9-9 尿検査とおしっこの感染症(尿路感染症)

緊急

9-9尿検査とおしっこの感染症(尿路感染症)

病態・根拠
このページの目次16項目

1病態・検体・帰宅判断をつなぐ(2026-10-02追補)

年齢で症状が変わる

多くの小児UTIは腸内由来の菌が尿路を上行して起こる。膀胱に限局する場合は排尿痛、頻尿、尿意切迫、下腹部痛などが手がかりになり、腎盂腎炎では発熱、嘔吐、悪寒、側腹部痛、全身の不調を伴う。ただし乳児ではこの区別が難しく、発熱・哺乳不良・不機嫌だけで来ることがある。[1][9]

尿流の異常、CAKUT、VUR、結石、便秘と膀胱機能障害は感染の反復に関わる。排尿を我慢する、昼間の失禁、細い尿線、いきむ排尿、便秘、胎児期の水腎症、過去の培養菌と耐性を確認する。発熱源が尿らしく見えても、低月齢では菌血症・髄膜炎の評価を省略しない。[9][10]

尿試験紙は感染確定の検査ではない

白血球エステラーゼは炎症の手がかりで、亜硝酸塩は一部の菌が尿中硝酸を変換することを利用する。頻回排尿の乳児では膀胱内の時間が短く、亜硝酸は偽陰性になりやすい。菌種によっても産生せず、陰性一つでは否定できない。血尿や蛋白尿もUTIに特異的ではない。[9]

陽性の培養も、症状・尿所見・採尿法・単一菌か混合菌かを合わせて読む。採尿バッグの陽性培養は汚染が多く、診断確定に使わない。抗菌薬後の陰性培養は、投与前の陰性と同じ意味ではない。菌数の閾値は採尿法やガイドラインで異なるため、本文の複数基準を混ぜず参照した基準を明記する。[1][9]

夜間は推定診断と検体取扱いを明示する

当院は導尿可能だが尿は定性のみで、尿沈渣・定量・培養の夜間提出はできない。可能なら抗菌薬前に適切な尿を採り、採取法・時刻・投薬前後を記録する。培養保管の温度・容器・時間・翌朝受入は未確認であり、採取したことだけで診断の機会が保証されると説明しない。検査室または受入先へ提出経路を確認する。

全身状態不良では、採尿や提出調整のため抗菌薬・蘇生を遅らせない。採れなかった理由や投薬時刻を記録し、臨床経過と追加評価で診断を見直す。[9] 尿定性が陰性でも低月齢や強い臨床疑いでは評価を続け、夜間利用できないANC/PCTをCRPと総白血球数で置き換えて検証済みルールにしたとは扱わない。

年齢別の診療とLPの安全性

当院は生後8〜28日に血液・尿・髄液評価と入院、生後29〜60日に原則入院を採用する。生後3か月未満の発熱のページで年齢別に判断する。生後0〜7日はAAP対象外で新生児対応施設への相談、61〜89日は具体的院内方針未確定で上級医へ相談する。海外指針には3か月未満のUTIを初期静注治療のため入院とする運用があり、低月齢を年長児の帰宅基準へ直接当てはめない。[9][10]

尿所見陽性だけで髄膜炎が確定するわけではなく、陰性でも除外しない。LPが必要な評価でも、新規巣症状、瞳孔異常、重度・進行する意識低下、呼吸循環不安定では保留する。安定化・経験的治療・専門相談を先行する。[10]

帰宅を検討する条件

低月齢の院内入院方針を外れた児で、以下を一つずつ確認する。[9]

  1. 全身状態と循環が安定し、敗血症・髄膜炎・尿路閉塞などの懸念がない。
  2. 飲水と尿量が保たれ、嘔吐が強くなく、選択した経口抗菌薬を実際に服用できる。
  3. 年齢、既知の尿路異常、過去の耐性菌、腎機能を踏まえ、治療を医師が具体的に決定した。
  4. 適切な培養検体を確保し、有効に処理される提出経路と、結果の確認担当・連絡先が決まっている。
  5. 24〜48時間を目安に治療反応と培養の確認を行う再診/連絡計画があり、悪化時にはその時刻を待たず再受診できる。

「水分が取れる」だけでは帰宅条件は揃わない。夜間培養の取扱い・薬剤選択・結果追跡を確保できない、家族の再診が困難、低月齢や既知の尿路異常、持続嘔吐がある場合は入院・相談を優先する。61〜89日の児を自動的に帰す運用は新設しない。

