2-18気管支喘息発作
このページの目次16項目
1病態から診療を組み立てる
気流制限の原因と、診察で見ているもの
喘息の急性増悪では、気管支平滑筋の収縮に気道壁の炎症・浮腫と分泌物が重なり、特に呼気の流れが妨げられる。呼気延長、喘鳴、陥没、会話・食事の困難がその結果である。β2刺激薬による気管支拡張と、ステロイドによる炎症の抑制は作用する部分が違うため、必要な重症度では両者を用いる。既存の投与手順を使い、吸入の到達と手技も確認する。[2][11]
silent chestは「喘鳴がない」ではなく「空気が動かない」
喘鳴は狭い気道を空気が通って初めて聞こえる。喘鳴の強さは重症度に比例せず、強い閉塞や疲労で空気の入りが乏しくなれば静かになる。会話できない、胸郭運動や呼吸音が弱い、傾眠・顔色不良を伴う静かな胸は呼吸不全を疑う。吸入後は音の大小だけでなく、空気の入り、陥没、会話、覚醒、呼吸数・SpO2の変化を比べる。[11]
年齢と非対称性から、喘息以外へ戻る
乳児の初回喘鳴を直ちに喘息と確定せず、RSV細気管支炎を含めて経過を確認する。突然の咳込み、持続する片側性の呼吸音減弱は気道異物、急な蕁麻疹・循環不良・消化器症状はアナフィラキシーを考える。片側所見が吸入後も残る、急な胸痛や酸素化悪化がある場合には気胸・肺炎などを再評価する。既知の喘息であっても、今回の発作すべてを説明するとは限らない。[11]
SpO2は酸素化の指標で、換気を測っていない
酸素投与でSpO2が保たれていても、疲労とCO2蓄積を除外できない。血液ガスは重症・呼吸不全疑いで臨床像と合わせて解釈する。発作時は過換気によってCO2が低いことがあり、強い呼吸障害の中で正常化・上昇する場合は換気の悪化に注意する。JPGL2023の公開補足図には急性増悪時の動脈血液ガスの変化が示されている。静脈と動脈のCO2値は同一視せず、既存の院内手順で必要な確認を行う。当院は夜間血液ガスが可能だが、結果待ちで呼吸補助や搬送を遅らせない。[2][11]
効かないときは、薬剤を増やす前に反応を読み直す
反復SABAで気管支の空気の入りが改善したのに頻呼吸・頻脈が続く場合は、残る閉塞だけでなく薬剤の影響も考える。頻回投与では低K血症や高乳酸血症が起こり、頻呼吸が発作の悪化に似ることがある。呼吸所見、投与量・時刻、Kと血液ガス・乳酸を合わせて上級医が再評価し、頻脈だけを理由に必要なSABAを中止しない。吸入が実際に届いているか、別診断や合併症がないかも確認する。[11]
回復後の再発を減らすところまで、急性期の診療に含める
帰宅は安静時の呼吸と会話・食事、酸素化、発作止めを追加した後の持続的な改善で判断する。症状が戻りやすい、保護者が手技や悪化時の行動を実行できない場合は観察を続ける。退院前に吸入手技、長期管理薬の実施状況、増悪因子、受診先を見直し、個別のアクションプランを渡す。吸入・全身ステロイドの反応が不十分な重症例は当院の能力を超える段階として扱い、硫酸マグネシウムを当院では使用せず上位施設へ搬送する既存方針を守る。RCHの重症例の薬剤・機器運用は豪州施設のものであり、新しい院内オーダーではない。[2][11]
2一目でわかるフロー
受診(主訴:喘鳴・呼吸困難・咳嗽増悪・啼泣時のゼーゼー等)
→ ⚠喘息の診断が未確定な場合は、発作強度に応じた治療と並行して
気道異物・アナフィラキシー・RSウイルス等の鑑別も同時に進める(1章参照)
→ レッドフラグ評価(silent chest・チアノーゼ・意識低下・SpO2持続低下・会話困難
→ 該当あれば発作強度に関わらず「大発作・呼吸不全」として直ちに酸素投与+上位対応
+自家用車を待たず救急車〈119番〉要請)
→ 発作強度判定(小発作/中発作/大発作/呼吸不全)
主要所見=意識・会話・起坐呼吸・喘鳴・陥没呼吸・チアノーゼ・SpO2(room air)
→ 検査(SpO2モニタリング必須。中発作以上で聴診・呼吸数実測、必要時血液ガス)
