9-9尿検査とおしっこの感染症(尿路感染症)
発熱乳児のUTI評価
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 当直帯に出せる尿検査は定性(試験紙)だけ。尿沈渣・培養結果はその場では出ない。導尿はできるので、抗菌薬の前にカテーテル尿を採ることが最重要。
- 可能なら抗菌薬前に適切な尿を採り、採取法・時刻を記録する。夜間培養提出は不可。検体取扱いの調整で重症例の治療を遅らせない。
- パック尿(採尿バッグ)はスクリーニングにはよいが培養には使えない(コンタミネーションが多い)。
- 生後8〜28日は当院方針で髄液を含む評価・入院、29〜60日は原則入院。0〜7日・61〜89日は上級医と相談。LPの安全条件を優先する。
- 抗菌薬開始後48時間経っても解熱しない、または一旦解熱後48時間以内に再度発熱したら再評価する。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 発熱のみ→局所症状に乏しい(乳幼児で最も見逃されやすい)→乳児UTI(発熱のみのことが多い)
- 発熱+抗菌薬治療への反応が乏しい・発熱が遷延→急性腎盂腎炎の重症・限局型→急性巣状細菌性腎炎(AFBN)
- 発熱+治療反応不良→泌尿器科的緊急ドレナージを要する→腎膿瘍・気腫性腎盂腎炎
- 反復するUTI→胎児期水腎症の既往、エコー異常→CAKUT(先天性腎尿路異常)・VUR
- 白血球尿→外陰炎・腟炎でも白血球尿は出る→外陰炎・腟炎(UTIではない)
3検査
- 採尿は年齢で選ぶ:排尿が自立していない乳幼児はカテーテル尿、自立している児は中間尿。パック尿は定性のみで培養には使えない
- 可能なら抗菌薬前に培養尿を確保。夜間提出不可で、保管・提出条件を検査室/受入先に確認する
- 尿定性(亜硝酸塩・白血球エステラーゼ)— 両方陰性でも完全には除外できない。乳児は亜硝酸塩が偽陰性になりやすい
- 生後8〜28日は血液・尿・髄液評価と入院。0〜7日は新生児対応施設と相談。3か月未満は尿所見だけで完結しない
- 夜間ANC/PCT不可で低リスクルールを再現できない。LPは上級医と判断し、新規巣症状・瞳孔異常・重度/進行する意識低下では保留、安定化・治療・緊急相談を先行
- 生後60日以下は原則入院とする(院内方針院内)。29〜60日はガイドライン上、検査所見が陰性なら外来管理も選択肢になりうるが、当院は院内夜間のうちに入院して早期に再評価できることを優先し原則入院とする
4処置・処方例
Rp. 1アンピシリン(ABPC)+ゲンタマイシン(GM) アンピシリン100mg/kg/日 分3〜4 静注+ゲンタマイシン5mg/kg/日 分1 静注。治療期間7〜14日間 静注
尿グラム染色でレンサ球菌が疑われる、または判断が難しいとき(腸球菌を念頭に)。生後60日を超え、腰椎穿刺で髄膜炎を除外済み(またはLP適応外)の児で、入院例を当直から開始する場合の第一選択の一つ(採用品・実際の投与量は院内採用薬で確認)。生後60日以下(とくに28日以下)は本シートで完結させない——「生後3か月未満の発熱」シートの経験的抗菌薬に従う
- カテーテル尿で培養検体を確保してから開始する
- アンピシリンを1日 —(100mg/kg)、3〜4回に分けて静注
- ゲンタマイシンを1日 —(5mg/kg)、1回で静注
- 尿グラム染色で明らかにグラム陰性桿菌が優位ならセファゾリン+ゲンタマイシンへの変更を検討する
- 治療期間は7〜14日間。静注期間は年齢・重症度で判断し、全身状態のよい年長児は培養提出後に内服薬へ切り替えてもよい
Rp. 2セファゾリン(CEZ)+ゲンタマイシン(GM) セファゾリン100mg/kg/日 分3〜4 静注+ゲンタマイシン5mg/kg/日 分1 静注。治療期間7〜14日間 静注