治療反応と画像フォロー

適切な治療でも発熱が直ちに消えるとは限らないが、24〜48時間で全身状態と熱の方向を確認する。改善が乏しければ耐性菌、診断違い、閉塞、AFBN、膿瘍などを見直し、培養結果と画像を相談する。重症、尿流不良、Cr上昇、非大腸菌、反応不良など非典型例は、急性期画像が必要になりうる。当院夜間に熟練超音波評価ができなければ紹介先で評価する。[9]

画像の一律実施は年齢・非典型/反復・ガイドラインで方針が異なるため、旧AAPの「全例」と現行施設指針の選択的適応を同じものとして扱わない。VURがあっても全員が予防抗菌薬・手術の対象ではなく、逆流の程度、再発、腎障害、膀胱機能などで専門医が判断する。国内2025アップデートの存在を確認し、具体的適用は小児腎臓・泌尿器科と相談する。[11]

2要点(3行)

  • UTIの診断は「症状(多くは発熱のみ)」+「尿定性・沈渣の異常」+「カテーテル尿または中間尿での有意な単一菌種の検出」の3点がそろって成立する。培養に使えるのはカテーテル尿・中間尿だけで、パック尿(採尿バッグ尿)はコンタミネーションが多く培養診断には使わない[1][2]。
  • 尿定性(亜硝酸塩・白血球エステラーゼ)は補助検査。両方陰性ならUTIらしくない(陰性尤度比0.20)が除外はできず、乳児は膀胱内滞留時間が短いため亜硝酸塩が偽陰性になりやすい[1]。
  • 抗菌薬投与前に培養検体を確保することが大原則。画像フォローは年齢・非典型所見・反復歴と参照ガイドラインを明記する。旧AAPの初発有熱性UTI全例エコーという対象別推奨と、現行の選択的適応を混同しない。VCUG・DMSAは専門医と適応を判断する。[1][2][4][9]

3いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)

  • 使う(適応):
  • 発熱源不明の乳幼児で、40℃以上の発熱(LR 3.2〜3.3)、2日以上続く39℃以上の発熱(LR 4.0;95%CI 1.2〜13.0)、UTI既往(再発リスクは通常の2〜3倍)のいずれかを認める場合[1]
  • 腹痛(LR 6.3)、背部痛(LR 3.6)、頻尿・排尿時痛(LR 2.2〜2.8)、失禁(LR 4.6)などUTIを疑わせる症状がある場合[1]
  • 恥骨上部圧痛(LR 4.4)、CVA叩打痛など、身体所見で示唆される場合[1]
  • ill-appearingで直ちに抗菌薬投与を要すると判断した熱源不明児(この場合も投与前の検体確保が前提)[2]
  • 使わない・過剰になりがち:
  • 発熱・排尿時痛などの症状を伴わない無症候性細菌尿への抗菌薬治療(妊婦・泌尿器科的処置前を除き推奨されない)[1]
  • パック尿を培養検体として提出すること(スクリーニングの尿定性検査にはよいが、コンタミネーションが多く培養診断には用いるべきではない)[1]
  • 初発の有熱性UTI全例へのルーチンVCUG(現在は超音波での異常所見・非典型例・反復例に限定する運用が標準)[2][4]
  • 尿路奇形を伴わない初発UTI、VUR I〜II度に対するルーチンの予防抗菌薬投与(RIVUR studyでのST合剤耐性菌増加も踏まえ、本邦のGLでも推奨されない)[1]

1-0 適用年齢の境界:生後90日以下の発熱乳児は本ノート単独では完結しない

本ノートの「症状+尿定性・沈渣異常+有意菌数」というUTI診断ロジックは、主に生後2〜24ヶ月の乳幼児を想定した本邦GL(JAID/JSC 2015)[1]・AAP 2011[2][3]に基づく。生後90日以下、とくに60日以下のwell-appearing発熱乳児では、UTIの有無だけを見て終わらせてはならず、菌血症・細菌性髄膜炎の合併評価を含む年齢層別の広域ワークアップが必須である。最新の一次資料はAAP「Clinical Practice Guideline: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old」(Pantell RH, et al. Pediatrics. 2021;148(2):e2021052228)[7]で、年齢を3層に分けて血液培養・炎症マーカー・腰椎穿刺(CSF検査)の要否を規定している。

