8-1「成長痛」と呼ぶ前に(夜間の下肢痛)
9条件を全部満たすまで成長痛と呼ばない
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 『成長痛』は診断名ではなく、除外したあとに残る呼び名。当直で最初に使う言葉ではない。
- 日本整形外科学会はこの言葉を戒めている。『成長しているから痛い』『だから放置してよい』と誤解されるが、痛みには原因があり、中には重大な疾病の始まりであることもある。
- 『成長痛らしい』と言う前に、外すべきものを外したかを自分に問う。
- 9条件が全部そろって初めて成長痛と言ってよい。ひとつでも欠けたら、成長痛として帰さない。
2鑑別のながれ
- 夜間痛で目が覚める、日中も元気がない→蒼白・紫斑・発熱・肝脾腫・リンパ節腫大→白血病(血算・LDHを出す。末梢血液像は当直帯に出ない→鏡検は翌朝)
- 持続する骨痛・局所の腫脹・夜間痛→10歳前後〜思春期の膝周囲→骨腫瘍(骨肉腫・Ewing肉腫)(X線・持てない)
- 骨幹端の一点圧痛+発熱→熱がないこともある→化膿性骨髄炎
- 朝のこわばり、関節の腫脹、数週以上→→若年性特発性関節炎(専門施設)
- 跛行、先行する感冒→→単純性股関節炎
- 片側の股関節痛・跛行、4〜7歳→→Perthes病(整形へ)
- 思春期・肥満・股関節または膝の痛み、跛行→膝の痛みで来るので股関節を見ないと落とす→大腿骨頭すべり症(整形へ)
- 脛骨粗面の痛みと隆起、運動で悪化(10歳前後〜思春期)→→オスグッド病(整形へ)
- 同じ場所に繰り返し長期間の負荷→→疲労骨折(X線。MRIは当直帯に撮れない→翌日以降)
- 下肢変形・成長障害・食事歴→→ビタミンD欠乏性くる病(採血)
- 紫斑・腹痛・関節痛→→IgA血管炎
- 状況依存、学校がある日に集中→→心因性・不登校の身体化(器質を外してから)
3レッドフラグ→次の一手
| 119 | 発熱+ショック徴候 | 敗血症を考える(小児敗血症) |
|---|---|---|
| 緊急 | 片側性の痛み | 成長痛ではない。原因を探す |
| 緊急 | 発熱を伴う | 化膿性関節炎・骨髄炎を考える |
| 緊急 | 跛行がある・歩けない | 歩かない・手足を動かさないへ |
| 緊急 | 朝も痛い・朝にこわばる | 若年性特発性関節炎を考える |
| 緊急 | 夜間痛で目が覚める+蒼白・紫斑・リンパ節腫大・肝脾腫 | 白血病を考える。血算とLDHを出す(末梢血液像は当直帯に出ない。鏡検を待たず動く) |
| 緊急 | 体重減少・寝汗・持続する発熱 | 悪性腫瘍・感染を考える |
| 緊急 | 一点の骨の圧痛・局所の腫脹が触れる | 骨腫瘍・骨髄炎を考える。X線 |
| 緊急 | 背部痛・脊柱の可動域制限 | 脊椎の病変を考える。小児の背部痛は器質的疾患のことが多い |
| 緊急 | 痛みが進行している/範囲が広がっている | 経過が成長痛に合わない |
| 当日 | 膝下の骨の出っ張り(脛骨粗面)が痛い・腫れている・運動で悪化(10歳前後〜思春期) | オスグッド病。整形へ |
| 当日 | 条件9つを満たし、全身状態良好 | 経過観察でよい。再受診の条件を紙で渡す |
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4検査
- 典型年齢は3〜7歳(4〜6歳が中心)。それ以外の年齢では判断をより慎重に
- 両側性か(片側だけなら成長痛としない)
- 夕方から夜間の痛みで、日中は元気に遊んでいるか
- 翌朝には痛みが残っていないか(朝のこわばり・朝の跛行がない)