→ 治療(β2刺激薬吸入を反復 → 反応評価 → 不十分なら酸素+全身性ステロイド追加)
→ 反応評価(良好/不十分/不変・悪化)に基づき 帰宅 or 入院 の判断
→ 発作後:長期管理(吸入ステロイド薬等)の見直しと個別対応プランの説明図は横にスクロールできます →
3レッドフラグ(見逃し厳禁)
確認済み 喘鳴=喘息発作と決めつけない: 本ワークフローは喘息の診断が既についていることを前提に組んである。しかし小児では喘息の診断が未確定な急性喘鳴で受診することも少なくない。その場合は発作強度に応じた治療を行いながら、気道異物、アナフィラキシー、RSウイルス感染症など他の急性喘鳴をきたす疾患の鑑別を同時に進める(手塚2019 p.913「医療機関での対応」冒頭)。特に以下は喘息発作以外を積極的に疑うトリガーとして意識する。
- 突然の激しい咳き込みで発症(既往症状なし・食事中/摂食直後)→ 気道異物を疑う。
- 蕁麻疹・口唇/眼瞼腫脹の随伴、食物摂取直後の発症→ アナフィラキシーを疑う(エピネフリン投与を含む上位対応を優先)。
- 小発作への治療で十分に改善しない場合は、中発作への治療に移行するのと並行して他疾患の鑑別も考慮する(JPGL2023 web版)。
以下は「大発作」「呼吸不全」相当、または急速に呼吸不全へ進行しうるサイン。1つでも該当すれば発作強度の形式判定を待たずに酸素投与・上位対応(入院/救急搬送)を検討する。自家用車での来院を待たず救急車(119番)を要請する。
- 喘鳴の急激な減弱・消失(silent chest): 気流そのものが乏しくなっているサインで、「ゼーゼーが増えた」ときより「急に静かになった」ときの方が危険。JPGLの発作強度判定表でも呼吸不全の所見は喘鳴「減少または消失」とされる。
- チアノーゼ(口唇・爪床の色が白っぽい〜青〜紫色): 大発作以降で出現する所見。
- 意識レベルの低下・錯乱(ぼーっとしている、呼びかけに反応が乏しい)、または逆に過度の興奮・暴れる(大発作=興奮、呼吸不全=錯乱・低下、いずれも危険域)。
- 会話・啼泣が「一語区切り〜不能」または発語不能(文で話せる→句で区切る→一語区切り〜不能→不能、の順に重症化)。
- SpO2の持続低下(room airで≦91%は大発作相当の目安。酸素投与下でも95%以上を維持できない・低下し続ける場合はさらに重症)。ただし肺炎など他の低酸素化疾患の合併がないか常に確認する。
- 高度な陥没呼吸・シーソー呼吸・鼻翼呼吸、前かがみでないと呼吸できない(起坐呼吸の増悪)。
- 乳幼児では「強い喘息発作のサイン」14項目(激しい咳嗽・著明な喘鳴/時に減弱・胸骨上窩・鎖骨上窩・肋間の陥没・頻呼吸・鼻翼呼吸・シーソー呼吸・起坐呼吸・不眠・チアノーゼ・呻吟・頻脈・不機嫌・興奮して泣き叫ぶ・意識レベル低下)のいずれかがあれば、保護者にも「直ちに受診(自家用車ではなく救急車=119番を要請)」を指導する対象。
- 呼吸数や脈拍の「不定」化(頻呼吸→減少・不規則、頻脈→徐脈への転換)は呼吸停止に近い危険信号として見逃さない。
4重症度・病型の判定
JPGLの発作強度判定は、主要所見(意識状態・努力呼吸を評価する症状・身体所見・SpO2)のうち最も重度のもので判定する。参考所見(呼気延長・呼吸数・PEF・PaCO2)は補助的に用いる。
| 項目 | 小発作 | 中発作 | 大発作 | 呼吸不全 |
|---|---|---|---|---|
| 興奮状況 | 平静 | 平静 | 興奮 | 錯乱 |
| 意識 | 清明 | 清明 | やや低下 | 低下 |
| 会話 | 文で話す | 句で区切る | 一語区切り〜不能 | 不能 |
| 起坐呼吸 | 横になれる | 座位を好む | 前かがみになる | (記載なし) |
| 喘鳴 | 軽度 | 軽度 | 著明 | 減少または消失 |