年齢血液培養炎症マーカー腰椎穿刺(CSF)
生後8〜21日全例施行参考情報として測定可全例施行が推奨(ルーチン)
生後22〜28日全例施行全例測定(CRP・プロカルシトニン・好中球数等)当院は生後8〜28日に髄液を含む評価・入院を採用。LPの安全条件を優先し、禁忌時は保留して治療・相談を先行する。
生後29〜60日全例施行全例測定AAPでは炎症マーカー等を踏まえてLP適応を判断する。当院は原則入院、夜間の判定材料不足では上級医へ相談。未検証のリスク数値で省略を決めない

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※上記はAAP 2021 CPGが対象とする生後8〜60日の枠組み。生後0〜7日(第1週)はこのCPGの適用範囲外であり、新生児科的なフルワークアップの対象となる(本ノートでは未特定・別途施設プロトコルに従う)。同様に生後61〜90日もこのCPGの適用範囲外であり、本邦・欧米とも施設プロトコルにばらつきがある(Rochester/Boston/Philadelphia criteria等の older risk-stratification toolsが依然参照されることもある)ため、施設基準・小児科的判断による。当院の年齢別方針は低月齢発熱を参照[7]。

4実際(読み方・基準値・手技・スケジュール等)

2-1 採尿法(培養に使えるか/使えないか)

対象患児推奨採取法培養(診断確定)備考
排尿が自立していない乳幼児カテーテル尿○(推奨・A II)侵襲は大きいが標準法。膀胱穿刺尿も可だが本邦では一般的でない[1][2]
排尿が自立している患児中間尿○(推奨・A)乳幼児の中間尿診断基準は確立していない(報告は散見される程度)[1]
スクリーニング目的(陰部清拭後)パック尿(採尿バッグ)×(コンタミ多くB II)定性検査には使える。陽性ならカテーテル尿で再確認してから治療判断[1][2]
膀胱穿刺―○通常は推奨されない。尿道の閉塞性病変がある場合など、カテーテル法が困難/不適な例で例外的に選択される(C)[1]。有意菌数の基準は流派で異なるため2-4節を参照

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  • 抗菌薬投与前の採取が必須:投与後は多くの薬剤が速やかに尿を無菌化し、UTIの確定診断が困難になる(AAP Action Statement 1、Evidence A)[2][3]。全身状態不良では可能なら投与前に採るが、採尿のために即時治療を遅らせない。

2-2 尿定性検査(亜硝酸塩・白血球エステラーゼ)の感度・特異度

項目感度特異度
白血球エステラーゼ75〜96%80〜90%
亜硝酸塩約25%(低い)>90%(高い)

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  • 尤度比(乳幼児・小児、本邦GL引用のメタ解析)[1]:
  • 白血球反応・亜硝酸塩ともに陰性:LR 0.20(95%CI 0.16〜0.26)
  • どちらか一方が陽性:LR 6.1(95%CI 4.3〜8.6)
  • ともに陽性:LR 28(95%CI 17〜46)→ 積極的にUTIと診断してよい
  • AAPのdipstick判定:LEまたは亜硝酸塩のいずれか陽性で「尿定性陽性」とみなし、培養(カテーテル尿/膀胱穿刺)に進む[3]。新鮮尿(採取後1時間以内)でLE・亜硝酸塩ともに陰性なら、UTIの可能性は低い(<0.3%との報告)が、確実な除外にはならない[3]。
  • 白血球エステラーゼの尿定性検査は感度83%(範囲67〜94%)・特異度78%(64〜92%),亜硝酸塩は感度53%(15〜82%)・特異度98%(90〜100%)とされる(出典: Shaikh N, et al. Am Fam Physician. 2020;102(5):278-285, AAP 2011ガイドライン Roberts KB, et al. Pediatrics. 2011;128(3):595-610 引用, 確認日 2026-09-25)。

2-3 尿沈渣・膿尿の基準

  • 2011年AAPガイドラインは「白血球尿(>5 WBC/hpf)の存在+細菌尿」を診断の必須要件としている[2][3]。
  • 一方、英国NICEガイドラインは「膿尿が認められなくてもUTIは除外できない」との立場をとる。本邦(JAID/JSC 2015)もこの立場に近く、膿尿の存在を必須としない(B II)[1]。
  • 非遠心尿のグラム染色で1視野に細菌1個以上を認めた場合、培養菌量として10⁵/mLに相当し、検尿所見と併せて原因菌を想定するうえで有用な参考情報になる(B IV)[1]。