尿グラム染色で明らかにグラム陰性桿菌(大腸菌・クレブシエラ等)が優位なとき。生後60日を超え、腰椎穿刺で髄膜炎を除外済み(またはLP適応外)の児が対象。生後60日以下(とくに28日以下)は本シートで完結させない——「生後3か月未満の発熱」シートの経験的抗菌薬に従う
- カテーテル尿で培養検体を確保してから開始する
- セファゾリンを1日 —(100mg/kg)、3〜4回に分けて静注
- ゲンタマイシンを1日 —(5mg/kg)、1回で静注
- 治療期間は7〜14日間
Rp. 3セフジニル(CFDN、第3世代経口セフェム) 9〜18mg/kg/日を分3で内服(上限300mg/日) 内服
全身状態のよい年長児で、培養検体を確保したうえで内服治療する場合の第一選択の一つ(採用品で確認)
- カテーテル尿・中間尿で培養検体を確保してから開始する
- セフジニルを1日9〜18mg/kgを分3で内服(上限300mg/日。体重が大きい児では上限を超えないか必ず確認する)
- 48時間経っても解熱しない、またはぐったりするときは再評価する
本シートのABPC+GM・CEZ+GMは生後60日超(髄膜炎を除外済み、またはLP適応外)が対象。生後60日以下(とくに28日以下)でUTIを疑い抗菌薬を開始する場合は本シートで完結させず「生後3か月未満の発熱」シートの経験的抗菌薬に従う——セファゾリンなど第1・2世代セフェム系薬やアミノグリコシド系薬は髄液移行性が不十分で、この年齢層は腰椎穿刺の対象(=髄膜炎を除外できていない)ことが多いため。
↑ このページの入口へ5導尿(尿道カテーテル法)でカテーテル尿を採る
- 抗菌薬を投与する前に行う
- 体位は、男児は仰臥位にして陰茎を露出、女児は仰臥位で膝を立てて左右に開き陰部を露出させる
- カテーテルは一時的導尿用のネラトンカテーテルを使う。バルーンカテーテル8・10・12Fr、多用途チューブ・栄養カテーテル4・6Frを目安に用意しておく
- 外尿道口を消毒し、カテーテルを尿道に挿入して尿の流出を確認する
- 流出した尿の一部を培養用の滅菌容器に確保し、残りで定性検査を行う
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- パック尿(採尿バッグ)は培養に使えない。導尿でとり直す
- 抗菌薬を先に投与すると培養が無菌化され、あとから確かめられなくなる
6受診の目安
- 帰宅低月齢の入院方針から外れ、全身状態・循環が安定し敗血症/閉塞の懸念がない、飲水・尿量が保たれ、医師が決めた経口抗菌薬を服用できる、培養の有効な提出経路・結果確認担当・連絡先を決めている、24〜48時間の治療反応/培養確認の計画と、悪化時の早期再受診を確保
- 入院生後8〜28日は髄液を含む評価のうえ入院。LPの安全条件を優先する、生後29〜60日の発熱は原則入院(院内方針院内。ガイドライン上は検査所見が陰性なら外来管理も選択肢だが、当院は院内夜間入院で早期の再評価を優先し原則入院とする)、3か月未満、既知の尿路異常、全身状態不良、持続嘔吐、治療/培養追跡・再診を確保できない場合は入院・上級医相談
- 搬送・紹介生後3か月未満で38℃以上の発熱、治療開始後48時間経っても解熱しない・ぐったりする、半日以上おしっこが出ない、赤色・茶色っぽいおしっこ(血尿)が出た、背中・脇腹・お腹を痛がる、治療終了後の再発熱(目安48時間以内に受診)、ぐったりして呼びかけへの反応が弱い・けいれんを起こした、結果を待っている間に症状が急に強くなった
7診療中の疑問と回答
- 採尿バッグで菌が出た。UTIとして治療を続けてよい?
- 採尿法、抗菌薬開始前後の採取、単一菌か混合菌か、症状と尿所見を確認する。バッグ尿は汚染しやすく、陽性だけで確定しない。安定していればカテーテル尿または排尿自立児の中間尿で確認する。全身状態が悪い児は検体を迅速に確保し、採尿のために抗菌薬を遅らせない。
根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20) - 帰宅後に培養結果が出る。誰が、いつ薬を見直す?