| 陥没呼吸 | なし〜軽度 | なし〜軽度 | 著明 | (記載なし) |
| チアノーゼ | なし | なし | あり | (記載なし) |
| SpO2(room air) | ≧96% | 92〜95% | ≦91% | (記載なし・実測困難なことが多い) |
| 呼気延長 | 吸気の2倍未満 | 吸気の2倍未満 | 吸気の2倍以上 | 吸気の2倍以上 |
| 呼吸数(年齢別標準との比較) | 正常〜軽度増加 | 正常〜軽度増加 | 増加 | 不定 |
| PEF(吸入前) | >60% | 30〜60% | <30% | 測定不能 |
| PEF(吸入後) | >80% | 50〜80% | <50% | 測定不能 |
| PaCO2 | <41mmHg | <41mmHg | 41〜60mmHg | >60mmHg |
表は横にスクロールできます →
年齢別標準呼吸数の目安(回/分): 0〜1歳 30〜60/1〜3歳 20〜40/3〜6歳 20〜30/6〜15歳 15〜30/15歳〜 10〜30。
補足:
- SpO2はJPGLでも「非侵襲的・リアルタイム・連続測定可能」な点で発作強度判定に有用とされる一方、血液中の二酸化炭素は評価できないことに注意。PaCO2は大発作以降で急激に上昇するため、呼吸不全を疑う場合は動脈血液ガス分析が必須。小児では動脈穿刺が容易でないため、比較的軽度と考えられる場合は静脈血液ガスをスクリーニングとして用い、CO2高値ならば動脈血液ガスで確認する。
- 表中「(記載なし)」とした呼吸不全列のセルは、引用元の表でも空欄(大発作と同一またはその時点では実測評価が困難なため未設定と考えられる)。この解釈が正しいかはJPGL2023原本(第8章 表8-1)で要確認。
5検査
- 必要:
- SpO2モニタリング(パルスオキシメーター)— 全例で発作強度判定の主要所見として必須。
- 中発作以上で呼吸数の実測・聴診(喘鳴の程度、呼吸音減弱=silent chestの有無)。
- 大発作以上、または呼吸不全を疑う場合の動脈血液ガス分析(PaO2・PaCO2の評価。特にPaCO2は大発作以降で急上昇するため必須)。
- 発作が比較的軽度と考えられる場合の静脈血液ガス分析(スクリーニング。CO2高値なら動脈血液ガスで確認)。
- 不要・過剰になりがち:
- 軽症(小発作)でのルーチン胸部X線・血算・CRP(他疾患鑑別が必要な場合を除き不要)。
- 軽症例への動脈血液ガス分析のルーチン実施(侵襲的で小児では容易でない)。
- PEF測定は一般に5歳以上が対象。乳幼児で無理に測定を試みるより、身体所見とSpO2で判定する。
6治療
- 第一選択(β2刺激薬吸入・反復吸入を含む。※用量は年齢帯による一般的な考え方。個別処方量は書かない):
- 短時間作用性β2刺激薬(SABA、サルブタモールまたはプロカテロールなど)の吸入量は、JPGL2017改訂以降体重によらず年齢帯(乳幼児/学童以上)で一定量とする考え方。ネブライザー吸入液の考え方は乳幼児0.3mL、学童以上0.3〜0.5mL(サルブタモールとして生理食塩水またはDSCG1アンプルに希釈)、pMDIは1〜2puff(スペーサー使用推奨)で同等に有効とされる。⚠要確認: サルブタモール吸入液(ベネトリン吸入液0.5%等)の添付文書上の小児用量は1回0.1〜0.3mLであり、学童以上で0.3mLを超える量(〜0.5mL)は適応外使用となり得る。院内採用製剤の添付文書を確認し使用可否を判断する。
- 治療への反応は吸入後15〜30分程度で評価。改善が不十分・不変〜悪化の場合は20〜30分ごとに反復(目安として最大3回程度まで)。
- 中発作ではSpO2を測定し、95%未満であれば酸素投与を考慮(目標はSpO2 95%以上の維持)。
- 第二選択・無効時:
- 中発作でβ2刺激薬の反復吸入のみでは反応不十分な場合、または大発作以上では全身性ステロイド薬を追加する。