2-4 有意菌数(診断の菌数基準)

採取法有意菌数の目安
カテーテル尿・中間尿(本邦GL)腸内細菌群が単一菌種として 10⁴〜10⁵/mL以上(A II)[1]
カテーテル尿(AAP 2011)尿路病原体 ≥50,000 CFU/mL(1999年版の100,000/mLから引き下げ)+尿所見異常(膿尿または細菌尿)の両方が必要(Evidence C)[2][3]
膀胱穿刺尿・SPA(AAP 2011の公式基準)AAP 2011 Action Statement 3はカテーテル尿と区別せず同一の「≥50,000 CFU/mL+尿所見異常」をSPAにも適用する(原文照合済み・両採取法を明確に区別していない)[2][3]
膀胱穿刺尿・SPA(伝統的教義/欧州EAU-ESPU)膀胱内は本来無菌という前提から、菌量を問わず尿路病原体の検出=有意(any count)とするのが伝統的な考え方(Hellersteinの基準に由来)。EAU/ESPU小児泌尿器科GL(2021年改訂)も同様に「any count」を有意とし、生後4ヶ月未満の発熱児では条件付きで10³ CFU/mLをカットオフに用いてよいとする(原文照合済み:'t Hoen LA, et al. J Pediatr Urol. 2021;17(2):200-207, p.202 "With suprapubic bladder aspirates any count constitutes a positive culture... In febrile children <4 months of age a cut-off value of 10³ cfu/ml can be used when clinical and laboratory findings match")。AAP 2011の統一基準(上記)とは立場が異なるため、参照するGLを明示した上で使い分ける[8]
乳幼児カテーテル尿(一部報告・本邦)5×10⁴/mLとする報告もあるが、本邦で日常的に用いられることは少ない[1]
膀胱穿刺尿(本邦GL)JAID/JSC 2015は「膀胱穿刺尿を用いた小児UTIの診断基準は本邦に存在しない」と明記。本邦では膀胱穿刺自体が一般的でなく、この基準値が臨床で使われる機会は少ない[1]
(参考)無症候性細菌尿の定義女児:2回連続10⁵/mL以上/男児:1回10⁵/mL以上/カテーテル尿:男女とも1回10²/mL以上[1]

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  • 診断基準まとめ:UTIの診断=発熱などの臨床症状+尿検査の異常所見(膿尿・細菌尿)+カテーテル尿または中間尿での有意な単一菌種の検出、の3条件がそろうこと(A I)[1]。AAP 2011は「尿定性の異常所見」+「50,000 CFU/mL以上」の両方を、カテーテル尿・SPAいずれにも要求する(Action Statement 3、原文で確認済み)[2][3]。膀胱穿刺尿を「検出のみで有意」とする扱いはAAP 2011の公式基準ではなく、伝統的教義・EAU/ESPU系ガイドラインの立場である点を混同しないよう注意(本ノートでは両論を併記した)。

2-5 想定される原因菌と初期治療の考え方

  • 基礎疾患のない初発UTIの起因菌は国内外を問わず大腸菌(E. coli)が約80%、次いでEnterococcus属が約10%、残りをその他の腸内細菌が占める(原文照合済み:JAID/JSC 2015原文p.18に同数値の記載を確認。引用元は同ガイドライン内の文献番号99・111=古市宗弘他.過去10年間に経験した尿路感染症の臨床的検討.日児誌 2013;117:1093-7/池宮城雅子他.熱性尿路感染症の臨床的検討からみた欧米の報告と背景の違い.小児科臨床 2012;65:2233-6。いずれも本邦コホート)[1]。
  • 早期治療は腎瘢痕予防のために重要(原文照合済み・A I:JAID/JSC 2015原文p.18「早期治療は腎瘢痕予防のために重要である(93)~95)(A I)」。引用元=Hiraoka M, et al. Pediatr Nephrol. 2003;18:115-8/Doganis D, et al. Pediatrics. 2007;120:e922-8/AAP 2011ガイドライン[2])。初発UTIを疑った場合は大腸菌を標的とし、当該地域のアンチバイオグラムを参考に第1〜3世代セフェム系薬を選択する(A II)。Enterococcus属を否定できない場合はアンピシリンとアミノグリコシド系薬の併用も考慮される(C)[1]。
  • 3カ月未満の乳児で髄膜炎の合併が疑われる場合は、第1・2世代セフェム系薬やアミノグリコシド系薬の髄液移行性が不十分であることを考慮する(B)[1]。
  • 発熱を伴う小児UTIの抗菌薬投与期間は7〜14日間が原則(A II)。腎盂腎炎で1〜3日と短期であった場合は再燃の可能性が高まる[1][2][3]。
  • 用量は体重(kg)換算で設定するのが原則(例:セフェム系薬・アミノグリコシド系薬とも mg/kg/日で規定)。個別の処方量は院内採用薬・添付文書に従って別途確認する。