- 跛行がないか。歩ける・走れるか
- 発熱がないか
- 腫脹・熱感・発赤・圧痛点がないか
- 体重減少・寝汗・蒼白・紫斑がないか
- 成長曲線から外れていないか
- 経過が数か月で、悪化していないか
- 股関節の内旋を忘れない(膝の痛みで来ても股関節を回して大腿骨頭すべり症・Perthes病を確認する)
- 条件を欠く・迷うときは血算・CRP・LDH、必要ならX線(末梢血液像・赤沈は当直帯に出ない。鏡検は翌朝につなぐ)
5対応の注意
避けること・注意:『成長痛です』で終わらせること(心配な所見がないことと何が出たら来てほしいかを必ず伝える)、9条件を確認せずに成長痛と呼ぶこと。
↑ このページの入口へ6説明・紹介の目安
- 帰宅9条件をすべて満たす:当院で説明し経過観察。再受診の条件を紙で渡す
- 搬送・紹介発熱・片側性・跛行を伴う:原因検索へ。多くは持てない、血算・末梢血液像に異常:持てない。末梢血液像の鏡検(翌朝)を待たず動く、骨腫瘍を疑う:持てない、オスグッド・Perthes・大腿骨頭すべり症:整形へ紹介、朝のこわばり・多関節炎:小児リウマチへ紹介
7診療中の疑問と回答
- 夜の脚痛が続くが昼は元気。毎回鎮痛薬だけでよい?
- 痛む部位・左右、頻度と増悪、朝の症状、歩行、発熱や成長を確認する。限局する圧痛、腫れ、跛行、全身症状があれば成長痛として処方を繰り返さない。典型的な経過でも症状の変化を再評価し、持続・悪化すれば整形外科へ相談する。
根拠:日本整形外科学会 成長痛に関するFAQ / NHS Growing pains - 痛みが片側の同じ場所に続く場合、成長痛と説明してよい?
- 片側の局在する痛みは典型的な両側の筋痛とは分けて評価する。外傷・疲労骨折、感染、腫瘍などを症状と診察から検討し、必要なら画像や採血を行う。夜間痛に蒼白、紫斑、発熱を伴う場合は血液疾患も考え、単に成長のせいにしない。
根拠:日本整形外科学会 成長痛に関するFAQ / NHS Growing pains - 赤旗がない典型例でも、運動を全部やめさせる?
- 診察で心配な所見がないことを説明し、痛むときの休息、軽いマッサージや適切な鎮痛を相談する。無症状時の活動を一律に禁止しない。朝の痛み、跛行、腫れ、発熱などが新たに出たら再診するよう伝え、初回の説明を固定した診断にしない。
根拠:日本整形外科学会 成長痛に関するFAQ / NHS Growing pains
- 片側だけ痛い子も成長痛でいい?
- いいえ。両側性が条件の一つ。片側なら成長痛としない。
- 朝も痛ければ?
- 成長痛ではない。若年性特発性関節炎を考える。
- 夜間痛で目が覚めるときは?
- 要注意。蒼白・紫斑・肝脾腫・リンパ節腫大があれば血算とLDHを出す。末梢血液像は当直帯に出ないので、鏡検を待たず動く。
9家族への説明
『成長痛』という言葉は、あまり良い言葉ではありません。『成長しているから痛いのだ、放っておいてよい』という意味に受け取られてしまうからです。実際には、痛みには必ず理由があります。多くは、体がまだ育ちきっていないのにたくさん動いたことで、筋肉が疲れている状態です。痛がるときは、さすったり抱っこしたりすると落ち着くことが多いです。今日の診察では、急いで調べたほうがよい所見はありませんでした。ただし、次のどれかが出たら、また見せてください。片方の足だけが痛い・朝も痛い・熱が出る・びっこを引く・痛くて夜中に目が覚める・体重が減る・あざや鼻血が増える・痛みがだんだん強くなる。これらは、別の病気のサインのことがあります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。