- ⚠要医師確認(JPGL2023での位置づけ): 以下の数値はJPGL2017(手塚2019逐語引用)由来の参考値。二次情報によればJPGL2023はCQ形式に再構成されており、CQ10「入院患者全般への全身性ステロイド投与を推奨する強い根拠はない(漫然投与せず必要十分な期間で使用、と提案)」、CQ11「急性増悪時の特定の経口ステロイド使用法(種類・用量・期間)は提案されない」としている可能性がある。数値そのものは臨床的な目安として有用だが、JPGL2023の正式な推奨強度(強い推奨か弱い提案かエビデンス不十分か)は書籍原本での確認が必要。
- 考え方の目安: プレドニゾロン換算で概ね1〜2mg/kg/日(経口、分1〜3)を目安とし、最大投与量はPSL換算60mg/日。静脈内投与の場合はヒドロコルチゾン(初回・定期とも5mg/kg、6〜8時間ごと)またはプレドニゾロン/メチルプレドニゾロン(初回・定期とも0.5〜1mg/kg、6〜12時間ごと)という考え方。静脈内投与も含め、全身性ステロイドの1日総量はPSL換算60mg/日を超えない(出典のJPGL2020表8-9は、静脈内投与の量を示した直後と経口投与の量を示した直後の両方に同じ「最大投与量:PSL換算60mg/日」を個別に付しており、上限は経口だけでなく静脈内投与にもかかる)。静脈投与と経口投与で効果に差はないとされ、内服可能なら経口を優先してよい。嘔吐等により経口摂取・保持が困難な場合は静脈内投与に切り替える。
- 静脈内投与の注意点: ヒドロコルチゾンはミネラルコルチコイド作用も有するため数日以内の使用にとどめる。静脈内投与では稀に即時型アレルギー反応が誘発されることがあるため投与時は観察を怠らない。
- 投与期間は3〜5日間を目安とし漫然と継続しない。投与期間が7日以内であれば中止にあたって漸減の必要はない。
- 大発作・呼吸不全(意識障害を伴う場合は人工呼吸管理を含む)は原則入院対応。イソプロテレノール持続吸入療法・アミノフィリン持続点滴は、血中濃度モニタリングと小児喘息治療に精通した医師の管理下(入院設備)が前提であり、外来完結の対象ではない(詳細は入院後・上位施設のプロトコルに委ねる)。⚠要確認: JPGL2017/2023系の資料体系には静注硫酸マグネシウムの記載が見当たらないが、国際標準(GINA等)では重症・治療抵抗例へのアジュバントとして用いられることがある。院内プロトコルとして採用するかは医師判断(書籍原本〈第8章〉に記載があるかも要確認)。 硫酸マグネシウム静注は国際的(GINA等)には重症・治療抵抗例の補助として使われることがあるが、当院では使わず上位施設へ送る。
- 決定=上記の全身性ステロイド用量(年齢区分なしの単一値)は据え置く。JPGL2017の医療機関対応アルゴリズム(手塚2019、図3)は、大発作・呼吸不全に対する治療で「ステロイド薬全身投与は通常量よりも増量可」としている。中発作以下の標準値(本文記載)で反応不十分な最重症例では、上級医判断でこの増量余地を検討してよい(出典: 手塚2019、原文PDF直接確認)。
- やってはいけない/非推奨:
- 発作時に吸入ステロイド薬を増量するだけで全身性ステロイド投与の代替とすること(システマティックレビューで、予定外受診・緊急入院・全身性ステロイド投与の回避といった有効性は示されていない)。
- アミノフィリンの安易な使用(2歳未満、痙攣既往・中枢神経系疾患合併例、アミノフィリン/テオフィリン徐放製剤による副作用既往がある患者には推奨しない)。
- 反応不良・不変にもかかわらず外来での反復吸入のみで様子を見続け、入院適応の判断を先送りすること。
- 「強い喘息発作のサイン」(レッドフラグ、1章参照)がある状態での自宅経過観察の継続指導。
- 全身性ステロイドの外来使用が1か月に3日間程度・年間数回程度を超える場合に、専門医紹介なくそのまま自院で反復投与し続けること。