2-6 画像フォロー(VUR/腎瘢痕・エコー・DMSA・VCUGの適応)

検査適応タイミング/備考
腎・膀胱超音波発熱を伴う初発UTI全例に推奨(A II/AAP Action Statement 5)解剖学的異常(水腎症・膀胱壁肥厚など)のスクリーニング。乳幼児の15%に異常所見、1〜2%に外科的介入を要すると報告[1]
VCUG(排尿時膀胱尿道造影)ルーチンでは推奨されない。適応=エコーでの異常所見(水腎症・瘢痕・高度VURや閉塞性尿路疾患を示唆する所見)、非典型例(全身状態不良・尿勢低下・血清Cr上昇・E. coli以外の起因菌・48時間以内に治療反応が乏しい)、反復性有熱性UTI(B II/AAP Action Statement 6a・6b)[1][2][3]実施は5Fr前後のカテーテルで、造影剤は自然滴下、蓄尿時・排尿時ともに撮影。排尿終末にのみVURが出現することもあり、必ず排尿時まで撮像する[4]
DMSA腎シンチグラフィルーチンではないが、エコー異常・高熱・E. coli以外の起因菌などのリスク因子や有熱性UTI反復例で考慮腎瘢痕評価は有熱性UTI後4〜6カ月あけて実施(急性期は一過性の取り込み低下があり瘢痕と混同しうる)。急性期(発熱から1週間以内)のDMSAでVCUGの要否を判断するTop-Downアプローチも提唱されるが、有用性は確立していない[2][4]
予防抗菌薬投与尿路奇形を伴わない初発UTI、VUR I〜II度へのルーチン予防投与は推奨されない(B I)。高度尿路奇形・膀胱機能障害を伴う症例では個々に検討(C)。VUR診療の詳細な管理方針は日本小児泌尿器科学会「小児膀胱尿管逆流診療手引き」(2016年版・2025アップデートあり)[5]を参照RIVUR study(VUR I〜IV度607人、生後2カ月〜6歳、ST合剤 vs プラセボ、2年フォロー):UTI再発はHR 0.50(95%CI 0.34〜0.74)と有意に減少したが、腎瘢痕形成には有意差なし(11.9% vs 10.2%)、投与群でST耐性大腸菌の出現頻度が上昇(63% vs 19%)。本邦ではセフェム系薬を予防投与に使う施設が多く、ESBL産生腸内細菌によるUTIリスク上昇に留意が必要[1][6]

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5鑑別・拾える疾患/注意すべき病態

  • 発熱のみで局所症状に乏しい乳児UTI:小児UTIで最も見逃されやすい像。腹痛・排尿時痛などの局所症状は乳幼児ほど出にくい[1]。
  • 急性巣状細菌性腎炎(AFBN:Acute Focal Bacterial Nephritis):急性腎盂腎炎の重症・限局型。抗菌薬治療への反応が乏しい・発熱が遷延する場合に疑う。最低2週間の静注+その後内服で合計3週間の治療が望ましい(原文照合済み・B II:JAID/JSC 2015原文p.18「急性巣状細菌性腎炎(AFBN:Acute Focal Bacterial Nephritis)の場合は,最低2週間の静注投与とその時点で経口薬にスイッチし,合計3週間の治療が望ましい(B II)」、引用元Cheng CH, Tsau YK, Lin TY. Effective duration of antimicrobial therapy for the treatment of acute lobar nephronia. Pediatrics. 2006;117:e84-9.)[1]。
  • 腎膿瘍・気腫性腎盂腎炎:泌尿器科的緊急ドレナージを要する病態。腹部CT・超音波検査での鑑別が有用[1]。
  • CAKUT(先天性腎尿路異常)・VUR:反復UTI、胎児期水腎症の既往がある場合に想定。エコー異常(水腎症grade 3以上、尿管拡張、両側性上部尿路拡張など)は早期のVCUG適応[4]。
  • 尿路結石:複雑性UTIの基礎疾患として想定。
  • 排尿機能障害(dysfunctional voiding)・尿道憩室など:反復UTIの基礎にあることがある。VCUGでspinning-top像やハッチの憩室として示唆されることがある[4]。
  • 外陰炎・腟炎:女児で白血球尿の原因となるが、UTIではないため培養結果・臨床像とあわせて鑑別する。

