹痛。緊急)
- 新生児の血便→胆汁性嘔吐を伴う→腸回転異常症・中腸軸捻転(中腸軸捻転。最優先で外す)
- 新生児の血便→腹部膨満・全身状態不良・早産児→壊死性腸炎(新生児外科のある施設へ。当院で持てない)
- 間欠的な啼泣+嘔吐+イチゴゼリー状便(3か月〜2歳未満)→顔色が悪くなる→腸重積(血便を待たない。24時間以内なら8割が非観血的に整復できる)
- 前触れなく一度に大量の下血(腹痛が乏しい)→痛みの前触れがない→Meckel憩室(99mTcシンチが要る)
- 哺乳開始後の乳児の血便→不活発・腹部膨満・哺乳力低下→新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎
- 排便時の無痛性の鮮血(幼児〜学童)→肛門に近ければ指で触知されることもある→若年性ポリープ(小児の消化管ポリープの約90%、好発3〜5歳)
- 紫斑+腹痛(幼児〜学童)→腸重積を合併しうる。当直帯はエコーで合併を外せない→IgA血管炎(腹部型)(腹痛が強ければ相談に回す)
- 血便→乏尿・蒼白・むくみを伴う→HUSを疑う(細菌性腸炎とHUS)
3検査
- 全身状態とバイタルを先に確認する。ショックがあれば血便の原因追及より先に蘇生する。
- 新生児はまず新生児仮性メレナ(分娩時に嚥下した母体血。治療不要)を除外する。全身状態が悪ければ壊死性腸炎・腸回転異常症(胆汁性嘔吐)を疑う。
- 本人の血であることが確認され、かつ全身状態が良好な新生児でもビタミンK投与歴を必ず確認する(未投与・投与歴不明なら新生児メレナ=ビタミンK欠乏性出血を疑う。新生児メレナの原因はビタミンK欠乏が最多)。
- 便を自分で見る(おむつを開ける)。色と性状を記録する。
- 腹部診察:間欠的な不機嫌があれば腸重積を疑う。当直帯はエコーで確かめられないので疑った時点で電話する。
- 男児は陰嚢、全例で鼠径部も見る。
- 肛門周囲の視診(裂傷・ポリープの脱出)。
- 血算(Hb・血小板)・生化(Cr・電解質・ALT)。HUSの3主徴(溶血性貧血・血小板減少・急性腎障害)を確認する。
- 発熱・下痢があれば便培養を考慮する。止痢薬(ロペラミド等)は血便では使わない(EHEC腸炎ではHUS発症の危険性を高める懸念があるため)。
- EHEC/HUS疑いへの抗菌薬投与は、HUS発症リスクとの関連について結論が一致していない。軽症では投与しないことが大前提で、投与するかは医師判断とする。
- 抗菌薬を検討する場合も、当直帯は検査室へ提出できないため投与前に採取して保管し、翌朝提出する。
4帰宅・紹介の目安
- 帰宅肛門裂傷・便秘(当院で対応)、細菌性腸炎(当院で対応)、食物蛋白誘発胃腸炎疑い(治療乳への変更は当院で開始できる。確定の負荷試験は専門施設)
- 搬送・紹介ショック・大量出血(輸血・外科が要る)、腸重積疑い:整復の可否は施設要確認。疑った時点で連携先へ電話する、新生児の胆汁性嘔吐(腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で外す。緊急搬送)、壊死性腸炎疑い(新生児外科のある施設へ。当院で持てない)、Meckel憩室疑い(シンチ・手術が要る)、若年性ポリープ疑い(内視鏡が要る)、炎症性腸疾患疑い(専門施設へ)
5診療中の疑問と回答
- 硬便の表面に血が付く。裂肛として下剤だけでよい?
- 排便痛、硬便、肛門の裂創を確認する。裂肛が見える少量出血なら便を軟らかくする対応を行うが、量が多い、反復する、体重減少・発熱・下痢を伴う場合は他疾患を評価する。肛門所見だけで腸管の出血源を全て否定しない。
根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding - 痛みのない大量出血が止まった。翌週再診でよい?
- 出血が止まっても貧血・循環不全を評価する。小児の無痛性多量出血ではMeckel憩室などを疑い、小児外科・消化器へ速やかに相談する。顔色不良、頻脈、末梢循環不良があれば安定化と搬送を優先し、次の出血を待たない。
根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding - 元気な乳児の血便ならすぐミルクを変更する?
- 母体血の嚥下、裂肛、感染、アレルギー性腸炎などを経過と診察で区別する。嘔吐・膨満・反応低下や循環不良は緊急疾患を考える。食事変更を行う場合も栄養と改善の評価を計画し、原因を確かめず複数食品の除去を長期化させない。
根拠:Perth Children's Hospital Lower GI bleeding
- 新生児の血便はまず何を確認するか?
- 本当に本人の血か。分娩時に嚥下した母体血を排泄するだけの新生児仮性メレナは治療不要で、全身状態良好ならまずこれを外す。
- 血便を待って腸重積を疑うべきか?
- 待たない。間欠的な啼泣+嘔吐+イチゴゼリー状便があれば血便がなくても腸重積を疑い、当直帯はエコーで確かめられないので疑った時点で電話する。
7家族への説明
便に血が混じる原因は、年齢によって変わります。便の色や出方が手がかりになるので、できればおむつや便を持ってきてください(写真でも構いません)。少量が便に付着する程度なら肛門の切れであることが多いですが、急にたくさん出た・顔色が悪い・繰り返し激しく泣く・おしっこが減った、このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。