7再診・帰宅指導・保護者説明
- 再受診すべきサイン(保護者に伝える):
- 乳幼児の「強い喘息発作のサイン」(チアノーゼ、呻吟、意識レベル低下、頻脈、シーソー呼吸など)が出現したら直ちに受診(自家用車ではなく救急車=119番を要請する)。
- 自宅での吸入・内服治療で軽快しない場合、発作を繰り返す場合は早めに受診。
- 治療反応が「不十分」(症状は改善するが残存、PEFが改善するが80%未満)の場合は、軽快しなければ受診。「不良」(症状不変・悪化、PEF不変・低下)の場合は直ちに救急車を要請する。
- 経過の見通し:
- 良好な反応の目安: 喘鳴・努力呼吸の消失、身体所見の正常化、SpO2≧97%かつ%PEF≧80%。これを満たせば帰宅可とし、自宅でβ2刺激薬吸入の反復と患者指導を行う。
- 紹介・入院の閾値:
- 大発作以上は原則入院(治療は外来であっても迅速に開始したうえで入院への移行を進める)。
- 中発作でも初期治療(β2刺激薬反復・酸素投与)への反応が不十分な場合は、2〜3時間程度を目安に治療しつつ、その間に入院の適応を考慮する。
- 乳幼児、重症化の既往、フォローアップが困難な家庭背景、過去にICU入院・人工呼吸管理を要した重症発作の既往(near-fatal asthma)などのリスク因子がある場合は、現在の発作強度によらずより早期からの入院・上位医への相談閾値を下げることを検討する。JPGL2023第8章の本文に「中発作までは外来治療でも改善が期待できるが、表8-5のような場合には早期から入院治療の必要性を判断すべきである」との記載があることをJPGL2023公式web版(補足図表PDF)で確認した(出典: 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023 web版」, 確認日2026-09-25)。ただし表8-5そのものの内容(早期入院を要する具体的リスク因子の一覧)はこのweb版には収録されておらず、書籍原本での確認が引き続き必要。
- 発作後の長期管理導入(退院時・発作後指導の型):
- 喘息の病態(気道の慢性炎症性疾患であること)の説明。
- 今回の発作強度と現在の重症度(真の重症度:間欠型/軽症持続型/中等症持続型/重症持続型/最重症)の確認。
- 今回の発作対応が適切だったか、改善すべき点があるかの振り返り。
- 予防的治療(長期管理)と発作治療の違いの再確認。
- 喘息発作強度の判断方法と発作時の家庭対応(強い喘息発作のサイン、頓用薬の使い方と受診タイミング)の説明。
- 5歳以上ではPEFモニタリングの活用方法の説明。
- 家庭に発作時用のβ2刺激薬(吸入薬・内服薬)がなければ処方し、使用法を説明。
- 上記を踏まえた喘息個別対応プランの作成。
- 発作誘因(アレルゲン・感染・運動・喫煙曝露など)の検索と対策。
- 長期管理薬(吸入ステロイド薬など)の見直し・吸入手技の再指導。
- 帰宅後の悪化時対応と、悪化がない場合の次回受診日の設定。
8院内ローカルルール(愛育での運用)
- 要確認(以下、埋まるまで全て要確認)
- 院内採用のSABAネブライザー吸入液・pMDI製剤、スペーサーの備品状況。
- 院内採用の全身性ステロイド製剤(経口/静注)と剤形。
- 酸素投与の運用(設備・流量・モニタリング体制)。
- 中発作以上での小児科当直医/上位医師への連絡・コンサルトのフロー。
- 入院適応の院内での閾値、入院先(小児科病棟/NICU・ICU)の判断基準。
- 大発作・呼吸不全時の上位医療機関(三次救急・小児集中治療)への紹介先・搬送手順。
- 長期管理薬(吸入ステロイド薬等)導入時の院内処方フロー、退院時指導のテンプレート有無。
9出典
- 一般社団法人日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2023発刊のご案内.2023-11-09公開.