6忘れがちポイント・落とし穴 ★

  • パック尿は培養に使えない:陰部を十分清拭してもコンタミネーション率が高く、培養診断の根拠にならない。パック尿で「培養陽性」と出ても、治療方針決定の前にカテーテル尿・中間尿での再確認が原則(本邦GL B II、AAP Action Statement 1でも「バッグ尿培養では診断を確立できない」と明記)[1][2][3]。
  • 発熱のみのUTI見逃し:乳幼児UTIは局所症状に乏しく、発熱だけのことが多い。熱源不明の発熱で40℃以上、2日以上続く39℃以上、UTI既往などのリスク因子があれば検尿を積極的に考慮する(見送ると腎瘢痕リスクが上がる)[1]。
  • 乳児での亜硝酸塩偽陰性:亜硝酸塩産生には細菌が膀胱内である程度の時間(数時間)尿中に滞留する必要があるが、乳児は排尿間隔が短く膀胱内滞留時間が不十分なため偽陰性になりやすい。亜硝酸塩陰性だけでUTIを否定しない、白血球エステラーゼ・沈渣・臨床像とあわせて総合判断する。
  • 抗菌薬投与前の採取忘れ:ill-appearingで先に治療を急ぎたくなる場面ほど検体確保が抜けやすい。投与後は速やかに無菌化し、確定診断も画像フォローの是非判断も宙に浮く。
  • 尿定性陰性=UTI否定ではない:両陰性でもLR 0.20であり除外力は完全ではない。症状が強い・持続する場合は培養提出を省略しない[1]。
  • 膿尿がなくてもUTIは否定できない:AAP 2011は膿尿を必須要件とするが、NICE・本邦GLは「膿尿なし=UTI除外」とはしない立場。膿尿陰性のみで安易に否定しない[1][3]。
  • 有意菌数の基準は採尿法で異なる:カテーテル尿・中間尿での有意菌数(10⁴〜10⁵/mL、AAP基準50,000CFU/mL)と、無症候性細菌尿の定義(女児2回10⁵/mL、男児1回10⁵/mL、カテーテル尿は男女とも10²/mL以上)を混同しない[1]。
  • 膀胱穿刺尿(SPA)の有意菌数は参照GLで立場が異なる:AAP 2011はカテーテル尿と同じ≥50,000 CFU/mLをSPAにも適用する統一基準(原文照合済み)。一方、EAU/ESPU等の伝統的教義は「SPAは検出のみ(any count)で有意」とする(膀胱内は本来無菌という前提)。どちらの基準に基づくかを明示せずに「SPA陽性=UTI」と即断しない[2][3]。
  • 無症候性細菌尿は治療対象外:症状を伴わない培養陽性に抗菌薬を出しても発症予防効果は証明されていない(妊婦・泌尿器科的処置前は例外)。フォロー中の無症状培養陽性に飛びつかない[1]。
  • DMSA/VCUGは「全例ルーチン」から「選択的運用」へ移行済み:2011年AAP改訂以降、初回UTIへのルーチンVCUGは推奨されない。旧来の「UTI=全例VCUG」の感覚のままオーダーしないよう注意(本邦GLも同方向、B II)[1][2][3]。
  • 腎瘢痕評価のDMSAは急性期を避け4〜6カ月あける:急性期は炎症による一過性の取り込み低下があり、真の瘢痕評価と混同すると過大評価につながる[4]。
  • 予防抗菌薬の安易な継続:VUR I〜II度・尿路奇形のない初発UTIへのルーチン予防投与は推奨されない。RIVUR studyでも腎瘢痕形成の抑制効果は示されず、耐性菌増加というデメリットがある[1]。
  • 割礼を前提とした欧米の性差リスク層別をそのまま持ち込まない:AAPの女児/男児別リスク評価アルゴリズムは割礼の有無を前提としており、割礼が一般的でない本邦では男児の方が女児よりUTIが多いとの国内報告がある。性別のみでハイリスク群から除外しない[1][3]。