- 外来治療にする時点で結果確認担当と連絡先を決め、24〜48時間で培養と症状を確認する。菌種・感受性が判明したら、感染部位に届く有効な薬の中から狭域化する。培養陰性や混合菌では検体の質と抗菌薬前投与を見直し、UTIの根拠が乏しければ別の熱源を評価して中止を検討する。
根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20) - 抗菌薬開始48時間後も熱がある。とりあえず広域化?
- 適切な治療への48時間以内の反応不良は非典型UTIの所見。培養感受性、実際の投与量・服薬・嘔吐を確認し、敗血症、閉塞、腎膿瘍・急性巣状細菌性腎炎などを再評価する。腎尿路超音波を含む検査と入院・専門科相談を考える。ショック、乏尿、全身状態悪化なら48時間を待たず対応する。
根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20) - 点滴から内服へ替える条件と治療日数は?
- 解熱・全身状態の改善があり、嘔吐せず飲めて、培養で有効な内服薬を選べることを確認する。切替日は治療のやり直しではなく、有効薬の総投与日数で管理する。このページの発熱性UTIは7〜14日を基本に個別判断する。菌血症、閉塞、腎膿瘍や急性巣状細菌性腎炎は同じ短期コースで完結させず専門科と決める。
根拠:JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20) - 元気な乳児なら、UTIの内服処方だけで帰せる?
- 年齢の低い発熱児はUTIの診断だけで評価を終えない。このページの院内方針院内では生後29〜60日は原則入院とし、3か月未満は上級医と相談する。年長児でも循環不良、持続嘔吐、尿路異常、飲水・内服困難、培養確認や再診を確保できない場合は入院を考える。安定した児の外来治療にも24〜48時間の追跡計画が必要。
根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 - 治療後は毎回検尿・抗菌薬予防投与が必要?
- 無症状になったことだけで画像評価を省略したり、全例に予防抗菌薬を始めたりしない。初回発熱性UTIの腎尿路評価を計画し、反復、非大腸菌、反応不良、尿流不良や超音波異常があれば小児腎臓・泌尿器科へ相談する。予防薬や排尿時膀胱尿道造影は再発リスク・画像所見で判断する。便秘と排尿我慢も確認し、再発熱時は早めに採尿する。
根拠:RCH Urinary tract infection:培養確認、治療不応、画像 / JAID/JSC 2015 尿路感染症:小児の治療・内服切替(pp.17–20)
- 採尿バッグの結果だけで抗菌薬を始めていい?
- バッグ尿陽性だけでは確定しない。可能ならカテーテル尿/中間尿で確認するが、全身状態不良では採尿のために治療を遅らせない。
- 夜に培養結果は出る?
- 夜間提出はできない。可能なら抗菌薬前に採取し、保管・受入条件を検査室/受入先に確認する。重症例の治療は遅らせない。
- 生後3か月未満の発熱はどう扱う?
- 低月齢発熱として評価。生後8〜28日は髄液を含む評価と入院、29〜60日は原則入院。0〜7日・61〜89日は上級医と相談し、LPの安全条件を優先する。
- 生後29〜60日で尿所見が陰性なら帰していい?
- 帰さない。当院は院内原則入院(院内方針院内)。ガイドライン上は検査所見陰性なら外来管理も選択肢だが、当院は院内夜間入院で早期に再評価できることを優先し原則入院とする。
9家族への説明
熱の原因を調べるために、おしっこの検査をします。まず簡易な採尿バッグで調べ、確定診断のためには管を使った採尿(カテーテル)が必要になることがあります。抗菌薬を始める前に採尿するのは、あとから正確に診断するためです。生後3か月(90日)未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出したときは、他に元気がなくても心配なくても、月齢だけで早めの受診が必要です。お薬を始めて2日(48時間)経っても熱が下がらない、またはぐったりして元気がないときはすぐ連絡してください。治療が終わってしばらくしてからまた熱が出たときも、目安48時間以内に受診してください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。