https://www.jspaci.jp/news/both/20231109-4381/
(2023年11月18日発刊、株式会社協和企画、編集:日本小児アレルギー学会・気管支喘息委員会。前版=JPGL2020からの改訂点として「ICS/LABA配合剤が低年齢から使用可能」「新たな生物学的製剤」「長期管理でのICS/LABAの用い方の変更」「章立ての刷新」が挙げられている。急性増悪〈発作〉対応の記述は変わらず第8章)
- 一般社団法人日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023(web版:補足図表).
https://www.jspaci.jp/journal/asthma2023/ / PDF: https://www.jspaci.jp/assets/documents/jpgl2023_web.pdf
(2026-07-29確認。第8章「急性増悪(発作)への対応」に表8-4「小児の喘息発作強度とのSpO2」〈Mochizuki H, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1995;152:906-910. のデータを引用〉、図8-2、表8-2・表8-5・表8-6等の参照あり。書籍本体の主要表〈表8-1=発作強度判定表〉自体はこのweb版には収録されておらず未確認)
- 一般社団法人日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023.Mindsガイドラインライブラリ.
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00825/
- 手塚純一郎.ガイドラインのワンポイント解説 小児気管支喘息治療管理ガイドライン2017―急性増悪(発作)への対応―.アレルギー.2019;68(8):912-918.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/68/8/68_912/_pdf
(2026-07-29確認・原著PDFを画像化して図表を目視確認。本ドラフトの表2〈発作強度判定表〉・図1〈家庭での対応〉・表1〈乳幼児の強い喘息発作のサイン〉・図3〈医療機関での対応〉・表3〈薬物療法プラン〉・表5〈全身性ステロイド薬の投与方法〉は全てこの論文が原典であるJPGL2017から逐語引用している箇所を、本ワークフローの記述に再構成したもの。原典:日本小児アレルギー学会.急性増悪〈発作〉への対応.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017.東京:協和企画;2017.p.142-162)
- 岐阜県医師会.喘息ガイドライン(小児用).
https://www.gifu.med.or.jp/doctor/asthma/guidelines-child/
(JPGL2020準拠と明記。発作強度判定基準を「JPGL2020 表8-1を引用」としており、第8章・表8-1という章立てがJPGL2020時点でも同一であったことの傍証として参照)
- つだ小児科クリニック.小児気管支喘息診療・管理ガイドライン2023のCQ.
https://tsudashonika.com/disease-cat/allergies/child-bronchial-asthma-guideline/
(2026-07-30確認・二次情報。CQ10〈入院患者への全身性ステロイド投与を推奨する強い根拠はない〉、CQ11〈急性増悪時の特定の経口ステロイド使用法は提案されない〉、CQ12〈急性増悪時のICS増量は提案されない〉の要約あり。書籍原本〈第8章CQ9〜CQ12〉での一次確認が必要)
- 日本製薬(グラクソ・スミスクライン).ベネトリン吸入液0.5%添付文書.
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056440.pdf
(2026-07-30確認。小児用量は1回0.1〜0.3mL〈サルブタモールとして0.5〜1.5mg〉、年齢・症状により適宜増減、と明記)
- ファイザー.ソル・コーテフ静注用100mg・250mg・500mg 添付文書(2026年3月改訂第3版).
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071607.pdf
(2026-09-26確認・原文PDF直接確認済み。4章の静注ヒドロコルチゾン用量〈決定2026-09-26〉の裏付け)
- ファイザー.ソル・メドロール静注用40mg・125mg・500mg・1000mg 添付文書(2026年3月改訂第4版).