7患者・保護者への説明(要点)

  • 「熱の原因を調べるために、おしっこの検査をします」——採尿バッグでの検査はまず簡易に調べるためのもので、確定診断のためには管を使った採尿(カテーテル)が必要になる場合があることを事前に説明する。
  • 抗菌薬を始める前に採尿する理由は「あとから正確に診断するため」であり、順番を守ることで治療方針がぶれないことを伝える。
  • 発熱を伴う膀胱炎・腎盂腎炎の多くは、適切な抗菌薬でしっかり治ること。繰り返す場合や超音波検査で異常が見つかった場合は、追加の検査(造影検査や核医学検査)を検討することがあると説明する。
  • 治療後、次に熱が出たときは早め(目安48時間以内)に受診してほしいこと(再発を早く見つけて治療するため)。

8院内ローカルルール

  • 尿定性は当直で即日実施可能。尿沈渣・尿培養は当直では実施不可のため、採取後の保管・提出条件は検査室/受入先に確認する(院内方針2026-09-25)。

9出典(日本のGL優先・URL+版年)

  • [1] 日本感染症学会・日本化学療法学会 JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会 尿路感染症・男性性器感染症ワーキンググループ.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―(「7. 小児の尿路感染症」pp.17-20).感染症学雑誌 第90巻第1号,2016年1月20日発行.2026-07-31:原文PDFを直接取得しpp.17-20全文を再照合済み(本ノートの引用菌数・LR値・原因菌割合等はこの原文と一致を確認)。なお未確定:同シリーズの簡易版「JAID/JSC感染症治療ガイド」は2023年11月に「2023」版が刊行され尿路性器感染症の章を含むことを検索エンジン経由で確認したが、これは詳細版「ガイドライン」とは別系統の書籍(ポケット版)であり、本引用元である詳細版「ガイドライン2015」(尿路感染症・男性性器感染症)そのものの改訂有無は未確認(学会サイト内の該当ページには改訂履歴の記載が見当たらず)。運用前に最新版の有無をkansensho.or.jpで直接確認要。https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2015_urinary-tract.pdf
  • [2] Roberts KB; Subcommittee on Urinary Tract Infection, Steering Committee on Quality Improvement and Management. Urinary Tract Infection: Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of the Initial UTI in Febrile Infants and Children 2 to 24 Months. Pediatrics. 2011;128(3):595-610.(2016年に文献レビューの上で再承認(Reaffirmation, Pediatrics 2016;138(6):e20163026)。2021年5月retire・理由=人種を疾患予測因子として扱っていたこと、を2026-07-31に独立3経路で再確認:①publications.aap.org自誌の当該論文ページに「This Clinical Practice Guideline was retired May 2021」の記載、②AAP「Equity journey」記事(publications.aap.org/aapnews/news/20159)が人種をUTIリスクの"biologic proxy"として組み込んでいたことを撤回理由として明記、③AAFP解説記事(aafp.org/afp/2020/0901/p278)のeditor's noteも同旨。いずれもAAP本体ドメインはWebFetch 403のため検索エンジンのキャッシュスニペット経由での確認にとどまり、原文の一字一句までは未照合。2026年7月時点で公式の後継GLは未発表のため、現状は本文献が最も広く参照される一次資料)https://publications.aap.org/pediatrics/article/128/3/595/30724
  • [3] Roberts KB. Revised AAP Guideline on UTI in Febrile Infants and Young Children. Am Fam Physician. 2012;86(10):940-946.([2]の解説記事、キーアクションステートメント・アルゴリズム図を含む)https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2012/1115/p940.pdf
  • [4] 白柳慶之,山崎雄一郎.CAKUT(congenital anomalies of the kidney and urinary tract)に対する画像検査―排尿時膀胱尿道造影(VCUG)と核医学検査―.日本小児腎臓病学会雑誌 2013;26(1):33-42.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpn/26/1/26_33/_pdf/-char/ja
  • [5] 日本小児泌尿器科学会.小児膀胱尿管逆流診療手引き2016.日本小児泌尿器科学会雑誌 2016;25:47-94.2026-07-31確認:本手引きは「小児膀胱尿管逆流(VUR)診療手引き 2025アップデート」として改訂版が公開済み(学会ガイドライン一覧ページで2016年版PDF"tebiki2016-2.pdf"と並び2025アップデート版PDF"vur2025.pdf"を確認。2025アップデート版の詳細内容は原文PDF未取得のため未照合・運用前に本文の直接確認を推奨)。学会ガイドライン一覧:https://jspu.jp/ippan_32.html
  • [6] Hoberman A, et al.; RIVUR Trial Investigators. Antimicrobial Prophylaxis for Children with Vesicoureteral Reflux. N Engl J Med. 2014;370(25):2367-2376.([1]内で引用されるRIVUR studyの原著)
  • [7] Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al.; Subcommittee on Febrile Infants. Clinical Practice Guideline: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old. Pediatrics. 2021;148(2):e2021052228.(生後8〜60日のwell-appearing発熱乳児を3年齢層に分け、血液培養・炎症マーカー・腰椎穿刺の要否を規定する現行の一次資料。生後61〜90日は適用範囲外)https://publications.aap.org/pediatrics/article/148/2/e2021052228/179783
  • [8] 't Hoen LA, Bogaert G, Radmayr C, Dogan HS, Nijman RJM, Quaedackers J, Rawashdeh YF, Silay MS, Tekgul S, Bhatt NR, Stein R. Update of the EAU/ESPU guidelines on urinary tract infections in children. J Pediatr Urol. 2021;17(2):200-207.(膀胱穿刺尿は菌量を問わず検出=有意(any count)とする欧州小児泌尿器科の立場、生後4カ月未満では10³ CFU/mLを条件付きカットオフとして併用可、の出典)https://www.jpurol.com/article/S1477-5131(21)00068-1/fulltext

10臨床医が迷う場面

11採尿バッグで菌が出た。UTIとして治療を続けてよい?

採尿法、抗菌薬開始前後の採取、単一菌か混合菌か、症状と尿所見を確認する。バッグ尿は汚染しやすく、陽性だけで確定しない。安定していればカテーテル尿または排尿自立児の中間尿で確認する。全身状態が悪い児は検体を迅速に確保し、採尿のために抗菌薬を遅らせない。

根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)

12帰宅後に培養結果が出る。誰が、いつ薬を見直す?

外来治療にする時点で結果確認担当と連絡先を決め、24〜48時間で培養と症状を確認する。菌種・感受性が判明したら、感染部位に届く有効な薬の中から狭域化する。培養陰性や混合菌では検体の質と抗菌薬前投与を見直し、UTIの根拠が乏しければ別の熱源を評価して中止を検討する。

根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)

13抗菌薬開始48時間後も熱がある。とりあえず広域化?

適切な治療への48時間以内の反応不良は非典型UTIの所見。培養感受性、実際の投与量・服薬・嘔吐を確認し、敗血症、閉塞、腎膿瘍・急性巣状細菌性腎炎などを再評価する。腎尿路超音波を含む検査と入院・専門科相談を考える。ショック、乏尿、全身状態悪化なら48時間を待たず対応する。

根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)

14点滴から内服へ替える条件と治療日数は?

解熱・全身状態の改善があり、嘔吐せず飲めて、培養で有効な内服薬を選べることを確認する。切替日は治療のやり直しではなく、有効薬の総投与日数で管理する。このページの発熱性UTIは7〜14日を基本に個別判断する。菌血症、閉塞、腎膿瘍や急性巣状細菌性腎炎は同じ短期コースで完結させず専門科と決める。

根拠:JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)

15元気な乳児なら、UTIの内服処方だけで帰せる?

年齢の低い発熱児はUTIの診断だけで評価を終えない。このページの院内方針では生後29〜60日は原則入院とし、3か月未満は上級医と相談する。年長児でも循環不良、持続嘔吐、尿路異常、飲水・内服困難、培養確認や再診を確保できない場合は入院を考える。安定した児の外来治療にも24〜48時間の追跡計画が必要。

根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像

16治療後は毎回検尿・抗菌薬予防投与が必要?

無症状になったことだけで画像評価を省略したり、全例に予防抗菌薬を始めたりしない。初回発熱性UTIの腎尿路評価を計画し、反復、非大腸菌、反応不良、尿流不良や超音波異常があれば小児腎臓・泌尿器科へ相談する。予防薬や排尿時膀胱尿道造影は再発リスク・画像所見で判断する。便秘と排尿我慢も確認し、再発熱時は早めに採尿する。

根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)

一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。

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