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055581.pdf
(2026-09-26確認・原文PDF直接確認済み。気管支喘息の項に年齢区分なし・1日上限の記載なしを確認。4章の静注メチルプレドニゾロン用量〈決定2026-09-26〉の裏付け)
- 一般社団法人日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020.協和企画;2020.表8-9「全身性ステロイド薬の投与方法」p.179.
(2026-09-27確認・書籍原本をnode _bookgrep.mjsで直接照合。表は静脈内投与の量を示した直後に「最大投与量:PSL換算60mg/日」、経口投与の量を示した直後にも同じ文言を独立して付す二段構成であることを確認。4章の静注1日総量上限の記載〈本追記〉の裏付け)
※ 点数・GLは改定される。運用前に最新版を確認。特に2. の発作強度判定表(表8-1相当)と5. の入院閾値の詳細、および4. の全身性ステロイド用量は、JPGL2017からの引用に基づく再構成であり、JPGL2023書籍本体で数値・文言・推奨の強さに変更がないか医師本人が原本で確認すること。
- Royal Children's Hospital Melbourne. Acute asthma. https://www.rch.org.au/clinicalguide/guideline_index/Acute_asthma/ (2026-10-02本文確認。気流制限・silent chest・臨床重症度・鑑別・SABA毒性・退院評価。豪州のMgその他の重症治療オーダーは当院へ転用しない)
追補の国内参照:上記2のJPGL2023公開web補足図表、web図8-1「小児の急性増悪(発作)時の動脈血液ガス分析所見」を2026-10-02に再確認。https://www.jspaci.jp/assets/documents/jpgl2023_web.pdf 。公開補足図表と冊子本体の全文閲覧は区別する。
10臨床医が迷う場面
2026-10-27追記。海外指針の評価の考え方は参考とし、国内承認用量・既存の院内方針と区別する。
11吸入後も頻呼吸が続く。さらにSABAを重ねる?
陥没・呼吸音の入り・会話・酸素化を吸入前と比較する。気流が改善したのに頻脈、振戦、頻呼吸が目立つ場合、β2刺激薬による低K血症・乳酸上昇も考える。上級医と採血・心電図の必要性を判断し、頻呼吸だけで増量を続けない。一方、silent chestや意識低下は治療失敗として直ちに対応する。
12吸入への反応が悪いとき、いつ診断を見直す?
初回喘鳴、食事中の突然発症、左右差、発熱の持続や胸痛では、気道異物・肺炎・気胸などを再評価する。蕁麻疹・口唇腫脹・循環症状を伴えばアナフィラキシーを優先する。典型例に一律の胸部X線は不要だが、持続する局在所見や十分な治療への無反応は画像・上級医相談の理由となる。
13軽くなったので全身性ステロイドを全員に出す?
全員へ一律には出さない。海外指針では中等症〜重症は早期投与の対象で、軽症へのルーチン投与を支持する根拠は乏しい。自宅で繰り返しSABAを要した経過、今回の重症度、反応、過去の治療を合わせて判断する。具体的な用量・日数は本ページの国内資料・院内方針で確認し、海外レジメンをそのまま処方しない。
14吸入後にゼーゼーが消えたら帰してよい?
音だけで決めない。呼吸努力、空気の入り、室内気での酸素化、飲水、再び発作止めが必要になるまでの間隔を確認する。最後の吸入後も安定が持続し、家族が手技と悪化時対応を理解していることが必要。短時間で再燃する、酸素が要る、疲弊する場合は観察継続・入院相談へ進む。
15いつ上位施設への相談を始める?
初期治療でも強い呼吸困難が続く、酸素需要が増す、SABAの間隔を延ばせない場合は早期に相談する。意識変化、疲弊、silent chestは待てない所見。CPSの初期1〜2時間で改善しない重症例という目安を参考にするが、悪化時はその時間まで待たない。当院で行わない静注追加治療のために搬送を遅らせない。
16退院時の薬と再診は何を決める?
発作止めの使用法・再受診条件を文書にし、家族に実演してもらう。普段の予防薬と今回の短期薬を分け、自己判断の吸入ステロイド倍量化は指示しない。救急受診を長期管理見直しの機会とし、かかりつけへ経過を伝えて再診を設定する。頻回受診、過去のICU歴、残る症状があれば早める。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。